転職は逃げじゃない|キャリアアドバイザーが教える正しい判断基準と成功戦略

「今の仕事が辛いから辞めたいけれど、これは逃げなんじゃないか」「一度逃げたら、一生逃げ癖がつくんじゃないか」。そんな不安に押しつぶされそうになっていませんか?真面目な人ほど、現状の苦しさを自分の忍耐力不足のせいにして、限界まで我慢してしまいがちです。しかし、声を大にして言わせてください。自分の身を守るための撤退は、決して「逃げ」ではありません。
終身雇用が当たり前だった時代とは違い、今は自分のキャリアを自分で守らなければならない時代です。厚生労働省やマイナビのデータを見ても、多くの人が人間関係や労働条件を理由に職場を去っています。それは恥ずかしいことでも、弱いことでもありません。より良い環境を求める「生存戦略」なのです。
ただし、何も考えずに衝動的に辞めることにはリスクがあります。この記事では、転職は逃げなのかをテーマに、公的データに基づいて「戦略的撤退」と「無謀な逃亡」の違いを明確にし、あなたが後悔しない選択をするための判断基準を解説します。
阿部 翔大逃げることは悪いことじゃありません。沈みかけの船からボートに乗るのは賢い判断ですよね。大切なのは、次に乗る船をどう選ぶかという戦略を持っているかどうかですよ。
株式会社MEDISITE キャリアコンサルタント
阿部 翔大


転職は本当に逃げ?データで見る転職理由の実態
みんなは一体どんな理由で会社を辞めているのでしょうか。建前ではなく、データに表れた本音を見ることで、あなたの悩みが特別なものではないことがわかります。
人間関係と労働条件が退職の大きな要因
マイナビの「転職動向調査2025年版(2024年実績)」によると、転職活動を始めた理由として「職場の人間関係が悪かった」を挙げた人は21.2%にのぼります。また、厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」では、自己都合による離職理由として「労働条件(賃金以外)がよくなかった」が28.2%と最も高く、「人間関係がうまくいかなかった」も23.0%と上位に入っています。多くの人が、仕事内容そのものよりも、働く環境や対人関係に限界を感じて「逃げ」を選択しているのです。


【参考】マイナビ|転職動向調査2025年版



人間関係が理由で辞める人は全体の2割以上います。つまり5人に1人です。決してあなただけが特別弱いわけじゃないので、自分を責めないでくださいね。
「不満」からの転職は成功するのか?
ネガティブな理由で転職して、その後の満足度はどうなのでしょうか。マイナビの調査によると、転職後に「満足している」と回答した人は43.2%、一方で「満足していない」人は18.4%です。つまり、何かから逃げるように転職しても、4割以上の人は良い環境を手に入れています。しかし、約2割の人は不満を抱えたままです。この差は、単に「嫌だから辞める」のか、それとも「次はこれを手に入れる」という目的があるのかによって生まれます。





データを見ると、みんな結構ドロドロした理由で辞めています。だから、理由がネガティブでも自分を責めなくて大丈夫です。大事なのは面接でそれをどうポジティブに変換するかですからね。
正しい「逃げ」と間違った「逃げ」の違い


同じ「逃げ」でも、未来につながる逃げと、後悔する逃げがあります。その違いを明確にしましょう。
正しい逃げ=戦略的撤退
正しい逃げとは、これ以上その場所にいても状況が改善せず、心身の健康やキャリアが損なわれると判断して離れることです。「パワハラが横行している」「業界全体が衰退していて将来性がない」「会社の倫理観がおかしい」といった環境要因が強く、自分の努力ではどうにもならない場合が該当します。これは逃げではなく、リスク管理です。



自分ではどうにもできない問題から離れるのは、正しい判断です。火事の建物から逃げることを誰も責めませんよね。職場も同じですよ。
間違った逃げ=衝動的逃亡
間違った逃げとは、一時的な感情や、乗り越えるべき課題から目を背けて辞めることです。「一度怒られたから嫌になった」「なんとなく仕事がつまらない」「もっと楽な仕事があるはずだ」といった理由がこれに当たります。自分の課題(スキル不足やコミュニケーション不足)を棚上げにして環境を変えても、次の職場でも同じ壁にぶつかり、早期離職を繰り返すことになります。



月曜の朝に辞めたくなるのは誰でもあります。でも、3ヶ月連続でその気持ちが続いているなら、それは一時的じゃないですからね。


今すぐ転職して逃げるべき職場の5つのサイン


以下のサインが出ている場合は、迷わず逃げる準備を始めてください。これらは個人の努力で解決できるレベルを超えています。
心身の健康に影響が出ている
「朝起きると涙が出る」「日曜の夜に動悸がする」「食欲がない、または過食になる」。これらは体が発しているSOSです。うつ病や適応障害になってしまうと、回復に長い時間がかかり、キャリアに大きな空白期間が生まれてしまいます。健康を害してまで続けるべき仕事はこの世に存在しません。



体が壊れたら元も子もありません。メンタル不調で休職した人の復帰率は決して高くないですし、次の転職活動も難しくなります。限界の一歩手前で逃げるのが賢明ですよ。
パワハラ・セクハラが常態化している
人格を否定するような暴言、暴力、無視、過度な要求などが日常的に行われている職場は異常です。マイナビのデータでも「職場の人間関係が悪かった」は21.2%と高い割合を占めています。ハラスメントは個人の問題ではなく、それを許容している組織の風土の問題です。あなたが耐えても状況は変わりません。



ハラスメントをする人は次のターゲットを探すだけで、絶対に変わりません。あなたが耐える必要は全くないです。証拠を残して、さっさと逃げましょう。
サービス残業など労働条件が法律違反レベル
厚生労働省の調査で離職理由トップの「労働条件」(28.2%)には、長時間労働や賃金未払いも含まれます。タイムカードを切ってから働かせる、残業代が出ない、休日が全く取れないといった違法行為がまかり通っている会社には未来がありません。搾取されるだけ搾取されて捨てられる前に逃げましょう。



違法労働を強いる会社に忠誠心を持つ必要はありません。むしろ、労働基準監督署に通報してから辞めるくらいの気持ちでいいですよ。
会社の将来性・経営状態が危ない
「給与の支払いが遅れる」「主要な取引先が激減した」「優秀な人が次々と辞めていく」。マイナビの調査でも「会社の将来性・安定性に不安を感じた」という理由は20.3%にのぼります。沈む船に最後まで残る義理はありません。



優秀な人から辞めていくのは沈没のサインです。逆に言えば、早く気づいて動いた人が賢いということですね。最後まで残るのは美談じゃなくて、ただのリスクですよ。
ロールモデルとなる先輩・上司がいない
職場に「こうなりたい」と思える人が一人もいない場合、そこに長くいてもあなたの理想とする成長は望めません。5年後、10年後の自分の姿が、疲弊しきった上司の姿だと想像して絶望するなら、場所を変えるべき時です。



尊敬できる上司がいない職場は、成長の天井が見えている証拠です。そこに居続けても、その上司と同じ未来が待っているだけですからね。
転職で逃げてはいけないケースとタイミング
逆に、今すぐ辞めるべきではないケースもあります。ここを見誤ると、後悔したり、条件が悪化したりするリスクが高まります。
「嫌なこと」から逃げるだけで「次」が決まっていない
次を決めずに退職するのは、精神衛生上は良くても、経済的にはハイリスクです。空白期間が長引くと足元を見られ、不本意な条件で妥協せざるを得なくなります。在職中に活動し、内定を得てから辞めるのが鉄則です。
辞めてから活動すると、焦りから判断力が鈍ります。次もブラックを引く確率が跳ね上がるので、今の仕事を続けながら水面下で動くのがセオリーです。
入社してまだ半年未満(明らかなブラックを除く)
入社直後の「思っていたのと違う」という違和感は、単に環境に慣れていないだけの可能性があります。マイナビの調査でも入社後に苦労することとして「仕事に慣れること」が29.3%挙げられています。石の上にも三年とは言いませんが、まずは半年〜1年、一通りの業務を経験してから判断しても遅くはありません。
新しい環境に適応するのにはエネルギーが要りますから、入社3ヶ月はみんな辛いです。半年経ってもまだ辛いなら、その時に考えましょう。
自分の課題から目を背けている時
「ミスをして怒られたから辞めたい」「仕事が覚えられないから辞めたい」。これは次の職場でも必ず直面する課題です。今の職場で改善の努力(メモの取り方を変える、報連相を徹底するなど)を一度もせずに辞めると、逃げ癖がつきます。一度本気で取り組んで、それでもダメなら適性の問題として割り切れます。
自分が変われば解決する問題なら、一度だけ本気で取り組んでみてください。それでダメなら堂々と辞められますし、面接でも説得力が出ます。
逃げの転職を成功させる5ステップ


逃げの転職を「キャリアアップ」に変えるための具体的な手順です。ネガティブな動機をポジティブな結果に変えましょう。
Step 1. 「逃げる理由」を「求める条件」に変換する
「残業が多くて嫌だ」は「効率的に働いて成果を出したい」へ。「人間関係が悪い」は「チームワークを重視する環境で貢献したい」へ。ネガティブな退職理由の裏返しには、必ずポジティブな希望が隠れています。これを言語化することで、面接での説得力が格段に上がります。



ネガティブな理由も、言い方を変えればポジティブになります。逃げたい理由を紙に書いて、その裏返しを考えてみてください。それが志望動機になりますよ。
Step 2. 自分の市場価値を確認する
感情だけで動かず、今の自分が転職市場でどう評価されるかを把握します。エージェントに登録し、紹介される求人の年収や条件を見れば、現実的なラインが見えてきます。高望みしすぎて決まらないリスクや、安売りして年収ダウンする事態を防げます。



今の自分の市場価値を知らないまま動くのは危険です。エージェントに登録して、どんな求人が来るか見るだけでも現実がわかりますよ。
Step 3. 譲れない条件を3つ決める
逃げの転職では「今の苦痛を取り除くこと」が最優先になりがちですが、それだけでは不十分です。「残業なし」「年収維持」「家から近い」など、最低限確保したい条件を3つに絞りましょう。全てを求めると決まりませんが、軸がないとまたブラック企業を掴みます。



条件は3つまでです。4つ5つと増やすと、いつまでも決まりません。優先順位をつけて、妥協できる部分も明確にしましょう。
Step 4. 口コミサイトで「離職率」と「退職理由」をチェック
同じ失敗を繰り返さないために、企業研究は入念に行います。OpenWorkや転職会議で、志望企業の「社員の士気」や「風通しの良さ」を確認します。特に退職者の声には、その会社のリアルな問題点が凝縮されています。



口コミサイトは玉石混交ですが、複数の人が同じことを言っていたら、それは事実の可能性が高いです。特に退職者のコメントは要チェックですよ。
Step 5. 在職中に内定を勝ち取る
精神的に限界でなければ、在職中に活動を完結させましょう。給与が入ってくる安心感があれば、焦って変な会社に決めることを防げます。有給休暇をうまく使い、面接はオンラインや定時後に入れて乗り切ってください。



在職中の転職活動は大変ですが、その分冷静に判断できます。辞めてから焦って決めるよりも、結果的に良い選択ができますよ。


年代別の転職判断基準
この章では、年代別に転職すべきかどうかの判断基準について解説します。
20代:軌道修正のチャンス
20代はポテンシャル採用が中心です。第二新卒枠もあり、異業種への挑戦もしやすい時期です。大卒3年以内の離職率が33.8%と、早期のキャリアチェンジは珍しくありません。「合わない」とわかったなら、無理に続けるよりも早めに方向転換する方が、長期的なキャリア形成にはプラスになることが多いです。
20代は失敗してもリカバリーが効きます。むしろ、合わない仕事を10年続けるよりも、早めに方向転換した方が将来のためになります。
【参考】厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)
30代:リスクとリターンのバランス
30代は即戦力性が求められます。「逃げ」の転職であっても、これまでの経験を活かせる分野を選ぶべきです。全くの未経験職種へ逃げると、年収が大幅にダウンする可能性が高まります。今のスキルをスライドさせて環境だけを変える(例:営業スキルを活かして、ノルマのきつい会社からルート営業の会社へ)のが賢い戦略です。
30代は経験をリセットするのではなく、スライドさせましょう。同じ職種で環境を変えるだけでも、働きやすさは全然違います。
40代以降:慎重な撤退戦
40代以降の転職は、賃金減少のリスクが最大化します。また、求人数も減少するため、衝動的な退職は致命傷になりかねません。今の職場のストレスが健康に関わるレベルでない限り、副業や社内異動など、転職以外の選択肢も模索しながら、水面下で慎重に準備を進めるべきです。
年齢が上がると「逃げ道」は狭くなりますが、なくなるわけではありません。ただ、勢いだけで飛び出すと怪我をします。パラシュート(次の内定や貯金)をしっかり準備してから飛びましょう。
転職活動中の方からのよくある質問(FAQ)


Q1. 転職理由で「人間関係」と言ってもいいですか?
A. 正直に言うのは避けた方が無難です。「人間関係が悪い」と言うと、面接官は「うちに入ってもまた人間関係で揉めるのではないか」と懸念します。「チームで協力して成果を出す環境で働きたい」「周囲とコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めたい」といったポジティブな表現に言い換えましょう。事実は一つでも、伝え方は変えられます。



面接では本音と建前を使い分けましょう。人間関係が理由でも、それを前向きな言葉に変換するだけで印象は全く変わりますよ。
Q2. 「逃げ癖」がつくのが怖いです。
A. 逃げ癖とは、問題に直面するたびに何の解決努力もせずに辞めることを指します。今回、あなたが悩みに悩み、改善しようと努力し、それでもダメだと判断して辞めるのであれば、それは逃げ癖ではありません。マイナビのデータでも転職回数3回以上の人は一定数(16.3%以上)存在し、彼ら全員に逃げ癖があるわけではありません。目的のある転職なら、回数は問題になりません。



逃げ癖を心配するあなたは、すでに真面目に悩んでいる証拠です。本当に逃げ癖のある人は、こんなに悩みませんからね。
【参考】株式会社マイナビ|転職動向調査2025年版(2024年実績)
Q3. 貯金がなくても辞めていいですか?
A. 基本的にはおすすめしません。失業手当は自己都合退職の場合、給付までに2〜3ヶ月の待機期間があります。その間の生活費がないと、焦ってブラック企業に就職してしまう可能性が高くなります。どうしても限界なら、実家を頼る、公的な支援制度を調べるなど、セーフティネットを確保してから動きましょう。



貯金ゼロで辞めるのは本当に危険です。焦って次もブラックを引く確率が高くなります。最低でも3ヶ月分の生活費は確保してから動きましょう。
まとめ|転職は逃げじゃない。ただの分岐点。
「逃げる」という言葉にはネガティブな響きがありますが、自分を守るための撤退は、人生における立派な選択肢です。公的データが示す通り、多くの人が人間関係や労働条件に悩み、環境を変えることで次のステップに進んでいます。
重要なのは、「何から逃げるのか」ではなく、「どこへ向かうためにここを離れるのか」という視点を持つことです。今の苦しみから抜け出し、あなたが笑顔で働ける場所を見つけることは、決して悪いことではありません。
この記事のポイント総まとめ
- 人間関係(21.2%)や労働条件(28.2%)での退職は一般的であり、恥じる必要はない
- 心身の不調や法令違反など、自分では変えられない環境からは今すぐ逃げるべき
- 「逃げの転職」を成功させるには、ネガティブな理由をポジティブな条件に変換する作業が不可欠
- 次を決めずに辞めると、焦りから再び失敗するリスクが高まる(在職中の活動推奨)
- 自分を守るための撤退は「逃げ」ではなく「戦略」である



この苦しい経験を「ただの逃げ」で終わらせるか、「より良い未来への転換点」にするかは、あなたのこれからの行動次第です。自分を責めるのをやめ、顔を上げて、次の一歩を踏み出しましょう。


