捨てられる服に”価値”を見つけた|株式会社ウィファブリック福屋社長の【好きから仕事をつくる】キャリア論

大量に生産され、まだ着られるのに捨てられていく服たち。

前職の商社でその業界課題を痛感した、株式会社ウィファブリック・福屋社長は、そこに“新しい価値”を見いだしました。

捨てられるはずの在庫を、必要とする人に届けたい。

この気づきから生まれたのが、在庫を資源に変えるサービス「スマセル」。そして、その根底には「好きなことから仕事をつくる」という福屋社長自身のキャリア観があります。

ファッションの未来も、個人のキャリアも、“小さな違和感”と“好き”から動き出す。

今回は、事業の成り立ちから、現場に根ざしたサービスづくり、さらに20代がキャリアを築くうえで実践できるアクションまで、お話を伺いました。

お話を伺った人

株式会社ウィファブリック

代表取締役 福屋 剛

アパレル商社で約10年間勤務し、商品の企画や生産の現場に携わる中で、大量生産の裏側で生まれるB品や在庫の存在に問題意識を持つ。2015年に独立し、捨てられるはずだった在庫を必要とする人に届ける仕組みづくりに挑戦。現在は、ブランドの在庫を公開し流通させるオンラインプラットフォーム「スマセル」や、商品を実際に見て触れられる複合施設「スマセルサステナブルコミューン」の運営を統括する。少数精鋭の組織づくりを掲げ、在庫を資源として循環させる取り組みを進めている。

目次

在庫の山から始まった、ウィファブリック立ち上げの決断

編集部

福屋社長は、もともと繊維商社で長く働かれていたそうですね。その現場で見た“在庫の山”が、今の事業の原点だったと伺いました。そこから、どのように今のウィファブリックにつながっていったのでしょうか。

福屋社長

おっしゃるとおり、私はもともと商社出身で、繊維関連の仕事に長く関わってきました。大量に服を作って、大量に流通させる。そういう時代のど真ん中にいたんです。年間で3000億着もの洋服が廃棄されており、廃棄されるものの中には、生産工程で3~5%出るB品や企業が残した滞留在庫、一般家庭から出る古着等様々なものが混在しております。B品や滞留在庫においては、ちょっとした傷や汚れがあるだけで、本来はまだまだ着られるものです。

編集部

まさに「大量生産・大量廃棄」の現場ですね。一般の人からしたら「どこがダメなの?」というレベルのものも多いですよね。

福屋社長

そうなんです。でもそういう服が、普通に捨てられていく…。それを見続けるのが、だんだんつらくなってきました。「この在庫を必要な人に届けられたらいいのに」と、ずっとモヤモヤしていたんです。

編集部

仕事で抱えたモヤモヤが、そのままキャリアの転機になっていったわけですね。これは、今の仕事に違和感を持ち始めた20代にとっても大きなヒントになりそうです。

福屋社長

ええ。社内では、廃棄する前に社員向けの社販があるんですが、そこに出すと、B品でもすごく売れるんですよ。安ければ全然気にしない、むしろ喜んで買う人がたくさんいる。

編集部

その光景を見て、「やっぱり需要はあるんだ」と確信されたということですね。

福屋社長

そうですね。「捨てる」しか選択肢がない在庫を、「欲しい人に届ける」選択肢に変えられるんじゃないかと。そこから、在庫を資源に変えて循環させる事業を本格的に考え始めました。

捨てられていた服が売れていく現場で見えた課題

編集部

そこから、今のオンラインプラットフォーム「スマセル」が生まれていくんですよね。

福屋社長

はい。ファッションブランドやメーカーが抱えている在庫を、必要としている人に届けるオンラインのプラットフォーム事業が「スマセル」です。今は7000以上のブランドの商品を取り扱っていて、最大95%オフで買えるものもあります。

編集部

ユーザー数もかなり増えていると伺いました。

福屋社長

登録ユーザーは、今は30万人弱くらいですね。ただ「安く買えるサイト」ではなくて、買うことでCO2の削減量が見えるようにしています。

編集部

買い物をすると、環境へのインパクトもわかるんですね。なんだか斬新ですね…!

福屋社長

そうです。捨てられるはずだった在庫が、誰かのもとでちゃんと使われる。それによってどれくらいCO2が減らせたかが数字で出るようになっています。「ただ安いから買う」ではなく、「安くて、しかも社会問題の解決にもつながるから買う」という行動変化を後押ししたいんです。

編集部

ただ安いからではなく「社会問題を一緒に減らせる買い物」に変わっていくのは、大きな転換ですね。数字で見えることで、ユーザーも“自分の選択が環境を動かしている”と実感できそうです。

福屋社長

そうですね。私自身も、在庫の山を見ていた頃は「もったいないな」「なんとかできないかな」という違和感からスタートしました。そこから「課題」として捉え直したことで、今の事業につながっています。

編集部

普段の仕事で感じた引っかかりを、そのまま流さずに深掘りしていく。そこから、新しいキャリアが生まれてくるということですね。

セールス・マーケ・CSがつながる仕組みづくり

編集部

スマセルの現場では、どんな職種のメンバーが活躍しているのでしょうか?

福屋社長

大きく分けると、ブランド側と向き合うセールス、ユーザー側に向き合うマーケティング、そしてカスタマーサクセス(CS)ですね。どれも同じくらい重要です。

編集部

セールスは在庫を預けてくれるブランドやメーカーさんの窓口。マーケはユーザーにどう見せるかを考える。CSは、実際に利用してくれているお客さんの声を受け取る担当、というイメージでしょうか。

福屋社長

はい。以前は部署ごとの動きがバラバラになってしまうこともありましたが、今はかなり連携するようになってきました。ブランド側からの感謝の声はセールスが拾いますし、ユーザー側の声はCSが一番直接聞いています。

編集部

お客様の「嬉しい声」が、ちゃんと社内で共有される仕組みがあるんですね。そういう声って、現場のメンバーのやる気にもつながりますよね。

福屋社長

以前は、社内でMVPを決めて表彰する仕組みもやっていました。今はその制度はありませんが、週1回の“グッドニュース共有”の時間があり、そこで前向きな出来事を話すようにしています。仕事のことでもいいし、プライベートの小さな嬉しい出来事でもいい。その時間だけは、意識的に話すようにしているんです。

編集部

それ、すごく素敵ですね。雑談のようでいて、実は仕事の土台になっていそうです。

福屋社長

普段の業務時間は、それぞれかなり集中して働いています。だからこそ、ランチの時間やグッドニュースの共有の場は、社内の人となりが見える大事な時間ですね。

編集部

一緒に働く人がどんな価値観を持っているのかがわかると、「この人だからこういう仕事をしているんだ」といった理解が深まりそうですね。

福屋社長

そう思います。数字だけ追いかけるのではなく、人との関係をどう作っていくかも、仕事の大事な要素なので。

現場の体験を生かしたサービスを提供したい

編集部

スマセルはオンラインプラットフォームが主力事業ですが、リアルの場づくりにも力を入れていらっしゃいますよね。

福屋社長

はい。「スマセルサステナブルコミューン」というリアルの複合施設を運営しています。そこでは、古着やアウトレットの服を実際に見て、触って、試着してもらえるようにしています。

編集部

オンラインだけではわからない「質感」や「サイズ感」を、リアルで体験できる場所ですね。施設の中も、とってもオシャレです…!

福屋社長

ありがとうございます。ふだんはスマホやPCで見て終わる方にも、一度足を運んでもらうことで、在庫の成り立ちや背景にも関心を持ってもらえると感じています。実際の反応を見ることで、僕ら自身もサービスの改善ポイントに気づけるんですよ。

編集部

たしかに、現場の空気に触れると見えてくるものがありますよね。

福屋社長

そうなんです。僕らは大人数の組織にするより、一人ひとりの動きが太くなる体制を目指しています。そのためにも、仕組みの部分はデジタルで整えつつ、現場ではお客さんがどこに戸惑っているのかを直接見に行く。二つを続けてやることで、改善のスピードがぐっと上がると思っています。

何者でもない20代が今日からできる小さな一歩

編集部

ここからは、これからキャリアをつくっていきたい20代へのアドバイスを伺いたいです。ファッション業界で働きたいけれど、自信がない…。そんな相談を私たちもよく受けます。

福屋社長

気持ちはすごくわかります。でも、最初から完璧なスキルを求めなくていいと思うんです。まずはアルバイトでもインターンでもいいので、「好きな業界に一回飛び込んでみる」のが一番わかりやすいです。

編集部

現場に入ってみないと、自分に向いているかどうかもわからないですしね。

福屋社長

そうなんです。自分の強みが何なのかわかっていない人も多いので、まずは現場に触れることで気づきが生まれます。やっているうちに、「接客が得意かも」「数字を見るのが好きかも」といった自分の特性が見えてくると思いますよ。

編集部

仕事以外の「遊び」からスタートしてもいい、と仰っていましたよね。

福屋社長

はい。私は、遊びの延長が仕事につながるのも全然アリだと思っています。たとえば、自分の趣味をテーマにして、SNSに1日1本、1年間投稿し続ける。365本コンテンツを作れば、それだけで立派な実績ですよね。

編集部

好きなことを続けていくと、自分がどんな人間なのかも少しずつ見えてきますよね。福屋社長ご自身も、そういう“自分を知る時間”を意識してつくってこられたのでしょうか。

福屋社長

はい、私は学生の頃、いわゆる「自分探し」で海外を旅していた時期がありました。単純に旅が好きだったというのもありますが、知らない場所に一人で行くと、自分を客観視できるんです。

編集部

コミュニティを離れて、自分と向き合う時間をつくる。

福屋社長

別に海外じゃなくてもいいと思いますが、いつもの環境を一度離れてみるのはおすすめです。そのうえで、「自分は何が好きか」「何をしている時間が楽しいか」を、紙に書き出してみる。そこに時間をかけてみてほしいですね。

編集部

最後に、未経験からファッション業界やマーケティングに挑戦したい人が、採用の場で意識すべきポイントも伺いたいです。

福屋社長

スキルがない状態で応募する場合、やっぱり「人柄」と「素直さ」が大事だと思います。質問に対して、きちんとそのまま答えられるかどうか。取り繕ったり、話をねじ曲げたりせずに、自分の弱さも含めて伝えられるか。

編集部

自分を大きく見せるのではなく、「ここはできないので、学びたいです」と正直に言えるかどうか。

福屋社長

はい。スキルは後からいくらでも身につきます。素直に吸収できる人は、成長スピードも速いですから。20代のうちは、「完璧な自分」を見せるのではなく、「これから伸びていく自分」をどう見せるかを意識してみてほしいですね。

編集部

アルバイトでもインターンでも、まずは一歩踏み出してみる。好きなことを遊び感覚で発信してみる。環境を変えて、自分と向き合う時間を持つ。そして、素直さを持ってチャンスをつかみにいく。どれも、今日から少しずつ始められるアクションばかりです。在庫を資源に変える発想や、少人数でも成果を出すための働き方に関するお話も印象的でした。福屋社長、いろいろとお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。

リンク:株式会社ウィファブリック_採用ページ

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この記事を書いた人

「ビギナーズリンク」の編集部です。【スキルの余白は、伸びしろだ。】をコンセプトに、キャリアアップやスキルアップを目指す若年層が「未経験」を「武器」に変えていけるよう、転職や就職に関する有益な情報を発信します。

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