「自分のルーツを知りたい気持ちは、なくならない。」家系図めぐり株式会社・畑山社長が、約10年向き合ってきた事業のこれから 

自分の両親、そのまた両親、さらにその先へ。

「自分はどこから来たのか」をたどり、一つの形として残す家系図。

興味はあっても、「専門家に依頼して作ってもらえる」ということ自体を知らない人は、まだ多いのではないでしょうか。

家系図めぐり株式会社の代表取締役・畑山朋之社長は、新卒でスマートフォンアプリの開発会社に入社。サービス企画やマーケティングに携わる一方、行政書士の資格を取得し、自身でも事業を始めました。

当初狙っていたのは、当時市場拡大が期待されていたドローン領域。しかし、大手企業の参入によって「市場が伸びること」と「自分がそこで勝てること」は別だと実感したそうです。

その後、行政書士として戸籍を取得する仕事の中で、親族関係を図にまとめたところ、依頼者から思いのほか喜ばれたことが転機になりました。

「家系図そのものが、一つの商品になるのではないか」。

2017年頃から個人で家系図作成事業を開始し、2026年には家系図めぐり株式会社を設立。現在は、戸籍をたどりながら家族の歴史を一つの家系図として残すサービスを展開しています。

トレンドに乗るだけではなく、市場があり、なおかつ自分たちが戦える場所を選ぶ。

畑山社長が家系図という市場にたどり着いた背景や、事業の実態、そして「家系図を作る文化そのものを広げたい」という今後の展望について、じっくりお話を伺いました。

お話を伺った人

家系図めぐり株式会社

代表取締役 畑山 朋之

新卒でスマートフォンアプリ開発会社へ入社し、サービス企画やマーケティングなどに携わる。2017年に行政書士試験に合格し、同年「畑山朋之行政書士事務所」を開業。行政書士業務で戸籍を扱う中で家系図作成の事業性に着目し、家系図事業をスタート。行政書士業務と並行してメディア事業も開始し、運営メディアは最大月間100万PV規模まで成長。2026年、家系図事業を本格化するため家系図めぐり株式会社を設立。

目次

行政書士、メディア、ドローン。変化の速い時代で「同じ仕事を続ける未来」が見えなかった

編集部

畑山社長は、最初から家系図作成の仕事をされていたわけではないとのことですが、これまでのキャリアの歩みから伺ってもよろしいでしょうか。

畑山社長

そうですね。新卒では、スマートフォンのアプリを開発している会社にディレクターとして入りました。サービスの企画からカスタマー対応、マーケティングまで、一連の流れを経験させてもらって、社会人3年目の頃に行政書士資格を取って、開業しました。同じ時期に、メディア事業も始めています。

編集部

本業をしながら資格を取って、事業もメディアも始めるって、かなり動いていますよね。もともと独立志向が強かったんでしょうか?

畑山社長

独立したいというより、時代の流れに対応しないといけないという感覚の方が強かったですね。僕が就職した頃って、スマートフォンのアプリ市場が一気に伸びていた時期なんですよ。企業がその流れに乗れるかどうかで、今後が左右されるような時代でした。今で言えばAIに近いですよね。

編集部

なるほど。技術もトレンドも、どんどん入れ替わっていきますよね…。

畑山社長

そんな時代のど真ん中で働き始めたので、定年までずっと同じことをやって働いているイメージが全く湧かなかったんです。だから、自分自身も変化に対応できる状態でいなければいけないと思っていました。行政書士を取ったのも、その一つです。

編集部

行政書士については、当時伸びそうだったドローン市場を見越して取得されたのでしょうか。

畑山社長

そうですね。数年後にドローンの許認可業務が広がることはある程度見えていました。個人で何かをやるなら、誰でもできる仕事よりも、法律で資格者に限定されている領域の方が強みを出せると思ったんです。アプリの仕事で学んだマーケティングと、法律系の資格を掛け合わせれば、何かできるんじゃないかなと。

「市場が伸びる」と「自分が勝てる」は違う。ドローンで学んだ“戦う場所”の選び方

編集部

実際、ドローン市場はその後かなり大きくなりましたよね。ある意味、予想自体は当たっていましたね。

畑山社長

そうなんです。でも、そこで一つ大きな勉強をしました。市場自体は想像以上に大きくなったんですけど、大手企業もどんどん参入してきたんです。そうなると、個人が入って戦える余地がほとんどなかったんですよね。

編集部

「伸びる市場を当てた」だけではダメだった…。

畑山社長

そうですね。トレンドを読めたとしても、そこで自分が戦えるかどうかは別の話なんだなと。市場があって、お金も集まっている。でも、その中で自分が勝てる場所じゃないと意味がない。逆に市場が小さすぎても、そこでどれだけ頑張っても先が見えてしまいます。結局はそのバランスなんだと思います。

編集部

その経験のあと、家系図にたどり着いたのはどういう経緯だったんですか?

畑山社長

行政書士の仕事をいろいろやっていく中で、戸籍を代理で取得する機会が何度かあったんです。相続関係の資料として、家系図の原型になるような親族図を作ったところ、すごく喜んでいただけて。「もっと自分の家系を知りたい」という話になったんですよ。

編集部

そこで、「これ自体がサービスになるかもしれない」と。

畑山社長

はい。家系図そのものを作成することが、一つの商品になるんじゃないかと思って、2017年頃から個人事業として始めました。その後しばらくは、並行してやっていたメディア事業の収益の方が大きかったんですけど、環境も変わってきました。一方で、家系図自体の認知は少しずつ増えている。それなら本格的に家系図事業を法人として運営していこうと考えて、今年会社を設立しました。法人化にあわせてクラウドファンディングも実施したところ、総応援購入額は2,720,800円、目標達成率は2,720%となりました。想像以上に多くの方から応援していただいて、家系図への関心やニーズを改めて感じる機会にもなりました。

家系図づくりは、実は「謎解き」と「パワープレー」

編集部

家系図って、かなり専門技術が必要な仕事なのかなと思っていたんですが、実際はどうなんですか?

畑山社長

もちろん知識は必要なんですけど、実際は思いっきりパワープレーなんですよ(笑)。

編集部

パワープレーとは(笑)。

畑山社長

昔の戸籍って、書いた人によって筆跡が全然違うんです。だから、何か特別な技術を使えば一瞬で解読できるというよりは、「これは何て書いてあるんだろう」と一つずつ読んでいく。わからなければ市役所の担当者に聞く。ある意味、謎解きに近いですね。

編集部

それを何代も遡っていくわけですよね。

畑山社長

そうです。個人の方でも自分で作ることはできます。ただ、知識がない状態から始めると、かなり時間もかかりますし、戸籍を取得するだけでも費用が積み上がっていく。そこを任せていただいて、しっかり形にして納品するのが僕たちの仕事です。

編集部

一番人気のプランだと40万円を超えるとのことでしたけど、決して安い商品ではないですよね。

畑山社長

そうですね。パッと買える金額ではありません。ただ、弊社のお客様って、「一度作るなら、なるべくすべての親族をまとめたい」「これを最初で最後の家系図にしたい」という方が多いんです。年齢層でいうと50代の方が中心ですね。

編集部

ライトに「ちょっと先祖を知りたい」というより、きちんと残したい人が多いんですね。

畑山社長

そうですね。家系図って、基本的にリピートしない商品なんですよ。一度しっかり作れば、それで完成ですから。もちろん、中にはライトな方もいらっしゃるのでしょうけど、弊社としては、せっかく作るのであれば内容を充実させて、長く残るものにしたいという方に向けた商品を提供しています。

編集部

なるほど…。個人の行政書士さんが作るものとの違いは、どこにありますか?

畑山社長

家系図は作業量がかなり多いので、一人で作れる件数には限界があるんです。弊社ではそこを組織化することで、同じ品質のものを一定の形で納品できるようにしています。コストも抑えられる。品質を高めながら、価格とのバランスも取る。そこが事業会社としてやる強みだと思っています。

「先祖を知りたい」という欲求はなくならない。変わるべきは、サービスの形

編集部

家系図事業って、戸籍制度など法律にかなり影響されるビジネスでもありますよね。その点でコンプラ的な不安はないですか?

畑山社長

もちろんあります。そもそも行政書士の仕事も家系図の仕事も、法律の上に成り立つ部分がありますから、法律が変われば事業自体が影響を受けるリスクはあります。実際、戸籍の制度も変わりましたし。

編集部

最寄りの市役所で、本籍地以外の戸籍もまとめて取得できるようになった制度ですよね。

畑山社長

そうです。戸籍の広域交付ですね。始まったときは、家系図事業にとってかなり大きな影響が出るんじゃないかと思いました。今まで僕たちがやっていたことの一部を、個人の方がやりやすくなるわけですから。

編集部

でも実際には、お客様は大きく減らなかった。

畑山社長

そうですね。制度上できるようになっても、市役所によって対応が違ったり、家系図目的だと時間がかかるので予約が必要だったりする。実際に自分で全部やるのは、まだ大変なんですよね。ただ、これから制度がさらに変われば、今と同じ形で事業を続けられるとは限りません。

編集部

じゃあ、「戸籍から家系図を作る」という今のやり方そのものには、そこまで固執していないのでしょうか?

畑山社長

そうですね。ただ、「自分の先祖を知りたい」というお客様のニーズ自体はなくならないと考えていて。今は戸籍情報を集めて家系図を作っていますけど、将来的には聞き込みだったり、お寺を調査したり、違う形になるかもしれない。時代が変われば、商品も変わると思っています。その時々で、お客様が求めるものにフィットするサービスを提供していければいいかなと。

編集部

「家系図を作る方法」を守るというより、「ルーツを知りたい」というニーズに応え続けるんですね。

畑山社長

そういうことですね。

「家系図を作るなら、家系図めぐり」。会社だけでなく、市場そのものを大きくしたい

編集部

ここまで伺っていると、畑山社長ってトレンドを追う一方で、「その市場で本当に自分たちが戦えるか」をかなり冷静に見ていますよね。そのうえで、これから家系図めぐりをどんな会社にしていきたいと考えていますか?

畑山社長

まずは、「家系図を作るなら家系図めぐりだよね」と言っていただける会社を目指しています。今は「家系図を作りたい」と思っても、どの会社に頼めばいいのかまではなかなか直結しないと思うんです。そこでは業界1位を目指していきたいですね。

編集部

会社として1位を目指すことと、もう一つ「家系図そのものの認知を広げたい」という話もされていましたよね。

畑山社長

そうですね。弊社の商品を売ることだけではなくて、家系図というもの自体をもっと知ってもらいたいんです。世の中には家系図を作る会社があることや、どれくらいの予算で、どんな家系図が作れるのか。そこまで含めて認知が広がれば、市場そのものがもっと大きくなると思っています。

編集部

まず、市場を広げること。

畑山社長

そうですね。10年くらい前と比べると家系図を扱う事業者は増えていますけど、それでもまだ市場としては大きくない。一方で、実際に家系図に興味を持つ人はもっといると思っています。まず「家系図を作る」という選択肢自体を知ってもらう必要がありますね。

編集部

行政書士の資格取得やドローン事業への挑戦を経て、家系図という事業にたどり着いた畑山社長。約10年かけて事業を育てる中で、法律や技術、集客方法が変わっても、「自分はどこから来たのかを知りたい」という人の気持ちはなくならない。その変わらないニーズに、時代に合った形で応え続ける。そしていつか、「家系図を作るなら家系図めぐり」と自然に名前が挙がる存在になる。畑山社長のお話からは、変化を受け入れながら、自分たちが価値を届けられる形を探し続ける姿勢が伝わってきました。畑山社長、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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