約34兆円の賃貸市場をデータで変える|株式会社住宅テックラボ 梶社長が語る賃貸管理の可能性

不動産業界は、なんとなく“昔ながらでアナログ”なイメージが強く、実は最初から志望する若い求職者は多くありません。

そんな賃貸の世界で、コンサル×DXとSaaSの力を使いながら、管理会社と資産家オーナーの関係をアップデートしているのが、株式会社住宅テックラボの梶さんです。

日本の家主約300万人、約34兆円の資産を支える「賃貸管理」という仕事に、どうテクノロジーをかけ合わせていくのか。キャリアの選び方に迷う若い世代への思いも含めて、お話を伺いました。

お話を伺った人

株式会社住宅テックラボ

代表取締役 梶 宏輔

大学卒業後、総合系コンサルティングファームに新卒入社。上場企業向け戦略、不動産賃貸、士業支援の3チームを経験し、賃貸管理領域のコンサルタントとして約10年従事。賃貸管理会社と家主の可能性に着目し、株式会社住宅テックラボを設立。「オーナーサーチ」「ちんさてくん」などで、データとテクノロジーを武器に不動産管理会社と資産家を支援している。

目次

3チームを渡り歩いて気づいた「賃貸管理」という”おもしろい”仕事

編集部

梶社長って、新卒で総合系のコンサル会社に入られて、戦略・不動産・士業向けの3つのチームを回ってこられたんですよね?その中で、最終的に今の賃貸管理の仕事に腰を据えようと思ったきっかけを、改めて教えてもらえますか。

梶社長

大学を卒業して入ったそのコンサル会社では、100〜200くらいの業種を支援していました。おっしゃるとおり最初の数年は、その3つのチームを行ったり来たりしながら経験を積んでいました。一つは上場企業を相手にする戦略チーム。もう一つが、今の仕事にもつながっている賃貸・不動産の領域。最後が、弁護士や会計士などの士業の先生を支援するチームです。その3つを経験したうえで、最終的に僕は賃貸のコンサルを選んで、10年ほどやっていましたね。

編集部

その中で、あえて賃貸を選ばれた理由が気になります。

梶社長

不動産の中でも、建売や売買、土地活用など、いろいろなジャンルがあります。その中で賃貸管理が一番おもしろいと感じたんです。日本の資産家の多くは、不動産を通じて資産を持っています。その資産を日々守っているのが、賃貸管理会社なんですね。

編集部

たしかに。入居者としてはあまり意識していませんが、その裏側には大きなお金の流れがありますよね。

梶社長

そうなんです。日本には約1万社の賃貸管理会社があって、約34兆円規模の不動産資産、約300万人くらいの家主さんを日々フォローしています。アメリカでいうと、ファンドマネージャーやファミリーオフィスが担っているような役割を、日本では管理会社が担っているイメージですね。

編集部

それだけ聞くと、すごく重要でカッコいい仕事に聞こえます。

梶社長

でも現場は、いわゆる「3K」と言われるくらい、地味で大変な仕事だと思われがちです。新卒採用も少ないですし、収入も決して高くない。それなのに、やっていることは資産家の方の資産を守り、増やしていく仕事なんです。このギャップに、強いおもしろさと課題意識を持ちました

編集部

目立たないけれど重要な仕事、という感じですね。梶社長がおっしゃるように、弊社の人材サービスにご相談に来られる若い方で、「賃貸管理の業界にキャリアチェンジしたい」とはっきり言う人は正直多くありません。そんな中で、梶社長は逆にその部分に「おもしろさ」を感じてこられたわけですね。

梶社長

はい。20代でこれを知ると、「自分の仕事が社会とどうつながるか」を考える視点が変わると思います。僕自身も、管理会社を通じて資産家の方を応援したいという気持ちが強くなり、そこから今の事業につながっていきました。

大きな資産を支えるのに、現場はアナログすぎた

編集部

10年間コンサルとして現場を見てきて、どんな課題が見えてきたのでしょうか。そこが、今のプロダクトの原点になっていそうだなと思いまして。

梶社長

一番大きかったのは、「これだけの資産を預かっているのに、意思決定の多くが感覚に頼っている」ということでした。たとえば空室が埋まらないときに、「なんとなく家賃を下げましょう」「なんとなくリフォームしましょう」といった話になりがちなんです。

編集部

うーん。そう感覚的に言われても、オーナーさんからすると、すごく大きな投資の判断ですよね。

梶社長

そうなんです。本来であれば、周辺相場や設備の状況、ターゲット層のニーズなどをきちんとデータで見てから判断したい。でも、管理会社さんの多くはITやSaaSへのリテラシーが高くなくて、「お金を払ってシステムを入れる」という発想自体に抵抗があるケースも少なくありません。

編集部

たしかに、不動産業界は「紙と電話とFAX」のイメージがあります。

梶社長

昔に比べると、だいぶ良くはなってきています。ただ、まだまだ「自分の経験でなんとかする」というカルチャーが強いのも事実です。そこにテクノロジーをどう入れていくか、ずっと考えてきたテーマでした。

編集部

目の前のお客さま対応で手がいっぱいになってしまうと、新しいツールを覚える余裕もなくなってしまいますよね。

梶社長

そうですね。だからこそ、「現場で本当に役に立つ」「時間を生む」形でプロダクトを作らないと広がらないと思っています。

編集部

これはどの業界でもそうですが、20代のうちから「感覚だけじゃなくて、数字やデータでも話せるようになろう」と意識しておくと、選べる仕事はかなり増えそうですね。

コンサル×DXで空室を埋める。住宅テックラボのプロダクトの裏側

編集部

そこから、住宅テックラボの立ち上げにつながっていったとのことですが。今は具体的にどんなプロダクトを展開されているのか、改めて教えていただけますか?

梶社長

大きくは2つの軸があります。一つは、家主さんの名簿を作る「オーナーサーチ」というサービス。もう一つが、賃料査定と売買価格査定を行う「ちんさてくん」というサービスです。

編集部

まず、「オーナーサーチ」はどんな役割なんでしょう。

梶社長

管理会社さんと家主さんの接点を増やすための名簿づくりですね。誰がどの物件を持っていて、どれくらい接点を持てているのか。ここが見えると、提案の機会がぐっと増えます。

編集部

なるほど。関係を作るための土台、という感じですね。

梶社長

そうです。そのうえで、もう一つの「ちんさてくん」で物件の分析を行います。独自のネットワークのデータも組み合わせて、賃料や設備の相場を出していきます。

編集部

これ、実際の画面を見せていただきましたが、すごいですよね。物件名や住所を入れると、周辺物件の家賃や設備が一気に出てきて…。たとえば私は葛飾区に住んでいるんですが、周囲の同じような広さの物件は大体いくらで、どんな設備がついているのか。だから、私の物件は相場より高いのか安いのか…全部まるっとわかる。

梶社長

ええ。本来であれば、営業の方が何時間もかけて調べ、エクセルでまとめるような作業です。それを数クリックで終わらせて、「エアコンを付けたらどれくらい効果がありそうか」「家賃を何円下げたら決まりやすいか」といった提案まで、レポートとして作成できます。

編集部

おぉ…すごく便利です。それを持ってオーナーさんのところへ行くわけですね。

梶社長

はい。「4〜5ヶ月空いていた物件が、この提案で埋まりました」といった声も管理会社さん経由で届いています。賃料を下げるのか、設備を足すのか。その判断を、感覚ではなくデータで支えられるのが、うちの強みかなと思っています。

編集部

感覚ではなくデータを武器に対話できる営業は、これからどの業界でも求められそうです。20代でこういうツールに触れておくと、キャリアの幅も広がりそうですね。

梶社長

そうですね。今後は、家主さんとの面談や提案内容を管理するSFAツールもリリース予定です。名簿を作って、分析して、提案して、行動量も見える化する。川上から川下まで、管理会社さんの動きをワンストップで支えられるようにしていきたいと思っています。

年齢高めの業界に、若いメンバーがもっと飛び込んでくれたなら

編集部

社内の雰囲気についても伺いたいです。従来、賃貸管理の現場は年齢層が高め、とお聞きしましたが、住宅テックラボさんの中はどんな感じなんでしょう?

梶社長

うちは比較的若いメンバーが多いです。日々顔を合わせるのは、営業やカスタマーサクセスなど、お客さまと接するメンバーが中心ですね。事務所に僕の個室はなくて、みんな同じフロアで仕事をしていますよ。

編集部

管理会社の世界に、若い人がどんどん入っていくイメージですね。

梶社長

そうなんです。彼らはそもそも「管理会社って何をしているんですか?」というところから入ってきます。「そんなにすごいことをやっていたんですね」と驚きながら、この業界の見方が変わっていく。その姿を見るのは、やっぱりうれしいですね。

編集部

未経験で入って、そこから業界への見方が変わっていくんですね。そうやって現場を知っていくメンバーがいる一方で、プロダクトを作るエンジニアの方々は、また少し雰囲気が違うのでしょうか。

梶社長

エンジニアは経験者を採用しているので、年齢も少し高めです。ただ、プロダクトを作るエンジニアと、お客さまの声を持ってくる営業・カスタマーサクセスが、フラットに意見を交わしているのがうちの特徴かもしれませんね。

編集部

職種が違っても、同じ目線で話せる空気があるんですね。そういう距離感だと、プロダクトも現場も一緒に育っていきそうです。

梶社長

はい。管理会社さんは現場のプロで、うちは業績アップのプロ。その二つが組み合わさることで、はじめて価値が出ると思っています。

未経験、大歓迎。求めているのは「主体的に動ける人」

編集部

先ほど、営業やカスタマーサクセスは未経験の方もおられるとのお話を伺いましたが、未経験OKにしている理由は、どこにあるのでしょう。なんとなく、業種的には経験者優遇のイメージがあったのですが。

梶社長

はい、未経験大歓迎ですよ。何もわからない人にこそ、この業界の可能性を知ってほしいという思いです。日本の資産を守る重要な役割を担っていくこと…そこに興味を持って飛び込んでくれるのは、単純にうれしいですね。

編集部

ただ、「未経験OK」と書くと、応募もかなり幅広くなりますよね。その中で、どういう軸で選んでいるのでしょうか?

梶社長

いちばん重視しているのは主体性です。ベンチャー企業なので、「指示がないと動けません」「マニュアルがないと不安です」というタイプだと、お互いに大変になってしまうと思っています。

編集部

たしかに、変化の速い環境では、自分で動く力が求められますよね。

梶社長

何も指示がないときに、ぼーっとしていました、ではなくて、自分で仕事を探したり、他の人に声をかけたり。そういう動きが自然にできる人と一緒に働きたいですね。

編集部

面接では、どうやってその主体性を見ていくのでしょうか?

梶社長

そうですね、過去の具体的な行動を聞きます。口ではいくらでもうまく話せてしまうので、「どんな経験をしてきて、そこでどんな行動を取ったのか」を細かく聞いていく流れですね。学生さんなら、サークルやアルバイト、ボランティア、インターンなど。社会人なら、今の職場でどんな課題を見つけて、自分からどう動いたのか。そこに主体性が出ると思っています。

編集部

なるほど。じゃあ、これから挑戦したい学生さんや20代の社会人は、「主体性があります」と胸を張るために、どんな行動をしておくと良さそうでしょうか。

梶社長

そうですね。小さなことでいいので、「おもしろそうだな」と感じたら自分から手を挙げてみることです。未知の領域でも、一度足を踏み入れてみる。その小さな一歩の積み重ねが、結果的に大きなキャリアチェンジにつながるんじゃないかなと思います。

編集部

ありがとうございます。最後に、不動産業界や賃貸管理の世界をまだよく知らない20代に向けて、メッセージをいただけますか。

梶社長

賃貸管理の仕事は、「お部屋探しのお手伝い」だけではありません。家主さんという資産家の方の大切な資産を守り、増やすことが仕事です。目に見える派手さはないかもしれませんが、日本の経済の土台を支える仕事でもあります。もし今の仕事に少しモヤモヤしていて、「もっと社会の役に立っている実感がほしい」と思っているなら、一度この世界に目を向けてみてほしいです。業界の可能性を信じて、一緒に変えていこうとしてくれる主体的な方が増えたら、すごくうれしいですね。

編集部

今日は、管理会社が日本の資産を支える存在だという視点と、未経験からでも挑戦できるテック×不動産の可能性を伺えました。自分の仕事や、これから挑戦したい分野がどんな人や資産につながっているのかを一度言葉にしてみると、次に広げたい一歩が少しクリアになるように思います。梶社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

リンク:株式会社住宅テックラボ_採用ページ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

目次