「PRは、経営だ。」株式会社ネタもと 本村社長が語る、中小企業が広報を自走化する重要性

企業の魅力を世の中に伝える「PR」。しかし日本では、広報を専門部署として持つ企業はまだ多くありません。

そんな中ですべての人にPRを!」をミッションに、広報の自走化の実現で「日本の中小企業を元気にしたいという想いのもと、学生時代のイベント運営から年商17億円のセールスプロモーション事業、そしてPRプラットフォーム、中小企業の広報自走化支援へと進化させてきたのが、株式会社ネタもと 本村社長です。

お話を聞くと、営業・企画・人事など、あらゆる仕事に通じるヒントが詰まっていました。

お話を伺った人

株式会社ネタもと

代表取締役社長 本村 衆

青山学院大学経済学部在学中に19歳で起業し、学生ディスコイベントの企画・協賛営業からセールスプロモーション事業を展開。年商17億円規模まで成長させた後、水餃子専門店などの新規事業も経験。PRプラットフォームの可能性に気づき、セールスプロモーション事業を譲渡して株式会社ネタもとを率いる。40年以上一貫して経営の現場に立ち、中小企業が自ら広報に取り組む「PRの自走化」を通じて、日本を元気にすることを目指している。

目次

大学生イベントの成功から19歳で起業

写真:メディアリレーションズ部の森田さんに社内をご案内いただきました。

編集部

本村社長は19歳で起業した経歴の持ち主ということで、お話を伺うのが楽しみです。まずは、当時から現在までのご経歴をざっくり教えていただけますか?

本村社長

そうですね。大学は青山学院の経済学部でしたが、普通にサークルに入って、授業に出て…という学生生活があまり楽しくなくて。「どうせやるなら、もっと面白いことをやろう」と思って、六本木のディスコで学生向けのパーティーを企画し始めたのがきっかけです。

編集部

そこが、後のビジネスにつながる原点なんですね。

本村社長

最初の動機は本当に単純で、「女の子にモテたい」でしたよ。お金儲けもうまくいけばうれしい、くらいの感覚でした。でもやっていくうちに、300人規模のパーティーが当たり前になって、10店舗合同で3,000人集客するイベントまでやるようになりました。

編集部

学生の規模じゃないですね…。どうやってそこまで広げていったんでしょう。

本村社長

ネットもない時代ですから、全部アナログです。毎日のようにディスコに通って「この子は友達が多そうだな」という人に声をかけて、販売役になってもらう。「10枚売ったら無料で入れるよ」「もっと売ったらVIP席で遊べるよ」と、ニンジンをぶら下げて、どんどん輪を広げていった感じですね。

編集部

今でいう「インフルエンサー」を見抜いて、巻き込んでいった感じですね。

本村社長

そうですね。人を見る目や社交力はそこで鍛えられました。ディスコの売上にも貢献していたのでスタッフからも大事にされましたし、顔パスで色々な店に入れるようにもなりました。それでパーティーが大きくなり、企業の宣伝部に協賛の営業もするようになったんです。トヨタさんや日本航空さんなど、大手の宣伝部に電話して「学生イベントに協賛しませんか」と。

編集部

すごい行動力ですね…!

本村社長

景気が良い時代だったこともあって、協賛金もかなり集まりました。初任給の4〜5倍は毎月稼いでいましたね。

編集部

19歳でそこまで動いていたとなると、もう「仕事」そのものですね。

本村社長

そうなんです。企業と取引するためには、学生の個人名義ではダメなので、19歳で会社を作りました。「会社を作ろう」と決意したというより、「法人じゃないと振り込んでもらえないから作った」に近いですけどね。

編集部

法人化は、せざるを得なかった、と。でも「好きなことをやっていたら、気づいたら立派なビジネスになっていた」ケースですよね。

本村社長

ええ、まさにそうですね。

編集部

最初は遊び半分でも、ちゃんと数をこなし、いつしかお客さんや企業から信頼されるようになっていく…。若いビジネスパーソンにも、「最初から完璧な目的を決めなくても、目の前の仕事を本気でやれば次が開ける」というのは伝えたいですね。

属人的ビジネスの限界と「仕組み化」に気づくまで

写真:理念浸透を目的に2019年から毎朝続く朝礼(ネタもとでは超礼)

編集部

そこから、どうやってセールスプロモーション事業に発展していったのでしょうか?具体的な流れについて、教えてください。

本村社長

イベントで大手企業とつながった流れで、「どうやって商品を売るか」を一緒に考えるセールスプロモーションの仕事に広がっていきました。食品メーカーやIT企業が多くて、販促キャンペーンや会員獲得の企画などを請け負うようになって…。

編集部

大学生のパーティーから、完全に「プロの仕事」ですね。

本村社長

カード会社さんと組んで、大学生向けのクレジットカード会員を大量に獲得するプロジェクトもありましたよ。加盟店を自分たちで開拓して、ステッカーを貼ってもらい、「このカードなら10%オフになりますよ」と特典をつける。そうやって1万人くらい会員を集めたこともあります。

編集部

営業力と企画力の掛け算ですね。20代でここまでやれたのはすごいです…!

本村社長

ありがたいことに、年商は17億くらいまでいきました。ただ、そのときに大きな課題にも気づいたんです。セールスプロモーション業界はとてもアナログで、その年の仕事が翌年も来るとは限らない。商品も自社のものがあるわけではなく、毎回ヒアリングしてプランを組み立てていく。完全に属人的なビジネスなんですね。

編集部

人に依存するビジネスモデルだった、と。

本村社長

そうです。新卒社員を採用しても、利益を生むまでに5年くらいかかる。やっと育ったと思ったら、お客さんを持って独立してしまう人もいる…。「これは会社の仕組みとして弱いな」と、だんだん感じるようになりました。そこで思ったのが、「仕組みで会社を伸ばしたい」ということですね。属人的な営業力だけに頼るのではなく、誰が入っても一定の成果が出る仕組みをつくる。仕事を「根性」や「気合い」だけで回すのは限界がありますし、働く人も疲弊しますから。

編集部

たしかに…。特定の仕事を誰でも再現できるようにする視点って大事ですよね。自分しか知らない資料や情報を抱え込まずに、フォーマット化して共有するだけでも違いそうです。

水餃子の失敗から生まれたPRプラットフォーム

編集部

セールスプロモーションから、今のPRプラットフォーム事業にたどりつくまでに、飲食ビジネスも経験されたそうですね。

本村社長

はい。クライアントに食品メーカーさんが多かったこともあり、「自分たちでも飲食ビジネスをやってみよう」と思ったんです。日本では焼き餃子が主流ですが、中国や台湾では「餃子」といえば水餃子。そこで「本当においしい水餃子を日本で広めよう」と、水餃子専門店をデパ地下や路面店含めて5店舗ほど展開しました。

編集部

当時はそこまでメジャーではなかった水餃子…。物珍しさもあって、ヒットしそうなイメージはありますが…。

本村社長

フランチャイズ展開も視野に入れて、かなり本気でやったんですよ。ただ…、結果的には大失敗でした。そのとき強く感じたのは、「片手間で飲食をやるのは、飲食のプロに失礼だ」ということです。

編集部

本業が別にあるまま、中途半端に手を出してしまった、ということでしょうか。

本村社長

その通りです。本気で飲食をやっている人たちの世界に、生半可な覚悟で入っていくべきではなかった。この経験は痛かったですが、「自分たちが本当に価値を出せる領域はどこか」を考えるきっかけになりました。

編集部

そこから、今のPRプラットフォームビジネスの構想が生まれたんですね。

本村社長

はい。セールスプロモーションの現場では、「メディアに出たい企業はたくさんいるのに、そのやり方がわからない」という声をずっと聞いていました。一方で、メディア側も「ネタになる情報を探している」。この両者をインターネット上でマッチングする仕組みを作れば、属人性を減らしつつ、価値を提供できると考えたんです。

編集部

当時はまだ、インターネット上の「記者クラブ」のようなサービスはなかったんですよね。

本村社長

そうです。メディア登録は最初100人ほどでしたが、ビジネスモデルとしての手応えは感じていました。ただ、最初は大手企業ばかりをターゲットにしていたので、私の営業力がないと売れない。若い社員にはなかなか売れない。ここでも「属人性の壁」にぶつかりました。

編集部

そこで、ターゲットを中小企業に切り替えた、と。

本村社長

そうです。私は自分自身が中小企業の社長なので、「社長に直接話したほうが早い」と思ったんですね。中小企業は広報部がないことも多いですから、「ノウハウを教えながら、一緒に広報担当者を育てていく」というスタイルに変えました。

編集部

それが、今の「自走化」をゴールにしたビジネスモデルにつながっているわけですね。

本村社長

ええ。弊社のゴールはメディア露出ではなく、「お客様が自分たちでPRできるようになること」なんです

「PR=経営」という考え方と、会社を強くする広報

写真:株式会社ネタもと作成「ネタもとLIFEBOOK」

編集部

PRそのものの考え方について伺いたいです。多くの人は「PR=広告宣伝」と思いがちですが、本村社長の捉え方はかなり違いますよね。

本村社長

私の定義では、PRは「パブリックリレーションズ」、すべてのステークホルダーのファン作りです。お客さんだけでなく、社員、求職者、株主、取引先など、会社に関わる人すべてとの関係づくりですね。

編集部

商品露出だけじゃない、と。

本村社長

そうです。多くの企業は「自社商品がテレビに出て売上を伸ばしたい」と考えていますが、それはあくまで一部です。たとえば、福利厚生や社員教育の制度、働き方の工夫なども、メディアが知りたがっている情報なんです。

編集部

会社が取り上げられると、採用や社員のモチベーションにも直結しますよね。

本村社長

その通りです。自分たちの会社がメディアに出ることで、「自分の会社は世の中から認められている」と誇りに感じる社員は多いんですよ。それによって離職率も下がるし、採用にもプラスになるわけです。だからこそ、PRは経営戦略の一部として考えるべきなんです。

編集部

広報担当だけの仕事ではなく、経営のど真ん中にあるということですね。

本村社長

はい。ところが現実には、広報部が総務の横に置かれていたり、経営から遠い位置にある企業が多い。私は「経営戦略の中にPR戦略を入れてください」と、20年以上言い続けてきました。

編集部

PRに関わる人も、目標指標として「記事になったかどうか」だけを追いがちだと思うのですが、そこからどう変えていけばいいでしょう。

本村社長

まずは「何のファンを増やしたいのか」を考えることですね。商品なのか、会社そのものなのか、働き方なのか。それが決まれば、メディアに出た後、ホームページや営業資料、採用ページなどにどう活かすかも見えてきます。

編集部

露出して終わりではなく、「会社を強くするためにどう使うか」まで設計するわけですね。

本村社長

そうです。弊社は独自のPR診断も用意していて、経営者向け30問、担当者向け100問で、広報力を点数化しています。契約当初は点数が低いですが、3ヶ月ごとに診断して、プログラムを受けることで点数が上がっていく。これが自走化の指標になります。

編集部

なるほど…。PR会社に永続的に払うコストではなく、「自社で回せるようになるための投資」と考えるわけですね。この診断、すごく面白いですね。評価が見えると、広報担当者のモチベーションや評価制度にも反映しやすそうです。

本村社長

そこが大事です。最初10点だった担当者が、1年で50点になったら、それをちゃんと評価してあげるんです。

編集部

PRや広報の仕事って、施策がダイレクトに数字に寄与したかどうかがわかりにくくて、定量ではなく定性の評価しかできないのかなって思い込んでいましたけど、こんな風に自分の仕事を点数で見える化することができるんですね…!これなら、自分の成長も実感できそうです。

「自分がファンになれる会社」を選んで働こう

編集部

ここまでお話を伺って、御社は「社員教育」にもかなり力を入れていると感じました。先ほど参加させていただいた、朝礼…ではなく「超礼」の雰囲気も印象的でした。

株式会社ネタもとでは、全社員で行う朝礼を『超礼(ちょうれい)』と名付け、2019年から実施している。社内の情報共有や社員のプレゼン力向上、そして社内文化の醸成を目的として続けている取り組み。

写真:実際に参加させていただいた超礼の様子

本村社長

今日ご参加いただいた超礼は、実は毎朝やっていて、「会社のために働くのではない。自分の人生を豊かにするために仕事をするんだ」という考え方を浸透させるための場なんです。

編集部

一人ひとりが前に出て大声でスピーチして、周りがフィードバックして、社訓も唱和して…。見ているだけで、かなりエネルギーを感じましたよ。

本村社長

弊社は新卒でも、5月になったら人前でスピーチしてもらいます。最初の1年くらいは完全にトップダウンでしたけど、今は社員が自分の言葉で話す場になってきましたね。「個人は有限で組織は無限である」という話をずっとしていて、超礼を通じてそれを感じてもらいたいと考えています。

編集部

採用の場面でも、求職者にはこの「ネタもとLIFEBOOK」を熟読してきてもらうと伺いました。

本村社長

経営って、ある意味宗教だと思っていて、入信基準を決めているんです。事前に熟読してもらい、面接で「どこに共感しましたか」と聞く。それを評価シートで丸をつけるようにしていて、丸が何個ついた人間だけ上に上げる。一次・二次・三次と質問する人間ごとに、こういう内容で質問する、というのも全部決めています。

編集部

採用時のレギュレーションが徹底されていますね。

本村社長

どこの会社も経営理念とかミッションってあるじゃないですか。ただ、お飾りになっている企業がほとんどなんですよ。トップが本気で達成するというコミットメントがあるかどうか。社員が理解して、行動しているかどうか。そこが一番大事です。

編集部

なるほど…。求職者が会社を選ぶときも、その会社の考え方に本当に共感できるかどうかを、ちゃんと見たほうがいいですね。

本村社長

日本の企業の99.7%は、中小企業なんですよ。ここでいう中小企業は社員数1,000人未満の会社です。弊社と取引をして、ちゃんと経営戦略の中にPR戦略を入れると、ものすごく伸びる企業様が本当に多くて。弊社は、中小企業が儲かれば日本を元気にするという社会的意義を持って、このビジネスをやっているんです。

編集部

クライアントだけでなく、社内外の関わる人たち全体で「良い循環」をつくるイメージですね。

本村社長

ビジネスがちゃんと続くためには、やっぱり三方よし。売り手よし、買い手よし、世間よしです。弊社でいうと、売り手であるネタもとはちゃんと利益を出す。買い手であるお客さんは、自分たちでできるようになったら、弊社にかかるコストがなくなるからよし。社会的にも、中小企業が元気になれば日本が元気になるからよし。そこに社員よし、家族よし、取引先よしも入れて、五方よし、七方よしみたいなビジネスモデルをやっている感じですね。

写真:ネタもとの経営者プログラムのセミナーで話をする本村社長

編集部

今日のお話で、PRは単なる企業の宣伝ではなく、社会と企業の関係を育てる活動なのだと実感しました。その考え方を社内で形にしている「超礼」は、現在働く私たちが、自分の仕事や会社との向き合い方を見直すヒントにもなると感じました。本村社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました。

リンク:株式会社ネタもと_採用ページ

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