スポーツ×ITで選手の “1秒” を守る仕事|ネオシステム株式会社 清本社長の「課題を見つけて解決するを繰り返す」トライアンドエラー論

スポーツの大会で計測される「1秒」は、本気で挑む選手にとって、努力のすべてがつまった時間です。
その裏側では、その「1秒」をミスなく出すために、タイム計測を人の手と仕組みで支え続けてきた人たちがいます。
実際の現場で、スポーツとプログラミングを組み合わせて「正しくスムーズにタイムを計測する仕組み」を磨き続けてきたのが、ネオシステム株式会社の清本社長です。
手作業のストップウォッチからバーコード、GPSまで、計測の課題を見つけては仕組みで解決し、また次の課題を見つけてブラッシュアップしてきました。
そんなトライアンドエラーを重ねてきた清本社長に、好きなことを仕事に変えるまでの経緯と、「誰かのために」をベースにした働き方を伺いました。
ネオシステム株式会社
代表取締役 清本 直
千葉大学工学部卒業後、エンジニアとして勤務を経て、1991年にネオシステム株式会社を設立。トライアスロン用バーコード計時システム「SYSTEM-3」や無線通信計時システム「TRI-FORCE」をはじめ、駅伝計時ソフトや市民マラソン向け自動計測システムなど、スポーツ現場発のプロダクトを次々と開発。NTTトライアスロンジャパンカップやワールドカップなど国内外の大会で公式計測を担当し、オンラインエントリーやリアルタイム記録配信、GPSデバイスを用いた安全管理サービスまで領域を拡大。スポーツとITを組み合わせ、「1秒」と選手の挑戦を支え続けている。
スポーツとプログラミングをつなげた31歳の決断

編集部スポーツの計測って、個人的にはかなり珍しいお仕事だなと感じていまして。清本社長も、もともとスポーツが好きだったんでしょうか。そのあたりのご経歴と、今の事業につながるきっかけを教えていただけますか?



大学は千葉大学の工学部で、最初は普通に企業の研究開発部門に入りました。そこでプログラムを書いたり、システムを組んだりする仕事をしていたんです。



いわゆる、理系キャリアの王道スタートですね。



そうですね。ただ、学生時代までずっとバスケットボールをやってきたのですが、社会人になって急に運動しなくなってしまって…。体重もどんどん増えて、「これはまずいな」と思ってスポーツクラブに通い始めたんですね。そこで、ものすごくかっこいい自転車で来るご夫婦と出会いました。話してみたら、トライアスロンをやっていると聞いて。



自転車を漕ぐ・泳ぐ・走るの三種目でタイムを競う競技ですね。



ええ。お話を聞いていくうちに、自分も興味がわいてきました。当時は競技人口も少ないマイナー競技でしたが、「面白そうだ」と思って、始めてみたんです。そうして、どんどんハマっていきました。当時、エンジニアの仕事もつまらなくはなかったのですが、「どうせなら大好きなスポーツと、自分の技術をくっつけたい」という思いがずっとあったんです。そこに、トライアスロンの世界で「タイム計測の課題」を目の前で見ることになって、「これは自分の出番かもしれない」と感じました。



もともとスポーツが好きで、エンジニアでもある。その二つがだんだんつながっていった…。好きなことと自分のスキルが重なるポイントを見つけた瞬間ですね。



はい。トライアスロンを始めてから数年たって、31歳で思い切って会社を辞めて起業しました。大きな決断でしたが、「スポーツ×技術の仕事をずっとやっていきたい」と腹をくくった瞬間でしたね。
手作業のタイム計測で気づいた「1秒の重さ」



当時のトライアスロン大会では、どんなふうにタイムを測っていたんでしょうか。その現場で見えたタイム計測の課題についても詳しく知りたいです。



今では考えられないくらい、すべて手作業でした。ストップウォッチを押す人と、選手のゼッケン番号を書き取る人がペアになって、何百人分ものタイムを紙に書いていくんです。



それは…ヒューマンエラーが起きても不思議じゃないですね。



はい。ストップウォッチを押し忘れたり、番号を書き間違えたり。ゴール後に配られる記録を見て、「こんなタイムで泳いでないよ」というケースもよくありました。それでも当時の選手は、「完走できればいい」という人が多かったので、大きなクレームにはならなかったんです。



今なら大問題ですね。タイムは成績や評価に直結しますから。



そうなんです。競技が広がっていくと、完走だけでなく「タイムを縮めたい」「自己ベストを出したい」という選手も増えていきます。そうなると、1秒の誤差でも、選手にとっては大きな問題です。「このままじゃいけない」と強く感じました。



選手にとっての1秒は、会社員にとっての評価や昇進にも似ていますね。数字が正しく出ていないと、モチベーションも下がってしまいます。



まさにそうです。現場でその「モヤモヤ」を自分の肌で感じたからこそ、「タイム計測をもっと正確に行いたい」と本気で思いました。その感覚が、今でも仕事を続ける原動力になっています。



自分の仕事が「誰の何を守っているのか」を意識できると、日々の業務にも集中しやすくなりますよね。たとえ単純な作業に見えても、その先にいる人を想像するのが大事だと感じました。
バーコードからGPSまで。失敗を重ねてたどり着いた方法



そこから、どのようにシステム化を進めていかれたのでしょうか。トライアンドエラーの話を伺いたいです。



一番最初は、とてもシンプルでした。ノートパソコンに専用のキーボードをつないで、通過する選手の番号を打ち込むと、パソコンの内部時計とセットで記録される仕組みです。



なるほど。番号さえ打てば、タイムと自動で紐づくわけですね。



そうです。紙に書いて後でエクセルに打つより、ずっと早くて正確になりました。ただ、それでも番号を読み間違えたり、押し間違えたりすると、結局ヒューマンエラーは残ります。



課題は少なくなったけれど、ゼロにはならなかったと。



そこで次に、バーコードを導入しました。選手にバーコードを持たせておいて、計測ポイントに到着したらバーコードリーダーでピッと読み取れる仕組みです。これで番号の入力ミスはほとんどなくなりました。





画期的な仕組みですね…!でも、それでもまだ課題はあったんですよね。



ええ。競技人口が増えて、400人、500人と出場する大会になると、選手が一気に計測ポイントに押し寄せてきます。そこで順番待ちが発生したり、みんながバーコードを置いていくと、机の上がバーコードの山になってしまったり。読むスピードが追いつかず、順番がぐちゃぐちゃになることもありました。



なるほど…。現場ならではのリアルな悩みですね…。



そこから、「選手が通過するだけで自動的に読めるチップはないか」と探し始めました。物流の展示会に行って、ベルトコンベアの荷物をRFIDで読むシステムを試したこともあります。でも、荷物と人間の動きは全然違うので、うまくいかなかった。何度も試しては、失敗の連続でした。



それでもあきらめなかったところが、すごいです。



最後にたどり着いたのが、アメリカの会社が作っていたチップでした。センサーから少し離れていても反応して、スピードにも対応できる。これを選手の手首につけて、コース上に設置したセンサーを通過すると自動で読み取るようにしたところ、主催者からも選手からもすごく喜ばれました。





そこまでの道のりには、何度も「やってみて失敗して、また工夫する」というプロセスがあったんですね。小さく試して、うまくいかなかったら直す。その繰り返しって、キャリアにおいてすごく成長につながると感じます。



そうですね。同じことをずっと続けるだけでなく、「もっとよくできないか」と考え続けることが大事だと思います。



その姿勢が評価されて、大きな大会にも広がっていったわけですね。



清本社長:はい。全国を回るトライアスロンサーキットで公式システムとして採用されてから、各地の主催者や関係者に知ってもらえるようになりました。その流れで、日本の競技団体のオフィシャル計測会社としても認めてもらい、今につながっています。


広域スポーツとデジタル技術で生まれる新しい仕事



ここ数年では、GPSデバイスも開発されていると伺いました。AIやデジタルが当たり前になった今、具体的にはどんなサービスを提供されているのでしょうか?



今は、小型のGPSデバイスに力を入れています。例えば、宮古島で大きなトライアスロン大会があるのですが、島全体がコースになるのでスタートした選手が島中に散らばってしまうんですよね。誰がどこを走っているのか、ほとんどわからない…。そこで、選手に小型のGPSデバイスをつけてもらうようにしたんです。これによって、地図上で「今どこに誰がいるか」が一目でわかるようになりました。選手の家族はスマートフォンで位置を確認して、車で先回りして応援できたり、本部でも「そろそろ戻ってくるな」と予測できるようになりましたね。





たしかに、応援する家族も主催者も、選手を探すのが大変そうですもんね…。それを解消できた、と。あと思ったのは、選手の居場所が明確にわかるというのは安全面でも大きな意味がありますね。



そうですね。主催者側には、救急車や収容車、先導車にも同じデバイスを付けてもらっています。トラブルがあったときにすぐ動けるようになりましたね。実はこの仕組みは、駅伝でも使われているんです。



えっ、駅伝もですか?



はい。デバイスが小さいので、駅伝のタスキの中に入れることができます。ある駅伝大会で初めて使ってもらったところ、テレビ局の中継にも役立つと評価していただきました。その後、学生駅伝や、正月の大きな駅伝大会でもテスト的に導入してもらっています。





視聴者やファンにとっても、「今誰がどこを走っているか」がリアルタイムでわかるとワクワクしますよね。



そうですね。さらに、オープンウォータースイムのような海で泳ぐ競技では、安全面での可能性も大きいと思っています。スイムキャップにデバイスを入れれば、もしコースアウトしてもすぐに気づけますから。



現場で使えるデジタル技術を、自分たちで開発して、現場で検証している。本当に素晴らしい取り組みだと思いました。
「ありがとう」を集める仕事のしかた





ここまでお話を伺っていると、「技術」と同じくらい「人のために役に立ちたい」という気持ちを大事にされていると感じます。



まさにそうですね。今、採用を強化しているんですが、やっぱり「お客様のために頑張ります」と素直に言える人と一緒に働きたいと思います。働く環境や休みももちろん大事ですが、自分のためだけだと続けるのは難しい。最終的には、「誰かのために頑張れるかどうか」が仕事の軸になるので。



やる気しかない、という20代の求職者も多いです。例えば技術や経験がない状態で御社に応募しても、大丈夫でしょうか?



大丈夫です。今いる正社員は十数人ですが、エンジニア・デザイナー・営業などさまざまな職種にチャレンジ可能です。プログラミングをこれから覚えたいという人でも、興味とやる気があれば歓迎しますよ。



なるほど。ちなみにスポーツ経験の有無は関係ありますか?



競技経験は必須ではありませんが、スポーツが好きな人は社員の中にもやっぱり多いですね。自分自身が選手として大会に出ていると、「タイムがずれるとどれだけ嫌か」「1秒にどれだけ価値があるか」がよくわかるので、仕事にも生きてくるとは思います。



たしかに、それは納得です。あとはやっぱり、ミスが許されない現場で丁寧に仕事をする感覚は、どんな職種でも求められますよね。



そう思います。うちの仕事は、直接「ありがとう」と言われる機会が多いんです。大会が終わって、「今回もトラブルなく終わりました」「参加者が喜んでいました」と主催者に言われると、本当にやりがいを感じます。その喜びを素直にうれしいと思える人に向いている仕事だと思いますね。



清本社長のお話を聞いて、この業界やネオシステムに興味を持った20代もいると思います。そんな、自分自身のキャリアを見つめる20代に向けて、最後にメッセージもお願いできますか?



今の時代は変化が激しいですし、不安も多いと思います。でも、大事なのは「逃げずに続けること」だと感じています。新しい技術にも怖がらずに触ってみて、現場での経験と結びつけていく。その積み重ねが、必ず自分の武器になります。スキルや資格も大切ですが、「誰かのために、最後までやりきる」という姿勢は、どんな仕事でも評価されると思いますね。



たしかに、たとえばAIや新しいツールを怖がらずに取り入れてみるとか、そういったアクションからでもキャリアが変わっていきそうですよね。清本社長のお話を伺って、「好きなことと技術を合わせる」ことと、「失敗してもあきらめずに直し続ける」ことがとくに印象的でした。今日のお話をきっかけに、私自身も小さく試しては直すトライアンドエラーを当たり前にしていけるよう、意識していきたいと思います。清本社長、本日は貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
リンク:ネオシステム株式会社‗採用ページ
