学歴じゃなく“姿勢”で選ばれる。「ありがとう」を集める働き方|株式会社ハウジングサクセス・金子社長の歩み

学歴に自信がない。経歴に穴がある。そんな理由で「自分には無理だ」とキャリアを諦めそうになることもあるかもしれません。
でも、キャリアは今からでも十分広げられます。
それを実体験で示しているのが、練馬区で「一番ありがとうと言われる不動産屋さん」を目指す、株式会社ハウジングサクセス・金子社長です。
若い頃は決して順風満帆ではなかったという金子社長が、どうやって人に信頼される仕事の向き合い方を身につけたのか。お話を伺いました。
株式会社ハウジングサクセス
代表取締役 金子 徳公
不動産業界に23歳で飛び込み、賃貸管理・売買仲介・開発業者で実務を徹底的に習得。30歳で独立し、「本気でお客様のために」を一貫して実行。時に商売にならない提案もいとわず、正直に最善を伝える姿勢で信頼を積み重ねる。座右の銘は「失敗はしても後悔はしない」。人の人生に寄り添う不動産のあり方を追求し続けている。
車が好きで、洗車場で働いていた20代。不動産業へのキャリアチェンジを選んだ理由

編集部金子社長は、御社のホームページに「右も左もわからず、そして根拠のない自信だけで不動産業界に飛び込んだ」と書かれていましたね。まず、今の不動産の仕事にたどり着くまでの経緯から伺っても良いですか?



僕は若い時、本当にまともじゃなかったんです(笑)。ちゃんとしたキャリアを考えていたわけでもなくて、車が好きだからという理由で洗車場で働き始めました。体を動かす仕事で、その日暮らしみたいな感覚でしたね。



そこから頭を使う仕事に切り替えようと思われたきっかけは、何だったんでしょう?



洗車の仕事は楽しかったのですが、「40歳、50歳になってもこのまま体を動かし続けるのはリスクがあるな」と感じたんです。そこで初めて、体じゃなくて頭を使う仕事を意識しました。でも当時は今以上に学歴社会と言われていて…。僕は、学歴がないものですから、普通に会社員として稼ぐイメージが湧かなかったんですね。



同年代が大学に進む中で、自分を責めてしまう感覚、よくわかります。そこから、どうやって次の仕事を考えたのでしょう?



「学歴がなくてもお金を稼ぐには何があるか」をひたすら考えました。そこで思い浮かんだのが、保険と不動産です。ただ当時の僕の印象では、保険は必要としていない人にまで売り込むイメージが強かった。一方で不動産は、ちょっとブラックというか、悪いイメージもあったんですが…お客さんが「買いたい」と思っているものを扱う仕事だと感じたんです。



求めていない人に売るのではなく、欲しい人にちゃんと届ける仕事であれば、自分も向き合える、と。



そうですね。保険は「本当はいらない人に入ってもらう」のが上手い人が稼ぐ世界という印象でした。不動産もイメージは悪かったけれど、買いたい人がいる。対応が悪い不動産屋が多いからこそ、ちゃんと対応すれば喜ばれる余地がある。学歴がなくても勝負できる、一番の近道が不動産だと思ったんです。



学歴がないから無理と諦めるのではなく、「じゃあどこで勝負するか」を考えて選び直したわけですね。これは今、自分の強みがわからずにいる20代にも、そのまま通じる考え方だと思います。
出会ったお客さんみんなから「ありがとう」と言ってもらえるよう



今は「練馬区で一番ありがとうと言われる不動産屋さん」を掲げていらっしゃいますよね。その裏には、どんな思いがあるのでしょうか。20代の働き方にも直結する部分だと思います。



僕は何事もやるからには一番を目指したいタイプです。ただ、イメージも湧かないような「日本一」とかを名乗っても意味がないと思っていて。だからまずは自分の生活圏である練馬区で、出会ったお客さん全員にありがとうと言ってもらえるような仕事をしようと決めました。



なるほど…素敵な考えですね。



実際には全国のお客さんと取引をしています。でもコーポレートの理念として掲げるなら、自分が顔を出せる範囲で一番を目指した方がイメージしやすいんです。それに、ネット上で考えた時も、東京とか全国で一番と言っても埋もれてしまう。練馬区や隣接する西東京市に絞った方が、地域の人にも伝わりやすいし、検索でも見つけてもらいやすいかなと。



ブランディングとしても、働く場所としても、顔の見える範囲を大事にされているんですね。



そうですね。若い頃は一通りヤンチャなこともしてきました。だからこそ今は、正しいことだけをして生きていきたい。洗車場時代の上司を見て、自分についてくれるお客さんがどれだけファンになってくれるかで人生が変わると感じました。仕事は会社のためではなく、自分のためにやるものだと教わったんです。



自分のために仕事をするという言葉は、人によっては「楽をしたい」と勘違いしてしまいそうですが、金子社長の解釈はまったく違いますよね。シビれる言葉です。



はい。自分のために仕事をするというのは、「言われたことだけやる」のではなく、自分から動いてお客さんに喜んでもらうという意味です。真面目にやればやるほど、自分に返ってくる。これはどんな仕事でも同じです。
お金を追わず人に向き合うから生まれる紹介の輪



御社は、一見さんがふらっと入りやすい一階路面店ではなく、オートロックのビルに移転されたと伺いました。これにはどんな狙いがあったのでしょうか?キャリアの考え方としても興味深いです。



うちは不動産を探している一般のお客さんではなく、不動産オーナーさんに向き合う仕事を重視しています。売るにしても貸すにしても、関係性を作るのに時間がかかるので、一元さん対応に追われるより、既にお付き合いのあるお客さんとじっくり話す時間を増やしたかったんです。



あえて「誰でも入りやすい場所」を手放してまで、既存のお客さんとの時間を優先したと。



そうです。入り口をオートロックにしたのも、用事のある方だけが来てくださればいいという考えからです。その分、一人ひとりと密に向き合える。お金だけを追いかけるなら、どんどん新規を入れた方が売り上げは上がるかもしれません。でも僕は、先ほどお話ししたように、無理に売り上げを立てる不動産屋にはなりたくなかった。



なるほど…。具体的には、どんな関わり方をされているのでしょうか。



例えば、不動産売却の相談を受けても「売らない方がいいですよ」とお伝えすることがあります。その場では他社に決められてしまうこともありますが、それでいいと思っているんです。後から「あの時はごめんね」と謝りに来てくれて、新しいお客さんを紹介してくださる方もいますし、「次は金子さんにお願いしたい」と言ってもらえることも多いです。



短期的な売り上げより、お客さんの人生全体を見て、本当に役に立つアドバイスをされているわけですね。



そうかもしれません。不動産は人生で一番大きな買い物になることが多いです。だから僕は「損をしない買い物をしましょう」とお伝えします。予算いっぱいの家を無理して買うより、少し安い物件で納得できるなら、その分を家族との外食や経験に使った方が絶対にいいですからね。



お客さんに得をさせることより、損をさせないことを大事にしているんですね。



そうです。だから不動産以外の相談も多いですよ。人生相談や、離婚の相談まであります。同じご夫婦から、別々に相談を受けたこともありました。最終的にはきちんと話し合い、売却もうまくいきました。扱っているのはたまたま不動産ですが、感覚としてはライフプランナーに近いです。



離婚の相談まで…!人生の深い部分まで相談される関係が築けるのは、社長が“人として向き合う”姿勢を大事にされているからだと思います。だからこそ、一度きりの取引ではなく、長く信頼が続くんですね。
ネット集客の時代でも、顔が見える関係を大事にしたい



一方で、今は集客も接点づくりもネットが中心になっていますよね。お客さんとの距離感が変化する中で、金子社長はどんな働き方を意識されていますか?



ネットやデジタルを使うのは大賛成です。僕も昔から、電話営業が嫌いだったので、メールを中心にやってきました。みんなが電話をしている時代に、どうやったら自分はあまり話さずに成果を出せるかを考えていたんです。



同じ営業でも「人と違うやり方で、自分に合うスタイルを作る」という発想ですね。



そうです。ただ、どれだけネットで集客しても、結局相手は人です。不動産を扱っていますが、実際にやっているのは人の心とのやり取り。ここをわかっていない人が、不動産業界には多いかもしれません。



心のやりとりがわかっていない人…ですか?



ええ。楽して稼げると思っている人が多い印象ですね。契約するまでは一生懸命でも、契約した瞬間に態度が変わる…。お金しか見ていないから、お客さんの信頼が続かない。そういう人たちは、いくら会社が働きやすさを考えて制度を用意してあげたとしても、使いこなせません。



制度というと、例えばフレックスなどでしょうか。



はい。お客さんの都合に合わせやすいように、うちもフレックスタイム的な働き方を取り入れています。例えば夜9時にしか相談できないお客さんもいるので、そういう時は遅い時間に対応して、代わりに朝をゆっくりにしてもらえばいい。でもダメな人は、自分の都合だけで使おうとするんです。お客さんのためではなく、自分が楽をするために使う。



同じ制度でも、「誰のために使うか」で評価が大きく変わってしまうわけですね。



そうですね。真面目にやる人には、僕は口を挟みません。やるべきことをきちんとやってくれるなら、個人を尊重します。でもやらない人には、全部一から十まで指示しないといけなくなる。そうなるとお互いにしんどいですよね。



たしかに、そうですよね…。制度やツールを自分のためだけでなく、お客さんやチームのためにどう使うかを考えられる人が、これからの現場で重宝されるのかもしれないですね。
若者よ、逃げずにまずやれ。そうすれば…





ここまでのお話を聞いていると、金子社長は若い人に対しても、かなり厳しくも温かい目線を持っていらっしゃると感じました。今、自分に自信が持てない20代に、どんな言葉をかけますか?



一言でいえば「逃げずにまずやれ」です。もちろん、命や心が壊れそうな環境からは逃げていい。でも、まだ何もやっていないうちから「自分には何もできない」と決めつけるのはもったいない。



たしかに、スタートラインに立つ前に諦めてしまう人も増えている気がします。



本当にやりたいことがないなら、まずはやりたいことを探せばいい。ゲームが好きならゲーム会社を目指してもいいし、車が好きなら車に関わる仕事を考えればいい。やりたくないことをダラダラ続けるくらいなら、やりたくないことをしないで済む努力をした方がいいと思います。



努力の方向を変えるという感覚ですね。



そうです。僕自身、正直いうと営業は嫌いというか、苦手意識がありました。でも営業の会社をやることになったので、どうやったら自分の嫌いな部分を減らして成果を出せるかを考えたんです。要所で電話ではなくメールを使ったり、人と違うやり方を工夫したりしてきました。



自分の弱さを言い訳にせず、工夫に変えていく姿勢ですね。



これは娘にもいつも言っているのですが「人にされたくないことはするな。されてうれしいことはしろ」。すごく当たり前だけど、仕事の基本はこれだと思っています。もう一つ、自分の座右の銘は「失敗はしても後悔はしない」です。やることをやって失敗したなら、それでいい。やらずに文句だけ言うのが一番もったいない。



本当に、おっしゃる通りですね…。私も同感です。



そうですね。最近は、義務を果たさずに権利だけを主張する人が増えたと感じます。本来は、義務を果たすからこそ権利を主張できる。順番は「権利と義務」ではなく、「義務と権利」です。そこを勘違いすると、どこへ行っても苦しくなってしまう。



厳しいようでいて、とても誠実なメッセージだと感じます。



僕は人生、いつでもやり直せると思っています。合わない職場から逃げてもいいし、環境を変えてもいい。ただその時に、「自分は何をやってきたか」「誰に何を返してきたか」を胸を張って言えるようにしておいてほしい。そうすれば、どこへ行っても必ず誰かが手を差し伸べてくれると思うんです。



今日は、学歴や過去に関係なく「逃げずに動く」「人に与える」という姿勢が、一番のキャリアの武器になるという話がとても印象的でした。自分の仕事の中で「人にされたくないことをしない」「誰かが喜ぶ一手間を足す」など、小さな工夫から始めていく…その積み重ねが、数年後の自分の立ち位置を変えていくと思います。金子社長、今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。








