プロジェクトの成否は、施策でも技術でも決まらない|株式会社Massive Act 高萩社長が語る「何より“人”を優先してDXを進める理由」

DXやデジタルの仕事に関心を持つ20代は、ここ数年で一気に増えています。ただ、「毎日どんな仕事をしていて、どんな力が身につくのか」は、まだイメージしづらいという声も少なくありません。なんとなく華やかな印象はあるものの、実際の働き方までは見えにくい領域です。
そうした現場のど真ん中で、企業の中身からの変化を支えているのが、株式会社Massive Act代表取締役の高萩さんです。広告代理店、外資系コンサル、起業の成功と挫折を経て、「人を起点にしたDX支援」というスタイルにたどり着きました。
今回は、高萩社長に、DXの仕事のリアルと、20代がキャリアを歩むうえで、どのように力をつけていけばよいのかを伺いました。
株式会社Massive Act
代表取締役 高萩 遼介
大手デジタルエージェンシーでキャリアを開始し、外資系コンサルにてDX・組織改革・デジタルマーケティング支援のPMを歴任。その後デジタルエージェンシーを起業し、2017年にMassive Actを設立。データ活用と顧客戦略を軸に「再現性あるDX」を推進しつつ、メンバードリブン経営による組織づくりにも力を入れる。一般社団法人日本デジタル・アドバイザリー戦略協議会(JDACs)代表理事。
クライアントの中身から変えるDX支援の仕事

編集部御社の「ツール導入で終わらせない、本質的な変革支援」というワードがすごく気になりました。一言で言うと、Massive Actはどんなスタイルで企業の変革を支援している会社なんでしょうか?



一言で言うと、「クライアント企業の中身から変えるDX支援」です。ツールを入れて終わりではなく、事業の組み立てや、お客様との向き合い方、データの使い方まで、一緒に作り直していきます。



いわゆる「システムを入れて効率化しましょう」とは、かなり違いますね。



そうですね。表面だけを変えるのではなく、事業の仕組みや、顧客体験の流れを見直します。そこから、どんなデータを集めて、どう活かすか。実際に現場で回る形まで作り込むのが、うちの仕事です。課題の本当の姿をつかんで、あるべき状態を一緒に描いて、それをきちんと会社の中で動く仕組みにしていく。時間はかかりますが、実際に成果が出たときの手応えは大きいですね。



一部だけを担当するというより、戦略から現場のオペレーションまで全部をつなぐ“ハブ”みたいな役割なんですね。関わる範囲もかなり広いですよね。



はい。戦略の設計から、計画づくり、実行の管理、データ分析、現場の動き方の改善まで、全部をまたぎます。なので、企画力や「話を整理する力」、コミュニケーション力など、いろいろな力が横断的に鍛えられます。



逆に、難しさを感じる場面はどこでしょうか?



いちばん大きいのは、「定着させること」です。DXは、やって終わりではありません。これまでの慣習・やり方や、部門ごとの利害とぶつかることも多いです。その中で、経営層と現場、複数の部署の間に立ち、少しずつ合意を取りながら進めていく。ここがとても難しいけれど、腕の見せどころでもあります。



合理性だけでは動かない、ということですね。



はい。正論だけではうまくいきません。「この人は何を心配しているか」「どこがネックになっているか」を丁寧に見ていく必要があります。そのうえで、最新のテクノロジーやユーザーの動き方もキャッチアップし、うまく組み合わせていく。そんな柔らかさも求められます。
インターネット広告からコンサルへ進んだ理由





高萩社長が今のお仕事にたどり着くまでには、どんなキャリアの流れがあったのでしょうか?



原点は、インターネット広告の始まりの頃に働いたデジタルエージェンシーです。大学卒業後、急成長していた大手代理店に入りました。当時はWeb広告のやり方も固まっていなくて、毎日、仮説を立てては試し、失敗しては直す、のくり返しでした。



まさに“なんでもやる”時代ですね。



そうですね。とても泥くさいし、人に頼る部分も多かったですが、その中で実行力や、変化を怖がらない姿勢が鍛えられました。ありがたいことに、社内の賞をいただいたり、長い期間、目標達成を続けることもできました。



それでも、「このままでは足りない」と感じたポイントがあったんですよね。



はい。広告の世界では、「どう見せるか」という手段を磨いていきます。ただ、続けるうちに「手段だけを整えても、会社の根っこの課題は変わらないな」という感覚が強くなりました。もっと上流、意思決定の段階から関わらないと、本当に変えることはできないと感じたんです。



そこで、コンサルティングファームへの転職を選ばれたんですね。



そうです。DXの戦略や、組織をどう変えていくか、といった中長期のテーマに取り組むようになりました。そこで痛感したのが、「正しい戦略があっても、人が動かなければ何も変わらない」という事実です。



広告時代のスピード感と、コンサルで身についた俯瞰的な視点。その両方が今につながっているんですね。



はい。若い頃に身につけた「まずやってみる」という実行力に、戦略を組み立てる精度や、全体を俯瞰して見る視点が重なりました。この二つの軸を持てたことは、今の仕事の大きな土台になっています。



20代のうちは、「まず量をこなす現場」と「一段上から考える場所」を、どちらも経験しておくと、キャリアの選択肢が広がりそうですね。
起業の成功と挫折が教えてくれた「人を起点にした経営」





その後、デジタルエージェンシーを立ち上げられたと伺いました。



はい。短期間で事業を立ち上げることができ、数字のうえでは順調に伸びました。ただ、当時の私は、利益を優先しすぎていました。メンバーの想いや、これからのキャリアに十分向き合えていなかったんです。その結果として、最終的に組織は崩れてしまいました。



それは、かなりつらい経験ですよね…。



「信頼が揺らいだ組織は続かない」ということを、身をもって知りました。事業の数字が良くても、人が疲れ切っていたり、納得していなかったりすると、長くは持ちません。この痛い経験が、今の経営観をつくったと言っていいと思います。



そこから、Massive Actの立ち上げにつながっていくんですね。



はい。「もう一度、人を大切にする組織をつくる」と決めて、Massive Actを設立しました。利益だけを追う考えは、徹底的に手放しました。その代わりに、「メンバードリブン経営」という考え方を軸にしました。



メンバードリブン経営。どんなイメージでしょうか。



簡単に言うと、「仲間やパートナーの幸せと成長を出発点にする経営」です。一人ひとりが納得して、健やかに働ける状態をつくる。それが結果として会社の成長につながり、クライアントの変革も後押しする。そういう良い循環をつくりたいと考えています。



制度面でも、かなり意識して設計されているとか。



コンサル業界は、長時間労働になりやすいです。そこに流されないように、創業時からルールを決めました。みなし残業はつくらない、残業代は1分単位でちゃんと支払う、勤怠をしっかり管理する。当たり前のことですが、ここを最初に固めました。
AIとデータで意思決定を支える、これからのDX



最近は、AIやデータ活用の取り組みも進めていらっしゃいますよね。



はい。2025年に、DXやデジタル戦略を第三者の目でレビューする機関を立ち上げました。「一般社団法人 日本デジタル・アドバイザリー戦略協議会(JDACs)」という団体です。そこで代表理事を務めています。



DXの内容を、外からチェックしてもらえる仕組みなんですね。



そうです。企業側だけでは気づきにくい点も、専門家の目で見ればわかることがあります。そこを支えるための場です。



AIの仕組みも開発されているとか。



はい。企業が持つデータや知識、意思決定のプロセスをつなぎ、「成果を出しやすい状態」をつくるためのAIの仕組みを開発しています。「MACT INTELLIGENCE™」という考え方と、データの質や整合性を多方面から評価する「DDIM™」というモデルです。いま、特許の準備も進めています。



単に“すごいAI”を作るのではなく、「どう決めるか」を支えるための技術なんですね。



そうですね。データの形や、原因と結果のつながり、予測の精度を横断して見ていきます。そのうえで、企業ごとに合った“決め方”を標準化し、高度化していくことを目指しています。



聞けば聞くほどすごいですね…!



DXの現場って、どうしてもスピードやテクノロジーの話に寄りがちなんですけど、結局は人と組織が動かなければ変革は進まないんです。だからこそ、人の想いに向き合いながら、データやAIで意思決定を支える役割を担いたいと思っています。
誠実に自分のレベルを上げ続けられる人へ





ここまでのお話を聞いていると、「人とテクノロジーの間に立ってDXを進める仕事」だからこそ、一緒に走る仲間にも大事にしてほしいスタンスがありそうだと感じました。高萩社長がMassive Actで特に一緒に働きたいのは、どんな人でしょうか。



一番大事なのは、「誠実さ」と「周りへの敬意」です。立場や役割に関わらず、相手を尊重できる人。陰で不満を言うより、ちゃんと対話を選べる人と働きたいと思っています。



スキルよりも、まずは人としての姿勢なんですね。



そうですね。そのうえで、「自責で考えられる人」も大切です。うまくいかないことを全部環境のせいにするのではなくて、「自分にできることは何か」を考えて動ける人。声が大きい必要はありませんが、自分のアウトプットに責任を持てる人を歓迎しています。



派手さより、コツコツと基準を上げていける人。



そうですね。そのうえで、「自責で考えられる人」も大切です。うまくいかないことを全部環境のせいにするのではなくて、「自分にできることは何か」を考えて動ける人。声が大きい必要はありませんが、自分のアウトプットに責任を持てる人を歓迎しています。



では、DXやデジタルの世界に興味がある20代に向けて、メッセージをお願いします。



仕事は、ロールプレイングゲームに少し似ていると思います。最初は弱い装備で、スライムを相手にレベル上げをするところから始まりますよね。地道ですが、その経験値がないと、強い敵には勝てません。



倒せないボスが出てきたときが、レベルアップのチャンスでもある、と。



そうです。「なんで自分だけ大変なんだ」と考えるのではなく、「今はレベル上げのタイミングなんだな」と捉えてみる。そうすると、少しだけ前向きにがんばれると思います。目の前の仕事に誠実に向き合うことが、気づけば大きな力になっています。



今日のお話を通じて、「キラキラした業界」ではなく「地に足のついたレベル上げの場」としてDXの仕事を捉え直せました。RPGのたとえも含めて、20代が自分のペースで強くなっていくための具体的なヒントをたくさん受け取れたと感じています。高萩社長、本日はどうもありがとうございました。








