事務職はAIでなくなるのか|現状データをキャリアアドバイザーが解説

事務職はAIで完全になくなるわけではありません。厚生労働省によれば、全職種平均の有効求人倍率は1.18倍です。一方、職業情報提供サイト「job tag」の一般事務は0.3倍にとどまり、求人数の減少傾向は明確です。職業として消滅するのではなく、AIで代替される定型業務と、人にしか担えない調整・例外対応業務への二極化が進んでいます。
ただし、事務職で培ったスキルは、他職種への横展開で十分に武器になります。AIに代替されにくい業務を改めて言語化することで、これまでの経験は次のキャリアに直結します。本記事では公的データで現状を示したうえで、AIに代替されない事務スキルと、他職種への転換の道筋を解説します。

事務職の現状をデータで見る
事務職の求人がどれくらい少ないのか、公的データで確認します。感覚論ではなく、まず数字で現状を把握しましょう。
事務系職種の有効求人倍率(厚労省 job tag・令和6年度)
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」/一般職業紹介状況(令和8年3月分)
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、一般事務の有効求人倍率は0.3倍です。全職種平均1.18倍(令和8年3月)と比べると、求職者1人あたりの求人数で約4倍の開きがあります。データ入力に絞れば0.21倍まで下がります。
【参考】厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)「一般事務」
【参考】厚生労働省|一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)について
この数字が示すのは、事務職の求人は他職種に比べて明確に少ないということです。「事務職を希望する求職者が多い一方、企業が新たに事務職を採用する動きは鈍い」状態が、ここ数年で固定化しています。生成AIの業務利用が広がった近年、企業内の定型業務はソフトウェアに置き換えられる動きが進んでおり、求人数の減少傾向はこれからも続く可能性が高い分野にあたります。
事務職への転職を希望する人が、求人を見つけにくくなっている現状はデータで裏付けられます。「人気職種だから倍率が低い」というより、「企業側の新規採用枠そのものが縮んでいる」と捉えるほうが正確です。
阿部 翔大面談でも、事務職を希望される方が増えています。ただ、いま事務職に絞って求人を探すと、選択肢がかなり狭くなるのが現実なんですよね。データで状況を把握したうえで、戦略を一緒に考えるのが大事です。
AIに代替されやすい事務作業とそうでない事務作業
「事務職」と一括りにされがちですが、業務によってAIに代替されやすさはまったく違います。野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究では、創造性や協調性が必要な業務、非定型な業務は人工知能等での代替が難しい、と整理されています。
【参考】総務省|平成30年版 情報通信白書「職業の変化」
| AIに代替されやすい業務 | AIに代替されにくい業務 |
|---|---|
| データ入力・転記 | 関係性構築・社内調整 |
| 定型書類の作成 | 例外処理・イレギュラー対応 |
| スケジュール調整(候補日抽出など) | 部門間調整・意思決定の橋渡し |
| 議事録の文字起こし | 対人コミュニケーション・感情を伴う対応 |
| 請求書・経費精算の振り分け | 業務の優先順位付け・新規ルール設計 |
左側に並ぶ業務は、AIやRPAが得意とする分野にあたります。一定のルールに沿って大量に処理する仕事は、ソフトウェアに任せたほうが速く正確です。一方で、右側の業務はAIだけでは完結しません。社内の人間関係を理解したうえでの調整、イレギュラーが起きたときの判断、相手の温度感を読みながらの折衝は、現時点のAIが最も苦手とする分野にあたります。
つまり、事務職として「右側の業務」をどれだけ担えるかが、AI時代における市場価値を分けます。逆に左側の業務しか経験していない場合、求人数の少なさと相まって、転職の選択肢が狭くなりやすい状況です。



面談でよく聞くのは「私の仕事はデータ入力ばかりだから、もう必要とされないかも」という声です。でも、実際に職務を一つひとつ伺うと、社内の人と話して調整している場面が必ずあるんです。そこをちゃんと言語化できるかどうかで、市場価値は大きく変わりますよ。
「事務職がなくなる」の正確な意味
「事務職がなくなる」と語られる文脈には、誤解が多くあります。正確には、職業として消滅するのではなく、業務内容の変化と求人数の減少が同時に進行しているのが現状です。
野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究では、日本の労働人口の約49%が、10〜20年後にAIやロボット等で代替可能な職業に従事していると試算されました。事務職はその代表例として扱われています。一方で同研究は、創造性・協調性が必要な業務、非定型な業務は代替が難しいとも明記しています。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が2025年6月に公表した「DX動向2025」でも、日本企業のDX推進は内向き(業務効率化)に偏っており、定型業務の自動化が今後さらに加速する見通しが示されています。
【参考】IPA|DX動向2025 日米独比較で探る成果創出の方向性
「事務職がなくなる」を正確に言い換えると、次の3つが同時に起きている状況です。
- 新規の事務職求人数は減少傾向(有効求人倍率0.3倍)
- 既存の事務職の業務内容は、定型処理から調整・例外対応へ重心が移行
- 未経験から事務職に入る間口は、これまでより明らかに狭くなっている
ここで重要なのは、「事務職を続けたい」場合と「事務職経験を活かして他職種へ移りたい」場合で、取るべき戦略が大きく変わる点です。次のH2では、横展開できる職種を具体的に紹介します。


事務職スキルが横展開できる5つの職種
事務職として身につけたスキルは、まったく別の職種で再評価される場面が数多くあります。これまで担ってきた業務内容に応じて、現実的な横展開先を5つ紹介します。
事務職経験の横展開マップ
営業事務 → 営業職・カスタマーサクセス
営業事務として顧客対応・見積作成・受発注管理を経験していれば、商品知識と顧客感覚の両方が既に身についている状態です。営業職への異動・転職では、未経験者と比べて立ち上がりが圧倒的に早く評価されます。法人向けカスタマーサクセスのポジションも相性が良い分野にあたります。
経理事務 → 経理スペシャリスト・財務・経営企画
仕訳・月次・年次決算の経験があれば、経理スペシャリスト・財務・経営企画といった専門職への展開が可能です。簿記2級・1級・FASS検定などを学習中に取得しておくと、書類選考の通過率が大きく変わります。中小企業の管理部門では、経理経験者を経営企画に登用する動きも増えています。
総務 → 人事・労務
総務として備品管理・契約書管理・社内イベント運営を担っていた方は、人事・労務領域への展開が現実的です。社員からの問い合わせ対応や複数部署をまたいだ調整の経験は、人事の根幹となる「信頼を作る仕事」に直結します。労務知識を補うために衛生管理者・社会保険労務士の学習を始める方も多い分野にあたります。
データ入力 → データアナリスト・業務改善担当
データ入力経験者は、表計算ソフトの操作とデータ構造への理解がベースにあります。SQL・関数・BIツールの基本を学習することで、データアナリストや業務改善担当へのキャリアチェンジが視野に入ります。社内の「データを使って改善する人」の入口は、まさにこのスキル拡張の延長線上にあります。
一般事務 → カスタマーサクセス・オペレーション職
一般事務として幅広い業務をこなしてきた方は、複数業務を並行して回すスキルが既に身についています。SaaS企業・EC企業のカスタマーサクセス、オペレーション職は、まさにこの「複数の業務を捌きながら改善も担う」人材を求めています。求人数の伸びている領域でもあります。



「事務しかやってこなかったから他職種は無理」という方がよくいるんですが、僕の経験上、それは違います。むしろ事務職で身につけた「複数業務を並行で捌く力」「社内の人と調整する力」は、他職種で評価されにくいだけで、本当はかなり強い武器なんですよ。
事務職経験で培ったスキルを言語化しよう
横展開を目指す際、ボトルネックになりやすいのは「自分のスキルをうまく言葉にできない」点です。事務職の業務は職種名で評価されにくく、業務内容で評価される傾向にあります。職務経歴書では、以下のスキル軸で棚卸しすると伝わりやすくなります。
- 正確性:ミスを防ぐためのチェック手順を自分で設計・改善した経験
- 効率化思考:手作業を関数・マクロ・ツールで置き換えた具体例
- 部門間調整力:営業・経理・現場の間に立って情報を整理した経験
- データ管理:マスタ整備・ファイル命名規則の統一・履歴管理の運用
- 優先順位付け:複数案件が重なった日の処理順を自分で組み立てた経験
たとえば「月末の請求書発行を、関数とテンプレートで作業時間を半分に短縮」のように、数字と具体例で書くことで初めて他職種の採用担当に伝わる形になります。「サポート業務に従事」のような抽象表現では、横展開先の評価軸に乗りません。
職務経歴書の書き直しでは、まず1日の業務を時間単位で書き出すと棚卸ししやすくなります。そのうえで「数字で表せる成果」「自分で工夫した点」を各業務に紐付けると、AIに代替されにくい部分が自然と浮かび上がります。



面談で職務経歴書を一緒に作るとき、まずは「1日のスケジュール」を聞きます。9時から請求書発行、10時から電話対応、11時から議事録、というふうに。書き出してみると、本人が思っている以上にできることが多いんです。「ただの事務」だと思っていた業務に、横展開できる強みが詰まっていますよ。
事務職経験を武器に転職活動する3つの方法
横展開を実際の転職に結びつけるための、現実的な進め方を3つ紹介します。状況に応じて単独でも組み合わせでも有効です。
1. スキル棚卸しで職務経歴書を組み直す
現職の業務を時間単位で書き出し、各業務に「成果」「自分で工夫した点」「使ったツール」を紐付けます。職種名ではなく業務内容で勝負するのが事務職転職の鉄則です。すでに使った関数・テンプレート・改善した手順は、すべて具体例として残します。
2. AI時代に強い職種への横展開を狙う
H2-4で挙げた5つの横展開先のうち、自分の経験と相性が良いものを最低2つ選び、求人を比較しながら応募先を絞ります。職種を1つに絞り切らないことで、選考の通過率と納得感が両方上がります。営業事務の方であれば「営業職」「カスタマーサクセス」を並行で見るのが現実的です。
3. AIツールを使いこなせる事務職として市場価値を高める
事務職を続けたい場合は、生成AI・RPA・BIツールを業務で使いこなせることを職務経歴書に明記します。ChatGPTでの議事録要約、Excel関数の代替、データ集計の自動化など、具体的なツールと使用場面をセットで書きます。「AIに仕事を奪われる事務職」ではなく「AIを使って仕事の幅を広げる事務職」として打ち出すことで、減少傾向の中でも採用される側に立てます。


【キャリアアドバイザーの本音】事務職の相談者から見えること
事務職の方からのご相談を受けるなかで、共通して見えてくる傾向があります。ここではキャリアアドバイザーとして、現場で感じている事実を率直にお伝えします。
最初にお伝えしたいのは、「事務職としてのスキルは、確実に他職種で武器になる」という事実です。これは励ましの言葉ではなく、面談で職務経歴書を一緒に書き直してきた経験から見えてきた、客観的な結論です。
多くの方が「自分には事務職の経験しかない」と話されます。ただ実際に1日の業務を書き出してもらうと、社内調整、優先順位付け、複数業務の並行処理、ツールでの効率化、顧客対応など、他職種でそのまま評価されるスキルが必ず複数出てきます。問題は「事務職」という職種名が、これらのスキルを覆い隠してしまうことです。
有効求人倍率0.3倍という数字は、確かに厳しい現実を示しています。ただ、この数字は「事務職という枠に絞った場合」の話です。横展開先まで含めると、応募できる求人の母数は何倍にもなります。職種名を変えるだけで、これまでの経験が市場に評価される構造はまったく変わります。
「がんばってきた経験は無駄にならないか」と聞かれることが多いのですが、無駄にはなりません。ただし、経験そのものではなく「経験から得たスキル」を言葉にして他職種で再提示できるかで差がつきます。1人で職務経歴書を書き直すのが難しければ、キャリアアドバイザーと一緒に整理することをおすすめします。第三者の目線で棚卸しすると、本人が気づいていない強みが見つかりやすいです。



「私の経験なんて誰も評価してくれない」と話される方が、面談を重ねるうちに表情が変わっていく瞬間が一番うれしいですね。事務職の方は、自分のスキルを過小評価しがちなんです。でも実際に企業に持ち込むと、求めていた人材がここにいた、と言われることが本当に多いんですよ。
事務職とAIについてキャリアアドバイザーによくある質問
Q. 事務職を続けるのは無謀ですか?
A. 無謀ではありませんが、何もしないで続けるのはおすすめしません。生成AI・RPA・BIツールを使いこなせる事務職へ自分をアップデートできれば、市場価値を保ちながら続けられます。一方、定型業務だけを担い続ける状態だと、将来的に選択肢が狭くなる可能性は高いです。
Q. 未経験職種に挑戦できるのは何歳までですか?
A. 年齢で一律に区切られるものではありません。20代であれば未経験職種の選択肢は広く、30代でも事務職で培ったスキルを活かせる職種であれば十分に挑戦可能です。30代以降は「未経験まったく」ではなく「事務経験を活かした横展開」として動くと採用されやすくなります。
Q. AIツールを使えるようになれば事務職を続けられますか?
A. 続けられる可能性は高くなります。ただし「AIを使える」だけでなく「AIで何を効率化したか」「どんな業務に時間を回せるようになったか」までセットで言語化しましょう。ツール操作スキルだけでは差別化になりません。
Q. 転職活動で「事務経験しかない」と言われたら?
A. 「事務経験しかない」と言われる原因は、職務経歴書が職種名で書かれていることが多いです。業務内容・成果・使ったツールを具体的に書き直すと、評価が変わります。書き直したうえで同じことを言われる場合は、その求人があなたの強みを評価できない求人だった、と捉えて他の求人に切り替えるのが現実的です。
Q. スキル棚卸しはどうやれば良いですか?
A. 1日の業務を時間単位で書き出すことから始めます。各業務に「成果」「自分で工夫した点」「使ったツール」を紐付けると、自分の強みが視覚的に見えてきます。1人で難しい場合は、キャリアアドバイザーとの面談で第三者目線を入れると進めやすくなります。
Q. 事務職の求人が0.3倍なら応募しても通りませんか?
A. 倍率0.3倍は「求職者3人に対し求人1件」という意味です。応募しても通らないわけではなく、3人の中で選ばれる必要がある状態です。事務職に絞って受けるなら、職務経歴書の精度を上げることが最優先。横展開も視野に入れると、選考の通過率は大きく改善します。
まとめ|事務職の経験は確実に次のキャリアにつながる
事務職の有効求人倍率は0.3倍と、全職種平均1.18倍を大きく下回ります。求人数の減少と業務内容の二極化は、公的データで明確に確認できる事実です。ただし、事務職で培ったスキルが「使えなくなる」わけではありません。
- 有効求人倍率0.3倍という現実を受け止めたうえで戦略を考える
- AIに代替されにくい業務(調整・例外対応・関係性構築)を強みとして言語化する
- 事務職経験を活かせる5つの横展開先を視野に入れる
- 職務経歴書を「職種名」ではなく「業務内容と成果」で書き直す
- AIツールを使いこなせる事務職として打ち出す選択肢も検討する
事務職の経験は、職種名のままでは評価されにくいだけで、棚卸しと再提示の工夫で次のキャリアに確実につながります。1人で進めるのが難しい場合は、第三者の目を入れて職務経歴書を整理することから始めるのが、最も近道です。



事務職の方は、自分の経験を低く見積もる傾向があります。でも、いま現場で必要とされているのは「複数の業務を並行で捌ける人」「社内調整ができる人」「ツールを使いこなせる人」です。これは事務職で日々やっていることそのものなんですよ。一度ノビルキャリアにご相談いただければ、職務経歴書の棚卸しから一緒に進められますので、迷っている方はお気軽にどうぞ。
事務職からの転職相談はノビルキャリアへ
事務職の経験を活かしてキャリアを次へ進めたい方は、当社にご相談ください。これまで10,000名以上の若手のキャリア支援を行ってきた経験から、事務職経験者の職務経歴書の棚卸し、横展開先の選定、面接対策までを一貫してサポートします。
- 事務職経験を「業務内容と成果」で言語化する職務経歴書の作り直し
- 営業職・経理・人事・データアナリストなど横展開先の具体的な提案
- 採用担当者がAI時代に評価する「事務職経験者の強み」の伝え方
- 応募から内定までの面接対策・条件交渉のフォロー
面談は完全無料です。すぐに転職するか決めていない段階のご相談も歓迎しています。「自分のスキルがどう市場で評価されるか知りたい」だけでも構いません。


運営者情報
| メディア名 | ビギナーズリンク |
| 運営会社 | 株式会社MEDISITE |
| 代表者 | 竹田津 惇 |
| 所在地 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿8丁目5-4 STビル701 |
| 設立 | 2022年11月 |
| 事業内容 | HRメディア事業・SNSマーケティング事業・営業支援事業 |
| 許認可 | 有料職業紹介事業(13-ユ-316383) |

