“住み込み×資格”で育つ10代。命の土台をつくる建築の現場|株式会社ネオクレスト小山社長の育て方

建築の仕事は「体力勝負」「危なそう」というイメージが先に浮かび、気にはなるけれどなかなか踏み出せない方も多いはずです。

けれど、地震の多い日本で私たちの毎日を支えているのは、現場で働く人の技術です。

高校生で建築の世界に飛び込み、今は“住み込みと資格”で若手を育てる株式会社ネオクレストの小山社長に、未経験からでも続けやすい働き方を伺いました。

お話を伺った人

株式会社ネオクレスト

小山 大樹 代表取締役

16歳で建築の世界に入り、住み込みで現場の基礎を習得。18歳で初めて現場を任され、以降は鉄筋工として多くの建物づくりを経験。20歳ごろから立ち上げに関わった会社に約20年在籍し、現場管理と若手育成を担う。37歳で独立し株式会社ネオクレストを設立。住み込みと資格支援を組み合わせた育成体制をつくり、作業員と検査員を同時に育てる仕組みや、機械化・デジタル化による「一人で無理をさせない現場づくり」を推進している。

目次

早く一人前になりたくて…。16歳の決断。

編集部

小山社長は現場に入ったのがすごく早かったと伺いましたが、どんなきっかけで、この世界に入られたんですか?

小山社長

私は今46歳ですが、この仕事を始めたのは16歳のときです。正確には、まだ15歳で誕生日が来る前でした。高校に入学してすぐ、家庭の事情で働かなくてはいけなくなって、一人で暮らせる住み込みの仕事を探したのが始まりです。

編集部

16歳で住み込み…その決断にもう覚悟が見えますね。

小山社長

そのときにたまたま出会ったのが、建築の世界でした。最初は右も左もわからなかったのですが、とにかく早く一人前になりたい気持ちが強くて、現場で必死に仕事を覚えていきました。

編集部

10代半ばで、一人暮らしと仕事のスタートだったのですね…。

小山社長

そうですね。18歳のころには、初めて現場を任せてもらえるようになりました。もちろん、一人の力でできるものではありませんが、自分が中心になって現場を回す経験は大きかったです。若いころのそうした場数が、今の自分の土台になっています。

編集部

そこからすぐに独立されたわけではなく、いったん会社員として長く働かれたんですよね。

小山社長

はい。最初に入った会社では、知り合いと一緒に立ち上げにも関わりました。20歳ぐらいからその会社で働いて、37歳、今から8年前まではずっとそこでお世話になっています。

編集部

そこから、今の会社を立ち上げられたと。改めて、独立を決めた理由を教えてください。

小山社長

きっかけは二つあります。一つは、同級生や後輩が会社の中にたくさんいて、仲間内の雰囲気が強くなってきたことです。もう一つは、息子の存在ですね。息子が高校生になって、春休みに現場に手伝いに来るようになったんです。自分の息子が働きに来てくれるなら、きちんと責任を持てる環境を用意したい。周りの仲間からも「そろそろ自分でやってみたら」と背中を押してもらって、それなら独立してみようと決めました。

編集部

早くから現場に出た経験が、長いキャリアにつながっているのですね。これから社会に出る20代の方にとっても、「早く動けばその分だけ選択肢が増える」という、シンプルだけど大きなヒントになりそうです。

「命を預かる仕事」で実感する、見えない場所の責任と誇り

編集部

鉄筋工の仕事は、まさに日本の暮らしと命を支える仕事だと感じています。実際にやっていて「やってよかった」と感じるのは、どんな瞬間ですか?

小山社長

一番は、自分が携わった建物をあとから見に行ったときですね。建物は一人では絶対に作れません。いろいろな業者さんが入って、一つのものが完成します。私たち鉄筋工は、その中でも一番最初のほうに入る仕事です。

編集部

土台を任される仕事ならではの重さがありますね。

小山社長

完成した建物に、家族や仲間と一緒に行って「ここは昔、自分がやった現場なんだよ」と話せるのは、本当にうれしい瞬間です。息子や友人とそんな会話ができるのは、この仕事をしていなければ味わえなかったと思います。

編集部

鉄筋工事は、地上からはあまり見えない部分も多いですよね。

小山社長

そうなんです。地上で目に入るところより、地下にびっしり鉄筋が入っていることが多いです。特に駐車場のような場所は、かなりしっかり組んでいます。見えないところほど、建物を支える大事な部分なんです。

編集部

台風などの自然災害のときに、現場のことが頭をよぎることもありますか?

小山社長

ありますね。台風が来るときは、家族がいても現場に泊まり込むことがあります。まだ鉄筋だけの状態だと、何が起きるかわからない不安もあるので。何かあったときにすぐ動けるように、職長たちが現場に残ることも少なくありません。

編集部

まさに、命と暮らしを預かる仕事ですね。

小山社長

そうですね。だからこそ、最後の最後まで気は抜けません。ただ、その分だけ、建物が無事に完成して引き渡しが終わったときの達成感も大きいです。

若手がたくましく育つ「住み込み×資格支援」のコミュニティ

編集部

御社のYouTubeやInstagramも拝見しましたが、オフィスの雰囲気がとても明るくて驚きました。あえてコンクリートをイメージしたデザインにされているとか。

小山社長

そうですね。建築会社の事務所って、昔ながらの少し入りづらい雰囲気のところも多いじゃないですか。それを変えたくて、外からも中がよく見えて、誰でも入りやすいオフィスにしました。

編集部

現場で働く従業員の方々は、高卒の方や住み込みで働く方も多いと伺いました。実際に若手を見ていて、どんな変化を感じますか?

小山社長

高卒で入ってきた子たちは、本当に日に日にたくましくなっていきます。最初はモジモジしていたような子も、現場で仕事を覚えるうちに、顔つきがどんどん変わっていきます。男らしくなるというか、頼もしくなっていくんです。

編集部

成長していく姿が一番うれしい瞬間ですよね。

小山社長

会社として一番大事にしているのは、まずケガをしないことです。必ず全員が安全に帰ってくる。それが大前提です。そのうえで、資格をどんどん取らせています。資格が増えると自信にもつながりますし、仕事の幅も広がりますから。

編集部

安全を守りながら、挑戦する場もしっかり作っているんですね。

小山社長

はい。学校に通う費用は会社で負担していますし、勤務時間の中で学校に行かせるようにもしています。毎年、試験に落ちてしまう子もいますが、それでもチャレンジしてくれることが大事です。資格手当もつくので、取れば給料にも跳ね返ります

編集部

そこまで面倒を見てくれる会社は、なかなかないと思います。ちなみに、住み込みで働く方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

小山社長

全体の3分の1くらいが住み込みですね。地方から来る子も多いです。親御さんの元を離れているので、インスタを更新しているのも「元気にやってますよ」とご家族に伝える意味があります。社員の顔もよく出しています。

編集部

お仕事だけでなく、プライベートも含めたコミュニティになっている印象があります。

小山社長

そうですね。仕事終わりにご飯に行ったり、近い世代同士で遊びに行ったり。5〜6人のグループで1泊2日の旅行に行くチームもいます。沖縄に行ったり、静岡に行ったり、千葉のペンションを一棟借り切ったり。今度は社員同士でチームを組んだ野球大会もあります。参加は自由ですが、みんな楽しそうですよ。

編集部

会社が「仕事だけの場所」になっていないのが素敵です。ビジネスの基礎やコミュニケーションを一から学べて、同世代と一緒に成長できる環境は、キャリアのスタート地点としてとても心強いですね。

機械とAIを味方にする近代的な現場。「一人で無理をしない」働き方

編集部

建築業界というと、どうしても「体力勝負でキツい」というイメージを持つ人も多いと思います。現場の働き方は、昔と比べてどのように変わってきていますか?

小山社長

昔は本当に、なんでも手で担いでいました。今はまったく違います。現場の中でもクレーンを使ったり、重たいものは機械で運んだりしています。一人で無理をして担ぐようなことは、基本的にさせません。

編集部

現場の負担を減らす工夫が、一気に進んだんですね。

小山社長

図面の拾い出しも、昔は全部手でやっていましたが、今はパソコンを導入しています。現場での加工も機械を使うことが多いです。空調服を着て熱中症を防いだり、ちょっとした道具の進化で、働きやすさはかなり変わりました。

編集部

効率化できるところは機械やデジタルに任せて、人がやるべきところに集中するイメージですね。

小山社長

そうですね。最近はAIもどんどん進化していますが、「じゃあ家をAIに任せたいか」と言われると、多くの人は違うはずです。やっぱり人の目と手でチェックされた建物に住みたいですよね。

編集部

たしかに、その通りだと思います。

小山社長

機械やAIは、あくまで安全で効率よく仕事をするための道具です。図面の確認や事前のシミュレーションにはデジタルを使って、実際の状況判断や最後のチェックは人間がやる。その組み合わせが一番強いと思います。

編集部

現場の検査員も育成されていると伺いました。

小山社長

はい。作業する人と検査する人、両方を社内で育てています。自分たちで検査まできちんとやることで、安心して引き渡せますから。

編集部

危険な作業を減らしつつ、最後は人の目で守る。テクノロジーとうまく付き合うネオクレストのスタイルは、AI時代に働く20代にもそのまま通じますね。道具に振り回されず、リアルな現場感覚を持った上でデジタルを使いこなす人が、これからますます強くなりそうです。

未経験20代へ。「感謝される仕事」で一歩踏み出すためのヒント

編集部

改めて、これから建築業界を目指す若い方と一緒に働くうえで、「こんな人と仕事がしたい」と感じるポイントはありますか?

小山社長

正直に言うと、最初の性格はあまり気にしていません。みんな、入ってから変わるからです。最初は遠慮がちだった子が、現場を経験するうちに頼もしくなっていく。細かい作業が得意な子もいれば、体を動かす仕事が好きな子もいます。得意なところを見ながら、いろんな仕事を任せていきます。最近は女性も増えていて、今は3名ほど現場で活躍しています。お父さんが同じ業界という子も多いですね。正直、僕としては「中で覚えてくれたら」と思うところもありますが、本人たちは「現場に出たい」と言ってくれます。そういう気持ちを応援したいです。

編集部

採用の間口も、かなり広くされている印象です。

小山社長

はい。面接でちゃんと話せるかどうかを大事にしています。「建築は稼げるし、天井知らずだよ」とよく話します。技術を身につければ、チャンスはいくらでもありますから。

編集部

御社の勤務時間も、朝は早いですが夕方には終わると伺いました。

小山社長

だいたい朝8時から始まって、途中で30分や1時間の休憩を挟みながら夕方5時ごろには終わります。現場が近いことが多いので、6時には家に着いているイメージですね。

編集部

それなら、仕事終わりの「推し活」や趣味の時間も持てそうですね。

小山社長

そうなんです。最近は推し活をしている子も多いですよね。早めに帰れる日はライブに行ったり、配信を見たり。みんなでワイワイやりたい子もいれば、一人で好きなことを楽しみたい子もいる。どちらも大事にしてほしいです。

編集部

それぞれの過ごし方を尊重している雰囲気がありますね。

小山社長

会社として意識しているのは、一人ひとりの「こうなりたい」をちゃんと応援することです。わきあいあいとやりたい子にはイベントを用意するし、静かに頑張りたい子には仕事に集中できる環境を整える。そのうえで、「感謝される仕事をしようぜ」というのをテーマにしています

編集部

「ネオクレストに頼んでよかったよ」「誰々さんに頼んでよかったよ」と言われる瞬間ですね。

小山社長

そうです。それが一番うれしいですし、仕事への達成感にもつながります。若い方には、まず「誰かに感謝される仕事をやってみよう」と伝えたいです。収入も大事ですが、その感覚があると、つらいときにも続けていけますから。

編集部

これから社会に出る20代の方は、つい「自分にとって楽かどうか」で仕事を選びがちです。でも、誰かに感謝される経験は、自信と成長につながりますよね。興味が少しでもあるなら、まずは会社見学や話を聞きに行ってみる。そんな一歩が、将来のキャリアを大きく変えてくれそうです。今日は「住み込みで支える成長環境」「一人で無理をさせない近代的な現場」「感謝される仕事をテーマにする姿勢」が特に印象に残りました。建築の世界に少しでも興味がある方は、ネオクレストのような現場の声に触れてみてください。

リンク:株式会社ネオクレスト_採用ページ

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この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

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