「もう1花ぐらい咲かせられるんじゃないかと。」株式会社栄進鈑金製作所・間山社長が、20人の町工場を継いでから7年間でやってきたこと

入った会社を、自分がよくしていく。そんなふうに考えたことは、ありますか?

株式会社栄進鈑金製作所の間山幸光社長は、システムエンジニアから20人の町工場に入り、7年前に代表に就任しました。「それまで1000人単位のところにいたので、20人の会社で全部が回っているのを見て、驚きました」。

義理の父から会社を引き継いだのが、2019年。売り先を変え、上がった利益を社員に回しながら、いまは2社を見ています。

今回は、まったく別の仕事から来た間山社長に、この6年で1つずつ変えてきたことを、じっくり伺いました。読み終わる頃には、会社を続けるために、どこから手をつけるかが見えてくるはずです。

お話を伺った人

株式会社栄進鈑金製作所

代表取締役 間山 幸光

学校卒業後、コンピューター系の会社でカスタマーエンジニア、のちにシステムエンジニアとして約10年勤務。地元山形の銀行のシステム部門を経て、2013年4月に株式会社栄進鈑金製作所へ入社。2019年4月から代表取締役に就任。2022年4月からは有限会社間山塗装工業の代表も兼務。鉄の箱物や電気の筐体を、板金から塗装まで一貫して製作。

目次

AIには取って変わられませんから

編集部

山形県米沢市で精密板金の会社を経営されている間山社長。板金と聞くと、私はつい車の修理を思い浮かべてしまうのですが、それとは違うんでしょうか…?

間山社長

そう、車を直す板金塗装ではないんですよ。通称、「精密板金」と呼ばれる仕事でして。鉄の箱物を作ったり、電気の機械が入る筐体、つまり外側の箱を作ったりしています。

編集部

電気の機械が入る、鉄の箱…。私はつい、決まった形のものを大量に作っている工場を思い浮かべてしまいます。実際は、どうなんでしょう?

間山社長

いえ、ほぼ小ロットでのオーダーメイドですね。大量生産ではないので、いま盛んに言われている工場のDX(※)には、あまり当てはまらない仕事なんですよ。

※…デジタルの技術を使って、仕事の進め方そのものを変えること

編集部

DXに当てはまらない…。それは、意外でした。

間山社長

それが遅れているということではなくて、工場でものを作るわけで、これは本当に現場でしかできない作業なんです。AIには取って変わられませんから。

編集部

AIには取って変わられない…!「この仕事はいつまであるんだ」という話ばかりが耳に入るので、そこまで言い切っていただけると心強いです。

間山社長

そうですよね。これから体を動かす現場の仕事は給料が上がってくるとか、いろんな記事が出ていますよね。うちもその1つになれるんじゃないかな、と思っているんです。

1000人の会社から、20人の会社へ

編集部

間山社長からはかなりの熱量を感じるのですが、ご自身はもともとこの業界の方ではないとのことで…。最初は、どんなお仕事から始められたんですか?

間山社長

実は全然畑違いで、はじめはコンピューター系の会社に入社したんですよ。現場のパソコンやプリンターを直す、カスタマーエンジニアというところから始めましてね。途中からシステムエンジニアに変わって、10年ぐらいやったんですよね。

編集部

作るのではなく、直す側から…!そこから、どうやって板金の会社へ?

間山社長

その後、地元の山形にある銀行のシステム部門に転職したんです。パソコンを直したり、サーバーを構築したり、机の下に潜ってLANケーブルを引っ張ったりですね。その銀行にいる時に、妻と結婚しまして。

編集部

おぉ…!そのご結婚が、きっかけになったんでしょうか?

間山社長

そうですね。実は妻の父親…私にとって義理の父が、当時はいまの栄進鈑金製作所をやっていたんです。ある時、そんな義理の父から「うちの会社に入れよ」と言われまして(笑)。いやいやいや…となりつつ、最終的にいろんな外堀を埋められまして。33歳の時、2013年の4月から入りましたね。

編集部

そういった経緯があったんですね。ただ、システムエンジニアから町工場となると、勝手がまるで違いますよね。

間山社長

そうなんですよね。もっと事前にちゃんと調べたら良かったんですけど。でも、それまで1000人単位のところにいたので、20人の会社で全部が回っているのを見て、驚きました。

編集部

1000人から、20人へ。義理のお父様は、この会社をどうしていきたいと考えていらっしゃったんでしょう?

間山社長

いまいる社員を路頭に迷わせたくない、ということだと思います。大きくしてほしいというよりも、継続して会社を頑張りたい、という気持ちのほうが強いんでしょうね。

編集部

拡大ではなく、続けること…。そのあとに、代表を引き継がれたんですね。

間山社長

そうですね。2019年の4月から代表をやっています。板金のほかに塗装の会社もあって、2022年の4月からはそちらの代表も務めているので、いまは2社を見ている状況ですね。

営業のメインは、いまも展示会です

編集部

2社を、同時に。代表になられて7年ですが、売上はそこからどう動いたんでしょう?

間山社長

今でこそ、少しずつは増えてきたんですが、私が入った2013年の頃は、本当にカツカツでやっていました。というのも、リーマンショックと東日本大震災の影響を、まだ拭いきれていなかったんです。

編集部

なるほど…。そこから、どうやって動いていかれたのか気になります。

間山社長

とにかく、いろんな商談会に出始めました。山形県の商談会が年2回あって、仙台でも開かれていたのでそちらに行ったり。でも…、商談会って、結局もっと安いところを探すみたいな、そういう場なんですよね。それはちょっと違うのかなとも感じまして。

編集部

たしかに、良い取引ができる先を探す場、というより比べる場。そんな気もしますね。

間山社長

それが2016年に、ものづくり補助金を得られた会社が出られる展示会が、東京のビッグサイトであったんですよ。そこに出たら、反応が全然違うというか。展示会に来る人たちって、やっぱり”探している”んですよね。それで、営業手法としては展示会がいいんじゃないか、と判断しまして。いまも、うちの営業のメインは展示会です。そこから関東のお客様とどんどん繋がることができて、見積もりの金額も変わってきましたね。

編集部

お客様が変わると、金額まで変わるんですね…。

間山社長

単価が上がって利益も少しずつ増えてきました。今度は社員のために、福利厚生だとか働く環境を変えなくちゃいけない、というところにメスを入れまして。休みを増やしたりして、その結果か定着率も上がりましたね。

編集部

利益が出たら、まず設備ではなく、社員の方に。

間山社長

定着率が上がると、今度は回転率も早くなるわけじゃないですか。作れる量も増えるので、だいぶ改善ができたのかなと。

うちの機械で、好きなものを作っていい

編集部

その、働く環境の改善から、いまは採用のほうに移られていると伺いました。

間山社長

そうですね。大きな会社ではないので、どうやったら人が来てくれるんだろうと考えまして。いまは、外から見てわかる看板を増やそうとしているんです。健康経営優良法人の認定を6〜7年ほど受けていますし、山形県の認定もいくつか。今年は「山形を代表する企業100選」にも選んでいただきました。

編集部

看板を、増やす…!社員の方には、どう伝えていらっしゃるんですか?

間山社長

地域で1番の会社になろう、と常に伝えています。いま弊社は市内では会社の規模としては2番目に大きくて、1番大きい規模の会社は私たちの3倍ぐらいあるんですけど、そこに追いつこう、と。ただ、採用ということで言うと、実は認定よりもSNSのほうが効いてるんですよね。XとInstagramをやっていて、特にInstagramは社員が一生懸命やってくれていて、フォロワーも2,900人ほどになりました。実際、これを見て来ました、という方もいらっしゃるので、かなり効果的ですね。

編集部

SNSは私も拝見しましたが、写真にセンスがありますね。

間山社長

頑張ってるなと思って見ています。私のアカウントは、全然役に立ってないですけど(笑)。

編集部

(笑)社員の方から出てくるもの、といえば、ほかにも仕掛けがあると伺いました。

間山社長

社内ベンチャーの制度ですね。うちは副業もOKにしているので、それなら会社の機械を使ってもらってもいいんじゃないか、というところから始まったんですが、自分でデザインして、好きなものを作っていいんです。しかもECサイトも用意してあるので、そこで売れた分は本人のものになります。

編集部

会社の機械で、自分の作りたいものを作る…!実際に、売れているんですか?

間山社長

ちょこっとですけどね。大した金額は動いていないですけど、実績は出ています。そこから広がって、女性社員が立ち上げたブランドでイヤリングを作っていたり。最近は市内の高校と組んで、生徒さんのデザインのイヤリングをガチャガチャにする、という話も進んでいます。

学歴は、見ていないんです

編集部

好きにやっていいよ、と言える会社。そこに、いま来てほしいのはどんな方でしょう?まず、募集されている職種から伺えますか?

間山社長

溶接をする人と、塗装をする人ですね。この2つは、何人いてもいいので常に募集しています。というのも、溶接をする人がもっといれば、もっと物が作れて、回転率が上がって売上も上がるんです。塗装も同じですね。

編集部

年齢は、やはり若い方を求められますか?

間山社長

将来性を考えればそうなんですけど、40代でも全然大丈夫です。ただ、ある程度の年代だと、経験のある方がいいですね。

編集部

40代でも大丈夫、というのは驚きました。それでは、採用で1番重視されているのは、どこになりますか?

間山社長

まずは、体が丈夫な人ですよね。学歴は見ていないので、中卒の方もいっぱいいらっしゃいます。あとは最近重視しているのが、やり抜く力ですね。

編集部

学歴は見ていない。それは、心強く聞こえる方が多いと思います。

間山社長

面接の最後に聞くのが、自己肯定感が高いかどうかなんです。そこが高いと、やり抜く力につながるんだと思うんですよ。逆に低いと、自分を守るために逃げてしまう人が多くて。

編集部

それは、たしかにあるかもしれませんね。入られた方が、その先で伸びていくとしたら、どこが分かれ目になると考えてますか?

間山社長

指示されたことをやっている人もいっぱいいますけど、上に立ってマネジメントをしていく人は、自分で考える力がさらに必要ですよね。それが、あるかないか。

編集部

そういう方が育っていった先に、会社としてはどこを目指していらっしゃるんでしょう?

間山社長

東京に営業の拠点を作ろうかな、と思っているんですよね。というのも関東のお客様が8割9割なので、「すぐ来てよ」と言われることも多くて。誰かいれば、とりあえず行けるじゃないですか。困っていることを解決するのがビジネスの基本ですから。あとは、いい話があればM&Aも考えたいですね。私は46ですけど、もう1花ぐらい咲かせられるんじゃないかと。

編集部

46で、もう1花咲かせられるんじゃないか。売り先を変え、利益を社員に回し、看板を増やして7年。1つずつ変えてきた方の、これが次の一手でした。会社を続けるならどこから手をつけるのか、その順番が、この7年にありました。間山社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

株式会社栄進鈑金製作所_採用情報

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