逃げない・言い訳しない。AI時代は「リアル×デジタルの二刀流」で生き抜く|株式会社アイベック 関口社長が語る、現場の価値と仕事の哲学

どんな時代でも、現場で汗をかく仕事には価値がある。
そう語るのは、創業1949年の老舗・株式会社アイベックの三代目、関口豊(せきぐち ゆたか)社長です。
もともと自動車部品メーカーで研究開発に携わっていた関口社長は、「継ぐつもりはなかった」ところ、諸事情により急遽家業を引き継ぎ、塗料の力で社会を守る仕事へと進化させました。同社の提案する「屋根下遮熱シート」は、環境省の環境技術実証事業にも採択され、全国の工場から注目を集めています。
現場に足を運び、ユーザーの声を拾い上げ、提案から施工までを一貫して担う。そこには「逃げない・言い訳しない・人のせいにしない」という、関口社長の揺るぎない信念があります。
AIが常識を塗り替える時代に、人にしかできない仕事とは何か。そして、若い世代が現場で輝くために必要な姿勢とは。関口社長にお話を伺いました。
株式会社アイベック
関口 豊 代表取締役
自動車部品メーカーで18年間、材料開発・研究職として従事。自身が手がけた製品は現在も世界中の自動車に採用されている。2015年、株式会社アイベックの三代目として経営を引き継ぐ。遮熱シートを用いた暑熱対策では環境省の実証実験にも参加し、業界内外から注目を集めている。
「継ぐつもりはなかった」それでも逃げなかった三代目の決断

編集部関口社長は株式会社アイベックの創業者というわけではなく、諸事情で家業を継いだと、某記事で仰っていたのを拝見しました。自分が望んだ道ではなかったのに、どうして会社を継ぐ決断をし、それから10年近くも粘り強く続けてこられたのでしょうか。



たしかに、私はもともと自動車部品メーカーで材料開発をしていて、まさか塗料販売会社を継ぐとは思ってもいませんでした。でも会社を継いでいた兄が体調を崩し…、戻ってこい、と。



それは一大事でしたね…。



ええ、なかなか難しい状況でした。



経営を引き継がざるを得ない状況だったかとは思いますが、多くの人は、その時点で「自分にはハードだ」と感じてしまいそうです。



そうですね。実際、悩みました。でも昔の上司の言葉が頭に残っていました。「どんな状況でも、逃げない・言い訳しない・人のせいにしない」。



今も関口社長が大事にされている言葉ですね。



ええ。この3つは、私が社会人になってからずっと支えにしてきた言葉です。いままで自由にさせて頂いたことを感謝し、責任もって会社を継ぐことに決めました。



業種も業務内容も全く異なるとは思いますが、それからは、どんな苦労があったのでしょうか?



最初の数年はもう、大変でしたね。塗料販売会社として、将来の会社の方向性を判断し、組織を導いていくことに、非常に悩みました。



そうですよね…!大変なのが容易にイメージできます。



でも、「逃げない」と決めていたので、とにかく現場に出て学び続けました。色々な商材を試している中で、ある展示会で面白い商材と出会いました。
命を守る。暑熱対策の最前線で見つけたやりがい



とにかくやってみるという姿勢、素敵です。「面白い商材」とはどのようなものだったのでしょうか。



昨今の夏は異常な暑さとなっています。真夏の工場や倉庫では、屋内が40度を超えることもあります。以前から「遮熱塗料」での取り組みを行っておりましたが、ある展示会で「屋根下遮熱シート」を知り、興味を持ちました。効果についてわからない部分も多かったので、自社の倉庫で効果を確認することにしました。



これ、すごいですよね。遮熱シートを施工するだけで倉庫内温度がこんなに下がるなんて…!



屋根の上に塗るだけで表面温度が30度以上も下がる遮熱塗料もあります。この遮熱塗料の提案に加え、屋根の下の空気断熱層、アルミの低放射性をうまく活用した「屋根下シート施工」も提案の一つとして採用することにしました。これが非常に効果的で、室内温度を外気温レベルに近づけられることを自社倉庫で確認しました。さらには、環境省の環境技術実証事業にも採択され、室内温度低減について効果があることを実証していただきました。



年々、夏は暑さが厳しくなってきていますが、こういった施工によって多くの方が救われていると思います…!



真夏で体感が5度下がると、従業員の集中力も作業効率も全然違います。お客様から「室内の暑さが軽減した」「空調が効くようになった」と言ってもらえるのが一番うれしい瞬間ですね。



塗料販売の枠を超えた、人の命を守る仕事ですね。



ありがとうございます。我々の企業理念に「社会をより美しく安全にする」があります。「働く環境を改善する」ことは、我々の使命の一つと思っております。
商社でも現場に出る。「提案・施工・検証」を自分たちで回す理由



御社は商社でありながら、現場に出ることを大切にされていますよね。



そうですね。普通の商社はメーカーと施工業者をつなぐだけですが、私たちは自社で現場を見て、提案して、施工の結果まで検証します。



社長ご自身も現場に足を運ばれるとか。



ええ。展示会やYouTubeなどで直接問い合わせを受けることもあり、その流れで私が現場確認に行くこともあります。それで、実際に天井の温度を測ったり、どんな素材が使われているか確認したり。各社様の状況に合わせ、遮熱塗料、遮熱シートなど様々な提案を行っていきます。様々な課題と向き合う中で、新たなニーズもつかむことができ、新たなお役立ちへつなげることができています。



素晴らしいですね…!



塗料の種類、塗る面積、素材の状態…。図面だけではわからない、肌感覚が仕事の質を決めることもあるんです。



それを経営者自身が感じ取るというのは…私が知る限り、珍しいのかもしれないです。



現場を知らずに机上で提案しても意味がない。経営者であっても、現場の空気を体感してこそ、営業としての言葉に重みが出ると思っていますからね。
AI時代のキャリア 「リアル×デジタルの二刀流」が生き残る



近年はAIの活用も進んでいますが、現場の仕事はどう変わっていくと考えていますか?



AIがどれだけ進化しても、現場で汗をかく仕事はなくなりません。屋根を塗るのも、素材を見極めるのも、結局は人の手が必要です。



そうですよね。私もそう思います。



私はよく、「リアル×デジタルの二刀流」と言っているんですが、AIで情報を分析しつつ、人間がリアルの現場で確かめる。これが大事だと感じています。現場での感覚をもとにデジタルを使いこなせる人が、これからはより必要になると思いますよ。



たしかに、仰るとおりですね。ただ、一部の若い世代は、AIを便利な道具としてしか捉えていなかったりするかもしれません。



そうですね。AIは使い方次第で、考える力を奪うこともあります。だからこそ、現場で感じ、失敗して、修正していくプロセスを忘れてほしくないです。



そうですね。大事なプロセスだと思います。



手を動かす経験とデジタル知識、両方を磨いていくのが、これからの時代のキャリアだと思いますね。


若手に伝えたい、逃げずに人のために頑張り続ける力



若い世代、というワードが出ましたが、関口社長は採用面接もご自身でされていると伺いました。実際に若い求職者とお話しされていて、「この人は一緒に働きたいな」と思うのはどんな方ですか?



そうですね。やっぱり「お客様のために頑張ります」と言える人ですね。もちろん、働く環境や休みの希望などは大事なことです。でも、それだけではこの先生き残れないと思います。お客様へのお役立ちがあっての仕事と思います。



「スキルアップしたい」という人も多そうですが、そのあたりはどう感じられますか?



そういう方も、実際には多いです。年齢によらず、学びたい気持ち、学ぶ姿勢は大事です。世の中の動きに常にアンテナを張ってほしいです。



たしかに。それを考えられる人のほうが信頼もされそうですね。



今後、社会インフラが老朽化していく中で、補修や修繕に塗料は欠かせません。AIに聞いても答えが出ない、現場の知識が必要になる仕事です。うちは無借金経営で、大手企業様などとも取引があります。規模は小さくても、若い方がしっかり経験を積める環境があり、長い間必要とされる仕事だと思います。もし興味を持っていただけたら、いつでもお問い合わせくださいね。



最後に、この業界を目指す若者へメッセージをお願いします。



今の時代は本当に厳しいですが、どんな時代でも逃げずに続ける人が最後に評価されます。周りの声に流されず、自分の信じた道を諦めずにコツコツと進んでください。私が尊敬している大谷翔平さんも、どんな状況でも淡々とやるべきことを続けています。誠実に、逃げずに続ける…。それができる人は、どんな時代でも必ず生き抜けます。



クールだけど、熱い。まさに関口社長そのものですね。お話を伺っていて感じたのは、「逃げない」という言葉の裏にある、人を思う温かさでした。AIの時代だからこそ、人としての真っ直ぐさが問われる。仕事の本質は、人と向き合うこと。その原点を改めて教えていただきました。この言葉は、きっとこれから働く若い世代の背中を押してくれるはずです。関口社長、本日は本当に貴重なお話をありがとうございました。
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