お年寄りの「行きたい」を叶える|株式会社小澤介護サービス・小澤社長の「移動を支える」働き方

給料もキャリアもまだこれからという時期に、親の介護の話がふいに降ってくることがあります。仕事も生活もまだ固まりきっていないからこそ、親をどう支えるか、自分の働き方をどうするかを急に考えないといけなくなります

株式会社小澤介護サービス 代表取締役 小澤怜太さんは、人材紹介会社から介護現場に飛び込み、施設と在宅、両方の介護を経験しました。

そのあと「外に出る楽しみ」にこだわった介護サービスを立ち上げ、ケア付き介護タクシーとレク代行で、お年寄りの外出と日常の笑顔を支えています。

今回は、介護の仕事に興味がある人はもちろん、「人の役に立つ実感がほしい」20代が、自分の一歩を考えるきっかけになるお話を、小澤社長に伺いました。

お話を伺った人

株式会社小澤介護サービス

小澤怜太 代表取締役 兼 桶川営業所 所長 

人材紹介会社で医療・介護分野の営業を経験したのち、介護業界へ転身。施設介護と在宅ヘルパーの両方で高齢者と向き合った経験をもとに、ケアと移動を一体で支える「ケア付き介護タクシー」を立ち上げる。思い出の場所や家族との時間など、「外に出る楽しみ」を届けることを大切にし、レクリエーション企画を行う「レク代行」も展開。資格取得を支援しながら、素直さとチームワークを軸にした働きやすい職場づくりにも力を入れている。

目次

介護未経験から現場に飛び込み起業を決めるまで

編集部

小澤社長が今の事業にたどり着くまでのことから伺いたいのですが、聞くところによると、小澤社長は最初から介護職を目指していたわけではないんですよね?

小澤社長

そうですね。最初は人材紹介の会社で働いていました。医療や介護の業界で、看護師さんなどを病院や施設に紹介する仕事です。ベンチャーで、創業して数年くらいの小さな会社でした。

編集部

その中で、介護の世界と出会ったわけですね。

小澤社長

はい。営業で病院や介護施設に行くたびに、中を見せてもらえる機会が多くて。「こういう場所なんだ」と現場を何度も見ているうちに、介護の仕事がすごく面白そうだと感じるようになりました。

編集部

そこから、なぜ起業しようと思ったんですか?

小澤社長

会社でも「新規事業をやるかもしれない」という話があったのですが、だんだん自分で動いたほうがいいかもしれないと感じて…。だったら、いっそ全部自分でやってみようと考えて、退職を決めて。そこからのスタートですね。

編集部

とはいえ、その時点では介護現場の経験はゼロですよね?いきなり事業を始めるのはハードな気も…。

小澤社長

そうなんです。介護の経験が全くなかったので、まずは老人ホームに入り、施設での介護を経験しました。期間は一年弱くらいですね。

編集部

おぉ…いきなり現場に飛び込んだんですね。

小澤社長

介護には大きく「施設」と「在宅」がありますよね。施設だけだと片方しか知らないことになるので、そのあとにご自宅に伺うホームヘルパーの仕事も経験しました。施設と在宅の両方を見てから、今の会社を立ち上げたという流れですね。

編集部

「まずは現場に入ってみる」という姿勢はすごく参考になります。頭で考えるより、一度飛び込んでみることで、自分に合う仕事の感覚がつかめますよね。

外に出たい気持ちをかなえるケア付き介護タクシー

編集部

御社のサービスである「ケア付き介護タクシー」は、一体どのような流れで立ち上げに至ったのでしょう?

小澤社長

きっかけは、最初に働いた施設で感じた違和感でした。お年寄りの方は、外に出る機会が本当に少ないんです。ご家族がいる方は、家族が病院に連れて行くタイミングで外に出られます。でも、ご家族がいなかったり、遠方にいたりすると、なかなか外に出られない。

編集部

たしかに、施設の中だけだと、どうしても景色が変わらないですよね。

小澤社長

そうなんです。でも、施設の職員が付き添って病院に行くと、雰囲気がガラッと変わるんですよ。表情が明るくなって、すごく楽しそうにされる方も多い。そこで、「外に出る機会が増えれば、ストレスも減るのでは」と感じました。

編集部

外に出ること自体が、すでにケアになっているイメージですね。

小澤社長

ただ、現実的には、ヘルパーと車いすで送迎する介護タクシーを別々に手配すると、どうしても費用が高くなります。そこを一人のスタッフが両方を担えたら、もっと気軽に外出を楽しんでもらえるのではないか。それが「ケア付き介護タクシー」という発想につながりました。

編集部

介護のプロが運転もケアもしてくれるから、安心して外出できるわけですね。

小澤社長

そうですね。料金はケア付き介護タクシーは一時間5,500円、GRECは一時間7,500円で、一台の車に最大10人くらいまで乗れます。ゲートボール仲間やお茶仲間など、みなさんで一緒に出かけると、かなり手軽な値段で外出できます。

編集部

お年寄りの方にとっては「外に行ける自由」が増えますし、この仕事に関わる人にとっても、「人の楽しみをつくる仕事」に直接関われるのが魅力ですね。自分の行動がその日の笑顔に直結する感覚は、大きなやりがいになりそうです。

レク代行と『外に出る楽しみ』が生まれる瞬間

編集部

ケア付き介護タクシーに加えて、レク代行というサービスもやられていますよね。これは、どんな思いから始めたのでしょうか?

小澤社長

最初はケア付き介護タクシーだけだったんです。ただ、大きな車を一台導入した際、その車をもっと有効に使いたいと考えました。そこで生まれたのが、レクリエーションを企画して外出をサポートする「レク代行」です。

編集部

現場での経験から、「こういうサービスがあったらいいのに」と感じたところを形にしていった。まさに「かゆいところに手が届く」ようなサービスですね。

小澤社長

そうですね。お年寄りの方は、昔よく行っていた場所や、思い出のあるお店などに行くと、本当にうれしそうな表情をされます。「昔のことはよく覚えている」という方も多いので、過去の好きだったことに少しでもつながる場所を一緒に探すようにしています。

編集部

人生の変化を感じる瞬間を、実際に見たこともありますか?

小澤社長

印象に残っているのは、介護老人保健施設に入所されていた方のエピソードです。その方は、転倒が原因で頭を打ち、後遺症もあって、しばらく施設で生活されていたのですが、ご家族から「一度家に連れて帰って、みんなで食事をしたい」と依頼を受けて、ご自宅までお連れしたんです。

編集部

ご家族みんなで食卓を囲む時間ですね。

小澤社長

はい。私も付き添いをさせていただきまして、ご自宅では、奥さんの手料理を食べたり、ご家族とゆっくり過ごされていました。そのとき、娘さんがスマートフォンで写真を撮られました。しばらく前は顔つきが変わってしまっていて、顔認証の機能でうまく「お父さん」と認識されなかったらしいのですが、その日撮った写真ではしっかり認識された、と聞きました。

編集部

すごい話ですね…。

小澤社長

医学的なことは私にはわかりませんが、家族とのつながりを強く感じる時間を過ごすことで、「自分を取り戻すような変化」が表情にも出るのかなと思いました。そういう場面に立ち会えるのは、この仕事ならではだと感じます。

編集部

本当に印象的な話です…。こういうエピソードを聞くと、キャリアチェンジの際には「誰かの人生のワンシーンに関われる仕事」を軸に考えてみるのも大事だと感じますね…。

現場で支え合う働き方と「素直さ」のチームづくり

編集部

小澤介護サービスさんのサイトを拝見したとき、「従業員個人の能力が最大限に発揮される会社を作りたい」というメッセージが印象的でした。実際の現場のお話も伺いたいです。

小澤社長

まず、うちで働いているスタッフは、みんな介護の資格を持っています。それに加えて、運転するための二種免許も必要なので、その取得もお願いしています。

編集部

介護と運転、両方のプロフェッショナルなんですね。

小澤社長

そうですね。ただ、うちのサービスは介護保険ではなく、すべて自費のサービスです。それでも、一対一でしっかり介助する場面が多く、ホームヘルパーに近いレベルのスキルは必要だと考えています。そこで、会社として「この資格までは持っておこう」と基準を決めている形です。

編集部

そうなんですね。ちなみに、資格を持っていない人が入社してから取るケースもあるんですか?

小澤社長

ありますね。介護の資格はあるけれど二種免許がない人、逆に二種免許はあるけれど介護の資格がない人、両方のパターンがありました。その場合は、会社が資格取得の費用を負担してサポートしています。

編集部

未経験でも、学びながら現場に入れる環境なんですね。

小澤社長

はい。会社の規模はそこまで大きくないので、何かあればすぐに話せる雰囲気があります。トラブルがあったときも、誰かを責めるのではなく、「なぜ起きたのか」「次はどうすれば防げるか」をみんなで共有して考えるようにしています。

編集部

ミスを共有しやすい空気は、働く側にとってすごく安心ですね。

小澤社長

ありがたいことに、ケアマネージャーさんなどから「いつも安心してお願いできます」と言っていただくことも多いです。それは、現場で働くスタッフが、しっかりコミュニケーションをとってくれているおかげだと思います。

編集部

ミスを隠す空気より、みんなで改善していけるチームのほうが、長く働きやすいですよね。

20代に伝えたい介護のキャリアと最初の一歩

編集部

ここまでお話を聞いて、「未経験でも介護の仕事に挑戦してみたい」と思った読者も多いはずです。小澤社長が採用の場で「一緒に働きたい」と感じるのは、どんな人でしょうか。

小澤社長

一番大事なのは、やはり素直さだと思います。未経験であればなおさらです。何かミスがあったときに、それを素直に振り返って、受け止めて、次に生かせるかどうか。そういう姿勢がある方は、どんどん成長していきます。

編集部

たしかに、「怒られるかどうか」より「ちゃんと良くしていこう」と思えるかどうかが大事ですね。

小澤社長

そうですね。あとは、人の感情の変化に目を向けられるかどうかも、介護の現場では大切です。「今、この人は楽しいのか」「寂しいのか」「不安なのか」と想像しながら関わることで、たとえ正解がわからなくても、「自分のことを考えてくれている」と感じてもらえると思います。

編集部

介護の仕事は「正解が一つではない」とよく言われますよね。

小澤社長

はい。はっきりした答えがない場面も多いです。だからこそ、「これが絶対に正しい」と決めつけすぎないことも必要です。少し曖昧なところも受け止めながら、その場のベストを探していくようなイメージですね。

編集部

その姿勢は、どんな仕事でも評価されそうです。AIやマニュアルだけでは決めきれないグレーゾーンで、相手の気持ちを想像しながら動ける人は、これからの仕事でも強くなれそうです。

小澤社長

それと、介護の仕事は、その人が今まで生きてきた経験そのものが強みになります。出身地が同じだっただけで盛り上がったり、家族の話で共感してもらえたり。若い方でも、これまでの人生で積み重ねてきたものを、そのまま現場で生かせる仕事だと思います。

編集部

自分の「過去」がそのまま誰かの笑顔につながるって、すごいことですよね。

小澤社長

はい。だから、介護に興味がある方には、あまり構えすぎずに一歩踏み出してみてほしいです。完璧な人である必要はありません。素直さと、人を思いやる気持ちさえあれば、経験はあとからいくらでも積んでいけます。

編集部

「人の役に立つ実感のある仕事」を経験しておくと、その後どんなキャリアを選んでも、きっと自信になりますよね。今日はとくに「外に出る楽しみをつくること」「失敗を素直に共有してチームで直していくこと」という考え方が、とても心に残りました。小澤社長、今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

リンク:株式会社小澤介護サービス_採用ページ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

目次