「おいしいから食べる。その結果として健康に。」株式会社ブリスナッツ・山口社長が、25年の飲料業界からナッツで起業した理由

新卒から約25年間、飲料・食品の世界で商品開発やマーケティング、製造などに携わってきた株式会社ブリスナッツの山口一紀社長。

その後、ナッツメーカーへ転職し、商品開発責任者として働いた経験を経て、2024年に自身の会社を立ち上げました。

現在取り組んでいるのは、素材そのもののおいしさを引き出したナッツの販売です。

「健康のために我慢して食べるのではなく、おいしいからつい食べてしまう。その結果、健康につながる。それを当たり前にしたかった。」

飲料からナッツへ。扱う商品や立場が変わっても、山口社長の中で変わらなかったものとは何だったのでしょうか。これまでのキャリアと起業のきっかけ、ナッツへのこだわり、そして仕事を選ぶうえで大切にしてきた「軸」について伺いました。

お話を伺った人

株式会社ブリスナッツ

代表取締役社長 山口 一紀

大学で食品分野を学び、卒業後は飲料・食品メーカーへ入社。約25年間にわたり、商品開発、マーケティング、新規開発、製造部門など幅広い業務を経験。その後、ナッツメーカーへ転職し、商品開発責任者として勤務。ナッツの製造や味づくりについて経験を積んだのち、2024年に株式会社ブリスナッツを設立。現在はナッツを中心に、お茶やコーヒーとのペアリングも含めた「おいしさから健康につながる時間」を提案。

目次

25年間、飲料・食品の世界へ。「ナッツで起業」は想像もしていなかった

編集部

山口社長は、もともとナッツ関連の事業で起業することを目指していたんですか?

山口社長

それが、ナッツは全く考えていなかったんですよね(笑)。大学では食品に関することを学んでいましたけど、新卒で入ったのは乳酸菌飲料などを扱う会社で、そこに約25年間勤めました。ヨーグルトやゼリー、飲料などの商品開発、マーケティングや新規事業、イノベーション関連の業務にも携わりましたし、工場へ行って製造部長をやったこともあります。本当に、いろいろ経験させてもらいました。

編集部

新卒で入社して、25年…!一つの会社にいながら、かなり幅広い仕事を経験されたんですね。

山口社長

そうですね。ただ、親会社が変わったり、また別の会社へ売却されたりして、会社を取り巻く環境も経営方針も途中でかなり変わりました。最終的には、長く働いていた社員もかなり辞めていくような状況になりました。

編集部

山口社長も、そこで初めて転職を考えたんですか?

山口社長

はい。ちょうどナッツメーカーが商品本部長を探していて、オファーをいただいたので、転職した形です。それが、ナッツとの出会いですね。

編集部

25年間勤めた会社からの転職で、いきなり商品本部長だったんですね。

山口社長

そうですね。商品の開発責任者として入りました。ただ、その後、会社の状況や方針が変わり、自分に求められる役割も変わっていきました。

50代で選んだ起業。背中を押した製造会社との出会い

編集部

そこから、どうして「自分で会社をやろう」と思ったんでしょう?

山口社長

転職するか自分でやるかを考えていたときに、ナッツメーカーで働いていた頃に知り合った製造会社の方から、『自分でやるなら、OEMを受けてあげるよ』と言っていただいて。

編集部

その言葉が、起業のきっかけになったんですね。

山口社長

そうですね。ナッツのおいしさを多くの方に知っていただきたいという想いもありましたし、それなら一度挑戦してみようかなと。それが会社を立ち上げるきっかけとなりました。

編集部

でも振り返ると、飲料会社で25年、その後ナッツメーカーで働いた経験があって、今の事業につながっていますね。

山口社長

そうですね。最初から「将来起業するぞ」と考えて積んできた経験ではないですけど、結果的にはそれぞれが今に活きています。

「おいしいから食べる。その結果、健康につながる」にしたかった

編集部

現在はナッツが事業の中心ですよね。私もナッツは好きでよく食べるんですけど、山口社長はどんな商品にしたいと考えたんですか?

山口社長

私はもともと飲料会社にいましたから、ナッツをただ売るだけではなく、お茶やコーヒーと一緒に楽しんでもらったり、おいしくナッツを食べる時間そのものを提案したいと思っていました。

編集部

「商品」だけではなく、「過ごし方」まで含めて提案したかったんですね。

山口社長

そうですね。それと、ナッツは健康面でもいい食品だと思っています。でも「健康にいいから食べなきゃ」という食べ方にはしたくなかったんですよ。

編集部

義務みたいに食べるのではなく。

山口社長

はい。健康のために食べるのではなくて、おいしいからついつい食べる。その結果、健康につながる。それを当たり前にしたかったんです。

編集部

それは、25年間食品に携わってきた山口社長らしい考え方ですね。

山口社長

食品会社って、健康をつくる役割もあると思っているんです。これから高齢化も進みますし、日常の食事から健康をつくっていくことは大事ですよね。でも、心の健康まで考えたら「おいしい」「楽しい」も必要です。だから、健康面だけに目を向けるのではなく、食事の幸せな時間も提供していきたいんです。

だからこそこだわるおいしさ。焼き方を追求した素焼きナッツ。

編集部

ナッツって、焼き方で味や風味もかなり変わるものなんですか?

山口社長

そうなんです。同じ素焼きのナッツでも、焼き方で全然違います。大量に自動で焼く設備のほうがたくさん作れるんですけど、今お願いしている製造会社では、ガスだけではなく炭の熱も使って、一釜ずつ職人さんに焼いてもらっています。

編集部

機械で一律に焼くのとは、仕上がりも変わってくるんですね。

山口社長

変わりますね。そのほうが食感が軽く、香ばしく、ナッツそのものの味も濃く感じます。特に食感は違いがわかりやすくて、マルシェではご年配のお客様から「歯が弱くなってきたけど、これは食べられる」「軽くておいしい」と言っていただくこともあります。

編集部

その食感を出すために、焼き加減も細かく見ているんですか?

山口社長

そうですね。機械の中へ入れたら何分で終わり、というものではありません。焼いている途中で職人さんが焼き具合を確認しながら、「このくらいだな」と判断して止めます。色見本などはありますけど、最後はやっぱり人の腕ですね。

編集部

そこまで人の感覚で仕上げていると、数を一気に作るのは難しそうですね。

山口社長

そうですね。この炭火焼きのナッツに関しては、一釜ずつ職人さんが焼き加減を見極めているので、大量生産には向きません。全国すべてのスーパーに並べられるような商品にはできないと思っています。

「ずらしていいものと、ずらしてはいけないものがある」

編集部

ナッツと一緒に、お茶やコーヒーも提案されていますよね。

山口社長

はい。事業のメインにするわけではないんですけど、ナッツの楽しみ方の一つとして提案しています。コーヒーはイメージしやすいと思うんですけど、実はお茶にもナッツと合うものがあるんですよ。

編集部

どんなお茶なんですか?

山口社長

飲料会社時代に知り合った緑茶生産者の方が作っている、華やかな香りのある緑茶です。口に入れたときの香りは中国茶のようなんですけど、後味はちゃんと緑茶で、旨みもしっかりありながらさっぱりしているので、ナッツの油分とも相性がいいんです。

編集部

山口社長って、味や香りの特徴を、かなり具体的に言葉にされますよね。

山口社長

飲料の商品開発に22年ほど携わっていたので、癖になっています。商品がお客様との接点になる会社だったので、味を言葉にし、パッケージを見た人に想像してもらう必要があったんですよね。今も、「どうおいしさを伝えるか」という部分は変わらないですね。

編集部

これまでの経験が、商品が変わった今もしっかり生きているんですね。では、これから先は、この会社をどんなふうに育てていきたいですか?

山口社長

まずは、弊社の商品を食べたお客様に、おいしいと感じていただけることを大切にしたいですね。そして、会社名に込めたBLISS(心を満たす幸せ)という言葉のように、ナッツやお茶、コーヒーを通じて、おいしく、楽しい時間を日々の暮らしに届けていきたいと思っています。おいしいから自然と食べる。それが習慣になり、結果として健康にもつながっていく。そんな日常を広げていける会社にしていきたいですね。

編集部

ここまでのお話を伺うと、会社や扱う商品が変わっても、山口社長の中で変わっていないものもありそうです。これから仕事を選ぶ若い方に、大切にしてほしいことはありますか?

山口社長

いろいろな仕事があると思うんですけど、ずらしていいものと、ずらしてはいけないものがあると思っています。私は大学の頃から食品が好きでした。飲料でもナッツでも、人の口に入って「おいしい」と感じてもらうことを大事にするのは変わっていません。商品も違うし、アピールの仕方も違う。気をつけることも当然変わります。でも、私の中では「おいしい食事」と「健康」というところは一緒なんです。これだけは譲れないというものは、しっかり持っていた方がいい。そうじゃないと、多分なかなか頑張れないと思うんですよ。新しいところで何とかしようと思ったときにも、頑張るための「軸足」が必要です。そこは大事にしてほしいですね。

編集部

25年間勤めた会社を離れ、働く環境も、立場も、扱う商品も変わってきた山口社長。それでも、そのたびに一からやり直したわけではありません。飲料の商品開発で培った「おいしさをつくること」「それをどう伝えるか」という経験は、今ではナッツの味づくりや、新しい楽しみ方の提案に形を変えて生かされています。変わるものがあっても、自分の中に残り続けるものまで手放す必要はない。「おいしい食事」と「健康」という軸があったからこそ、環境が変わっても、また次の一歩を踏み出せたのだと思います。これまで積み上げてきたものを持ったまま、新しい場所へ進んでいく。その姿そのものが、山口社長の言う「ずらしていいものと、ずらしてはいけないもの」を表しているように感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

株式会社ブリスナッツ_公式サイト

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