職人の技を世界へ届ける理由|かわしま屋・河島社長が語る「本当にいいものを守る働き方」

仕事に自信が持てない。

良いものをつくっても、どう届ければいいのかわからない。

そんな悩みを抱える20代は少なくありません。

全国の職人と向き合い、「埋もれてしまう良いものを、正しく届ける仕組みが必要だ」と気づいたのが、株式会社東旗の河島 酉里(かわしま ゆうり)社長です。自社EC『かわしま屋』を立ち上げ、生産者とお客様のあいだに新しい橋をかけてきました。

今日は、そんな河島社長に、職人の技をどう守り、どう届けるのかについて伺いました。

お話を伺った人

株式会社東旗

河島 酉里 代表取締役

1981年東京都生まれ。2011年11月より食品製造小売の「かわしま屋」を運営開始。「Food for Well-being」というコンセプトのもと、食を通じた「安らぎ・健康・楽しさ」の提供に努めている。2023年『カラーミーショップ大賞』を受賞。2018 年には海外向けサイト「The Japan Store」を開設。アメリカを中心に海外にも日本の優れた食品を提供している。
かわしま屋https://kawashima-ya.jp/

The Japan Storehttps://thejapanstore.jp/

目次

背景と決断にあった「もったいない」の気持ち

編集部

河島社長は、最初から食品の仕事をされていたわけではないんですよね。どういうスタートだったのでしょうか。

河島社長

私は大学で映像を勉強していて、キャリアの最初は広告会社でした。テレビCMや企業サイトをつくる毎日で、今とは全く違う世界にいました。

編集部

そこから食品へ…一見つながらないようにも感じます。

河島社長

そうですよね。でも、市場調査がきっかけになりました。あるとき、全国の醤油蔵の数を調べることになって、総務省のデータを見ると、毎年すごいスピードで減っていたんです。「何でこんなに減っているんだろう」と思って、休みの日に実際に老舗の蔵を何件か回ってみたんです。すると、蔵ではおじいさんやおばあさんが丁寧に仕込みを続けている。蔵の方にお話を聞くと美味しいお醤油をつくっているのに経営はぎりぎりというお話が多かったのです。

編集部

技術はあっても、続けられない現場…。

河島社長

「自分が引退したら蔵を閉める」という話も聞きました。一方で、大手メーカーはしっかり利益を出している。現状を見て、「これはもったいない」と強く思ったんです。

編集部

なるほど。その「もったいない」が、今の事業の原点なんですね。

河島社長

はい。良いものを作っている生産者が正当に評価される場所を作りたい。それが最初の決断でした。

職人の言葉に圧倒されながら学んだこと

編集部

全国の生産者の方と関わる中で、心が動いた場面はありますか?

河島社長

京都の漬物職人の方の言葉が強く残っています。「30年、毎日漬けているけど、まだ35点くらい」とおっしゃっていて…。職人の方がボソっと何気なく話した一言だったのですが、自分は大きな感銘を受けました。

編集部

30年続けてきた人の「まだ35点」。重みが違いますね。

河島社長

はい。自分の言葉がどれだけ薄かったか痛感しました。「積み重ねてきた人の言葉はこういう強さなんだ」と。

編集部

そうした職人さんの思いを届ける役割には、やっぱり特別なやりがいがありますね。

河島社長

ええ。その商品をお客様に届けられるのは本当にうれしいです。創業当初は、お客様と接する機会が少なくて、「お客様の顔が想像できない」と感じているスタッフもいたんですが、イベントやワークショップを始めたら印象が一変しました。

編集部

実際に会うと、感じ方が全然違いますよね。

河島社長

本当に温かい方ばかりで。職人さんの思いと、お客様の反応をどちらも近くで見ると、「届ける仕事」の意味がわかります

働き方を変える。60名のチームを支える仕組みづくり

編集部

職人さんやお客様の現場を大事にされている一方で、社内の働き方にもこだわりがあると伺いました。

河島社長

ええ。良いものを届けるには、まず働く人が健康でないと続かないと思います。心や体が疲れ切っていると判断もぶれますし、商品にも向き合えません。だから働く仲間には無理のない範囲で食事、睡眠、運動のバランスを意識してもらいたいと考えています。

編集部

健康を土台にしているんですね。チームの規模も大きいですよね。

河島社長

はい。アルバイトも含めると60名を超えます。そのうち3分の1はフルリモートです。産休や育休を経て自宅で働き続けるメンバーも多く、ライフステージが変わっても関わり続けられるようにしています

編集部

働き方に制限をつけない、という感じでしょうか。

河島社長

そうですね。残業は原則禁止ですし、続くようなら業務フローを見直します。有給も100%取ってほしい。誰かが無理して支えるのではなく、仕組みとして持続できるようにしたいんです。

編集部

仕組みを整えることで、メンバーが長く働ける環境になるんですね。

河島社長

はい。もう一つ大事なのは透明性です。会議内容や数値などはほぼ全て共有しています。不満を言うだけで終わらず、改善に向けて動く文化にしたいからです。ミスが起きても責めるのではなく、「どう再発を防ぐか」だけを考えます。

編集部

透明性と仕組みの両方があるからこそ、60名のチームでも動きが揃うんですね。

河島社長

そうですね。人が健康で、情報が開かれていて、改善が続く。これが続けば、誰も無理せずに良いサービスを届けられると思っています。

徹底的に、商品にこだわる。

編集部

今はネット広告やマーケツールも一気に進化していますよね。その中で、河島社長が大事にしている考え方は何でしょうか。

河島社長

私たちはよく「マーケティングだけでは長く続けていけないのではないか」と話しています。広告や仕掛けで一時的に売れても、商品そのものが良くなければ続かないからです。生産者の方が本気でつくったものを扱う以上、まずそこに向き合う必要があると思います。

編集部

売り方の前に、商品そのものにこだわるということですね。

河島社長

はい。原料の質やつくり方が良ければ、お客様の反応が変わります。実際、商品を使ってくださった方からの声はとても正直で、良いものは自然と広がっていくことが多いです。

編集部

生産者さんの姿勢を見ていると、そこを大事にしたくなる気持ちもわかります。

河島社長

つくり手の声を直接聞くと、どこにこだわっているのか、どこが難しいのかがわかります。その理解があると、お客様への説明も嘘がなくなりますし、社内でも商品がどう扱われるべきかが自然と揃っていくと思います。

編集部

プロダクトを軸にすると、会社全体の判断もブレないですね。

河島社長

はい。売り方を考える前に、「良いものを扱っているか」を常に確かめる。それが、かわしま屋が大事にしている考え方です。

編集部

今日のお話では、生産者の技を守る姿勢と、続ける力の大切さが何度も出てきました。私自身も、まずは「誰の役に立ちたいのか」を一つ言葉にしてみようと思います。河島社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました。

リンク:かわしま屋_採用ページ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

目次