家族をもう一度つなぐ仕事。支える人を支えるという挑戦。|株式会社スダチ 小川社長が語る、優しさと覚悟

家庭の中で起きる不登校は、親も子も、孤立しやすい問題です。

どう支えたらいいのかわからず、時間だけが過ぎてしまう…。

そんな家族を、もう一度つなぐ仕事があります。株式会社スダチの小川社長は、保護者を支えることで子どもの再出発を後押ししてきました。現場で積み重ねてきた、優しさと覚悟の働き方に、今の時代を生きる私たちへのヒントがありました。

お話を伺った人

株式会社スダチ

小川 涼太郎 代表取締役

父の引きこもりと家族の葛藤を原点に、教育の現場で試行錯誤を重ねて親支援のモデルにたどり着く。親子関係と環境を整えることで1500名以上の再登校を実現。学校は目的ではなく道の一つと捉え、フリースクールや個別指導、保護者向け子育て塾など多様な選択肢を提供。子どもが自信を取り戻し社会へ巣立つ未来を、「誰も取り残さない支援」でつくる。

目次

家族の痛みから生まれた、人を支える仕組み

編集部

小川社長は現在、児童の復学支援サービスや、オンライン塾などを展開されていますが、今の活動を始めたきっかけを教えていただけますか?

小川社長

私の父が、引きこもりだった時期がありました。当時は、家族として何もできなかったことが本当に悔しくて…。その経験が、ずっと心に残っていました。「同じように悩む保護者の方の力になりたい」そう思ったのが最初の一歩です。

編集部

その思いが、今のスダチにつながっているんですね。小川社長が出版された本「不登校の9割は親が解決できる」にも「親の行動を変えることで子どもの不登校を解消できる」との記載がありましたが、基本的には子ども本人ではなくて、保護者の方に声掛けのレクチャーなどをされていらっしゃるとのことですね。

小川社長

はい。最初は子ども本人を支援しようと考えたんですが、根本にあるのは家庭の関係性でした。親が変われば、子どもも変わる。そこで、親御さんを支える仕組みをつくることにしました。

編集部

復学支援ではあるものの、不登校を直すことが主な目的ではない、と。

小川社長

そうです。私たちの目指すところは、家族がまた笑い合える状態です。子どもが元気を取り戻し、親も前を向けるようになる。その姿を支えたいと思っています。

編集部

家庭の関係を立て直すことが、子どもたちの再出発につながるんですね。

小川社長

はい。家庭の空気が変わると、子どもが自然に動き出すんです。だから私たちは、無理に学校へ戻すといったことではなく、家の中に安心を取り戻すことを大切にしています。復学は手段であって、ゴールではなく、一人ひとりの状態に合わせたケアを一番に考えています。

編集部

人を変えるより、自分の関わり方を整えることが結果を生む。仕事でもまったく同じですね。

優しさを続けるために、感情を仕組みに変える

編集部

実際には、どんな形で保護者の方をサポートされているのでしょうか。

小川社長

基本的にはオンラインでやり取りしています。親御さんと毎日のように連絡を取りながら、子どもとの関わり方や声のかけ方を一緒に整えていきます。親が焦ると、子どもも不安になります。だから私たちは、焦らず少しずつ関係を立て直す流れを仕組みとして設けています。

編集部

頻繁に色々な意見や質問が届きそうですし、毎日寄り添うのは根気がいりますね。

小川社長

正直、簡単ではありません。成果がすぐに出るわけではないし、うまくいかない時期もあります。でも、支援する側が感情で動いてしまうと、長く続けられなくなるんです。だから私たちは「想い」よりも「設計」を大切にしているんです。どんな状況でも続けられるように、支援の進め方を一つずつルール化しています。

編集部

感情ではなく、仕組みで支える。そこが特徴ですね。

小川社長

はい。支援の現場って、どうしても熱い気持ちでやりたくなるんです。でも気持ちだけで走ると、支援者の心が折れてしまうこともあります。続けるには、心を守る設計が必要です。優しさを続けるためには、仕組みがいる。これは、どんな仕事にも通じる考え方だと思います。

編集部

確かに、働く中で「気持ちだけでは続かない」と感じる場面はあります。大切なのは、どう続けるかを仕組みで決めることなんですね。

小川社長

そう思います。想いを行動に変えるには、仕組みが必要です。続ける力は、情熱ではなく構造から生まれる。私たちはその仕組みづくりを、家族の中でやっている感覚ですね。

編集部

仕事においても同じです。努力を続ける人は、感情を支えるルールを自分の中に持っています。小川社長の話を聞いていると、優しさもスキルなんだと感じます。

大変さを分け合うことが、強さになる。

編集部

支援の現場では、常に誰かの悩みや不安と向き合うわけですから、想像以上にエネルギーが必要そうです。

小川社長

そうですね。親御さんの不安や焦りを毎日受け止める仕事なので…。支援者が元気でいられないと、良いサポートは続きません。だから私たちは「頑張らせない仕組み」を大事にしています。

編集部

頑張らせない仕組み、というのは?

小川社長

一人で抱え込まないように、チームで支えるんです。毎朝のミーティングでは全員が顔を合わせて、前日の相談内容や困りごとを共有します。もし誰かが悩んでいたら、その場で別のスタッフがサポートに入る。状況を見える化して、大変さを分け合うようにしています。

編集部

支援者が孤立しないようにしているわけですね。

小川社長

はい。人の悩みを受け止める仕事は、感情を抱え込みやすいんです。だから、誰かがしんどい時は周りが気づける環境を整えています。お互いの小さな変化を察知して声をかけ合う。それだけでも安心感が全然違います。

編集部

確かに、働く上でも「助けて」と言える環境はすごく大事ですよね。

小川社長

そう思います。チームで仕事をしていると、みんなの表情や声のトーンから状況がわかるんです。うまくいっていない時に、無理に前向きな言葉をかける必要はありません。少し距離を置くとか、誰かが代わりに話を聞くとか。大変さを分け合うことが、強さにつながると感じています。

編集部

支援者自身も支え合うことで、結果的に家族へのサポートも安定するわけですね。

小川社長

そうです。人の気持ちに寄り添う仕事ほど、支える人同士のつながりが必要です。お互いを思いやる文化があるから、支援を続けられる。私はそれを「優しさの循環」と呼んでいます。

編集部

素敵な言葉ですね。職場でも家庭でも、助け合う文化が強いチームを作る。キャリアにおいても、大切な視点だと感じます。

すぐに結果が出なくても、信じて続ける。

編集部

不登校の問題は、すぐに成果が出にくい難しさがありますよね。

小川社長

仰るとおりで、やっぱり簡単に解決できないという前提があります。途中、親御さん自身が疲れてしまうこともあります。

編集部

そうですよね…。

小川社長

気持ちが折れて「もう無理かもしれない」と思う方も少なくありません。そんな時に、私たちは親御さんを信じて支えるんです。親がもう一度頑張れるように背中を押す。それを何度も繰り返します。

編集部

まさに「支える人を支える」仕事ですね。

小川社長

そう思います。子どもたちは、すぐには変わらない。でも保護者としてあきらめずに行動を続けることで、少しずつ家庭の空気が変わっていくんです。人の変化には時間がかかります。私たちは、その時間を一緒に耐える存在でありたいと思っています。

編集部

長期的に寄り添う支援だからこそ、ブレない信念が必要なんですね。

小川社長

はい。大切なのは「信じ続けること」です。すぐに結果が出なくても、やってきたことは必ずどこかでつながります。親御さんの心が整えば、子どもは自然と動き出す。焦らず、信じて、続ける。この仕事を通じて、僕自身もその大切さを日々学んでいます。

編集部

努力がすぐに形にならなくても、信じて続けることが最終的な成果につながる…。仕事でも同じですよね。…あ!そういえば私自身も、子どもの頃に学校に行きたくないと駄々をこねたことがありました。あのとき母親に登校を促されて嫌々行きましたけど、今思えば学校に行っていろいろな体験をしたからこそ、今の自分があるのかなと…。そうして学校での出来事を母親に話すようになって、なんだか母親は嬉しそうだったなぁ…。

小川社長

ふふ、そんなふうに、家族が笑顔を取り戻す瞬間を見るたびに「この仕事をやっていて本当に良かった」と心から思うんですよ。

一人で抱えず、チームで支えの循環をつくる

編集部

支援というと、小川社長が中心で動かれているイメージを持つ方も多いと思います。実際には、どんな体制で支援を行っているのでしょうか。

小川社長

全員がリモートで働いています。全国どこにいても支援ができるように、オンライン上の「バーチャルオフィス」を作っていて、スタッフ全員がそこにログインして仕事をするんです。リアルなオフィスにいるような感覚で、自然に声をかけ合える関係を築けますよ。

編集部

画面越しでも、ちゃんとチームの一体感を感じられるんですね。

小川社長

はい。支援の現場って、どうしても感情を使う仕事ですから、孤独になりやすいんです。だからこそ、いつでも話しかけられる空間をつくることを大事にしています。朝のミーティングでは全員で顔を合わせて、昨日の支援で感じたことを共有する。誰かが悩んでいたら、すぐに他のメンバーがフォローに入るようにしています。

編集部

支える人同士が、自然に支え合う。とても温かい職場ですね。

小川社長

ありがとうございます。お互いを理解し合える関係を築くことが、結果的に支援の質にもつながります。私たちのチームには子育て中のスタッフも多くて、家庭の事情に合わせながら働けるようにしています。家庭が安定している人は、仕事にも集中できる。だからこそ、働く人の幸せを支えることも大切にしているんです。

編集部

支える人を支える、会社としてもその考えを貫いているんですね。

小川社長

はい。私は、優しさは人から人へ伝わっていくものだと思っています。スタッフが安心して働ける環境を整えれば、その優しさがそのまま保護者の方や子どもたちに届く。だから、チームの中でも「誰かを守ることが、誰かを救うことにつながる」という循環を意識しています。

編集部

優しさを仕組みとして循環させる。まさしく、現代のチームづくりにも通じる考え方ですね。どんな職場でも、「一人で抱えない仕組み」を持つことが、長く働き続ける鍵なのかもしれません。

20代に伝えたい、支える仕事のススメ

編集部

お話を聞いていると、「支えること」には人の成長や幸せの原点があるように感じます。小川社長は、これから社会に出る若い世代に、どんなことを伝えたいと考えていますか?

小川社長

私たちの仕事は、特別なスキルが必要なわけではありません。大事なのは、「人を支えたい」という気持ちと仕組みづくりへの挑戦、そしてそれを続ける覚悟です。どんな仕事でもそうですが、続ける中でしか見えない景色があると思います。

編集部

確かに、努力の意味が見えるまでには時間がかかりますけど、根気良く丁寧に向き合うことが重要ですよね。

小川社長

そうですね。最初から完璧を目指す必要はないと思っています。大切なのは仰るとおり、どんな状況でも人と真剣に向き合うこと。その積み重ねが信頼を生み、結果的にスキルにもつながっていきます。

編集部

スキルより姿勢、という言葉がしっくりきますね。

小川社長

はい。支える仕事は、相手を変える以上に自分が変わっていく仕事です。人の痛みに寄り添う中で、自分の中の優しさや強さに気づける。そうやって少しずつ、自分の生き方が整っていくんです。だから、もし今キャリアに迷っているなら、「人の痛みに気づける仕事」を選んでみるのもいいかもしれないですね。そこから、自分の強さや優しさが育っていくと思います。

編集部

小川社長がその道を歩まれてきた理由が、すごくよくわかります。

小川社長

ありがとうございます。僕はこの仕事が、本当に大好きなんです。何度生まれ変わっても、きっと同じ仕事を選ぶと思います。もちろん楽な道ではありませんが、家族が笑顔を取り戻す瞬間に立ち会えるたび、「この仕事をやっていてよかった」と心から思える。それだけで、十分に幸せなんです。

編集部

誰かを支えながら、自分自身も成長していく…。焦らず、信じて、続ける。その姿勢は、どんな仕事にも通じますし、キャリアに悩む若い人たちにとって、すごく希望になる言葉だと思います。個人的には、今日は「優しさを続けるには仕組みがいる」という言葉が心に残りました。明日、誰かに優しくできる自分でいたい。そう思える時間でした。小川社長、本日はどうもありがとうございました。

リンク:株式会社スダチ_採用ページ

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この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

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