イメージした「最悪の未来」を避けて、とにかく動く|init株式会社・ヤマタク社長が語る挫折からの巻き返し術

「このまま今の仕事を続けていていいのか」「頑張っているのに給料もスキルも変わらない」。そんな声が編集部にも日々届きます。
頭では動いたほうがいいとわかっていても、何を変えればいいのか決められず、今日も昨日と同じ一日をくり返してしまう人も…。
キャリアの選択肢に迷う場面でも、「まず動く」を選び続けてきたのが init株式会社 代表取締役の山田卓さん(通称ヤマタクさん)です。宮城の工業大学からIT営業、フリーランスエンジニア、起業、そして2400万円の赤字まで。「嫌な未来だけは避けたい」という軸で、行動を重ねて自分の道を切り開いてきました。
今回はヤマタクさんに、「嫌な未来をはっきりさせて、動き続ける」ための考え方と、明日から試せる一歩の決め方を伺いました。
init株式会社
代表取締役 山田 卓
宮城県出身。工業大学卒業後、上京してIT企業の法人営業としてキャリアをスタート。その後スマホアプリ系SaaS企業でエンジニアに転身し、独学と実務で開発スキルを磨く。フリーランスのアプリエンジニアを経て、26歳でinit株式会社を創業。スマホアプリ開発歴は10年以上。技術顧問として大手企業の支援にも携わりつつ、未経験者向けプログラミング教育事業を通じて次世代エンジニアの育成にも力を入れている。
宮城の大学生がIT営業に。「このままじゃダメだ」と気づくまで
編集部山田社長のキャリアの歩みは、公式note「100日後にスマホアプリエンジニアになる営業マン」を拝読して大体は把握させていただいたのですが、改めて自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか?それと、私もヤマタクさんと呼ばせていただいても良いですか?
【引用】note|100日後にスマホアプリエンジニアになる営業マン



もちろんです。本日はよろしくお願いします。init株式会社で代表をしています、山田卓です。会社でも「ヤマタクさん」と呼ばれることが多いので、読者のみなさんにも、少しでもフラットに受け取ってもらえたらうれしいです。



ありがとうございます。ヤマタクさんは、学生時代からずっと東京にお住まいなわけではないんですよね?



そうなんです。出身は宮城で、大学までずっと宮城でした。地方の、いわゆる普通の工業大学で、特別な実績があるわけでもなくて。卒業と同時に「東京で働いてみたい」と思って、上京しました。最初に入ったのはIT企業ですが、担当は法人営業でした。大学も工業系でしたが、その知識が直接生きるわけでもなく、これといった武器もない状態で、営業からキャリアが始まった形です。



営業としてIT業界を選ばれた理由は、どんなところにあったんでしょうか。



当時は、ITが日本の中でも数少ない「伸びている業界」だったんですよね。これから先も伸びるだろうと考えて、「どうせ働くなら、伸びている場所にいた方がいい」と思って選びました。今で言うAIみたいな、大きな括りで見ていた感じです。



とはいえ、営業時代はうまくいかないことも多かったと、漫画でも描かれていましたよね。



本当にその通りで、全然うまくいかなかったです。同じ部署に同期の営業が一人だけいたんですが、一度も勝てなかったですね。毎月の数字も負け続けて、自己肯定感ががくっと下がっていきました。



そこで、「このままじゃダメだ」と思われたと…。



はい。環境のせいにしても仕方ないんですけど、「一度環境を変えてみよう」と思って転職しました。2社目は、エンジニアとしてスマホアプリ系のSaaS企業です。ただ、環境を変えただけでは、当然勝手にうまくはいきません。



ここまでのお話だけでも、「なんとなく今の仕事を続けている20代」の方には、かなり重ねて見える部分がありそうです。うまくいかない現実と向き合うかどうかが、働き方の分かれ目になりますね。
小学生からのアーチェリーと、社会人の「鼻が折れた」体験



ここから少し、ヤマタクさんが「なぜそこまで高みを目指すのか」という根っこの部分も伺いたいです。正直、日本で今の時代なら、頑張らなくても生きていけるじゃないですか。



そうですね。極端に言えば、頑張らなくても死にはしないと思います。



営業がうまくいかなかったときも、「まあ仕方ないか」で流す選択肢もあったはずなのに、そこからプログラミングを独学して、エンジニアになって、起業までされている。その原動力が気になっていて。



一般的な方と少し違うとしたら、小学生の頃からずっとアーチェリーをやっていたことかもしれません。だいたい12年くらい続けていて、365日のうち5日くらいしか休まないような生活でした。毎晩遅くまで練習していましたね。



かなりストイックですね…。



その結果、運もありましたが、国体で1位や2位になったり、インターハイに出たり、高校時代には日本代表としてアメリカの大会に出たりもしました。「やればできる」という成功体験が、学生時代にはあったんです。



その成功体験があるからこそ、社会に出たときのギャップも大きくなりそうですね。



まさにそうでした。社会人になっても、どこかで「本気で頑張ればトップに行けるだろう」と天狗になっていたんですね。でも現実は、営業数字で同期に一度も勝てない。自分の基準が高い分だけ、余計にしんどかったです。



そのギャップと向き合ったとき、どんなことを感じましたか?



「環境を変えればうまくいくかもしれない」と思って転職しましたが、それだけではダメでした。「自分自身を変えないと意味がない」と、ようやく腹をくくりました。そこで初めて、プライベートの時間を全部勉強に振り切るという決断ができたんだと思います。



学生時代の成功体験も、社会人での挫折も、どちらも今のヤマタクさんを作っているんですね。仕事がうまくいかなくて落ち込んでいる人も、「ここからどう変わるか」で、まだいくらでも巻き返せると感じます。
2400万円の赤字と訴訟。それでも「人への向き合い方」を学んだ



ここからは、起業してからの話も伺わせてください。ヤマタクさんは、フリーランスを経て、かなり早いタイミングで会社を立ち上げられていますよね。



そうですね。2社目でアプリ開発に関わる仕事をしながら、プライベートの時間を全部使ってプログラミングを勉強しました。なんとかポートフォリオを作って、フリーランスのアプリエンジニアになったのが最初の転機です。



そこから、さらに「会社を作ろう」と思ったのはなぜですか?



フリーランスとして1年半ほどやっていく中で、「もっと新しいことをやりたい」と感じたんです。できなかったことができるようになる瞬間が、僕の中での幸せの基準で。エンジニアになれた、フリーランスになれた、その次は「起業したことがないから、起業してみたい」と。



とはいえ、起業後はいきなり順風満帆…というわけではなかったそうですね。



むしろ真逆で、最初の2年半くらいは「めちゃくちゃ」でした。26歳で起業しましたが、開発力も経営の知識もほとんどない状態で、システムの受託開発事業を始めたんですね。その結果、1期目は約2400万円の大赤字。さらに、大きめの訴訟が2件ほど発生して、弁護士さんと一緒に対応することにもなりました。



聞いているだけで胃が痛くなりそうです…。



当時は、本当にしんどかったです。疑心暗鬼にもなって、正直、自殺を考えたぐらい、メンタル的にもかなり落ち込んでいました。倒産した社長の本を読み漁ったりもしましたね。



そこから、どうやって踏みとどまれたのでしょうか…?



3000万〜3500万円くらい借り入れをして、倒産だけは避けました。「借金は背負うけれど、銀行さんなどに迷惑はかけないようにしよう」と決めて、一人社長として少しずつ黒字を出しながら返していった感じです。



かなりハードな経験ですが、その中で得た学びはどんなところにありましたか?



もちろん、知識やスキルが足りなかったというのも大きな要因です。でも今振り返ると、一番足りていなかったのは「人に対する接し方」でした。相手を大事にする気持ちや、リスペクトが欠けていた時期だったと思います。



そこに気づけたのは、大きいですね。



起業の失敗を通して、「相手に真摯に向き合う」「高圧的ではなく丁寧に教える」という姿勢を学べました。これは、その後のスクール事業でも、エンジニア採用でも、すべての土台になっています。
毎晩マックでPCを開く。「習慣から変える」をとことん徹底する



ヤマタクさんのお話を聞いていると、「自分をけっこう追い込むのが好きなタイプなのかな」と感じます。責任をあえて増やしていくような…。



それは、たしかにあると思います。ただ、僕は「大きなことを成し遂げよう」と思って動いているわけではないんです。



と、言いますと?



よくあるのは「起業してバイアウトして、たくさんお金を手に入れたい」という発想だと思うんですが、僕はそういうキラキラした目標はあまりなくて。「人から指示されたくないから、社長になろう」という、もっとシンプルな理由でした。



なるほど。避けたいものが先にある。



そうです。僕の意思決定の軸は「これをやりたい」ではなく「こうなりたくない」です。ホームレスになりたくないとか、ずっとフリーターのまま年を重ねたくないとか。マイナスの未来を想像して、「それを避けるために何をするか」で決めています。



20代の方って、どちらかというと「キラキラした理想の自分」を思い描きがちな気がします。



そうなんですよね。もちろん理想を持つのは良いことですが、「このまま10年たった自分」を具体的にイメージしてみてほしいです。今と同じ年収、同じスキル、同じ働き方のまま30代40代になったとき、それを良しとするかどうか。嫌だと感じるなら、その未来を避ける行動を、今日から始めた方がいい。



ただ、「よし、変わろう」と思っても、最初の一歩で心が折れてしまう人も多いと思うんですよね。そこを乗り越える工夫はありますか?



僕は新しいことを始めるとき、かならず「習慣から変える」と決めています。たとえば営業からエンジニアを目指したときも、最初にやったのは生活のルーティン作りでした。



具体的には、どんなルーティンだったんでしょう。



当時は、毎朝6時に起きて1時間ジムに行く。夜は仕事が終わったら、必ず近くのマックに行く。100円の飲み物を買って、PCを開く。ここまでをセットにして、習慣化しました。



漫画のシーン、そのままですね。



最初から「毎日2時間勉強する」と決めると続かないんですよ。だから、「マックに行って飲み物を買い、PCを開くところまで」をゴールにします。実際、ヘトヘトの日はそのまま1時間寝てしまう日もありました。でも、それでもいい。とにかくその場所に行って、PCを開くまで死守する。



行ってしまえば、何かしらはやりますもんね。



そうなんです。マックに行って、お金を払って、PCを開いた状態になれば、さすがに毎日ずっと寝ているわけにはいかない。少しずつでも、手が動き始めます。行けた日はカレンダーにチェックを付けて、「先週は3日だったから、今週は4日頑張ろう」と見える化する。半年続ければ、自己肯定感がまったく変わります。



「やらざるを得ない環境」を作っているわけですね。こうした地道なルーティンが、集中力や評価を支える土台になると感じます。
「できなかったことができるようになる」と「仲間と喜びを分かち合う」



ここまで、かなりハードなエピソードも伺ってきましたが、今は会社としても落ち着いてきたタイミングですよね。



そうですね。今は従業員が10名を超えるくらいの規模になって、だいぶ会社としての土台も整ってきました。



ヤマタクさんご自身の「幸せの軸」も、少し変化してきたと伺いました。



はい。これまではずっと、「できなかったことができるようになること」が幸せの軸でした。エンジニアになる、フリーランスになる、起業する。全部、「次のステージに行ってみたい」という気持ちで動いてきたんです。



最近は、そこにもう一つ軸が増えた。



そうなんです。「喜びを仲間と分かち合うこと」です。プライベートで言うと、僕は釣りが好きで、仲間を連れてお気に入りのポイントに行って、みんなが魚を釣って喜んでいるのを見るのが、本当にうれしいんですよ。「これ持って帰って、家で食べようぜ」って。



いいですね…。情景が浮かびます。



仕事も同じで、従業員の子たちが昇給したり、希望していた単価に届いたりすると、すごくうれしいです。「社長、ありがとうございます」と言ってもらえるのももちろんですが、「この子たちの頑張りが報われたな」と感じられる瞬間が、今の大きな幸せですね。



従業員の方々の成長や昇給を、自分ごとのように喜べるのは本当に素敵ですね。そうした「仲間と喜びを分かち合える会社」にしていくうえで、今後 initさんとして特に増やしていきたいポジションはどのあたりになりますか?



今は社員の8〜9割がエンジニアですし、今後もエンジニアを中心に増やしていきたいです。僕自身、スマホアプリ開発で10年以上現場に関わってきましたし、技術顧問として大手企業さんの支援をしてきた経験もあります。スマホアプリに強い会社、というイメージを持ってもらえたらうれしいですね。



採用のときに、大事にしているポイントはどんなところでしょう。



スキルはもちろん大事ですが、それ以上に「人を大切にできるか」を見ています。協調性があるか。相手を思いやる言葉づかいや行動ができるか。うちは、そういう人であれば、スキルがそこまで高くなくても受け入れてきました。



技術だけでなく、人としての姿勢を磨くことが、長く働けるキャリアにつながるわけですね。
「頑張りたくない人」へ。後悔との付き合い方を決めておく



最後に、ビギナーズリンクの読者でも多い「頑張りたくない20代」に向けて、なにかヤマタクさんなりのメッセージをいただけたらうれしいです。正直、「頑張ってもうまくいかなかったらどうしよう」と不安に感じて相談に来られる人も多くて…。



そうですよね。まぁ、「頑張りたくない」と思うのは自然な感情だと思います。



一方で、「このまま何もしなかったら、将来後悔しそう」という声もよく聞きます。ヤマタクさんご自身は、ここまでの選択を振り返って、後悔はありますか?



この質問、けっこういろんな方に聞かれるんですけど、後悔はあまりしていないですね。人間って、自己肯定をしていかないと生きていけない生き物だと思っているので、ある意味、ほぼ全人類そうなんじゃないかなと。



たしかに、「あのとき全部間違ってました」とは、なかなか思えないですよね。



そうですね。別の角度で言うと、もし「過去に戻れますけど、どうします?」と聞かれたら、僕は戻らないタイプなんです。



それは、今の記憶やスキルを持ったまま、時間だけ戻せるとしても、ですか?



はい。ゼロリセットでも、今の状態を引き継いでも、どっちでも戻りたくないです。あまりにも今までやってきたアクション量が多すぎて、もう同じことをしたくないんですよね。幼少期から、スーパーハードワークをしてきた自負があるので、「じゃあ同じ熱量で、もう一回やってください」と言われたら、さすがにしんどいなと。



なるほど…。もう一度やり直すには、濃すぎる人生だったと。



そういう感覚はあります。それがイコール、「後悔がない」という表現になるのかもしれないですね。間違いもたくさんありましたけど、それも含めて、ここまでの行動量に対しては納得しているというか。



すごくリアルなお話です。失敗ゼロの人生だから後悔がないのではなく、「やるだけやったから戻りたくない」に近い感覚なんですね。



はい。なので、20代の方に伝えるとしたら、「後悔しない選択肢を探す」より、「あとから振り返ったときに、自分なりに納得できるくらいは動いてみる」が近いかもしれません。完璧じゃなくていいので、「あのときの自分なりに、ちゃんとやった」と言える状態を作っておくイメージです。



たしかに、「正解だったか」より「納得できるか」の方が、自分のキャリアとの付き合い方としては現実的かもしれません。



そう思います。僕もまだ途中ですけど、「全然動かなかった自分」より、「あのときなりに動いた自分」の方が、後から肯定しやすいと思うので。



AIで仕事の形が変わっていく時代でも、「あとから自分で肯定できるくらいは動く」という視点は、ずっと使えそうですね。



そうですね。頑張りたくない日があってもいいので、どこかのタイミングで、「あのときの自分は、あれだけはやった」と言える一歩を残しておく。そういう積み重ねが、後悔との付き合い方を少し楽にしてくれるんじゃないかなと思います。



本当に、その通りだと感じます。今日は「完璧な正解を探すのではなく、自分なりに納得できるくらいは動いておく」という考え方が、とても印象的でした。今やる行動のひとつひとつが、なりたくない未来を避けつつキャリアを作っていけるのだと信じて、私もコツコツと愚直にやっていこうと思います。ヤマタクさん、たくさんの正直なお話と、20代でも明日から意識できるヒントをありがとうございました。









