環境のせいにしない人が選ばれる|株式会社グッド・クルー採用担当・大谷夕姫さんが面接で見ている3つの姿勢

就活や転職を考えるとき、「面接ってどこまで対策すればいいんだろう」「作り込みすぎて見抜かれないかな」とモヤモヤしてしまう人も少なくありません。正解が見えないまま本番だけが近づいてくると、心のどこかでそわそわしてしまいますよね。
そうした不安に、向き合ってきたのが、大谷夕姫さんです。コロナ禍で内定取り消しを経験し、自分に向き合い続けた結果「素敵なおせっかいができる人になりたい」と決めた大谷さんは、今は株式会社グッド・クルーで新卒採用を担当し、面接対策に迷う学生たちにも日々向き合っています。
今回は、面接官が本当に見ているポイントや、在宅勤務への憧れとどう付き合うかまで、お話を伺いました。
株式会社グッド・クルー
採用担当 大谷 夕姫
コロナ禍の就活を経て2021年に新卒で株式会社グッド・クルーへ入社。入社後はモバイル販売職としてクライアント先で現場経験を積み、その後人材支援事業部で新卒採用・中途採用を中心に担当。説明会・一次選考から内定後フォローまで学生と一貫して向き合い、「素敵なおせっかいができる人になりたい」を軸に感情移入を大切にした採用を行っている。
コロナ就活の内定取り消しから、グッド・クルーを選ぶまで

編集部大谷さんは、今は株式会社グッド・クルーで採用担当をされているとのことですが、入社されるまではどんな流れだったのでしょうか。



私が就活していたのは、ちょうどコロナが広がり始めた年でした。先輩たちの卒業式の頃に「これちょっとやばいかも」と言われ始めたタイミングで。



ニュースで見ていた「内定取り消し」が、目の前で起きた世代ですよね。



そうです。もともと観光系に行きたい、人に関わる仕事がしたい、どうせならベンチャーかな、くらいの軸で動いていました。内定もいくつかいただいていたんですけど、コロナの影響で「今年は新卒採用をやめます」と言われてしまって…。



それは相当きついですね。そこからどう立て直したんですか?



一回立ち止まって「そもそもなんで観光をやりたかったんだろう」と自分に問い直しました。そこで浮かんできたのが、noteにも書いている「素敵なおせっかいができる人になりたい」という言葉です。誰かのきっかけになることを積極的に行動し、相手に本質の言葉を届けられる人になりたい。そこから掘っていったら、「人のプロになること」が大事だなと思うようになりました。



noteでは「ゆうき_ステキなおせっかい」という名前でも発信されていましたよね。仕事を「職種」ではなく「人のプロになれるか」で選び直したわけですね。



そうですね。あと、自分のやりたいことに100%当てはまる会社って、世の中にないんじゃないかとも思って。本当に100%を求めるなら、自分で会社を作るしかないのかな、と。だったら、将来自分で何か始めたくなったときに困らない力をつけたい。それを軸に就活をやり直しました。



就活の軸を言語化しておくと、入社後の「働き方の迷い」も減りますよね。20代のうちに、自分なりのキャッチフレーズを持っておくと、転職や評価の場面でもぶれにくくなりそうです。



そうですね。軸があったからこそ、グッド・クルーに出会ったときに「ここだ」と決めやすかったのかなと思います。
「人のプロ」になりたくて選んだ会社と、面接で感じた安心感





当時、私はまだ主流ではなかったダイレクトリクルーティングのサービスに登録していて、そこで今のグッド・クルーの採用担当からメッセージをもらったのが始まりです。



スカウト文の内容、今も覚えていたりしますか?



はい。「私のプロフィールをちゃんと読んでくれたんだな」とわかる内容でした。テンプレではなく、私の言葉を拾ってくれていた。こういう関わり方ができる人事って素敵だな、自分もこういう関わりをしたいなと思って、話を聞きに行ったんです。



そこから会社のビジョンにも共感されたと。



面談の中で「感情移入能力」という言葉が出てきて、それが自分の考えとすごく重なったんです。あぁ、相手の立場に立って考えることを大事にしている会社なんだ、と。あとは単純に、そのとき話してくれた先輩と一緒に働きたいと思いました。この人とだったら、自分の殻が破れるかもしれないと感じて。



とはいえ、他にも内定はあったわけですよね。ご家族からは安定志向の声もあったとか。



父が公務員なので、「せっかく大学も出たんだから」と、公務員や大手はどうなの?という声もありました。親の気持ちもわかるので、すごく悩みましたね。今まで両親の意見を大事にしてきた部分もあったので。



そんな中で、最終的にグッド・クルーを選んだ決め手は何だったのでしょう?



実は、選考のときに、かなり尖ったことを言ったんです。「私にはこういう夢があります。だから、ずっとこの会社にいるとは限りません」というニュアンスのことを。これ、普通なら落とされてもおかしくないですよね。でも採用側は「いいじゃん」と受け止めてくれて。



たしかに、一般的には、選考官としては長く会社にいてくれる人を採用したいと考えますもんね。でも、それは意外だけどうれしい反応でしたね。



「だったらその夢に近づけるように、一緒に成長していこう」と言ってもらえて。この伝え方と成長ステップなら、自分の力も磨けるなと感じて、入社を決めました。



自分の将来像を正直に話したうえで受け入れてくれる会社は、入社後のキャリア相談もしやすいですよね。



そうですね。だからこそ、今は自分がその「最初の窓口」として、学生さんの話をちゃんと聞こうと意識しています。
採用担当になって見えた「誠実さ」と「言い訳しない力」





入社後は、すぐ採用担当になったわけではないんですよね。



はい。最初の2年間はクライアント先に常駐して、モバイルの販売の仕事をしていました。そのあと3年目で、今の新卒採用のポジションに異動しています。一つの会社の中で、まったく違う仕事をしている感覚です。



今は新卒採用がメインとのことですが、どんな流れで学生さんと関わっているのでしょうか?



私たちは新卒のエージェントを使っていないので、自社で媒体に掲載して、そこからエントリーしてくれた学生さんにメッセージを送ります。書類選考はほぼしていなくて、まずは一次選考で直接話を聞くスタンスで。説明会、選考、内定出し、フォローまで一貫して担当しています。



かなり間口を広くしているんですね。そんな中で、「この人は一緒に働きたい」と感じるのはどんな学生ですか?



大きく3つあります。1つ目は「この時間を相手との気持ちいい時間にしよう」と意識できているかどうか。面接はジャッジされる場だと感じると思うんですけど、同時に一時間という時間をお互いに渡し合っている場でもあるので。笑顔が得意じゃなくても、何とか話そうとしてくれる姿勢があるかどうかは、すごく見ています。



どんな仕事でも「一緒に時間を過ごしたいか」は評価に直結しますよね。



はい。2つ目は、環境のせいだけにしない人かどうかです。コロナ世代なので、「仕方ないよね」で終わってしまう出来事も多かったと思います。でもその中で「自分は何を考え、何を行動できたのだろう」と、自分自身に目を向けられているかどうかを見ています。



具体的なエピソードで印象に残っている方はいますか?



家庭環境が大変だった学生さんがいて、その子は「だから何もできませんでした」ではなく、自分で学校の制度を調べて留学に行っていました。同じ境遇の人を助けようと動いていて、「ここから自分に足りないことは何か」を考えて次の一歩を踏み出していたんです。



行動まで一貫しているのは、すごく心を動かされますね。



そうですよね。3つ目は、そうやって自分でキャッチアップしていける子かどうかです。私たちの会社は100%レールが敷かれているわけではなく、「あなたはどうしたいの?」の部分を大事にしています。現場で働きながら自分の夢に近づくチャンスをつかみにいける人は、どんどん伸びるだろうなと感じます。



環境のせいにせず、自分の行動で未来を変えようとする姿勢は、どんな会社でも評価されますよね。20代のうちに、この「言い訳しない力」を意識できるかが、キャリアの分かれ目になりそうです。
面接対策は大歓迎|相手に気づきときっかけを与える問いで本音を引き出す





一方で、「この人はちょっと心配だな」と感じるパターンもありますか?



ありますね。ざっくりですが、これも3パターンあると思っています。どう頑張っても深掘りすると何も出てこない人。環境のせいにしきってしまっている人。そして、面接対策で作り込んだ仮面だけで勝負しようとする人です。



3つ目、とくに気になります。やっぱり見る人が見れば「あ、これは面接対策用の仮面だな」ってわかるものなんでしょうか。



大体わかります。でも、私は面接対策そのものはすごくいいことだと思っていて。相手と向き合おうとする努力なので、むしろ好印象です。



それは救われる学生さんが多そうです。



そのうえで「どこからが自分の言葉なのか」を一緒に探すイメージですね。私は「よくある面接対策に書かれている質問以外のところまで」を全部聞きます。そうすると、準備してきた部分はすらすら出てくるけれど、少しずらした質問になると止まってしまうことがあるんです。



なるほど…!



幼少期の話や部活の話などに戻って、「さっきの経験って、こことつながっている気がするけどどう思う?」と問いかけてみるんです。「なぜ」と詰めるよりも、「何がそう思わせたんだろうね」と聞くようにしていて。そうすると、相手も自分で考えながら話せるんです。



たしかに、その聞き方だとリラックスして考えやすいですね。



この聞き方は、販売の仕事をしていたときに身につけました。もともと人間観察が好きで、駅のホームでも「この人は誰を待っているんだろう」とか考えちゃうタイプだったんですけど、そこにコーチングやNPS理論の本を読んで学びを足した感じです。



大谷さん、とっても勉強家ですね…!



人の行動を見て「この人は今どう感じているんだろう」と想像するのは、昔から苦じゃなかったので。それが今の採用の仕事にも生きているんだと思います。



人の話を丁寧に聞いて、仮面の下にある本音を一緒に見つけてくれる面接官がいると、若手も自分のキャリアを考えやすくなりますよね。オンライン面談やリモートの1on1でも、この問いかけのスタイルがあると、画面越しでも安心して話せると感じました。
在宅希望ブームの裏で、20代が明日からできる小さなアクション





最近の学生さんと話していて、「価値観が変わってきたな」と感じる場面はありますか?



在宅勤務への憧れはすごく強くなったと感じます。「テレワークで働きたいです」「家でできる仕事がいいです」とはっきり言う子も増えました。



新卒でも、いきなり在宅希望というケースがあるんですね。



ありますね。ただ、深掘りすると「研修や育成はちゃんとしてほしいです」とも言うので、そこは一度現実の話をします。「もしあなたが採用する立場だとして、経験もスキルもある在宅希望のAさんと、まだ何もできないBさんがいたら、どっちを選ぶ?」と。



それを聞くと、たいていの人はハッとしそうです。



そうなんです。在宅って「任せても安心だ」と思われるからこそできる働き方なんですよね。そこに気づいていないケースが多いなと感じます。



信頼は「環境」ではなく、「積み上げ」の結果ですよね。



そう思います。例えば、実際に選考の場でも、時間や約束を守れるかどうかがとても大事です。たとえば、面接一時間前までに送ってくださいとお願いしている書類が、ギリギリまで来ない。こちらから連絡しても返事がない。当日も1分遅れて入ってきたのに何も言わない、ということもあります。



えぇ…(汗)せめて何か一言、謝罪が欲しいですよね。ちなみに、中途でもそういう方はいますか?



います。エージェントさんには参加の連絡をしているのに、当日オンラインに入ってこない方もいます。一言「遅れます」と送るだけで印象は変わるのに、本当にもったいないなと思います。



小さな連絡や一言のあいさつで、「この人に仕事を任せたいか」が大きく変わりますよね。リモートやフレックスで自由に働きたいなら、まずはこうした信頼の積み重ねを大事にすることが、20代のいちばんの近道だと感じます。



はい。在宅やテレワークは信頼の先にある働き方の一つであって、スタートではないと思います。だからこそ、今できることから始めてほしいです。



たとえば明日からできることって、何がありそうでしょう?



一つは、「今日会った人との時間をどう終わらせたいか」を意識することです。面接なら「この一時間を使って、相手にどんな自分を渡したいか」。バイト先なら「このシフトに一緒に入る人にとって、どんな存在でいたいか」。そう決めてから行動すると、自然と選ぶ言葉も変わると思います。



それなら、就活中の学生さんだけでなく、今働いている社会人でもすぐに取り入れられますね。



はい。完璧な答えを用意しなくてもいいので、「相手の時間を大事にしたい」という気持ちだけは忘れないでほしいなと思います。面接で落ちることがあっても、その時間が「自分を見直すきっかけ」になれば、必ず次につながるはずです。



お話を聞いて、「環境のせいにしない」「一時間を気持ちよく使う」という考え方が特に印象的でした。相手の時間を大切にする一言と、自分の行動を振り返る時間…その積み重ねが、信頼されて任されるキャリアへの近道になるはずだと感じました。大谷さん、今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。








