「AIでコードが書ける時代でも、基本が大事。」株式会社GeNEE・日向野社長が語る、 これからのエンジニアに必要な力

学生時代からアプリ開発に取り組み、NTTデータなどを経て株式会社GeNEEを創業した日向野卓也社長。大企業の仕組みを働きながら勉強する傍ら、夜は個人でアプリ開発の仕事を続け、案件が増えていったことをきっかけに会社を立ち上げました。
現在、GeNEEが主力とするのはシステム開発とアプリ開発です。2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国350店舗で使われるPCR検査システムの開発にも携わりました。
そして今、開発の現場では生成AIの存在感が急速に高まっています。コードを書くことそのものがAIによって効率化される中、これからエンジニアを目指す人には何が必要なのでしょうか。
日向野社長が繰り返し話されたのは、「何事も基本」という言葉でした。
今回は、これからのエンジニアに求められる力や、未経験からITの仕事に触れる入口として同社が月3名を募集している「QAテスター」の仕事について伺いました。
株式会社GeNEE
代表取締役 日向野 卓也
東京工業大学環境・社会理工学院、慶應義塾大学ビジネススクールMBA(経営学修士)卒業。 学生時代からアプリ開発に取り組み、NTTデータへ入社。企業派遣でビジネススクールにも通う一方、個人でもアプリ開発の仕事を続ける。案件の規模が大きくなったことと自社サービスの展開をきっかけに法人化し、株式会社GeNEEを法人化。現在はシステム開発、スマホアプリ開発、そしてDX・ITコンサルティング事業などを手がける。
「独立したい」より、気づいたら組織になっていた

編集部まず、日向野社長が今の会社を立ち上げるまでの経緯から伺ってもいいですか?



もともとアプリ開発はプライベートでもやっていて、そこからいろいろな友人らとの出会いもあって、だんだん案件の規模が大きくなってきた。それなら法人化するタイミングなのかな、というところで会社を立ち上げました。



もともと「いつか独立したい」という気持ちはあったんですか?



いや、それがあまりなかったんですよね。学生時代、研究者とのつながりもあって、いろいろなオファーをいただいていました。そこから、与えられた仕事をこなしていたら一人では足りなくなって、人を増やして、気づいたら組織になっていたという感じです。なので、「チャレンジ精神がものすごく旺盛だった」というよりは、淡々と地道に今の仕事をしていたら今の形になった、という方が近いですね。



大手企業を離れること自体にも、そこまで怖さはなかったと。



私は正直、そこまでなかったですね。今は大手企業にも、一度退職した社員が戻りやすい制度があったりするので、きちんと面接を受けて入社して、問題なく勤めていた人であれば、比較的戻りやすい仕組みもある。そう考えると、トライしたい時にトライできる環境にはなってきていると思うんです。
3〜4か月で作る。でも、品質は落とせない



これまで手がけた中で、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?



やはり2020年4月、新型コロナが出てきた頃に携わったPCR検査システムですね。全国350店舗で使われるシステムで、その裏側では全国16ほどの検査ラボの品質管理やチェックをする仕組みも作らせていただきました。日本国内も有事でしたし、緊急事態宣言もあって、国が一時的に閉鎖されるような状態でした。その中で、システムを止めずに3年から4年ほど支えたことは、私の中でも大きな経験ですね。



コロナで日本中が慌ただしかった裏側で、動いてくれていたんですね…。それって依頼を受けてから、どのくらいで形にしたんですか?



お客様も本当に急いでいたので、ベースになるものは3〜4か月くらいで作りましたね。その後もアジャイル(※)で機能を追加していく形です。
※アジャイル…「計画・設計・実装・テスト」という小さなサイクルを短い期間で何度も繰り返すこと



3〜4か月。かなりのハイスピードですね。



初期は20人くらいから始まって、どんどん人数が増えていきました。最終的にはカスタマーサポートなども含めて、40-50名くらいで回していた案件です。



そこまで急ぐ必要がある一方で、検査に関わるシステムなら品質も落とせないですよね。



そうなんです。私も元々は大手IT企業にいた人間なので、丁寧に、慎重に作るというクラフト思考は持っていました。一方で、役員の一人はメガベンチャー出身で、スピード感を持って作ることにかなり強い人間だったんです。システムが落ちれば多くのユーザーに迷惑がかかります。でも、時間をかけすぎてもいけない。その両方の考え方が混ざって、バランスを取りながら走れた案件だったと思います。



違う環境で経験を積んできた人とタッグを組んだからこそ、ですね。



はい。出会ってきたメンバーから受けた影響は、かなり大きかったと思います。今でもそう感じていますね。
プロジェクトのSlackに入り、社長自身もやり取りを見る





日向野社長は、今も経営だけではなく、実際のプロジェクトにも関わっているんですか?



基本プロジェクトには関与せず、トップ商談や新規事業の役割を担っています。ただ、プロジェクトごとにSlackのワークグループがあるんですけれど、重要案件には私も入っています。お客様とのやり取り自体は営業の担当者が行いますが、プロジェクトの中でどんなやり取りが行われているのかは意識的に観察するようにしています。



進捗を共有してもらうだけでなく、プロジェクトの動きも確認されるんですね。



そうですね。今は生成AIも活用していて、プロジェクト内のやり取りや進行に気になる点があったとき、確認を促すコメントが自動で入るような仕組みも使っています。 それでも、内容によっては自分で確認しますね。Aという判断をしているものに対して、「これはBじゃないか」と修正をお願いしたり、PM(※)と話をしたり。自動化できないものについては、ショートミーティングで話します。そこはやっぱり対話が必要なので。
※PM…システム開発などのプロジェクト全体の進行や品質、メンバーなどを管理する役割



日向野社長がそこまでプロジェクトに入る理由は、やっぱりお客様にきちんと結果を返したいからなんでしょうか。



そうですね。最終的に結果を出した時に、お客様が喜んでくださるじゃないですか。「作ってくれて助かった」とか、「効率化がすごく進んだ」とか、「売上が伸びて、新規事業としてうまくいっている」とか。そういう一言は、かなり嬉しいですよね。そこを経験してきた結果として、自分たちができる最大限の努力をする、という考え方は会社の中にも少しずつ根付いてきていると思います。
AI時代でも、エンジニアには「基本」が必要になる



今は、エンジニアじゃなくても生成AIに指示を出すだけで、コードを書けるようになってきました。そんな中で、これからエンジニアの仕事はどう変わっていくと見ていますか?



予測は難しいですけど、人がやるのか、AIがやるのかというところは、2〜3年後にはもっと厳しい戦いになると思っています。ブルームバーグの発表では、ChatGPTで有名なアメリカのOpen AIは2030年までに約44兆円のフリーキャッシュフローの赤字を出すと言われています。つまり、民間企業である以上、その44兆円以上の赤字を改修するために、ユーザを増やすか単価を上げるしかないんです。今は月額数千円から数万円で使えていてもこれが数十万円から数百万円に値上がりしたらどうでしょうか。今は人の人件費とAIにかかる費用を比較すると、AIの方が圧倒的に安いので、AIに振れている部分もありますが、基本このような類のサービスは最初は安くても、だんだん価格が上がっていくものが多いです。その時に、「人にお願いした方がいい」と判断する会社も出てくると思います。



その中で、エンジニアに残る役割はどこでしょう?



やはり上流工程でしょうか。要件定義だったり、基本設計だったり。AIはインターネット上のデータをもとに回答を出してくるので、そこに誤りが混ざる可能性はゼロではありません。なので、システムやアプリの裏側を正確に理解するエンジニアの存在が不可欠なのです。



AIが出したものを、そのまま正しいと受け取ってしまうのは怖いですね。



そうですね。ブラックボックスになっているものをそのまま信じて作ってしまうエンジニアは非常に多いと思います。逆に、昔からプログラミングをやってきて、上流工程の知見があって、しっかりコードにも触れている。そういうクラフト思考を持ったエンジニアの希少性は、今後上がっていくと思っています。



AIで同じようなものを作れるようになっても、そこに差は残る。



そう思います。例えば、同じように見える商品でも安いものと高いものがありますよね。そこには、見えない価値が存在している。システムも同様で、クラフト思考のエンジニアが作ったものは、安心安全で、セキュリティにも配慮されている。そのような部分の付加価値は上がっていくんじゃないかなと。



これからエンジニアを目指す人も、AIだけ触れればいいわけではないんですね。



何事も基本ですよね。プログラミングも、基礎から応用まできちんと積み上げないと能力は上がっていきません。AIに触れることももちろん大切なんですけれど、エンジニアとして一生やっていこうと思うのであれば、時間がかかっても、まずはきっちり基本を理解していくことが大切だと思います。AIにプロンプトを入れて、できたものを何も調べずに使っていたら、自分では修正できないじゃないですか。



言われてみれば、たしかに…。



さらにその修正もAIにお願いして、どんどんブラックボックスになっていった時に、最後に行き詰まるのはそのエンジニア自身なので。
未経験なら、まずQAテスターとしてソースコードに触れてみる



今、GeNEEさんでは採用も強化されているんですよね。



はい。エンジニアだけではなく、PMやソリューション営業、バックオフィスも含めて採用を強化しています。その中でも一番強化しているのは、やっぱりエンジニアですね。即戦力としては、5年以上の経験を持っている方を中心に採用しています。お客様と接して、いいものを作る上では、ある程度チームのスキルや能力、レベル感を揃えないといけないので。



一方で、この記事の読者には、まだその「5年」を持っていない人も多いです。未経験からでも挑戦できる仕事はありますか?



そこで言うと、先ほどの「基本」にもつながるんですけれど、QAテスターという品質保証の確認をするポジションを、今は月に3名程度募集しています。



そのQAテスターというのは、具体的に何をするんでしょう?



優秀なエンジニアになる上で、まずソースコードに触れていただいて、何か問題があったら指摘するという役割です。ここを経験すると、基本が学べてくるんですよね。



実際にコードに触れてみることで、自分に合っているかどうかも見えてきそうです。



そうですね。適性を見る意味でもいいと思います。実際にコードに触れてみると、「これは厳しいな」と感じる方も一定数いらっしゃるんですよね。一方で、そのままQAテスターとして経験を積む人もいるでしょうし、そこから「開発に上がってみたい」という人もいると思います。さらに、お客様と接するPMの仕事に興味を持つ人もいるかもしれない。一つの足がかりとして、まずテスターを経験してみるのは非常にいいことだと思っています。



それでは、未経験の方から応募があった場合、スキル以外ではどんなところを見ていますか?



弊社のホームページにも「8つのカルチャー」を載せているんですけれど、例えば、常に謙虚に前向きに動けること。それから、不平・不満・不機嫌の「不」を捨てること。一緒に働いていて心地よいと思えることは、結構大切だと思っています。面接でも、似たような質問を3回くらい投げかけて、その人の軸がぶれないかは見ますね。スキルももちろんそうですけど、人間性はやはり重視しますね。



AIでコードを書ける時代になっても、その中身を理解し、自分で判断するためには基本が欠かせない。未経験からその第一歩を踏み出せる仕事として、GeNEEではQAテスターという入口も用意されています。「時間がかかっても、きっちり基本を入れていく」。日向野社長のお話から、これからエンジニアを目指す上で大切なことが見えてきました。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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