トポロジカル物質で、日本を「世界から頼られる国」に｜TopoLogic株式会社 佐藤社長の島国スキル仕事論

そうですね、おっしゃるとおり、もともと経営コンサルティング会社で、製造業向けのコンサルタントをしていました。そのときは自動車や防衛関連など、日本を支えるような大手の製造業の経営をお手伝いしていたんです。

そうですね。そのあと、スタートアップの事業部を統括するような仕事も経験しました。ちょうどその頃、コンサル時代のご縁で、今TopoLogicで扱っている材料技術を研究されている大学の先生と出会い、一緒に会社をやることになったんですよ。

一番大きかったのは、その先生の「この技術を社会実装したい」という熱量ですね。本気で、世の中に出したいと思っている人がいる。それをビジネスにしていく部分は、自分が役に立てると感じました。

ええ。もう一つは技術そのものの競争力です。トポロジカル物質というのは日本発の材料技術で、応用先が半導体や電子デバイスの分野なんですね。ここって、日本企業がまだ強みを持っていて、しかも世界的に成長が著しい市場なんです。

はい。前職でドローン関連のスタートアップに関わったこともあったのですが、マーケットの制約をかなり感じた経験がありました。市場環境が原因だと、努力ではどうにもならない部分もあるんですよね。今の事業は、そういう制約が比較的少ないと感じたことも、参画の大きな理由です。

そう思います。自分一人の力で世界を変えるのは難しいですが、「伸びる土俵」を選べば、同じ努力でも結果は変わりますから。

そうですね…。僕にとって働くというのは、「自分が社会や世の中に対して不満に思っていることを、解決するための行動」だと思っています。

はい。もちろん、今ある仕組みを回す仕事も大切です。でも、自分が強く「これはおかしいよね」と感じることを、少しでも良くしようと動く。その手段としての行動が、僕にとっての仕事なんです。やっぱり、自分がモヤモヤしていることに関わる仕事だと、頑張れますから。

日本の企業って、すごい技術と頭のいい人たちをたくさん抱えているのに、企業としての稼ぐ力や株価になると、海外企業に全然勝てていなかったんですよね。

父もそうでしたが、日本人って本当に夜遅くまで働いている人が多い。それなのに、一人あたりの生産性で見ると、先進国の中でもかなり低い。僕はそれを「いや、おかしいだろ」とずっと思っていました。だからこそ、企業の稼ぐ力を上げたいという思いで、コンサルの仕事を選んだところがあります。

そうですね。ただ単に「好きなことだけ」だと、どうしても自己完結してしまう。誰かの課題を解決して、お金という形で評価されて、それでご飯を食べていく。そこまで含めて仕事だと思うんです。

そうですね。個人的にすごく働きやすいと感じるのは、「現状に不満や危機感を持ちながら、それを変えようとする人」です。

はい。今のやり方で満足していると、それ以上の効率も成果も出ないんですよね。開発の仕事って、試作して、測って、直して…の繰り返しですが、「そもそもこのやり方が一番いいのか？」と疑う視点がないと、いつまでも同じことを繰り返すだけになります。

「もっと早くできないか」「他の人を巻き込んだら効率が上がるんじゃないか」と考えて、実際に動ける人はやっぱり強いです。別に動機は「自分が楽をしたい」でもいいんですよ。そのほうが、かえって効率的な方法を真剣に探しますから。

そうです。それと、自分だけで三日悩むより、「この人詳しそうだな」と思ったら、10分だけ話を聞きに行く。それだけで進み方が変わります。ただ、それをやるには普段からの人間関係も大事になりますけどね。

ええ。「俺がやりたくないからやってよ」と丸投げされたら嫌ですよね。でも、「あなたが困っているなら助けたい」と思ってもらえる人間関係をつくれていれば、相談もしやすい。技術と同じくらい、コミュニケーションが大事だと思っています。

そうですね。チェックリスト通りにミスなく進めるような仕事は、AIや機械のほうが得意になっていくと思います。一方で、それが日本社会から完全になくなるわけではありません。

わかりやすいのは、鉄道などのインフラです。毎日、安全に人を運ぶためには、とても細かい点検や確認が欠かせない。そういう仕事は、ルーチンをきっちりこなせる人だからこそ活躍できる領域です。

そうなんです。大事なのは、「どんな仕事の比重が増えていくか」です。AIが進むほど、「忠実にこなす仕事」だけで成り立つポジションは減っていく。一方で、日本の教育は、どちらかというと忠実さを重視してきたので、そのギャップをどう埋めるかが課題だと感じています。

そうですね。たとえば、相手がマシンガンを持っているのに、竹槍で正面から突っ込んでいっても勝てませんよね。でも日本って、「竹槍で戦うべきだ」と誰かが言うと、「そうだそうだ」と言って本当に竹槍を持っていく、みたいな歴史もあったりするわけです。

だからこそ、「本当に竹槍でいいのか？」を一度立ち止まって考える必要がある。AIというマシンガンがあるなら、それをどう使うかを考えないといけません。ただ、そこで大事になるのが、「島国スキル」です。

日本人特有の、和を乱さずに周りと調整しながら物事を進める力ですね。島国だからこそ、お互いに気を遣い合いながらも、集団で同じ方向に動くのは得意なんです。このスキルと、AIのような新しい武器をどう組み合わせるかが、これからのポイントだと思います。

そう思います。iPhoneそのものは作れなくても、その中に入っている部品は日本製が多い。そういう「ここが無いと世界が困る」というポジションを、もっと増やしていきたいですね。

大きく言うと、「日本が本来持っているポテンシャルに見合う実力を持ち、世界の国々と対等にわかり合えている状態」をつくりたいです。

そうですね。僕には2歳の娘が一人いるんですが、将来は胸を張って「日本で暮らしていていいよ」と言える国であってほしいんです。正直いまは、「海外の大学も考えたほうがいいかも」と思ってしまう部分もありまして…。

日本って、本当は強い国だと僕は思っているんです。誰かに守ってもらわなくても、自分で立っていける力はあるはず。ただ、その力を発揮できていない。だからこそ、「日本がいないと世界が困るよね」という分野を増やしたい。

ええ、そういう国になったらいいなと思っています。

はい。だからこそ、20代の皆さんには意識してほしいことがあります。

一つは、「自分の働き方のタイプを知ること」。ルーチンをコツコツこなすのが得意な人もいれば、課題を見つけて変えていくのが得意な人もいます。どちらが良い悪いではなく、「自分がどちら寄りなのか」を早めに理解しておくと、ミスマッチを減らせます。

もう一つは、「日々の仕事の中で、違和感を一つでいいから行動に変えること」。たとえば、意味がわからない報告書を書かされているなら、「これって本当に必要ですか？」と上司に聞いてみてください。いきなり真っ向から否定するのではなく、日本的なやり方で、飲みの場でもいいから相談してみる。

そうです。日本人は、一度動き始めると集団で一気にスピードを上げる力があります。だからこそ、最初の一歩を踏み出せる人が増えれば、社会全体の変化も早くなるはずです。