「オフィスを変えるだけでは、働き方は変わらない」。株式会社Duck Dive・新城さんが語る、働く人の未来を考える仕事

広々とした空間、おしゃれな家具、使いやすそうな会議室。働く環境が整うことは、確かに大切です。
しかし、どれだけ立派なオフィスをつくっても、それだけで社員同士のコミュニケーションが活発になったり、一人ひとりが力を発揮できるようになったりするとは限りません。
「場所を変えただけでは、働き方は変わらないんです」
そう話すのは、株式会社Duck Diveで取締役・コンサルタントを務める新城季樹さん。
大学で建築を学び、工場などの設計やシェアオフィスの開発、企業のオフィスづくりを支援する仕事を経験してきました。
現在は、オフィスの移転や改装だけでなく、働く人たちの意識や制度、仕事の進め方にも目を向けながら、企業の働き方を支援しています。
目指しているのは、見た目のよいオフィスを完成させることではなく、そこで働く人たちが、自分の力を発揮できる環境をつくること。
なぜ建築の世界から、働き方そのものを考える仕事へと進んだのか。そして、専門知識以上に大切にしていることとは。
新城さんに、これまでのキャリアや仕事の魅力、これから一緒に働きたい人物像について伺いました。
株式会社Duck Dive
取締役 / コンサルタント 新城 季樹
大学で建築を学び、新卒で工場などの建築を手がける会社に入社。設計業務を経験した後、シェアオフィスを運営する企業で、オフィスの開発や設計・工事の進行管理に携わる。その後、大手プロジェクトマネジメント・コンストラクションマネジメント会社で、発注者側に立ったオフィスづくりの支援を経験。2026年4月から株式会社Duck Diveに正式参画し、現在は取締役・コンサルタントとして、オフィスづくりや働き方の改善を支援。
建物をつくる仕事から、人が働く環境を考える仕事へ

編集部まずは新城さんのこれまでのキャリアについて伺いたいのですが、大学では建築を学ばれていたんですよね。



そうですね。大学では建築系のことを学んでいました。建築といっても、住宅やインテリアから、工場や研究所のような大きな建物まで、いろいろな分野があるんです。僕は新卒で、工場などをつくる会社に入社して、設計の仕事をしていました。



そこから、現在のようにオフィスを中心とした仕事へ進まれたのは、どうしてだったんですか?



仕事をしているうちに、もう少し人が使っている様子が見える建物に関わりたいと思うようになったんです。例えばオフィスって、使いやすい場所なら仕事が効率的ですし、使いにくければ働きにくさにつながりますよね。そういう違いを、実際に使う人の立場でも感じやすいと思ったんです。それで、2社目に転職したのがシェアオフィスを運営している会社でした。



なるほど。建物を設計することだけではなく、実際に使う人のことにも関心が向いていったんですね。その転職先では、どんなお仕事をされていたんでしょうか?



自分たちが提供するオフィスをつくるために、設計会社や工事会社に依頼して、予算の中で計画を進めていくような仕事ですね。ただ、自社で提供するオフィスなので、つくるものや進め方がある程度決まってくるんです。それで、今度はもっとお客様ごとに違う課題に向き合える仕事がしたいと思うようになりました。



そうだったんですね。その思いから、次はどんなお仕事を選ばれたんですか?



3社目では、オフィスをつくろうとしているお客様の側に立って、設計や工事を進めるサポートをしていましたね。オフィスの移転や改装を担当するのは、企業の総務の方であることも多いんです。でも、総務の方は必ずしも建築の専門家ではありません。一方で、設計会社や工事会社の方は専門知識を持っていますから、説明を受けても、お客様側ではそれが本当に適切なのか判断しにくいことがあるんですよね。



確かに、建築の知識がなければ、提示された内容や費用が妥当なのかも判断が難しそうです。



そうなんです。しかも、大きなお金が動く仕事ですからね。そこで、お客様の立場で設計会社や工事会社とやり取りをして、計画が適切に進むように支えるんです。建築の専門家とお客様の間に入って、安心してプロジェクトを進められるようにする。そういう仕事ですね。
「どうなるかわからないけど、面白いかもしれない」代表との出会いからDuck Diveへ



その3社目でのお仕事が、今の株式会社Duck Diveにつながったんでしょうか?



そうですね。実は今の代表である關とは、その会社にいた頃に知り合いました。關が以前勤めていた会社でオフィスに関するプロジェクトがあって、僕がお客様側をサポートする担当として関わったんです。



最初は、お客様と支援する側という関係だったんですね。



はい。ただ、こういう仕事って、お客様とかなり密にコミュニケーションを取るんですよ。普通に考えると、こちらが支援する会社で、お客様が向こう側にいる関係ですよね。でも実際には、僕たちがお客様の隣に座って、設計会社や工事会社と一緒に話を進めるような感覚なんです。プロジェクトの期間も長いので、自然といろいろな話をするようになるんですよね。



同じチームのような関係になるんですね。その中で、独立のお話が出てきたんでしょうか?



そうですね。プロジェクトが終わった後もいろいろ話をする中で、關から「独立して、こういう仕事をやっていきたい」という話があったんです。働き方やオフィスをどうしていくべきかという考え方にも、共通する部分がありました。それなら、お客様の会社の中からではなく、外部のサービスを提供する立場として、いろいろな企業に提案していけるような仕事を自分たちでやってみよう、という流れになったんです。



考え方が近かったことに加えて、一緒に仕事をしてみたいと思える何かがあったんでしょうか?



お互いに、これまで経験してきたことやタイプが違う部分もあったんですよね。だからこそ、うまく相乗効果が生まれるかもしれないと思いました。どうなるかわからないこと自体にも、面白さがあるかもしれないと感じたんです。



その後、新城さんは2026年4月から正式に参画されたんですよね。以前の会社で働いていた頃と比べて、変化はありましたか?



仕事の立ち位置や、お客様に対してやること自体は、そこまで大きく変わっていないと思います。ただ、以前の会社のような大きな看板がない分、自分たちで考えなければならないことは増えましたね。自分たちで考えて進められるのはいい面でもありますし、大変な面でもあります。そこは、実際に参画して感じているところです。
「オフィスを変えただけでは、働き方は変わらない」Duck Diveが目指すもの



ここからは、Duck Diveの事業について詳しく伺いたいです。オフィスの移転や改装だけではなく、働き方そのものを支援されていると拝見したんですが、具体的にはどんなことをされているんでしょうか?



僕たちが大切にしているのは、働く人たちがよりよい状態で働けるようにすることです。オフィスを移転したり、新しくしたりすることは、そのための一つの方法なんですよね。ただ、お客様にとっては、オフィスが完成してからがスタートでもあるんです。新しい場所で、実際にどう働いていくのか。そこまで考えないと、本当に働き方が変わったことにはならないと思っています。



オフィスが完成したら終わり、というわけではないんですね。



そうですね。例えば、広いオフィスに移転して、デザインをきれいにして、家具もかっこいいものに変えたとします。もちろん、それは働き方を変えるきっかけとして、とてもいいことだと思います。でも、それだけで社員の働き方が劇的に変わるかというと、必ずしもそうではないんです。



確かに、職場がきれいになっても、仕事の進め方自体は以前と変わらないこともありそうです。



そうなんです。だから、場所だけではなく、会社の制度や仕組み、社員の皆さんがどう感じているかという部分まで考える必要があるんですよね。例えば、パソコンや情報共有のツールが整っているかとか、社内にどういう雰囲気があるかとか。そういう目に見えない部分も、働きやすさには関係してくると思うんです。



オフィスのことだけでなく、かなり幅広いところまで見ていくんですね。実際には、どうやって改善すべき点を見つけていくんでしょうか?



そのための方法の一つが、サーベイですね。社員の方々にアンケートのような形で回答してもらって、今の働き方や環境について、どこに課題があるのかを確認するんです。健康診断のようなイメージですね。そこでわかったことをもとに、お客様自身で改善できる部分は進めていただく。外部のサポートが必要であれば、僕たちが一緒に考えて提案する。そういう流れをつくりたいと思っています。



なるほど。課題を見つけるだけではなく、お客様自身が改善を続けられるようにすることも大切なんですね。



はい。僕たちがずっとそばについていればいいというわけでもないんです。それだとお客様にも費用がかかりますし、僕たちがいても解決できないことはありますから。お客様が自分たちで改善を進められるようになって、必要な時には僕たちに相談していただく。そういう形で、働きやすい環境づくりを続けていけたらと思っています。
オフィス、制度、ITツールまで。働き方を変えるために必要なこと



お話を聞いていると、働き方を変えるには、オフィス以外にもいろいろなことを考えなければならないんですね。例えば、どんな取り組みが考えられるんでしょうか?



例えば、オフィスを新しくすると同時に、フレックスタイム制度やリモートワークを取り入れるケースがありますよね。パソコンやオンライン会議のツールを整えて、会社にいなくても仕事ができるようにする。ただ、そうすると今度は、マネージャーの方が部下の働いている姿を直接見られなくなるので、評価が難しくなることもあるんです。



ああ、確かに…。働く場所の自由度が高くなったことで、別の課題が出てくるんですね。



そうなんです。そこで、例えば上司と部下が定期的に1対1で話す機会を増やしたり、仕事の進め方だけではなく、成果をどう評価するかを見直したりする必要が出てきます。そういう仕組みが整えば、社員の方々も自分で考えて仕事を進めやすくなると思うんです。大切なのは、オフィスも制度もツールも、それぞれ別のものとして考えるのではなく、うまく組み合わせることですね。



なるほど。でも、そこまで考えるとなると、総務の担当者だけでは対応しきれないこともありそうですね。



そうですね。例えば、オフィスは新しくなったけど、使っているITツールは昔のまま、ということもあります。総務の方はITの専門家ではありませんし、オフィス移転も毎年経験するような仕事ではないですから。そういう時には、情報システムの担当者や人事の担当者も巻き込んで、一緒に考える必要があります。僕たちがすべての専門分野に詳しいわけではないので、必要に応じて、それぞれの分野の専門家に提案してもらうこともありますね。



ちなみに、そうやって進めた取り組みが、本当にうまくいったかどうかは、どのように確認するんですか?



そこは難しいところでもあります。例えば、働き方を変えたことで業績が上がったとしても、どこまでがその取り組みの効果なのかを、はっきり証明するのは難しいですよね。ただ、最初に「こういう働き方を目指そう」という目標を決めて、そのために必要なことを考えていくんです。そうすれば、目指していた働き方に近づいているかどうかは、ある程度確認できると思います。サーベイで社員の皆さんの状態を確認することもできますし、実際に仕事の進め方が変わってきているかを見ることもできます。



最初に目標を明確にしておくことで、途中の変化も確認しやすくなるんですね。



そうですね。それに、お客様によって目指している働き方は違いますから。社員同士のコミュニケーションを増やしたい会社もあれば、別のことを重視している会社もあると思います。だから、まずは何を実現したいのかを確認して、そのために必要なことを考える。そして実際に取り組んで、目指した状態に近づいているかを見ていく。そういう進め方が大事だと思っています。



長い時間をかけて取り組む仕事だと思うのですが、新城さんはこのお仕事のどんな部分にやりがいを感じますか?



決まった商品を売る仕事ではないので、お客様も最初から答えを持っているわけではないですからね。何が必要なのかを一緒に考えて、チームとして進めていく。その中で、僕たちの提案やアドバイスが役に立って、感謝してもらえるのはうれしいですね。プロジェクトが終わって、実際に働き始めてから3か月、半年と経った時に、うまく機能しているとわかることもあります。長く一緒に取り組んだお客様と、そうした変化を共有できるのは、この仕事の面白いところだと思います。
「専門知識は補い合える」新城さんが一緒に働きたい人と、これからの展望



今後、会社が大きくなっていく中で一緒に働く方も増えていくと思うのですが、そもそもこうしたお仕事には、やはり建築の専門知識が必要なんでしょうか?



もちろん専門知識は大事ですが、必ずしも一人ですべてを理解している必要はないと思っています。僕たちも基本的にはチームでお客様に対応しますから、それぞれ得意なことや苦手なことがあっていいと思うんです。専門的な部分は、ほかのメンバーに補ってもらえることもありますし、仕事をしながら覚えられることもあります。



新城さんは一級建築士の資格もお持ちなので、同じような資格が必要なのかなと思っていました。それよりも重視されることがあるんですね。



僕は、お客様とコミュニケーションを取ることが好きかどうかが大切だと思っています。お客様のことを理解して、その人のためにいろいろ提案したいと思えるかどうかですね。それに、僕たちの仕事には、先ほどお伝えしたように、決まった答えがないことも多いんです。お客様ごとに課題も違いますし、提案する内容も変わってきます。だから、一緒に考えながら答えを探して、できるだけこちらからリードしていこうと思える方なら、活躍できるんじゃないかなと思います。



答えが決まっていないことを、むしろ面白いと感じられる人が向いているんですね。



そうですね。あと、専門家の立場で一方的に説明するだけでは駄目だと思っています。お客様は建築の専門家ではないので、難しい言葉で話されても、何を言われているかわからないことがありますよね。だから、こちらもお客様の立場に立って、「これでは伝わらないかもしれない」「もっとわかりやすく整理した方がいいんじゃないか」と考えられることが大切なんです。



専門知識を持っていることと、それを相手にわかりやすく伝えられることは、また別なんですね。ちなみに、これから5年後、10年後、Duck Diveをどんな会社にしていきたいと考えていますか?



会社の規模については、まだあまり具体的にイメージできていないところもあります。ただ、社会や働き方はこれからも変わっていくと思うので、その時々のお客様にとって意味のあるアドバイスやサポートを続けていきたいですね。AIによって、専門的な知識を得ること自体は、これからもっと簡単になっていくと思います。でも、企業ごとに事情は違いますし、一般的な答えがそのまま当てはまるわけではありません。だからこそ、そのお客様にとって何が必要なのかを一緒に考えて、「頼んでよかった」と思ってもらえる仕事を続けていきたいです。それに、僕自身はいろいろな人とチームで仕事をするのが好きなので、興味を持ってくださる方がいれば、いろいろな人と一緒に働いていきたいですね。



今回のお話を通じて、オフィスづくりは建物や内装を整えるだけではなく、その先にいる人たちの働き方を考える仕事なのだと感じました。大学で建築を学び、設計からオフィスの運営、そしてお客様の立場に立った支援へと経験を重ねてきた新城さん。その歩みには、一貫して「実際に使う人にとって、どうすればよりよくなるのか」という視点がありました。専門知識だけでなく、相手の話を聞き、一緒に答えを探していく姿勢が求められる仕事。建築業界に限らず、人と関わりながら課題を解決する仕事に興味がある方にとっても、新しいキャリアの選択肢になるのではないでしょうか。新城さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

