「行動が伴ってこそ、その先に成長がある」株式会社S-CADE 山口社長に聞く「測る→動く」成長ルール

社会人になって「成長したい」「評価されたい」と考えながらも、どこを目指してどれくらい頑張ればいいのかわからず、なんとなく忙しく働いている…。そんな20代も多いのではないでしょうか。

サッカーとウェイトリフティングの選手として全国の舞台も経験し、大学・大学院ではトレーニングや測定の研究に取り組んできた株式会社S-CADE 山口翔大さんは、今は「インビジブル測定」の事業を進めながら、現場と研究をつなぐ役割を担っています。

今回はそんな山口社長に、成長のゴールの決め方や数字との付き合い方今日から仕事や生活に足せる具体的な行動を伺いました。

お話を伺った人

株式会社S-CADE

山口 翔大 代表取締役 / CEO

サッカーとウェイトリフティングの選手として全国大会を経験後、大学・大学院で筋肉ダメージやトレーニングの研究に取り組んできたスポーツ科学者。現在は慶應義塾大学特任助教として研究を続けながら、株式会社S-CADEの代表としてフィジカル測定技術とトレーニング支援、機器開発を組み合わせたサービスを展開。「成長したいと願うすべての人」をアスリートととらえ、年齢や立場にかかわらず、一人ひとりの挑戦を科学的に支える仕組みづくりに取り組んでいる。

目次

アスリートから研究者へ。現場と研究をつなぐキャリア選択

編集部

山口社長はサッカー、そしてウェイトリフティングのご経験があるとうかがいました。当時のことも含めて、その経験が今のお仕事につながる原点になった流れを教えてください。

山口社長

はい。長野県で子どものころからサッカーを続け、高校ではウェイトリフティングに転身して全国大会にも出ました。その後、大学は順天堂大学に進学し、スポーツ・健康科学を専攻しました。

編集部

プレーヤーとしての経験がかなり長いんですね。そこから、今の「サポートする側」に回ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう。

山口社長

順天堂大学では、いわゆるスポーツトレーナーやストレングスコーチのように、選手の体を鍛えたり、コンディションを整えたり、リハビリを支える勉強をしていました。自分がプレーするだけでなく、「どう支えたら選手が伸びるか」を考えるのが面白くなっていったんです。

編集部

そこから早稲田大学の大学院に進まれて、研究の道も選ばれたんですよね。

山口社長

そうですね。現場だけでなく、きちんと「確かめた数字」を使って選手を支えたいと思ったので、トレーニングや測定の研究を続けました。その流れで、慶應義塾大学でも特任助教として研究に関わっています。

編集部

プレー、指導、研究。スポーツの周りを一周しているようなキャリアですね。

山口社長

おかげさまで、現場の汗も、論文の世界も、どちらも知ることができました。その中で、「研究と現場のあいだ」をつなぐ仕事を自分で作りたいと思うようになったのが、今の事業の根っこです。

編集部

研究と現場の両方を知っている人は、社会でも貴重ですよね。若いビジネスパーソンも「どの立場から現場を支えたいか」を考えておくと、キャリアの選び方が変わりそうです。

「成長したい」で終わらせない。自分で決めるゴールと基準

編集部

山口社長は、研究と現場のギャップを強く感じてこられたそうですね。具体的にはどんな違和感があったのでしょうか。

山口社長

研究ではここまでわかっているのに、現場ではここまでしかできていない。そう感じる場面が多かったんです。「現場の人は研究を知らないからだ」と片づけることもできますが、僕はそれを受け入れたくなくて。

編集部

というと?

山口社長

知らないからできない、というより「できる環境がない」んです。指導者は練習を見なきゃいけないし、測定をやろうとすると一日時間を取られる。手順書やマニュアルも作らないといけない。やりたい気持ちはあっても、物理的に回らないんですよね。

編集部

前向きなのに、仕組みがないから動けない状態ですね。

山口社長

そうです。だからこそ、研究の知識を「現場で使える形」に変える人が必要だと思いました。それが、自分の役割だと感じています。

編集部

その考え方は、仕事で「成長したい」と思う20代にも通じますね。環境のせいにする前に、自分がどう変わりたいか言葉にする必要がありそうです。

山口社長

まさにそこですね。僕にとって「成長」とは、昨日の自分より、半年前の自分より、「何か一つできることが増える」ことです。ポジティブな変化が起きているかどうか。それだけだと思います。

編集部

シンプルだけど、厳しい定義ですね。

山口社長

よく高校生の部活指導でも言うんです。「成長したい」はスタート地点にすぎません。全国に行きたいのか、地区大会で入賞できればいいのか。それによって、トレーニングの強さも量も、かける言葉も全部変わります。

編集部

ゴールがあいまいなまま「成長したい」と言ってしまうと、本人が一番しんどくなりそうです。

山口社長

そうなんです。目標がぼんやりしていると、自分で自分を苦しめます。「成長できなかった」と言うけれど、そもそも何を基準にそう思ったのかがあいまいだったりして。そこをはっきりさせることが、一番のスタートだと思います。

編集部

仕事でも、「成長できる環境に行きたい」と言う人は多いです。まずは自分のゴールと基準を決めることが、キャリアづくりには欠かせないですね。

“測るだけ”では意味がない。行動までつなげる考え方

編集部

今の山口社長のお仕事は、研究や開発、経営、そして現場での指導など、本当に幅広いですよね。

山口社長

そうですね。慶應での勤務も続けながら、トレーニング指導もしていて、全国の現場を飛び回っています。正直、週7で1日13〜14時間働く日もあります

編集部

数字だけ聞くと心配になります…。一体どうやって体調を保っているんですか?

山口社長

支えてくれる人たちがいるからですね。家族や社員が「今日も頑張ったね」と言ってくれるだけで、かなり救われます。それに、自分自身も健康にはかなり気を使っています。

編集部

具体的にはどんなことをされているんでしょう?

山口社長

たとえば、1日10分だけでも走るようにしています。ダイエットのため、というより、精神的にも肉体的にも整えるためですね。「今日も少しだけ頑張れた」という自己肯定感が一番のリターンです。

編集部

たしかに、運動すると「今日もやったぞ」という気持ちになります。

山口社長

ダイエット目的だけで運動を考えると、だいたい絶望します。脂肪1キロ落とすには約7700キロカロリーが必要と言われていますから、「あと何キロ走ればいいの…」となってしまう。結果として続きません。

編集部

耳が痛い話です…。

山口社長

だから僕は、「結果として痩せたらラッキー」くらいでいいと思っています。それより、日々の達成感や、よく眠れる感覚を大事にしてほしい健康の土台ができると、仕事で踏ん張る力も上がります

編集部

小さな運動習慣を「自己肯定感のスイッチ」にする考え方は、忙しい社会人にもそのまま使えそうです。

山口社長

仕事も同じで、測るだけで終わったら意味がありません。体のデータも、仕事の数字も、「測る→どう受け取る→どう変えるか」までセットで考えないと、人も組織も変わらないと思っています。

編集部

そうですよね…。数字を見るだけで満足してしまいがちですが、その先の行動までセットで考えるクセをつけたいですね。

毎日の動きの中で測る。インビジブル測定が目指す未来

編集部

ここからは、事業としてのチャレンジについて教えてください。測定機器の開発では、どんな未来を目指しているのでしょうか?

山口社長

僕が大事にしているのは「インビジブル測定」です。インビジブル、つまり「目に見えない測定」です。測ろうとしていないのに、ちゃんと測れている状態ですね。

編集部

目に見えない測定…。具体的には、どんなイメージでしょう?

山口社長

たとえば、玄関マット。毎日そこを踏むだけで、体重やバランス、もしかしたら心拍数までわかるとしたらどうでしょう。わざわざ「測りに行く」必要がなくなりますよね。

編集部

たしかに、スマホの歩数計や、睡眠を測る指輪なんかも、つけっぱなしでデータを取り続けてくれますよね。

山口社長

そうです。あの感覚をスポーツや仕事の世界にも広げたいんです。今の測定機器は、まだ「測りに行くもの」が多い。これを、生活動線や練習動線の中に自然に埋め込んでいきたいと思っています。

編集部

たしかに、当たり前ですけど、体重を量るには体重計に乗らないといけないですしね。面倒で続かない、という人も多そうです。

山口社長

さらに、そのデータをどう返すかも重要です。測定して終わりではなく、「だから今日はこう動こう」とか「この一週間はこう変えよう」と思える形にしないと、行動は変わりません。

編集部

まさに、PDCAの「D」の部分を支える設計ですね。

山口社長

はい。そして、これは地域間格差を埋める力にもなると考えています。僕は長野県出身ですが、東京に出るまで、今いる慶應の名前すら知りませんでした。それくらい情報差が大きかったんです。

編集部

地方にいると、そもそも「どんな選択肢があるか」自体を知らないことも多いですよね。

山口社長

そうなんです。だからこそ、どこにいても同じレベルのサポートを受けられる世界を作りたいんです。今はAIなどの技術も発達しているので、地方の若い選手や社会人も都市部と変わらず挑戦できるようにしたいと思っています。

「成長したい」「評価されたい」を行動に変えるには

編集部

ここまでのお話を聞いていると、山口社長は、かなりストイックに向き合ってこられた印象があります。そんな中で、「成長したい」「評価されたい」と話す20代の方を見ていて、どんな印象を受けますか?

山口社長

正直に言うと、「甘いな」と感じることはありますね。もちろん全員ではないですが、「成長したい」「評価されたい」と言いながら、行動がそれに追いついていないケースは多いです。

編集部

耳が痛い20代も多そうです…。でも、なんとなくわかる気がします。「モテたいモテたいと言いながら、毎日ハンバーガーを食べる人」みたいなイメージですよね。

山口社長

そうですね。気持ちはわかるけど、「じゃあ何をやめて、何を始めるのか」まで考えないと、現実は変わりませんよね。

編集部

たしかに、「何者かになりたい」と言うだけでは、何も変わらないですね。

山口社長

そうなんです。何者かになりたいなら、まず「どんな人生を送りたいか」を決める必要があります。そのうえで、「だから今は、このレベルまで努力する」と自分で決める。それを言語化できていないのに、大きな成果だけを求めるのは、正直甘いと思います。

編集部

評価する側から見ると、そのあたりはどう映るのでしょうか。

山口社長

評価する側は、だいたい死ぬほど努力してきた人たちです。だから、努力していない人間のことはすぐにわかります。「認めてほしい」と言う前に、「自分はどれだけやったか」を冷静に見ることが大事ですね。

編集部

厳しいけれど、すごく現実的なお話です。

山口社長

とはいえ、いきなり完璧を目指す必要はありません。今日からできることを一つ決めればいいと思います。たとえば、「毎日10分だけ走る」「週1回は仕事の振り返りを書く」でも十分です。そういう小さな行動を積み重ねた人が、振り返ったときに一番変わっているはずです。

編集部

今日のお話を聞いて、「成長したい」を口ぐせで終わらせないことの大事さを強く感じました。まずは、自分で決めた行動を一つ、仕事や生活の中に足してみるところから始めたいですね。山口社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

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