「日本にいながら、“こういう選択肢“も選べる環境をつくりたい。」株式会社センスフィア・松澤社長が、スリランカのナチュラルケアブランド「Sinharaja Herbs Japan」を日本に届ける理由

海外と関わる仕事がしたい。
そう思っても、現地に知り合いがいるわけでも、最初から事業のアイデアがあるわけでもない。そこから実際に仕事へつなげるのは、簡単なことではありません。
株式会社センスフィアの松澤直飛社長も、スリランカとのコネクションは「ゼロ」からのスタートでした。
大学時代から独立してビジネスを立ち上げたいという思いを持ち、金融系企業で10年弱働きながら十数カ国を訪問。その中で最後に訪れたスリランカの自然や人々に惹かれ、自ら現地との関係を築いていきました。
現在は、スリランカと日本をつなぐ人材関連事業などに加え、現地のナチュラルケアブランドを日本で展開しています。
「オーガニックが最強なんだ、と言いたいわけではないんです」
松澤社長が届けたいのは、商品だけではありません。スリランカという国を知るきっかけや、日本にいながら新しい選択肢を持てる環境、そして現地で働く人たちの生活にもつながる事業です。
なぜ、スリランカだったのか。そこからどのように事業をつくり、何を日本へ届けようとしているのか。詳しくお話を伺いました。
株式会社センスフィア
代表取締役 松澤 直飛
国内の金融系企業に10年弱勤務。大学時代から独立して事業を立ち上げたいという思いを持ち、海外との仕事に関心を持って十数カ国を巡る。その中でスリランカを訪れたことをきっかけに、現地との関係をゼロから構築。現在はスリランカと日本をつなぐ事業を展開し、ナチュラルケアブランドの日本での販売にも取り組む。
十数カ国を巡って、最後に訪れたスリランカ
編集部松澤社長がスリランカと関わるようになるきっかけって、一体何だったんですか?



もともとは日本国内の金融系企業で10年弱働いていたんですけど、大学時代から「自分で独立してビジネスを立ち上げたい」という思いがあって。その中でも海外との間で仕事をすることにすごく興味があって、数年かけて十数カ国くらいを回りました。その目線で最後に訪れたのが、スリランカなんです。



十数カ国を見てきた中で、スリランカの何が一番印象に残ったんですか?



まず、自然がすごくダイナミックにある国だと感じました。それ以上に印象的だったのが、人ですね。それまで訪れたいろいろな国と比べても、僕にはすごく利他的な考え方を持っている方が多いように感じたんです。



利他的な考え方、ですか。



海外を旅していると、「何かを売りたいから優しくしてくれているのかな」と、こちらもちょっと警戒する場面があったりするじゃないですか。でもスリランカでは、本当にただ「喜んでほしいから」と接してくれているように感じました。街を歩いていても、「日本人でしょ? 写真を撮ろう」と声をかけてくれるようなことがあって。



おぉ…。そこまで日本に親しみを持ってくれているんですね。



そうなんです。日本のことが好きだったり、日本で働きたいと思ってくれていたりする方が多い印象です。でも反対に、日本ではスリランカについてあまり知られていないなと思いまして…。僕自身、最初に行こうとした時にインターネットで調べても、リアルな情報があまり見つかりませんでしたから。それでスリランカについてブログで発信したり、日本に住んでいるスリランカ人と知り合おうと思って、スリランカ料理店に行ったりしたんですよね。



そこから、どうやって現地とのつながりをつくっていったんですか?



コネクションは最初は本当にゼロでした。でも、知り合った方に現地の人を紹介してもらって、「じゃあ会いに行ってくるわ」という感じで、少しずつつながりをつくっていきましたね。その中で、「スリランカではどんなことが求められているんだろう」と聞いていった時に出てきたのが、日本で働きたい方の人材支援でした。そして、現地のビジネスパーソンと話す中で、僕自身が一番「これは」と感じたものの一つが、ナチュラルケアブランドだったんです。
10年探しても出会えなかったものを、スリランカで見つけた



ナチュラルケアブランドに惹かれたのは、もともとオーガニック製品に興味があったからなんですか?



そうですね。高校生くらいの頃から、シャンプーに使われている成分が気になるようになって、オーガニックシャンプーをかなり調べて、自分でもいろいろ使っていました。ただ、そこから10年くらい、自分の中で本当に満足できるものにはなかなか出会えなかったんです。環境や体のことを考えてつくられていても、僕の場合は仕上がりに満足できなかったりして。



それ、わかります…。私も市販のノンシリコンシャンプーを使って、ギシギシ感に悩まされたことがあります。



そうですよね。一時期はかなり振り切って、シャンプーを使わないようなことも試していました。でも、外へ出ようとすると髪がまとまらなくて、ヘアオイルは必須みたいな状態だったんです。



いろいろと試されたんですね…。



はい。でもスリランカで出会ったシャンプーを使ってみたら、今まで使ったものと全然違うと感じました。泡立ちもそうですし、仕上がりも良かった。自分には、これまで使ってきたものとは明らかに違う使用感に感じました。自分にここまで合う商品とスリランカで出会えるなんて思っていなくて、感動したのを覚えています。そこで、僕と同じように、日本で自分が満足できるものにまだ出会えていない人がいるんじゃないかと思ったんですよね。



現在は、シャンプーバーやコンディショナーバーなどを展開されているんですよね。







「Sinharaja Herbs Japan」としてシャンプーバー、コンディショナーバー、ボディソープなど9商品を展開しています。今後さらにラインナップを拡充し、生活に寄り添える日常ケアの総合ブランドを目指しています。シャンプーバーとコンディショナーバーは、僕自身も毎日使っています。ただ、僕は「これが最強なんだ」とか、「オーガニックだから絶対にこっちがいいんだ」とゴリゴリ押したいわけではないんですよ。日本にいながら、こういう選択肢も選べる環境をつくりたい。その結果として、スリランカという国を知ってもらうきっかけにもなればいいな、という思いが根底にあります。
現地の自然を活かしたものづくり



商品は、どのような考え方でつくられているんでしょう?



そうですね。ベースにあるのは、インドやスリランカに昔から伝わるアーユルヴェーダ(※)です。配合は現地のドクターに考えてもらって、そのレシピをもとにスリランカでつくっています。植物由来の原料を大きな鍋で混ぜて、コールドプロセスでじっくり仕上げていくんですよ。それを最後は現地で梱包して、そのまま日本に送ってもらう形ですね。
| ※アーユルヴェーダ…「生命科学」や「生きるための知恵」を意味するインド・スリランカ発祥の伝統医療 |







製造だけじゃなくて、梱包までスリランカでやっているんですね。



そうですね。日本にいながら、スリランカのダイナミックな自然の恩恵を感じてもらえたらと思っています。考え方として特徴的なのは、「落としすぎない」というところですね。



落としすぎない、というのは…?



シャンプーなので汚れを落とすことはもちろん必要なんですが、そこだけにフォーカスしてしまうと、人間の体に必要だから出ている皮脂まで落としすぎてしまうこともあるんですよ。この商品では、毎日使うものだからこそ必要以上に落としすぎず、髪の毛だけではなく頭皮そのものに目を向ける考え方を大切にしています。



使った瞬間にわかりやすい変化を出すことだけを目指しているわけではない、ということですね。



そうですね。商品によっては、コストを抑えたり、使った時にわかりやすく良さを感じてもらえることが重視されると思うんです。例えば、すぐにツヤが出るとか、香りが強く残るとか。そういうつくり方もありますよね。ビジネスとして考えれば、お客様の期待に応えるためにそうすることも理解できます。ただ、そのために何かが置き去りになっていないかということは、僕たちは考えていきたいんです。だからこそ、商品の良さだけを強く押し出すのではなくて、「こういう考え方の商品もあるんだ」と知ってもらえたらと思っています。
商品が広がるほど、現地で働ける人も増やしたい





日本で商品が広がっていくことは、スリランカで暮らす方たちにも何か還元されていくんですか?



そうですね。スリランカでは、知り合いや友達と家族の話をしていると、「兄弟が海外で働いている」とか「家族の誰かが国外に出ている」という話をよく聞くんです。それくらい、国内だけで仕事を見つけるのが難しい面もあるんですよね。



現地で働ける場所を増やすことも、ブランドとして考えているんですね。



はい。商品の原料を育てている農園では、フェアトレードの考え方を大切にしています。これから製造量が増えたとしても、そこは変えずに続けたいですし、その分、現地で働ける人も増やせたらいいよねという話をしています。商品をつくることで、そこで働く方の生活にも少しでもつながっていけばいいですね。





商品が広がるほど生産量も増えていきますが、その一方で、自然への負担はどう考えていますか?



そこはすごく気にしています。取扱店の方からも、「こんなに仕入れて大丈夫?」「たくさんつくって自然に負担がかからない?」と声をかけていただくことがあるんです。原料には現地の農園で育てているものもあるので、売上を増やすことだけを優先してしまうと、どこかに無理が出るかもしれない。自然とのバランスを見ながら続けていきたいですね。



買う側にとっても、商品を選ぶことが現地と関わる一つの方法になるんでしょうか?



そうだと思います。海外の雇用を守りたいとか、環境に配慮したいと思っても、個人で直接できることには限りがありますよね。でも、普段使うものを選ぶことで、結果的に少し力になれることもある。そういう関わり方なら、参加できる人も増えるんじゃないかなと。売る側だけが良ければいいのではなくて、買う人、つくる人、それから自然にとっても無理のないブランドにしていきたいです。
「必要なものを、必要な分だけ」。商品を通してスリランカを知ってもらう





これからは、このブランドをどんなふうに広げていきたいですか?



認知という意味では、まだまだこれからですね。今はECだけではなくて、店舗で取り扱っていただいたり、オーガニック系のブランドが集まるマルシェやマーケットにも出ています。そういう場所だと、実際に商品の質感を見てもらったり、香りを試してもらえたりするので。



お店への営業も、松澤社長から積極的にされているんですか?



実は、今はあまりこちらから強く営業していないんです。声をかけていただくことの方が多いですね。ただ、問い合わせをいただいたら、そのまま注文を受けるというより、一度お話をするようにしています。できれば実際にお店へ伺うこともあります。



そこまでお店の方と話してから、取り扱ってもらうんですね。



そうですね。ブランドをもっと知ってもらうことは必要なんですけど、利益だけを追いかけたいわけではないので。価格についても「安いですね」と言っていただくことがありますが、毎月使うものなら、無理なく手に取れるくらいでありたいと思っています。周りにも「必要なものを、必要な分だけ」という考えの方が多くて、僕自身もその感覚は大切にしています。



最初にスリランカへ行った時は、日本ではまだスリランカのことがあまり知られていないと感じたんですよね。商品を広げることも、国そのものを知ってもらうきっかけになりそうです。



そうですね。この商品を通して、「スリランカってどんな国なんだろう」と興味を持ってもらえたら嬉しいです。商品だけではなくて、その背景にある自然や、そこで暮らす人たち、文化のことまで少しずつ知ってもらえたらいいですね。



大学時代から「海外と仕事をしたい」と考え、十数カ国を巡った末に出会ったスリランカ。そこに最初から仕事や人脈があったわけではなく、現地について発信したり、人を紹介してもらったりしながら、一つずつ関係をつくってきた松澤社長。その中で出会った商品も、「オーガニックだから売りたい」から始まったわけではありません。自分で使って良いと感じたものを、日本でも選べるようにしたい。そこから始まり、今では商品の先にいる人や自然のことまで考えながらブランドを育てています。「オーガニックが最強だと言いたいわけじゃない」。一つの考え方を正解として押しつけるのではなく、これまで知らなかった選択肢を一つ増やす。その商品をきっかけに、スリランカという国にも興味を持ってもらう。松澤社長がつくろうとしているのは、そんな入口なのだと感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
Sinharaja Herbs Japan_公式サイト

