患者の未来に寄り添う、誠実さという技術|国家資格を持つ治療家・前田社長が語る、プロとしての本気

「自分は何のために頑張っているんだろう」

「仕事に、どこまで本気になればいいのか」

そんな問いを抱えながら働いている若い方も多いのではないでしょうか。効率やバランスを重視する時代の中で、仕事に真剣に向き合う理由がわからなくなることもあるでしょう。

それでも、どんなときも目の前の人に誠実であり続けようとする人がいます。国家資格を6つ持ち、日本とカンボジアで治療や人材育成に携わっている、株式会社メディカルジャパン代表取締役の前田 智世(まえだ ともよ)さん です。

前田社長が大切にしているのは、患者を「癒す」以上に「再発を防ぎ、その人の人生を守る」という考え方です。それは、技術や知識よりも前にある、「誠実さ」という人としての姿勢の話でした。

お話を伺った人

株式会社メディカルジャパン

前田 智世 代表取締役社長

学生時代はサッカー部と競技サーフィンに打ち込み、海外でのトレーニングを通して「体のメンテナンス」の重要性を実感。帰国後、湘南医療福祉専門学校を主席で卒業し、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師をはじめとする6つの国家資格を取得。中国・北京中医大学での研修を経て、株式会社メディカルジャパンを創業。現在は顧問として後進育成やスポーツトレーナーの育成にも力を注いでいる。

目次

なぜ、仕事に真剣に向き合うのか。その理由がわからない若者もいる今、考えたいこと

編集部

前田社長は、患者さんからの信頼も厚く、現場での姿勢を見て「誠実な先生ですね」と言われることも多いと伺いました。そんな前田社長に、今あらためて伺いたいことがあります。

前田社長

ありがとうございます。はい、何でも聞いてください。

編集部

最近、若い求職者の方から「仕事に本気で向き合う理由がわからない」という声を耳にすることが増えたんです。頑張っても報われない、評価されにくい。そんな空気の中で、どこまで真剣になるべきなのか…。迷っている若い世代も多いように感じます。このような方に何かアドバイスはありますか?

前田社長

たしかに、そういう時代かもしれませんね。でも、私は「誠実であること」がすべての出発点だと思っています。私たちは、人の体に直接触れる仕事です。相手が自分を信頼して体を預けてくださる以上、その信頼に応えなければいけない。だからこそ、常に真剣でいる必要があるんです。

写真:治療を行う前田社長

編集部

何より誠実さを大事にされているんですね。それが、本気の根源である、と。

前田社長

そうです。どれだけ資格を取っても、どれだけ知識があっても、誠実さが欠けていたら信頼は生まれません。たとえば施術中のちょっとした言葉遣い、表情、姿勢。それだけでも患者さんには伝わります。

編集部

たしかに、言葉よりも空気や感触で伝わることってありますよね。

前田社長

ありますね。だから私は「癒す」だけではなく「再発を防ぐ」という意識を持っています。 「癒す」はその瞬間の気持ちよさ。でも「再発を防ぐ」は、その人の未来を考えること。痛みを取るだけでなく、再発を防いで、また元気に働ける体をつくる。そのためには、目の前の患者さんと真剣に向き合うしかないんです。

編集部

前田社長にとって誠実に向き合うとは、つまり患者さんの人生を守る覚悟を持つことなんですね。

前田社長

ええ。技術を磨くのも大切ですが、まずは人として誠実であること。そこからすべてが始まると思います。

編集部

前田社長の言葉を聞いていると、仕事に真剣に、本気で向き合う理由は、外に求めるものではなく、自分の中にある「誰かの役に立ちたい想い」なのかもしれません。結果や評価はすぐに見えなくても、誠実に向き合う姿勢そのものが、仕事を通じて人を、そして自分自身を守る力になる…。そんなことを、あらためて考えさせられます。

「気持ちよかった」で終わらせない。再発を防ぐために行う原因の見極めと伴走

編集部

前田社長は「再発を防ぐ」という言葉をよく使われますよね。

前田社長

そうですね。痛みを取ること自体は、あくまで応急処置にすぎません。本当に大切なのは、なぜ痛みが起きたのか、その原因を突き止めることなんです。

編集部

たとえば、どんなケースがありますか?

前田社長

スポーツ選手だと、左右の筋肉の使い方の違いでバランスが崩れ、同じ箇所を繰り返し痛めることがあります。一般の方も同じで、姿勢や睡眠、食生活など、日常の積み重ねが痛みをつくるんです。

編集部

うっ、なんだか私にも思い当たる節があります…!

前田社長

だから私は、どこが痛いかよりも、なぜそこに負担がかかっているのかを見ます。

編集部

なるほど。そこで国家資格で学ぶ知識が活きるんですね。

前田社長

そうですね。筋肉・神経・内臓・自律神経…どこに問題があるのかを切り分けて考える。必要があれば医療機関を紹介することもあります。部分的ではなく、体全体を見て判断するのが私たちの役割です。

編集部

そこまで見てくださるのは、患者さんも安心できますね。

前田社長

痛みの原因をA案・B案・C案のように仮説を立てて整理し、生活改善や受診の提案をします。薬で一時的に抑えるのではなく、自分の体を理解してもらうことが目的です。

編集部

まさに、伴奏しながら一緒に整えると。

前田社長

その通りです。治療は一方通行ではなく伴走です。患者さんの5年後、10年後を見据えて体をつくっていく。そのために必要なのは、先ほどもお伝えしたように技術よりもまず「誠実に伝えること」だと思っています。

感謝の言葉が、仕事を生きがいに変える。

編集部

長年、数多くの患者さんを診てこられた中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

前田社長

忘れられない患者さんがいます。90歳で大腿骨を骨折された方で、退院後のリハビリを私が担当しました。最初は歩くのも大変でしたが、毎日真面目に通ってくださって、95歳のときには海外旅行に行かれたんです。

編集部

95歳で海外ですか!それはすごいですね。

前田社長

そうなんです。息子さんから「母はスペインの街を歩いてきました」というお手紙をいただいたときは、本当に嬉しかったですね。患者さん本人だけでなく、ご家族まで笑顔になってくださる。あの瞬間に、「この仕事を続けてきて良かった」と心から思いました。

編集部

まさに、体を治すだけでなく、人生を支える仕事ですね。

前田社長

はい。患者さんの「ありがとう」という言葉は、何よりの報酬です。それは仕事の成果というより、「生きていて良かった」と思える瞬間。だから私はこの仕事を職業ではなく生きがいとして続けています。

編集部

その原動力はどこにあるのでしょうか。

前田社長

やっぱり「人の役に立ちたい」という想いですね。私自身、もともとスポーツが好きで、学生の頃はまわりの仲間がケガをして苦しむ姿をたくさん見てきました。思うように体が動かず、悔しそうにしている姿を見て、「自分に何かできることはないか」と感じたのが、この道を志すきっかけでした。

編集部

そうした経験が、今の患者さんへの姿勢にもつながっているんですね。

前田社長

そう思います。スポーツ選手でも一般の方でも、痛みを抱えていると日常が変わってしまう。だからこそ、その人の生活や夢を守るサポートがしたい。その人の人生を少しでも明るくできたら…。そういう想いが、今もずっと自分の中にあります。

写真:治療を行う前田社長

一人の力ではなく、チームの力で患者さんを支える

編集部

日々の現場では、スタッフの皆さんと連携しながら施術を行われていると伺いました。

前田社長

そうですね。この仕事は、一人で完結するものではありませんから、チームワークはすごく大事です。受付の対応や、準備・片付けの動き一つでも患者さんの安心感は変わりますからね。

編集部

たしかに、現場全体で雰囲気や印象が変わりますよね。

前田社長

はい。患者さんから見れば、スタッフ全員が治療院の顔です。だから、みんなが同じ方向を向いて行動できるように意識しています。

編集部

スタッフの方々も、それを感じながら働かれていそうですね。

前田社長

ありがたいことに、うちのスタッフは明るくて前向きな人が多いです。新人が入ったときも、自然に声をかけて教えてくれたり、失敗しても一緒にフォローしたり。誰かが困っていたら、お互いさまの気持ちで動ける環境ができていると思います。

編集部

現場での空気感が伝わってきます。

前田社長

治療は技術よりもまず信頼が大事だと話しましたが、それは患者さんとの間だけじゃなく、スタッフ同士も同じ。お互いに信頼できる関係があるからこそ、安心して患者さんと向き合えると思っています。

編集部

すごく本質的なお話ですね。

前田社長

結局、いい治療をするにはいいチームが必要なんです。個人の力だけでなく、周りと協力しながら動ける人ほど成長が早い。だから、これから入ってくる若い人にも、まずはその空気を感じてほしいですね。

仕事にどこまで本気になるかは、自分で決めていいし、本気になる理由がもしも見つからなくても、誠実に向き合う意味はある。

写真:治療を行う前田社長

編集部

前田社長のお話を伺っていると、誠実に仕事に向き合うというのは、単に「真面目に働く」ということだけではないように感じます。

前田社長

そうですね。誠実さって、結局は自分のためなんです。手を抜いたら、あとで必ず自分に返ってくる。だから、どんな仕事でも本気でやったほうが、結局は楽なんですよ。

編集部

なるほど。「人のために」見えることが、実は「自分のため」でもあると。

前田社長

はい。私たちの仕事は患者さんの体を扱うので、誤魔化しがきかない世界です。でもそれは、他の仕事でも同じだと思います。相手が顧客であっても、同僚であっても、嘘をついたり、適当に済ませたりすれば、必ずどこかで信用を失う。だから、誠実であるということを、ずっと大事にしています。

編集部

誠実さを積み重ねた先にしか、信頼は生まれないということですね。

前田社長

ええ。信頼されることが増えると、仕事が楽しくなります。感謝の言葉をもらえたり、成長を感じられたり。そういう瞬間が、生きがいになっていくんです。だから私は、仕事を「生きる一部」だと思っています。

編集部

前田社長の言葉を借りると、本気になる理由は、最初から見つかるものではなく、誠実に向き合い続けた先で自然と育っていくものなのかもしれません。その歩みの中で生まれる信頼こそが、仕事を続ける理由になっていく…。前田社長の姿勢は、仕事と向き合うすべての人に、本気でいる理由をそっと思い出させてくれるようでした。本日は、どうもありがとうございました!

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この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

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