転職したいけどやりたいことがない人へ|キャリアアドバイザーが教える適職の見つけ方

「転職したいけどやりたいことがない」こんな悩みを持つ方は、実はあなただけではありません。キャリア相談を受けていると、「次にやりたいことが見つからない」「転職サイトを見ても、ピンとくる求人がない」という声を非常によく聞きます。
SNSやメディアでは「好きなことを仕事に」「夢を追いかけよう」といったキラキラした言葉が溢れていますが、最初から明確な目標を持って働いている人は、実は少数派かもしれません。転職したいけどやりたいことがないまま転職活動を始めることは、決して悪いことではありませんし、それが原因で転職に失敗すると決まっているわけでもありません。
この記事では、プロのキャリアアドバイザーの視点から、公的なデータに基づいた転職市場の実態と、やりたいことがなくても納得のいく転職をするための具体的な方法を解説します。無理に夢を探す必要はありません。一緒に現実的なキャリアの作り方を考えていきましょう。
阿部 翔大やりたいことがない自分を責める必要はありません。むしろ、特定の職種に固執していない分、幅広い可能性を持っているとも言えます。フラットな状態で市場を見渡せるのは、実は大きな強みになるんですよ。
株式会社MEDISITE キャリアコンサルタント
阿部 翔大


データで見る「やりたいことがない」転職者の実態


「やりたいことがないのは自分だけではないか」と不安になるかもしれませんが、データを見ると現実は少し違います。実際に転職した人たちがどのような理由で前の仕事を辞めたのかを見てみましょう。
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、転職入職者が前職を辞めた理由は年齢層によって大きく異なります。「その他の個人的理由」を除いた場合、20代〜40代の転職理由として多く挙がるのは以下のような項目です。


男性の主な転職理由
- 20〜24歳:定年・契約期間の満了(18.9%)、給料が少なかった(10.7%)、労働条件が悪かった(6.7%)
- 30〜34歳:定年・契約期間の満了(16.3%)、会社の将来が不安だった(14.9%)、労働条件が悪かった(12.1%)
- 40〜44歳:定年・契約期間の満了(16.2%)、労働条件が悪かった(14.6%)、会社の将来が不安だった(9.2%)
女性の主な転職理由
- 20〜24歳:定年・契約期間の満了(23.2%)、労働条件が悪かった(10.2%)、人間関係が好ましくなかった(8.5%)
- 30〜34歳:定年・契約期間の満了(25.7%)、労働条件が悪かった(11.1%)、人間関係が好ましくなかった(7.4%)
- 40〜44歳:定年・契約期間の満了(23.3%)、労働条件が悪かった(13.5%)、人間関係が好ましくなかった(11.1%)
このデータから、「夢を追いかけて転職」という前向きな動機以上に、「今の環境の不満を解消したい」という理由で転職を決断している人が多いことがわかります。つまり、やりたいことが明確でなくても、今の不満が解消される環境を選べば、十分に満足度の高い転職は可能なのです。



今の不満を解消するために転職する、いわゆる「逃げの転職」をネガティブに捉える必要はありません。働く環境を改善することは、立派なキャリア戦略の一つです。安心して次に進んでいいんですよ。
やりたいことがない3つの根本原因


なぜ、やりたいことが見つからないのでしょうか。原因を理解することで、対策が見えてきます。多くの相談者に見られる共通の原因は以下の3つです。
世の中の仕事を知らないから
私たちが普段の生活で目にする職業は、世の中に存在する仕事のごく一部です。BtoB(企業間取引)の仕事や、バックオフィスの専門職など、知らない仕事に対して「やりたい」と思うことはできませんよね。情報不足が選択肢を狭めている可能性があります。



知らない料理を注文できないのと同じで、知らない仕事をやりたいとは思いませんよね。まずは転職サイトの職種一覧を眺めて、聞いたことがない職種を調べてみることから始めてみましょう。
「やりたいこと」のハードルを上げすぎているから
「一生をかけられる情熱」「天職」といった大きなものを探しすぎていませんか? 多くの人にとって、仕事は生活を支える手段の一つです。「なんとなく嫌じゃない」「少し興味がある」程度の感覚からスタートしても、長く続けるうちにやりがいが生まれることもあります。



最初から運命の出会いを期待しすぎると動けなくなります。「ちょっと面白そうかも」くらいの軽い気持ちで興味を持った分野に飛び込んでみるのも、意外と悪くない選択ですよ。
自己肯定感が低下しているから
現職で疲弊していたり、評価されていなかったりすると、「自分にできることなんてない」と思い込んでしまうことがあります。自信がない状態では、新しい挑戦に対して前向きな気持ちが湧きにくくなります。



疲れているときは正しい判断ができません。まずはしっかり休んで、心身のエネルギーを回復させることが先決です。元気になれば、自然と意欲が湧いてくることも多いですよ。
やりたいことを見つける5つの自己分析法


自分一人で考えていても答えが出ないときは、フレームワークを使って思考を整理するのが効果的です。以下の5つの視点で自分を見つめ直してみましょう。
過去の「楽しかったこと」を振り返る
子供の頃や学生時代、あるいはこれまでの仕事の中で、時間を忘れて没頭したことや、人より苦なくできたことはありませんか? それがあなたの才能や興味の源泉かもしれません。



大人になると忘れがちですが、子供の頃の遊びの中にこそ、本当の興味のヒントが隠れていることがあります。ゲームが好きだった、友達をまとめるのが得意だった、細かい作業が苦にならなかった――そういう記憶を掘り起こしてみてくださいね。
「感謝された経験」をリストアップする
仕事をしていて「ありがとう」と言われて嬉しかった場面を思い出してください。誰の、どんな役に立ったときに喜びを感じるかを知ることで、自分の貢献したい方向性が見えてきます。



感謝されたときの喜びは、あなたの価値観を映す鏡です。顧客から感謝されるのが嬉しいのか、チームメンバーに喜ばれるのが嬉しいのか。その違いが、向いている仕事のヒントになりますよ。
Will(やりたい)・Can(できる)・Must(すべき)で整理する
「やりたいこと」が見つからない場合は、「できること(Can)」と「求められること(Must)」から考えます。得意なことを仕事にして成果を出し、周囲から求められるようになると、後から「やりたいこと(Will)」が育ってくるケースも多いです。



Willが見つからないなら、Canを増やす時期だと割り切るのも手です。できることが増えれば、選べる選択肢も自然と広がっていきますから、焦る必要はありませんよ。
モチベーショングラフを描いてみる
これまでの人生でのモチベーションの上下をグラフにし、何がきっかけで上がり、何が原因で下がったのかを分析します。自分が力を発揮できる環境や、避けるべき環境のパターンが見えてきます。



グラフを描くと、意外な共通点が見えてきます。チームで働いているときは調子が良かった、裁量があるときにやる気が出た、など。パターンが分かれば、次の職場選びの基準が明確になりますよ。
他己分析で周囲の意見を聞く
自分では当たり前だと思っていることが、他人から見ると強みであることはよくあります。信頼できる友人や家族に「私の強みは何だと思う?」「どんな仕事が向いていそう?」と聞いてみるのも有効な手段です。



人から言われた意外な言葉が、大きなヒントになることがあります。自分を客観視するのは難しいので、鏡になってくれる他者の存在はとても貴重ですね。
やりたいことが見つからなくても転職を成功させる方法


無理にやりたいことを見つけなくても、満足度の高い転職は可能です。「仕事内容」以外を軸にして転職先を選ぶ方法を紹介します。
「働き方」や「条件」を最優先にする
「完全在宅勤務ができる」「残業が月10時間以内」「年収500万円以上」など、ライフスタイルや条件を軸にします。プライベートを充実させるために仕事を最適化するという考え方です。



条件で選ぶのは決して悪いことではありません。むしろ、自分の優先順位が明確な人ほど、ミスマッチの少ない転職ができます。希望条件を明確にして、それを満たす求人を探すのは合理的な戦略ですよ。
「一緒に働く人」や「企業文化」で選ぶ
「誰と働くか」は仕事の満足度を大きく左右します。カジュアル面談などを活用して社員の雰囲気を確認し、自分と波長が合う会社を選ぶのも賢い戦略です。



人間関係が良ければ、多少の業務の大変さは乗り越えられることが多いです。逆に、どんなに仕事内容が良くても、人間関係が悪いと続きません。面接では、社員の表情や話し方も観察してみてくださいね。
成長産業や安定した業界に身を置く
今後伸びていく業界や、景気に左右されにくい業界を選べば、将来的な安心感を得られます。業界自体の成長に乗ることで、個人のスキルアップや給与アップもしやすくなります。



「仕事は生活費を稼ぐ手段」と割り切るのも、立派な価値観です。仕事に夢を求めなければならないという固定観念を捨てると、意外とすんなり良い会社が見つかりますよ。


「やりたいこと」より「やりたくないこと」から考える
「何が好きか」はわからなくても、「何が嫌か」ははっきりしていませんか? 消去法で選択肢を絞り込むのは、非常に合理的で失敗の少ない方法です。
絶対に避けたいリストの例
- 満員電車での通勤はしたくない
- 飛び込み営業はしたくない
- 土日は絶対に休みたい
- 転勤はしたくない
このように「Not To Do リスト」を作成し、それに該当する求人を徹底的に除外していきます。残った選択肢の中から、比較的興味が持てるものや、条件が良いものを選べば、少なくとも「入社して後悔する」リスクは大幅に減らせます。



嫌なことを避けることは、自分を守ることにつながります。ストレスの少ない環境を選べば、長く働き続けられる可能性が高まりますから、ネガティブな動機だと卑下する必要はありませんよ。
やりたいことや適職を見つけるための業界・職種研究法


自分の内面だけでなく、外の世界(市場)を知ることも大切です。効率的な情報収集の方法を紹介します。
転職サイトの検索条件を広げてみる
いつも同じ職種カテゴリーばかり見ていませんか? あえて「職種未経験歓迎」や「業界未経験歓迎」の条件だけで検索し、表示された求人を端から見てみることで、新しい発見があるかもしれません。



検索条件を固定していると、視野が狭くなります。最初は職種を絞らずに、給与や勤務地などの条件だけで検索してみると、意外な職種に出会えることがありますよ。
業界地図や四季報を活用する
書店で「業界地図」を手に取ってみてください。世の中のお金の流れや、企業同士の関係性がわかります。「この業界は面白そうだな」「安定していそうだな」という直感も大切です。



業界地図を見ると、普段の生活では知らない業界の存在に気づきます。BtoB企業や専門商社など、知名度は低くても安定している優良企業がたくさんあることを知ってほしいですね。
転職エージェントに「提案」してもらう
キャリアアドバイザーに「やりたいことがわからないので、経歴を見て向いていそうな職種を提案してください」と依頼するのも有効です。プロの視点から、あなたのスキルの転用可能性を探ってくれます。



私たちエージェントは、数多くのキャリアチェンジを見てきました。「この経験があるなら、こちらの職種でも活躍できますよ」といった、自分では思いつかないパスを提案できるのが強みですね。




転職はしたいがやりたいことがない人におすすめの職種5選
特別な「やりたいこと」がなくても、汎用的なスキルが身についたり、未経験から始めやすかったりする職種を紹介します。


汎用スキルが身つく「ITエンジニア」
論理的思考力やプログラミングスキルは、どの業界でも重宝されます。手に職をつけたい人や、ものづくりに興味がある人には向いています。
IT業界は未経験歓迎の求人が多く、研修制度も充実している企業が増えています。年齢が若ければ若いほど有利ですが、30代前半までなら十分チャンスはあります。
コミュニケーション力が活きる「営業職(ルート営業など)」
特別な資格がなくても始めやすく、求人数も豊富です。既存顧客を回るルート営業や、問い合わせに対応する反響営業なら、精神的な負担も比較的少ない傾向にあります。
営業と聞くと飛び込みのイメージがあるかもしれませんが、既存顧客を大切にするルート営業や、問い合わせベースの反響営業なら、コミュニケーションを楽しめる方には向いていますね。
安定して働ける「事務・管理系職種」
経理や人事、総務などは、企業の根幹を支える仕事です。専門知識を少しずつ身につけていけば、長く安定して働くことができます。
事務系職種は競争率が高いですが、簿記や社労士などの資格を取得すれば専門性が高まり、市場価値も上がります。長く働きたい方には堅実な選択肢です。
サポートが得意な人向けの「営業事務・アシスタント」
誰かの役に立ちたい、人を支えるのが好きという方におすすめです。正確な作業や気配りが評価される仕事で、感謝される機会も多いです。
縁の下の力持ちタイプの方には天職になる可能性があります。直接的に感謝される機会も多く、やりがいを感じやすい職種です。
社会貢献性が高い「介護・福祉職」
高齢化社会で需要が尽きない分野です。人と接することが苦でなければ、直接感謝される喜びを感じられます。資格取得によるキャリアアップの道も明確です。
まずは「食わず嫌い」をせずに、少しでも興味を持てそうな職種の求人詳細を読んでみてください。具体的な仕事内容を知ることで、イメージが変わることもよくあります。
転職活動の具体的ステップ


やりたいことがなくても、行動しながら考えることが大切です。以下のステップで少しずつ進めてみましょう。
何が不満で、何が嫌かを書き出す。
転職サイトを眺め、世の中の仕事を知る。
これまでのキャリアを整理する。
少しでも気になった企業に応募してみる。
面接で話を聞きながら、志望度を確認していく。



応募したからといって、必ず入社しなければならないわけではありません。面接は企業を知る場でもあります。「話を聞きに行く」くらいのスタンスで、まずは動いてみることが大切ですね。
転職に関してよくある質問(FAQ)


Q1. 志望動機が書けなくて困っています。どうすればいいですか?
A. 「その会社で活かせる自分のスキル」や「共感できる企業理念」に焦点を当ててみてください。「御社の〇〇という点に魅力を感じ、私の△△という経験が活かせると考えました」という構成なら、強い熱意がなくても論理的な志望動機が作れます。
Q2. やりたいことがないのに転職して、またすぐ辞めたくなりませんか?
A. 「嫌なこと(辞めたい原因)」が解消されていれば、早期離職のリスクは下がります。今の不満が解消される環境かどうかを、面接などでしっかり確認することが重要です。
Q3. どのエージェントを使えばいいですか?
A. 初めは求人数が多い大手総合型のエージェントに登録し、幅広い求人を見るのがおすすめです。やりたいことが決まっていない段階で特化型のエージェントに行くと、選択肢が狭まる可能性があります。
まとめ|完璧な答えを求めず、まず一歩を踏み出す


「やりたいことがない」というのは、決して恥ずべきことではありません。多くの人が日々の業務の中でやりがいを見つけたり、あるいはプライベートを充実させるために仕事を頑張ったりしています。
大切なのは、今の場所で立ち止まって悩み続けるよりも、少しでも快適な場所、少しでも自分が納得できる場所を探して動くことです。行動する中で、新しい興味に出会うこともあれば、意外な適職に巡り合うこともあります。
この記事のポイント総まとめ
- 「やりたいことがない」転職者は意外と多いので安心する
- 不満解消のための転職も、立派なキャリア戦略である
- 自己分析では「Will」だけでなく「Can」「Must」も考える
- 「やりたくないこと」を明確にして消去法で選ぶのも有効
- 働き方や条件、一緒に働く人を軸に会社を選んでも良い
- まずは情報を集め、少しでも気になる求人に触れてみる
あなたのキャリアは、あなた自身のものです。誰かの作った「理想の働き方」に縛られる必要はありません。今の自分が少しでも「良いな」と思える方向へ、小さな一歩を踏み出してみませんか?



正解はどこかに落ちているものではなく、歩いた後にできるものです。悩みすぎず、まずは気軽な気持ちで求人検索から始めてみましょう。応援していますよ!










