土曜4時間バイトから執行役員へ|株式会社モデル・ランゲージ・スタジオ坂本さんの英語キャリア

英語はずっと勉強してきたのに、仕事で急に話そうとすると言葉が出てこない。頭がまっ白になって「自分の英語ってこれでいいのかな」と戸惑った経験が、一度はあるかもしれません。
ドラマを通して英会話を学ぶ、コミュニケーション力を育てる「ドラマメソッド®」を続けてきたモデル・ランゲージ・スタジオ(MLS)は、まさにそんな場面と向き合ってきたスクールです。
このMLSで、土曜4時間のアルバイトからキャリアを始め、いまは執行役員として教室運営と採用を担う坂本さんに、英語を「好き」のまま仕事に生かしていくまでの選択と、アルバイトから社員・管理職へと広げてきた働き方の工夫を聞きました。
英語をどんなペースで続けていくか、自分なりに決めるヒントが見えてきます。
株式会社モデル・ランゲージ・スタジオ(略称:MLS)
執行役員 坂本 有紀
自宅近くの教室で、土曜4時間のアルバイトとして外国人講師のアシスタントを務めたことをきっかけにMLSへ。教室長、社員を経て現職。子どものごっこ遊びを英語に置き換える「ドラマメソッド®」で、英会話の楽しさとコミュニケーション力を育てる教室運営・採用に携わっている。英語が好きな人と子どもたちに、その楽しさをバトンのようにつなぐ場づくりを大切にしている。
中学英語の憧れから、土曜4時間バイトで始まった転機

編集部坂本さんは、いまは英語の楽しさを伝えるお仕事をされていますが、そもそも英語が好きになった一番最初のきっかけは何だったんですか?



最初は中学校の英語の先生への憧れでした。とても発音がきれいな先生で、「こんなふうに話せるようになりたい」と思ったのがきっかけです。そこから英語が一番好きな科目になりました。



憧れがそのまま得意科目になったんですね。



はい。日本では教科書ベースの勉強が中心ですが、「本当に話せるようになりたい」と思って、大学時代を海外で過ごしました。そこで実感したのは「使わないと話せるようにならない」ということです。座学だけでは足りないと、身をもって感じました。



なるほど。それで帰国後は、どんなお仕事を?



外資系企業で働いていました。英語に触れられる環境でしたが、結婚を機に早めに退職したんです。一度仕事から離れたのですが、「また広い世界に触れたい」と思うようになって…。自宅の近くにMLSの教室があるのを見つけて、「土曜日だけ英語に触れる時間がほしい」と夫にお願いして、外国人講師のアシスタントとしてクラスに入りました。最初は土曜の4時間だけでした。



そうだったんですね。4時間から、ここまでキャリアが続くとは思っていなかったのでは?



まったく思っていなかったです。でもレッスンが本当に楽しくて、生徒さんも楽しそうで。気づいたら、自分もどっぷりハマっていました。子どもが小学校に入って手が離れてきたタイミングで、パートとしてクラスを増やし、教室長も任せてもらうようになって。



そこから社員、そして執行役員へ。キャリアの階段を一段ずつ上がってこられたんですね。



当時の教室が大きく成長したのをきっかけに、いまの社長に「社員として来ないか」と声をかけてもらいました。そこから社員になり、気づけば執行役員という立場になっていました。
ごっこ遊びを全部英語に。ドラマメソッドが育てる実践力





先ほど「レッスンが楽しい」というお話もありましたが、MLSの「ドラマメソッド®」が気になります。これは具体的にはどんな学び方なのでしょうか?



簡単に言うと、子どもたちが普段しているごっこ遊びを、全部英語に置き換えるレッスンです。おままごとやお買い物ごっこ、病院ごっこ。そうした遊びの世界全部が英語になるイメージです。



テキストを読む授業とは全然違いますね…!



はい。たとえば「お買い物ごっこ」をするときは、おもちゃのお金を渡して「I want apples.」「How many apples?」「Two, please.」「Two dollars, please.」という会話を全部英語でやります。子どもたちは遊んでいるつもりですが、その中で自然と単語や表現を覚えていきます。



想像しただけで楽しそうです。「This is a pen.」の世界とはまったく別物ですね(笑)。



そうなんです。日常会話で「これはペンですか?いいえ違います」なんて言わないですよね(笑)。現実には使わない英語をいくら覚えても、なかなか話せるようにはなりません。



ノンバーバルな表現も使いますよね?



はい。ジェスチャーや表情、立ち方も含めてコミュニケーションです。子どもたちは体全体を使って役になりきるので、「伝えよう」とする力が自然と育ちます。



仕事でも、言葉だけでなく姿勢や表情で伝える場面は多いです。伝える力をマスターしておくと、そこで差がつきそうですね。



そうですね。英語そのものも大事ですが、「相手にどう伝えるか」を遊びながら身につけていくので、将来どんな仕事についても活きると思います。プレゼンや接客でも、ドラマメソッドで鍛えた感覚は役に立つはずです。



「英語を勉強」と構えすぎず、まずは日常の場面を英語でごっこ遊び(場面設定)してみるのも良さそうですね。



はい。たとえば一人暮らしでも、料理するときに「塩を取って」「鍋を火にかけて」を英語でつぶやいてみるだけでも違います。明日からできる小さな練習だと思います。
「とりあえずやってみる」。うまくいかない日も楽しさに変える



ここまで伺うと、坂本さんは「好きなことを仕事にできた、レアな成功例」に見えます。ただ、その裏には大変な時期もあったのではないでしょうか。



もちろんあります。私自身、人と話すのが得意なタイプではありませんでしたし、教室長になったときは「クラスを売る立場」になって、保護者様に魅力を伝えなければいけなかったので。



そのプレッシャーの中で、どんなふうに乗り越えてきたのでしょう?



私の性格もありますが、「とりあえずやってみて、ダメだったらそのとき考えよう」というスタンスで来ました。うまくいかなかったら「じゃあ次はこうしてみよう」と、違うアイデアを考えるのが好きなんです。



失敗して落ち込むより、「次の一手」を考えるほうにエネルギーを使う。



はい。もちろん大変な時期もありましたが、ひとつ課題を解決できた瞬間に「やればできる」とテンションが上がる。その繰り返しでした。アドレナリンが出る感じです。



いまの若い方の中には、「新しいことに挑戦するのが怖い」「情報を集めただけで満足してしまう」という声もあります。そこはどう見えていますか?



その気持ちもよくわかります。でも、頭の中だけで考えていても答えは出ません。少しでも興味があるなら、小さくやってみる。やりながら考えたほうが、結果的に早いと思います。



MLSでキャリアを積んでこられた坂本さん自身も、最初は「土曜4時間だけ」。まさに小さな一歩から始まっていますよね。



そうですね。スタートラインに立たないと、好きなことが仕事になるかどうかもわからないままです。「やってみたら意外と向いていた」ということもあります。



仕事で行き詰まりを感じているビジネスパーソンにとっても、「完璧な準備より、小さなチャレンジを増やす」がヒントになりそうです。
アプリに頼りすぎない。英語がくれる「人とつながる力」



最近は翻訳アプリもとても優秀です。英語を学ぶ意味がわからない、という声も一部では聞きますが、坂本さんはどうお考えですか?



アプリはとても便利ですし、私も活用は良いことだと思います。ただ、それだけでは伝わらないものもあると感じています。



というと?



たとえば海外旅行で、アプリを見せて会話するだけでは、相手の表情や反応をじっくり見る余裕がなくなりますよね。ジェスチャーや笑顔、ちょっとした言い間違いも含めて、「この人と話していて楽しい」と感じてもらえるのが、本当のコミュニケーションだと思っています。



たしかに、仕事でも「この人となら一緒に働きたい」と思ってもらえるかは、言葉以外の部分が大きいかもしれないです。



MLSのレッスンでも、生徒さんには「とにかくいっぱい間違えてね」と伝えています。日本の子どもたちは「間違えてはいけない」と思いがちですが、単語だけでも伝えようとすればコミュニケーションは成り立ちます。「きれいな英語」である必要はないんです。講師たちも、文法の間違いを頭ごなしに指摘することは絶対にしません。



間違いを恐れない経験は、どんな仕事にも効いてきそうです。



そう思います。AIやアプリがいくら進化しても、「間違えながら人と向き合う経験」までは代わりにやってくれません。そこを楽しめる人は、どんな時代でも強いと思います。
英語が好きな20代へ。仕事に変えるための小さな一歩





「英語が苦手だけど、これからのために学び直したい」という20代には、まず何から始めるのがいいと思いますか?



嫌な勉強は続かないので、まずは自分の「好きなもの」から入るのが一番だと思います。好きな映画を吹き替えではなく英語で観てみたり、好きな海外の音楽をよく聴いてみたり。私は同じ映画を何度も観て、最後は字幕を隠してセリフをまねする、ということをしていました。



それなら、楽しみながら耳を慣らしていけそうですね。



そうですね。とにかく「嫌だな」と感じるやり方は続きません。私も単語帳で百語書いて覚えるような勉強は、いまは全然覚えていないんです。それよりも、好きな音楽のフレーズをまねして「こういうことを言っているんだ」と感じるほうが、自然と続けられました。勉強しなきゃ、と思うより「これが少しでも勉強になればいいや」くらいの感覚がいいと思います。



ちなみに、MLSで働くスタッフには、どんな方が多いのでしょうか。将来「教える側」に興味がある読者もいると思います。



共通しているのは、みんな英語が好きだということです。それぞれが「英語を何か役に立つ仕事にしたい」と思ってここに来ています。でも、それだけではなくて、小さい子どもたちに英語の楽しさを伝えていきたい、という気持ちを大事にしています。それが私たちの使命だと思っています。



なるほど。「自分が英語を話したい」だけでなく、「子どもたちに渡したい」という思いがポイントなんですね。



そうですね。私が採用も担当しているのですが、「自分が英語をしゃべりたい」「自分が英語を使いたい」という思いだけが強い方は、少し方向性が合わないこともあります。英語が好きで、そして子どもたちにも好きになってほしいと思える方だと、とても楽しく働ける環境だと思います。



生徒さんの年齢も幅広いとお聞きしました。



はい。小さい子ども向けのジュニア部門もありますし、大人向けのクラスや、英語劇専門のプロダクションコースもあります。大学生から社会人、おじいちゃんおばあちゃん世代まで、それぞれ目標は違いますが、どの世代の方も受け入れています。



歴史も長いスクールですよね。会社として、これから先をどう見ていらっしゃいますか。



英会話の教室は他にもたくさんありますが、私たちは今年で51周年を迎えました。私は、ここから先の50年、100年企業に育てていきたいと思っています。そのためにも、「英語が好き」「英語が好き」という思いを共有できるスタッフが、これからもっと増えてくれたらうれしいですね。



英語がペラペラでなくても、「英語が好きだった」「子どもが好き」という気持ちがあれば、携われる仕事の選択肢は想像以上に広そうです。



そう思います。小さい頃は英語が好きだったけれど、ペラペラにはなれなかった、と感じている方も多いと思います。それでも、「なんでできないんだろう」と悩んできた経験がある方で、子供たちにできるようになってもらいたい、という思いがあれば、ここはきっと楽しい職場になると思います。



今日は「好きなものから始める」「英会話の楽しさを次の世代に渡す」というお話が印象的でした。通勤時間に好きな映画の英語版や予告を一本だけ流し、気に入ったフレーズを一つ声に出してまねする…そんな小さな習慣が、英語を仕事につなげる土台になっていくと感じました。坂本さん、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。








