「価値がない、とされていたものを感動に変える」fabula株式会社・町田社長が開発した技術で無限に広がる、”ゴミのストーリー”とは

捨てられていたものが、新しい素材に生まれ変わる。そんな仕事があることを、あなたは知っていましたか?
fabula株式会社の町田紘太社長は、東京大学の研究室で生まれた技術で起業した立場として「これまで価値がないとされていたものを使って、より良い社会の形をつくれないか」とずっと模索しています。
研究室を選んだきっかけは「大学だから、企業がやらない研究をやってみたい」という先生の一言だったとのことですが、いまはその技術で、食品廃棄物からもコンクリートのゴミからも新しい素材をつくっています。
捨てられていたものは、どうやって素材に変わるのか。その技術を製品にしていく上で、何が難しいのか。そして、この会社が最後に目指しているのはどんな社会なのか。詳しくお話を伺いました。読み終わる頃には、世の中にある仕事の景色が少し広がっているはずです。
fabula株式会社
町田 紘太 代表取締役CEO
東京大学在学中、生産技術研究所のコンクリート系の研究室で、食品廃棄物から新素材をつくる技術の開発に携わる。卒業後の2021年10月、小学校からの幼馴染3人でfabula株式会社を設立。食品廃棄物や有機系の廃棄物から新しい素材とプロダクトをつくる技術と、コンクリートの代わりになる素材の開発を進めている。幼少期をオランダで過ごし、これまでに世界60か国以上を渡り歩く。
企業がやらない研究を、やってみたい
編集部町田社長は、東京大学を卒業してすぐに起業されたと伺いました。もともと、会社をつくりたいという気持ちがあったんですか?



それが、そうでもなくて。起業がしたい、というよりも、こういう技術があるから起業するのがいい選択肢なんだろうな、と。そういう順番でしたね。



技術のほうが、先にあったんですね。その研究は、どういうところから始まったんですか?



もともとの所属が、コンクリート系の研究室だったんです。ただ、この研究がしたくてそこへ行った、というわけでもないんですよ。学科の中で研究室を選ぶ時に、いろんな先生が「うちの研究室はこういうことをやってるんだよ」とプレゼンをしてくれるんですけど、その時に先生が「大学だから、企業がやらない研究をやってみたいんだよね」とおっしゃっていて。それが印象的で、その研究室を選んだんです。



研究の中身ではなく、そのスタンスに惹かれたんですね。



どちらかというと、そこの姿勢が面白いなと思って。いまの会社では、これまであまり価値がないとされていたものを使って、どうやったらより良い社会の形をつくれるのかな、というのをずっと模索しています。



具体的には、どんな技術になるんでしょう?



食品廃棄物だったり、有機系の廃棄物から新しい素材やプロダクトをつくる技術ですね。それから、コンクリートのゴミや砂、ガラスの廃棄を使って、コンクリートの代わりになるものをつくる技術です。いずれも共通するコンセプトは、これまで使われてこなかったものから感動をつくる、というところです。
見た目も香りも、そのまま残る



使われてこなかったものから…というのは、具体的にはどうやって形にしていくんですか?



プロセス自体はシンプルです。元の原料を乾燥して粉末にする…片栗粉をつくるみたいな感じですね。それに熱と圧力を同時にかけて、固めていくという技術です。正直、この技術自体は昔から全然あるものです。それをこういう原料に応用していったところが、違うかもしれないですね。


写真:素材パレット



原料が変われば、できあがるものも変わってきますか?



見た目の話であれば、原料の見た目がそのまま引き継がれて残るので、そのままといえばそのままですかね。見た目も、香りも。


写真:コースター製品



素材になっても、元が何だったかわかるんですね…!製品にしていく中で、難しいのはどういうところですか?



こういう業界は全部そうかもしれないんですけど、技術はもちろんいいんですけど、市場の立ち上がりがやっぱりすごくゆっくりだな、というところがあって。どうしても量をたくさん作っていかないと、コスト的にも難しいよね、という問題もありますし。そこの難しさは、やっぱりありますね。
説得するのは、僕だけでいい



技術があっても、市場をつくるところから、という段階なんですね。そういう会社で働くのは、どんなところが面白いんでしょう?



やりたいと思ったことを、やりたい時に、人を巻き込めば結構どうにかなることが多いんじゃないかな、と思っていて。例えばこういう企画をやってみたい、という話があった時に、小さい組織だから、説得するのは僕だけでいいわけじゃないですか。



決まるまでが、とにかく短いんですね。



ただ、裁量権がいっぱいあっていろいろできる、というのは、責任が伴うことと裏返しだと思っています。



たしかにそうですよね。裁量をもって行動をすることと責任をとる覚悟は、セットだと思います。



そこがしっかり持てるかどうかかな、という気がしています。楽しいポジティブな話ではないですけど、向いているか向いていないかで言うと、多分そこかなと。それがないとリスクだけに飲まれてしまって、小人数なのに大企業ぐらい遅い、みたいなことが起きてしまうので。



速く動ける規模なのに、逆になってしまいますよね…。
食もコンクリートも、インフラだから。



そのぶん、この仕事を続けていて面白いと感じるのはどんなときですか?



僕がやっていてすごく面白いなと思うのは、いろんな人に会えることですね。テーマにしているのがインフラなので、食もコンクリートもインフラで、関わる人がすごく多いんですよ。



たしかに、建設の人や、食品メーカーの人とは密に関わりますよね。



ええ、それに農家さんもいれば、機械の部品を作っている人もいますよ。昔から関わりのある人を集めて、少しだけパーティーっぽいことをたまにすることもあるんですけどね。その振れ幅が広いのは、結構面白いなと思っています。



多くの業界の方と同じ会社で関わるんですね。それだけの幅を持つとなると、これから一緒に働く人に求めることもありそうです。



能力で言うと、さきほどお話しした自由と責任かなという気がしていて。そこがちゃんと持てる人かな、というのと…、あとは作業をAIにちゃんとさせられる人というのも実務目線では大前提かなと思っていて。



AIに作業をさせられるスキル、ですか。



今までみたいに、寝ずに頑張って業務をこなす必要は多分なくて。こなす作業は夜にAIにやってもらえば良いだけです。そうしてできた時間で、どれだけインプットもアウトプットができるかだと思うんですよ。



身につけるスキルよりも、時間の使い方ということでしょうか?



まぁでも、現段階で必要なスキルを考える、というのは結構ずれているなと思っていまして。求めるのはどちらかというとマインドセットとかスタンスのほうだったりします。AIは変化がドラマティックなだけで、ツールとして使うかどうかという話かなと思うんですけど…、でも、電卓が出てきた時に電卓を使わないで自分で筆算していた人もいると思うので。それと同じかなと思います。



道具が変わっても、やることは変わらないというわけですね。
不安のない世界を、つくりたい



その先で、事業としてはこれからどこへ向かっていくんでしょう?



そうですね、コンクリートの代わりになるものをつくる事業を、積極的に広めていきたいと思っています。コンクリートの課題はすごくたくさんあるので、そこに解決を提供したくて。主に海外でやっていこうかな、とは思っているんですけどね。



なるほど…、今後グローバルに展開することも視野に入れているわけですね。ちなみにご自身としては、どういう状態を目指されているんですか?



自分軸で言うと、不安のない世界というのがすごく大事だと思っていて。そういう世界を、一人の起業家として作れたらいいなとずっと思っているんですよ。



世界進出に、不安のない世界…。なんだか痺れますね。



自分がお金持ちになって、みたいなのは実はあまりなくて。不安のない社会をつくることができるのであれば、どんな事業でもやってみたいなと思いますし、社会に貢献できる会社になれたら、それでいいかなと思っています。



でも、どうして「不安のない世界」に行き着いたんでしょう?



たとえば、「お金持ちになりたい」「モテたい」という欲があるじゃないですか。その反対側にあるのが、多分不安かなと思っていて。不安になると、人を攻撃するんですよね…。欲望は求めてもキリがないけれど、不安のほうは、ゼロにはならないかもしれないけど、なるべくなくしていく。それが、いま一番つらい思いをしている人たちにとっていいんじゃないかなと思っていて。



豊かさを足していくのとは、逆の方向なんですね。



その人たちは、今日お金持ちになりたいわけじゃなくて、まずご飯があることがすごく大事だと思うんですよ。先進国か途上国かという話でもなくて、みんなが幸せに生きるためには、すごく大事な要素かなと思っています。日本って、一般的に治安が良いと言われていますし、バッグを抱えて歩かなくても比較的安全に過ごせますよね。それがどれだけ心の安定に寄与しているかというのは、日本人的にもすごく納得感があるんです。



バッグを抱えて歩かなくていい。それがどれだけ心の安定に効いているかは、言われるまで気づきませんでした。仕事を考えるときも、つい年収や肩書きを足す方向で見てしまいますが、まず減らしたいのは不安のほうなのかもしれないなと思いました。町田社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。不安を抱えずに働ける場所を見つけられる20代の方が一人でも増えるように…私たちもキャリア支援の現場から伴走していければと思います。

