「町の稽古場をなくしたくない」株式会社生活と舞踊・梅澤社長が、日本舞踊教室の集客支援から創業支援へ広げていく理由 

趣味で通っていた日本舞踊教室の、ホームページを作って集客を手伝ったところ、生徒は10人から2年で40人になったーー。株式会社生活と舞踊の梅澤暁社長が、教室支援を始めるきっかけになった出来事です。

現在は、日本舞踊を中心に教室の集客支援や先生向けのセミナー、交流会などに取り組んでいます。支援を続ける中では、契約やハラスメントなど、集客とは別の課題も見えてきたといいます。

最初は仕事にするつもりではなかった活動が、どのように事業になっていったのか。教室支援の始まりから、仕事として形にするまでの試行錯誤、これから取り組みたい創業支援まで梅澤社長に伺いました。

お話を伺った人

株式会社生活と舞踊

代表取締役 梅澤 暁

伝統文化に関心を持ち、約10年前から趣味で日本舞踊を始める。通っていた教室のホームページ制作や集客を手伝ったことをきっかけに、会社員時代から教室支援に取り組む。現在は、メディア「俺の日本舞踊」を運営し、日本舞踊を中心とした教室の集客支援や先生向けのセミナー、交流会などを行っている。

目次

「教室の力になりたい」という想いで作ったホームページから、教室支援が始まった

編集部

日本舞踊に関わる仕事って、正直あんまり聞いたことがなかったのですが、どんなきっかけで始まったんですか?

梅澤社長

もともと伝統文化には興味があって、落語や剣道にも触れてきました。日本舞踊を習い始めたのは10年ほど前ですね。通っていた日本舞踊教室のホームページを作ったり、生徒さんを増やすための集客を手伝ったりしたのが最初でした。

編集部

そこまで身近なところが出発点だったんですね。集客の手応えはありましたか?

梅澤社長

生徒さんが10人から2年で40人になったんです。最初は仕事ではなく、本当にお手伝いでやっただけでした。でも、稽古場が盛り上がるのはすごくやりがいがありましたし、売上にもつながるので、「これは仕事になりそうだな」と思ったんです。

編集部

10人から40人…!そこまで増えたんですね。

梅澤社長

そうなんです。当時はまだ会社員だったので、副業としていろいろな教室へ行って話を聞いたり、インタビューをしたりしていました。教室を大きくしたい方がいれば、「こういうことができますよ」と提案したりなんかも。

編集部

会社員をしながら、少しずつ外にも広げていったんですね。独立を考えたのは、その延長だったんですか?

梅澤社長

当時勤めていた留学エージェントが、コロナの影響をかなり受けたんです…。会社の体制を整える仕事などをする中で、「これを機に起業しようかな」と考えるようになりましたね。

「何をやっているかわからない」。外から見えにくい日本舞踊を伝える

編集部

教室を回る中で、日本舞踊の先生たちを紹介するメディアも立ち上げていますよね。それは何がきっかけだったんですか?

梅澤社長

こういう業界って、Web上に情報があまりなくて、外から見ると何をやっているかわからないところがあるんです。「ちょっと難しそう」というイメージもあるんじゃないかと。でも、実際に町の先生と話してみると、とても魅力的な方々が多い。そういう人たちを紹介していきたいと思って、自分でメディアを作ってインタビュー記事を載せるようになりました。

編集部

外から見た印象と、実際に先生たちと会ったときの印象に差があったんですね。

梅澤社長

そうですね。立ち上げたメディアも最初は仕事にしようとはあまり思っていなくて、ライフワークとしてやっていました。その中で「もっと生徒さんを増やしたい」という先生がいれば、「こういうこともできますよ」と話してみて。そんな中で、仕事にすることが出てきたんです。

編集部

梅澤社長自身がそこまで日本舞踊に惹かれたのは、どんな理由だったんでしょう?

梅澤社長

表現の幅がすごく広いところですね。美しい風景を表現することもあれば、具体的な人物を演じるものもあります。男性が女性を演じたり、女性が男性を演じたりもする。そういう表現力や幅は面白いと思っています。

編集部

踊りそのもの以外にも、続けていて好きだなと感じる部分はありますか?

梅澤社長

僕は稽古場という場所がすごく好きなんです。小さい子もいれば、会社員や主婦の方、上の世代の方、役者の卵みたいな人もいる。普段なら話す機会がない人たちが、日本舞踊という共通の趣味で集まって、一緒に稽古をして、またそれぞれの生活に戻っていく。そういう場所が身近にあるのはすごく大切だと思っています。

期待通りの結果が出ないことも。集客支援を仕事として形にするまで

編集部

集客は、具体的にはどんなやり方をしていたんでしょう?

梅澤社長

日本舞踊教室の場合は、ローカルSEO(※)というか、商圏がだいたい半径5kmくらいなんです。東京ならもう少し広くて、10kmくらいになるかなという感覚ですね。日本舞踊に限れば競合も多くないので、その地域でしっかり見つけてもらえる状態を作っていくことを考えていました。

※ローカルSEO…「地域名+サービス名」などで検索された際に、地域の店舗や教室などを見つけてもらいやすくするための工夫

編集部

やり方そのものはわかっていても、やってみるまでは「本当に集客できるのか」という怖さはありそうです。

梅澤社長

すごくありました。事業として軌道に乗せていけるのかという不安もありましたし、期待されていたような結果を出せなかったことも正直、あります。

編集部

そこまで結果が読めない状態なら、最初から固定で料金をもらうのって結構難しいですよね。

梅澤社長

そうですね。自分でもどうなるかわからなかったので、最初は集客を成果報酬でやっていました。ホームページ制作は費用をいただきますが、集客は入会したら報酬をいただく形です。半年や1年という期間を決めて取り組んでいました。正直、期待されていたような結果を出せなかったこともあります。最初から全部うまくいったわけではなく、なんとか試行錯誤していった形ですね。

契約やハラスメント。支援を続ける中で見えてきた課題

編集部

当時、集客面以外だと業界の中で課題というか、気になっていたことはありましたか?

梅澤社長

伝統文化の業界に関わるようになってから、契約書や領収書など、仕事をする上で必要なルールが十分に整っていない場面があることは気になっていました。契約書を交わしたことがない方や、領収書の作り方がわからない方もいたんです。

編集部

そこは、集客とはかなり違う種類の課題ですね。

梅澤社長

そうですね。コンプライアンス研修を実施したことがあるんですが、そのときに、契約や安全についてアンケートも取ってみたんですね。それでハラスメントの項目も入れたところ、パワハラやセクハラに関する回答もあって、そういう問題が実際に起きていることがわかりました。

編集部

アンケートを取ってみたら、想定していた以上の問題が見えてきたと…。

梅澤社長

師匠や先輩との上下関係の中で、指導を超えた人格否定のような言葉を受けるとか、セクハラもある。伝統文化でも、そういう実態が出てきたんです。

編集部

日本舞踊が好きで続けたい人ほど、そういうことが原因で離れてしまうのはつらいですね。

梅澤社長

そうなんです。暴力などの被害を受けるのはやるせないですよね。僕の通っている稽古場にも、将来は真剣に日本舞踊の世界に進みたいという子がいました。だから、何かしら取り組みをしたいとは前から思っていたんです。今は、被害を防ぐための発信や取り組みも進めています。

の稽古場をなくしたくない」。次に取り組みたいのは創業支援

編集部

そういった発信も含め、これから特に力を入れていきたいことはありますか?

梅澤社長

今後は創業支援をやっていきたいと思っています。今支援している教室には、長く教室を続けている方もいれば、会社員をしながら小さくやっていて、退職後も見据えてそろそろ広げたいという方もいます。

編集部

すでに教室を持っている人だけではなく、「これから先生としてやっていきたい」という人も支えるイメージなんですね。

梅澤社長

そうですね。少子高齢化でそもそも若い方が減っていますし、大きい問題としては経済的になかなか自立できないことだと思います。今続けている方も、会社員をしながらだったり、家族の支援を受けながらだったりする方が多いですから。そういう姿を見ると、「これ一本でやっていこう」というのは踏み出しにくいと思うんですよね。

編集部

好きで続けていても、「仕事として成り立つか」が壁になるんですね…。

梅澤社長

一流の芸術家でなければ先生になれないわけではないと思っています。真面目にコツコツやってきて、しっかりした技術があれば先生としてやっていける。集客やコンプライアンスの知識も身につけてもらって、軌道に乗せる支援があれば、この仕事を現実的に選ぶ人は増えてくると思うんです。僕としても町の稽古場をなくしたくないので、創業支援には今後入っていきたいと思っています。

編集部

「町の稽古場をなくしたくない」というところまで聞くと、最初に教室の集客を手伝った話ともつながりますね。最後に、これから自分のやりたいことを仕事にしたい若い方へ、何かアドバイスをいただけますか? 

梅澤社長

そうですね。まずは小さいことをちょっとやってみることが大事だと考えているんです。教室の支援も、自分が通っていた教室のホームページを作ったところからでした。メディアも、最初は自分が知りたい情報をまとめてアップしたブログです。いきなり大きいことをやるんじゃなくて、まず小さいことをちょっとやってみる。もっと手前なら、人に話してみることからでも十分なスタートだと思っているんですよ。

編集部

「まずは小さいことをちょっとやってみる」。振り返ると、梅澤社長自身も、教室のホームページづくりという身近なところから仕事を始めてきたんですよね。そして今後は、これから先生になりたい人への創業支援にも取り組んでいきたいといいます。最初から大きく始めなくても、できるところから少しずつ形にしていく。その考え方は、梅澤社長自身のこれまでにも、これから先生を目指す人への支援にも通じていますね。梅澤社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。 

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