美容師を“続けやすく、もっと楽しめる仕事”に変えた方法|PERCUT 千田店長のメンズ特化という選択

美容師として働き続ける中で、「この先の働き方をどう整えていこう」とふと立ち止まる瞬間があります。技術を磨く楽しさがある一方で、1日の負荷が少しずつ積み重なり、小さな違和感として現れてくることも…。そんな感覚は、キャリアの選択を考えるきっかけになるものです。

メンズ専門美容室「PERCUT 下北沢北口店」店長の千田幸二さんも、同じように仕事との向き合い方を見つめ直した一人です。前のサロンで経験を積む中で、「日々の働き方を自分に合う形にしたい」という思いが大きくなり、前職で同期だった代表の独立を機にメンズ特化の道を選びました。

PERCUTでは、必要な施術に集中できるメニュー設計や、再現性を高め続ける技術環境など、仕事の充実につながる工夫が随所にあります。選択を一つ変えるだけで、同じ“美容師”という職業がより前向きに、より本気で取り組めるものになる──千田さんのお話には、そんなヒントがありました。

お話を伺った人

株式会社PERCUT

千田 幸二 下北沢北口店 店長

千葉県成田市出身。表参道の美容室で経験を積んだのち、男女ともに担当する一般的なサロンでスタイリストとして活躍。のちにPERCUTへ参加。 センターパートをはじめとしたトレンドのスタイルにも幅広く対応し、「必要なことを丁寧に」の姿勢を大切にしている。現在は下北沢北口店の店長として、若いスタッフが多い環境づくりにも携わりつつ、 お客様にとって通いやすいサロンづくりを日々追求している。趣味はビリヤードとバイク。

目次

メンズ専門×働き方を選んだ転機

編集部

千田さんが今のPERCUTに入られたきっかけから教えてください。20代でキャリアを考える読者にも、ヘアサロン業界での就職・転職の判断軸はすごく参考になります。

千田さん

男性専門の美容室・PERCUTに来る前は、男女どちらも担当する、一般的なサロンで働いていました。転職の一番のきっかけは、今の代表と前職で同期だったことです。同じ店の同期で、当時からすごく仲が良くて。彼が独立してPERCUTを立ち上げて、「メンズ専門でやる」と聞いたときに、純粋に面白そうだなと思ったんです。

編集部

代表の人柄と、事業内容の両方に惹かれた感じでしょうか。

千田さん

はい。人としても信頼していましたし、「男性だけに絞る」という発想も当時はかなり珍しくて。今から13年くらい前ですけど、その頃はメンズ専門美容室って、ほとんどなかったんですよ。

編集部

たしかに、今みたいに街のあちこちにあるイメージは当時なかったです。

千田さん

そうなんです。なので、「ここでなら、自分の技術をもっと磨けるかも」と感じました。ちょうど30歳手前で、この先の働き方を真剣に考えた時期でもあって。

編集部

ワークライフバランスを考えるタイミングだったんですね。20代後半〜30代手前って、「この働き方を続けて大丈夫かな」と立ち止まる人も増えてきますよね。

千田さん

前のサロンは、かなりハードでした。休みも少なくて、休日出勤も当たり前。予定も立てづらくて、「このまま結婚とか子育てまで考えると…どうかな」と感じたんです。

編集部

好きな仕事でも、生活の土台が不安だと、続けるのが怖くなりますよね。仕事を長く続けるには、技術だけでなく働き方の選び方も大事だと感じます。

「休みが取りづらい美容師」から気づいた、仕事と人生のズレ

編集部

当時の働き方について、もう少し聞いてもいいでしょうか。これから美容師を目指す読者にとっても、リアルなイメージが大事だと思うんです。

千田さん

美容師って、「休みが少なくてブラック」というイメージを持たれがちですけど、前職はまさに、休日出勤も多くて先の予定が全然立てられなかったです。

編集部

美容師さんって、一般的には土日祝は稼ぎ時ですもんね。友達と休みが合わなくて困る、みたいなこともやっぱりあったんですか?

千田さん

めちゃくちゃありましたね。土日休みの友達からは、最初のうちはよく誘いが来るんですけど、仕事で断り続けているうちに、そのうち誘われなくなって。地元の友達とも、だんだん疎遠になっていきました。

編集部

それは少しさみしいですね…。

千田さん

そうですね。仕事自体は嫌いじゃないけれど、「人生の中で何を大事にしたいか」と考えたときに、今のままだと難しいなと。そこは大きな違和感でした。

編集部

とはいえ、それでも美容師を続けてこられたのは、どんなところにやりがいを感じていたからですか?

千田さん

やっぱり、お客様との関係ですね。たとえば海外転勤になったお客様が、年末年始で日本に戻ってくるたびに、必ず僕のところに来てくれるんです。「千田さんのカットじゃないとダメでした」とか「すごく長持ちした」と言ってもらえると、本当にうれしいです。

編集部

場所が変わっても「ここに戻りたい」と思ってもらえるのは、すごい信頼ですよね。

千田さん

ほかにも、地元を離れたお客様が、お盆のタイミングだけでも絶対来てくれたり。そういうときに、「この仕事をしていて良かったな」と感じます。

編集部

ハードな環境のなかでも、「また会いたい」と思ってもらえる経験は、仕事を続ける力になりますよね。

PERCUT流メンズ特化と「ムダを削る」サロン設計

編集部

PERCUTに移ってからは、働き方はどんなふうに変わったのでしょう?

千田さん

かなり変わりましたね。まず、うちはメンズ専門なので、メニューもシンプルです。男性のお客様はカラーやトリートメントを頻繁にしない方も多く、「必要なことを必要な分だけ」という設計にしています。

編集部

なるほど。“必要な分だけ”というのは、具体的にはどういうことなんですか?

千田さん

シャンプーは1回のみで、カット前(ファースト)かカット後(アフター)のどちらかを選んでいただく形です。ファーストを選んでいただいた場合は、仕上げの流しは行わない運用にしています。最後に流さなくても、ドライヤーでしっかり毛を飛ばせば問題ありませんし、気になる方はご自宅で軽く流していただくくらいで十分です。

編集部

アフターシャンプーが当たり前なサロンも多いですが、「必要な人に必要な分だけ」に徹しているんですね。

千田さん

そうですね。必要以上のサービスを増やして客単価を上げるより、「ちょうどいいサービス」を徹底して、無駄なサービス料金をいただかないことを大切にしています。その分、回転も良くて、カットのみの日だと、平日で最大18人、土日だと20人ほど担当することもあります。

編集部

1日20人…!数字だけ聞くとハードに感じますが、ムダを削った設計だからこそ、無理なく回せるんですね。

千田さん

はい。施術がシンプルなので時間外に残業することがほぼなくなり、休憩時間もしっかり取れるようになりました。もちろん楽というわけではないですが、「やるべきこと」に集中できるので、気持ちの負担は少ないですし、お客様にご満足いただきながらも効率化できるんです。

編集部

お客様のニーズも、男性ならではのものがありそうですね。

千田さん

たとえば「横だけ短くしたい」「後ろだけ刈り直したい」「伸ばしているから、毛先は切らずに量だけ減らしたい」とか。そういう細かい要望に応えやすいのも、メンズに絞っている強みだと思います。

編集部

技術面の強みはいかがですか?

千田さん

メンズ特化なので、そこはかなり自信があります。センターパートが流行ったときも、YouTubeで発信しながら、かなりのお客様に来ていただきました。今でもセンターパートは根強い人気ですね。

編集部

メニューも設計も「メンズに集中」しているからこそ、技術が磨かれていくわけですね。

人だからできる接客を、仕組みとデジタルで支える

編集部

1日18〜20人を担当しつつ、会話もして…となると、コミュニケーションの負荷も大きそうです。接客で意識していることは何かありますか?

千田さん

お客様にも、いろんなタイプの方がいます。たくさん話したい方もいれば、カウンセリング以外は静かに過ごしたい方もいる。そこをしっかりくみ取ることは意識しています。

編集部

たしかに、私はおしゃべりしたいタイプですけど、静かにスマホを触りたい人だっていますよね。なんか空気を読むのって、口で言うほど簡単じゃないですよね。

千田さん

そうなんですよね。なので、うちでは自社アプリで「接客してほしい」「静かに過ごしたい」みたいな希望を事前に入力してもらっています。若いスタイリストって、お客様がどんな距離感を望んでいるか、最初は読み取りづらいので、そういう仕組みがあると助かると思います。

編集部

それは今の時代らしい工夫ですね。

千田さん

そうですね。接客はあくまで人がやるんですけど、デジタルをうまく使って、お互いに負担を減らすイメージです。

編集部

まさに「人にしかできない部分」と「仕組みでできる部分」を分けている感じですね。

千田さん

デジタルと言えば、代表が「ロボットが髪を切る時代も来るかもしれない」という話をしていたことがあります。でも、機械ではなく人に切ってもらいたいという方は、これからも一定数いらっしゃると思います。

編集部

そうですよね、髪を切る時間って、カウンセリングも含めて「人との時間」ですもんね。

千田さん

そうですね。だからこそ、僕らは技術だけでなく、人としての関わり方も大事にしています。スタッフ同士の関係性も、できるだけフラットです。

編集部

人間関係についても、もう少し教えてください。

千田さん

うちの店舗は、僕と同年代がもう一人いるくらいで、あとはほとんど20代です。年齢差はありますが、上下関係をガチガチにするつもりはなくて。最低限の礼儀は必要ですけど、気の荒いタイプは採用の段階で避けています。

編集部

それは若い人にとっても、かなり安心材料ですね。若いスタッフが多いと、人間関係の不安を感じる方もいると思いますが、そういうときの支えになる仕組みがあるのは心強いです。

千田さん

もちろん、人同士なのでぶつかることもゼロではないです。でもトラブルが起きたら、当事者同士と店舗責任者で話して、きちんと解決まで持っていくようにしています。

編集部

美容業界を目指す20代へ。「お客様を一番に見る」仕事の基本

編集部

環境づくりに力を入れているからこそ、“どんなスタッフと働きたいか”もはっきりしてきますよね。ここからは、美容業界を目指す20代の方に向けて、さらに千田さんのお考えを伺いたいです。先ほど、気の荒いタイプは採用しないと仰っていましたが、逆にどんな方に来てほしいと感じますか?

千田さん

一番は、人柄ですね。器用か不器用かは関係ないと思っています。技術は時間をかければ身についていきますが、人柄はなかなか変えづらいので。

編集部

具体的には、どんな人柄でしょう?

千田さん

素直で、前向きで、頑張り屋さん。あとは、お客様を大事にできるかです。自分の働きやすさももちろん大切なんですけど、それだけだと正直厳しい。お客様が満足して通ってくれるからこそ、お給料も生まれますからね。

編集部

たしかに、お客様にきちんと向き合える人は強いですよね。技術は時間をかければ伸ばせますが、「どう接するか」は日ごろの姿勢が出るところだと感じます。そういう意味でも、人柄を大事にされている理由がよくわかります。

千田さん

新卒の場合は、学校の出欠を見ることが多いです。これまでの傾向で言うと、皆勤に近い子や、自己都合の欠席が少ない子は、ほぼ間違いないですね。逆に「SNSはすごく頑張っているけど、欠席が多い」という子を採ったら、すぐに来なくなってしまったこともありました。

編集部

おぉ…、それはリアルですね…。

千田さん

結局、「決めた場所にちゃんと来る」というのは、すごく大事だと思います。どんな仕事でも、そこができないと、任せてもらえないですから。

編集部

たしかに、「この人はこの場で戦い続けてくれる」と思ってもらえる人は、どの職場でも重宝されますよね。

千田さん

そう思います。あとは、美容業界に限らない話ですけど、「誰のために仕事をするか」を間違えないことも大事です。

編集部

というと?

千田さん

昔、表参道のサロンで働いていたとき、アシスタントが「お客様よりスタイリストに気を使う」という空気があったんです。怒られないように、スタイリストに気に入られるように、という感じで。でも、本来はお客様のための仕事ですよね。

編集部

たしかに、向き合う先が少しずれてしまっているかもしれませんね。

千田さん

そうなんです。なので、これから美容師を目指す人には、「お客様を一番に考えられる人」であってほしいです。スタッフ同士の関係も大事ですが、最終的には「お客様がどう感じるか」が一番大切なので。

編集部

今日のお話を聞いていると、「ちゃんと現場に立ち続けること」「お客様に誠実であること」が、長く働くための土台なんだと感じました。20代の読者も、まずは「休まず来る」「目の前の人を一番に考える」ところから、キャリアを作っていけそうです。今日はありがとうございました。千田さんのお話は、他業界で現場を支えるリーダーたちの話とも通じる部分がたくさんありました。

リンク: 株式会社PERCUT_採用ページ

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この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

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