ひとつひとつ、つないでいくキャリアの作り方|株式会社ONE WEDGE 橋田社長の”続けるための視点”

エンジニアの仕事に興味はある。でも、何から始めればいいのかわからず、一歩目が踏み出せない…。そんな悩みを抱える20代は少なくありません。

土木作業から広告、そしてITエンジニアの世界へとキャリアチェンジを重ねてきたのが、株式会社ONE WEDGEの橋田社長です。

ひとつひとつ真摯に向き合い、つないでいくという考えのもと、会社と社団法人を運営し、業界の課題にも正面から向き合っています。橋田社長の歩みには、最初の一歩に迷う人が明日から動き出すためのヒントがあります。

お話を伺った人

株式会社ONE WEDGE

橋田 博明 代表取締役

1979年大阪市生まれ。甲子園出場を経験し、卒業後は土木の現場で最年少リーダーに抜てき。その後、広告代理店でITの可能性に触れ、業界に挑戦するため転職。SIerでの営業組織づくりや、IT企業の専務として事業の立て直しを担う。2020年にONE WEDGEを設立し、「ひとつひとつ真摯に向き合い、つなぐ」姿勢で業界の未来づくりに取り組む。

目次

キャリアの幅が広がった原点。土木から広告、そしてITへ

編集部

橋田社長は、最初は土木の現場で働いていたと伺いました。そこから広告、そしてITへと道が変わっていくのは、かなり大きな転換ですよね。一体どんなきっかけがあったのでしょうか?

橋田社長

そうですね。仰るとおり最初は土木工事の現場仕事をしていたんですが、だんだん「スーツを着て会社で働きたいな」と思うようになって。当時は世の中のこともよくわかっていなかったんですけど、思い切って広告代理店に入社したのが最初の転職でした。

編集部

いきなり現場から広告代理店へ。かなり思い切ったチャレンジだったのですね。

橋田社長

そうですね。当時の広告の仕事は完全にアナログ中心でした。印刷物のデザイン手配、印刷会社さんとのやり取り、新聞の折り込みチラシ、ダイレクトメール、街頭でのティッシュ配りの手配など、いろいろな施策を組み合わせる、クロスメディアのようなことをやっていました。

編集部

まさに、リアルの現場で鍛えられた感じですね。そこからITに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

橋田社長

広告代理店で、キャンペーンの事務局も担当していたんです。昔はハガキで応募を受け付けるのが普通でしたが、2005年、2006年あたりから、ウェブやモバイルサイト経由の応募が一気に増えてきました。そのときに、事務局の裏側の仕組みをつくるために、システム側の人たちと話す機会が増えて、「ITがわからないままだと、この先は厳しいな」と強く感じたんですね。

編集部

時代の変化を肌で感じたのですね。そこで、ITエンジニアの世界に入っていかれたと。

橋田社長

はい。独立したい気持ちはその頃からありましたが、「IT、とくにシステム開発をきちんと理解してからでないと怖い」と感じて、ベンチャーのSIerに入りました。そこで約5年間、上場企業のなかで開発に関わり、その後、知人の会社に取締役として入り、事業立ち上げを経験しました。2020年に、今のONE WEDGEという会社として独立した、という流れです。

編集部

土木、広告、SIer、そして自分の会社。一見、遠回りにも見えるキャリアですが、全部つながっている感じがします。

橋田社長

そうなんです。ONE WEDGEの「ワン」は「ワンバイワン」、ひとつひとつという意味です。遠回りに見える経験も、全部つながって自分の糧になると信じてきました。20代の方も、今のアルバイトや別業界の経験が、数年後に「強み」になることがあります。今の仕事もキャリアの一部だと意識して向き合うと、明日からの頑張り方が変わってくると思いますよ。

厳しい現場で学んだ、社員ファーストな組織づくり

編集部

橋田社長はこれまでのインタビューで、「昔の職場は、社員を大事にしている感じがあまりなかった」と話されていましたよね。その経験は、今の組織づくりにどうつながっていますか?

橋田社長

広告代理店時代の社長は、今でもお付き合いがありますし、学ばせてもらったことも多いです。ただ、当時は今ほど働き方が整っている時代ではなく、上司も熱量が高いぶん、口調が強くなることがありました。経営のセンスや判断力はとても尊敬していましたが、「もっと安心して働ける環境もつくれるはずだ」と感じる場面があったのも事実です。その経験が、今の社員が続けやすい組織づくりを意識するきっかけになりました。

編集部

昭和的な会社の空気、というか。厳しい現場の雰囲気は、今の20代も少しイメージできると思います。

橋田社長

そうですね。だからこそ、自分が会社を持つなら「同じことは絶対にしない」と決めていました。みんなで切磋琢磨しながら成長していける場所にしたい。目標も「ちょっと頑張れば届く」ラインに設定して、現実的に積み上げていくスタイルにしています。

編集部

無理なノルマで追い込むのではなく、現実的な成長を続けるイメージですね。

橋田社長

はい。よく「急成長企業」と見られることもありますが、僕としては、ブレーキがかかるような成長は望んでいません。少しずつ背伸びをして、できることを増やしていく。そうやって社員の生活と、会社の成長のバランスを取りたいと思っています。

編集部

20代で「働くのが怖い」と感じている人もいますが、社員ファーストの会社の存在を知るだけでも、少し気持ちが楽になりますね。

橋田社長

そうだと嬉しいです。若い方には、「会社選びは、数字だけでなく空気も見てほしいです」と伝えたいです。自分が安心してチャレンジできる環境かどうかは、長く働くうえでとても大事です。まずは面談や面接の場で、空気をよく観察してみてください。

研修・テックブログ・社団法人。試して直して、業界ごと良くしていく

編集部

ONE WEDGEさんは、研修やテックブログなど「人を育てる仕組み」がかなり充実している印象でした。どんな取り組みをされているのか、改めて教えてください。

橋田社長

技術研修はもちろんですが、コミュニケーションやキャリアの考え方に関する研修も、外部のプロの方にお願いして、継続的に行っています。エンジニアは技術だけでなく、「どう働くか」「どう成長していくか」を自分で考える力が必要だと思っているので、そこもセットで伸ばしたいんです。

編集部

テックブログも、かなり力が入っていましたよね。

ONE WEDGE TECH BLOG

橋田社長

はい。技術ブログは、最初は月に10本くらいでしたが、今では月30本前後まで増えました。社内のメンバーが記事を書いて、僕らがチェックして、公開しています。クオリティは厳しく見ていますが、そのぶん、読んでくれた人の役に立つ内容になっていると思います。

編集部

私も拝見しましたが、コードの画面や図表も多くて、とてもわかりやすかったです。あれを社員の方が書かれているのは、すごいことだと思いました。

橋田社長

ありがとうございます。ディレクションは社内で担当していて、サムネイルも毎回手作りです。記事を書くことは、自分の学びの整理にもなりますし、社内のナレッジ共有にもなります。書いた人の評価や報酬にもつながるようにしています。

編集部

さらに橋田社長は、IT業界の社団法人も運営されていると伺いました。

橋田社長

はい。業界貢献の一つとして、一般社団法人ITエンジニアリングサービス協会も立ち上げました。入会金や年会費はいただかず、無料で参加できる形にしています。イベントや勉強会を開いて、エンジニア同士がつながり、学び合える場にしているんです。

編集部

業界の「多重下請け」のような構造課題に対して、すぐに全部を変えることは難しいですが、「できることから一緒に良くしていこう」というスタンスですね。

橋田社長

そうですね。大きなことは急に変えられませんが、自分たちの影響が届く範囲で、少しずつ良くしていくことはできます。20代の方も、会社の外のコミュニティや勉強会に一つ参加してみるだけで、仕事の選択肢や価値観が広がります。明日できる行動として、「気になるイベントを一つ調べて申し込んでみる」をおすすめしたいです。

急成長ではなく、走り続けられるペースでいい。積み上げる成長の考え方

編集部

最近はAIの話題が増えて、「エンジニアの仕事はどうなるんだろう」と不安に感じる20代も多いです。この点はどう見ていますか?

橋田社長

別の媒体でも話しましたが、エンジニアの仕事が全部なくなるとは思っていません。AIで自動化される部分はあっても、「この人にいてほしい」と言われるようなニーズは、これからも残ると思います。

編集部

「人だからこそ」という価値は続くわけですね。

橋田社長

そうですね。AIと人をどう組み合わせるかが大事です。効率化できるところはデジタルに任せつつ、最後は現場での対話や調整が必要になるので、その両方を扱えることが強みになると思います。

編集部

つまり、人にしかできない部分をどう積み上げるかが大切になるわけですね。会社づくりにも、その考え方が通じているように感じます。

橋田社長

はい。ベンチャーというと、毎年120%成長みたいなイメージがあるかもしれませんが、ああいう伸ばし方を全員に求めると、どこかで無理が出ます。僕らは、急成長よりも「気づいたら少しずつ良くなっている」くらいのペースを大事にしています。

編集部

社員の働きやすさの部分にも、その考え方が表れていますよね。

橋田社長

そうだと思います。オフィスは気に入っていますが、お客様先での常駐やリモートの方も多いので、「せっかく作ったから毎日来て」とは言いません。一人ひとりが働きやすい形で続けられるのが一番です。

編集部

会社も個人も、走り続けられるペースが大切なんですね。

橋田社長

はい。続けられるペースで積み上げるほうが、長い目で見ると必ず力になります。焦らず、一つひとつで大丈夫です。

未経験からエンジニアを目指す20代へ。まずは小さく真似して、何か一つ作ってみよう

編集部

その「一つひとつ積み上げる」という考え方は、これからエンジニアを目指す20代にも通じますよね。では、実際に未経験から挑戦したい人は、どこから始めればいいのでしょうか。

橋田社長

今、うちは未経験の採用を積極的にはしていませんが、業界全体を見ると、未経験からエンジニアを目指す方は本当にたくさんいます。ただ、「スキルはまだ何もないけれど、エンジニアになりたいです」というだけだと、企業側から見ると、正直なかなか評価が難しいのも事実です。

編集部

たしかに、「なりたい気持ち」は大事ですが、「で、何をやってきたのか」が見えないと判断できないですよね。

橋田社長

そうなんです。だからこそ、「自分で何を勉強して、どんなものを作ってみたのか」を、ちゃんと語れる状態になっておくことが大切です。アプリでもWebサイトでも、小さなツールでも構いません。完璧でなくていいので、「自分で作ったもの」が一つあるかどうかで、見え方は大きく変わります

編集部

今なら、AIを使いながらでも良いですよね。

橋田社長

はい。AIを使ってコードを書いてみるのも、立派な経験です。大事なのは、「自分の頭で考えて、試して、直してみたかどうか」です。うまくいかない部分があっても、「ここで詰まって、こう調べて、こう直しました」と話せると、それだけで評価ポイントになります。

編集部

橋田社長ご自身も、「いいな」と思った人ややり方を真似して、自分なりに進化させるスタイルを大事にされているそうですね。

橋田社長

そうですね。僕は常に、「これは自分の身になるか」と意識してきました。うまくいっている人のやり方を真似してみて、自分なりに変えて、提案したり行動したりする。その繰り返しで、少しずつ自分の軸ができてきた感覚があります。会社名のONE WEDGEには、「一つひとつ真摯に向き合って、自分や誰かにつないでいく」という思いも込めています。

編集部

素敵なお話です。

橋田社長

20代の方へ伝えたいのは、「どんな経験も、後からつながる」ということです。今の仕事が希望通りでなくても、学び方次第で必ずプラスになります。まずは今日から、「誰かのいいところを一つ真似してみる」「30分だけ勉強時間をつくってみる」「小さなものでもいいから作ってみる」。その一歩が、数年後の自分の武器になっていくと思いますよ。

編集部

橋田社長の「遠回りも全部つながる」「社員ファーストで着実に成長する」「真似して自分なりに進化させる」という考え方が、とても印象的でした。明日は、気になる人の働き方を一つ真似してみたり、AIに相談しながら小さなツールを作ってみたり、「30分の学び時間」を予定に入れてみるのもいいかもしれませんね。小さな一歩が、数年後のキャリアを変えていくはずです。橋田社長、今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

リンク:株式会社ONE WEDGE_採用ページ

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この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

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