「eスポーツ施設をつくりたいと言われたら、何から何まで手配します」。株式会社PCCS・望月社長が語る、130施設以上を手がけた事業転換の裏側 

eスポーツ施設をつくるのに必要なのは、パソコンやゲーム機だけではありません。立地を考え、内装を決め、ネットワークや配信設備を整え、オープン後に人を集めるところまで考える必要があります。

株式会社PCCSは、そうしたeスポーツ施設の立ち上げを一貫して支援する会社です。これまで携わってきた施設は130箇所以上。最近では、大学内にeスポーツ施設をつくる相談も増えているといいます。

もともと同社は個人向けのパソコンサポート事業から始まり、インターネットカフェのネットワーク支援を経て、eスポーツへ。今回は、なぜ事業を大きく切り替えたのか、施設づくりの仕事や、望月伸彦代表が考えるeスポーツ業界のこれからについて伺いました。

お話を伺った人

株式会社PCCS

代表取締役 望月 伸彦

高校卒業後、レストラン運営企業に約5年間勤務。その後、株式会社ポプラに転職し、店長、スーパーバイザー、エリアマネージャー、商品部門などを経験する。約19年半にわたりコンビニエンスストア業界に携わり、在職中に大学院でMBAを取得。退職後、取引先からの依頼をきっかけにコンサルティング事業を開始。現在は、つながるネット株式会社の代表取締役として、中小企業の売上改善や人材育成などに取り組んでいる。

目次

eスポーツ施設を作りたいと言われたら、何から何まで手配します

編集部

PCCSさんは、eスポーツ施設の立ち上げを支援されているんですよね。立ち上げと言っても、実際にはどこから関わるんでしょう?

望月社長

eスポーツ施設を作りたいと言われたら、もう何から何まで手配します。もともとはシステムをつくるところから始まったんですけど、いまは店舗をつくるとなれば、立地から見ますね。

編集部

立地からなんですね。内装もPCCSさんで?

望月社長

そうです。「このあたりにパソコンを置いて、こういう雰囲気にしましょう」と大まかなイメージを出して、そこからデザイナーに室内のイメージをつくってもらいます。こちらでも見ながら、形にしていきますね。

編集部

完成したら終わり、ではないんですよね。

望月社長

そこが大事なんです。みんな、施設ができると「完成した」と満足しちゃうんですけど、本当に大事なのは、そこからどうやって人を集めるかなんですよ。オープン前から集客は始めないといけないので、その部分も含めて支援します。最終的には、その施設が自分たちで運営できるところまで持っていきます。

編集部

最近は、どんなところから相談が多いですか?

望月社長

大学ですね。大学の中にeスポーツ施設をつくりたいという相談が増えています。配信設備を入れて、大会もできるようにしたりしています。

編集部

大学にeスポーツ施設、というのは面白いですね。導入する理由はどこにあるんでしょう?

望月社長

eスポーツ施設を導入した学校で、翌年に受験者が大きく増えたという事例もあります。もちろん、施設だけが理由ではないと思いますが、若い人にとって学校の魅力の一つになり得ると感じています。ただ、どこも同じ施設にしたくはないので、それぞれの大学と話しながら、学校ごとの色が出るものをつくるようにしています。

PCCSはよくそこまで振り切れたね、と言われます

編集部

もともと、eスポーツの開業支援を行う会社として始まったわけではないんですよね。

望月社長

全然違うんですよ。私は前職では、いまでいうパナソニックで営業技術をしていました。その後独立して、2005年に会社を立ち上げたんです。最初は個人向けのパソコンサポートでした。当時はまだ、パソコンの設定がわからなくて困っている人がたくさんいましたから。

編集部

そこから、インターネットカフェの支援へ。

望月社長

そうです。パソコンが普及して、だんだん設定も簡単になってくると、個人向けのサポートは減っていきました。そこでインターネットカフェのネットワーク関係を支援するようになって、最終的には90店舗くらいを見ていましたね。

編集部

そこから、なぜeスポーツ施設の開業支援に移られたんでしょう?

望月社長

インターネットカフェが、このままでは厳しくなると思ったんです。そのときに、今後は大きく2つの方向へ行くんじゃないかと考えました。1つは完全個室、もう1つがeスポーツのような、遊ぶための場所です。

編集部

最初からeスポーツ一本に決めていたわけではなかったんですね。

望月社長

そうですね。社内で両方検討しました。完全個室施設を考えるチームと、eスポーツ施設を考えるチームをつくって、それぞれ研究したんです。やってみると、完全個室施設のほうはうちの得意分野とは少し違ったんですよ。それで、eスポーツに振り切ることにしました。

編集部

当時としては、大きい判断ですよね。

望月社長

そうだと思います。ネットカフェ業界の方からも、「PCCSはよくそこまで振り切れたね」と結構言われたくらい、経営として大きな判断でしたね。その後、韓国へ視察に行って、2015年からシステムをつくり始めました。2018年に「eスポーツ元年」と言われる時期が来たときには、ちょうどシステムが形になっていました。

韓国の仕組みを、そのまま日本に持ってくることはできなかった 

編集部

システムをつくる中で、一番大変だったことは何でしたか?

望月社長

ライセンスですね。eスポーツって、野球やバレーボールとは違って、ゲームそのものにメーカーがありますよね。パソコンを動かすWindowsにも当然ルールがあります。何かシステムをつくろうと思ったら、それぞれの規約に合わせないといけないんですよ。

編集部

韓国で見た仕組みを、まるっと日本へ持ってくることはできなかったんですね…。

望月社長

できなかったですね。最初につまずいたのが、そこでした。韓国で使われていたシステムを、そのまま日本に持ってくることはできませんでした。ゲームメーカーやソフトウェアの利用規約、ライセンス条件などを一つひとつ確認し、日本の施設で適切に利用できる仕組みにする必要があったんです。

編集部

じゃあ、自分たちでつくるしかない、と。

望月社長

そういうことです。そこはかなり時間がかかりました。挫折しそうになるくらい(笑)。韓国と比べると日本のほうがシステムづくりにお金もかかりますし、正直、面倒な部分も多いんです。ただ、人の手でやると大変なことが、システムを入れることでかなり楽にできるんです。様々な施設にそこを評価していただき、導入もしていただけたのは、大きかったです。5年くらい前が一番大変でしたけど、最近はメーカー側の理解も少しずつ進んできていますね。

自治体の支援だけに頼らず、続けられる仕組みをつくりたい

編集部

望月社長は、埼玉県eスポーツ協会の代表理事もされていますよね。業界全体を見たとき、どんな課題があると感じられましたか?

望月社長

市場として、まだ小さいんですよ。eスポーツ白書などを見ると、イベントや興行の市場規模は200億円程度と言われています。一方で、eスポーツを楽しむ人はかなり多い。つまり、楽しんでいる人の数に対して、業界の中で動いているお金がまだ少ないんです。

編集部

人はいるけれど、市場としてはまだ十分に育っていないと。

望月社長

そうですね。イベント会社もなかなか利益を出せないですし、そこは業界として変えていかないといけないと思っています。もう1つ、積極的に拡充していきたいのが、福祉や教育の領域です。

編集部

競技としてのeスポーツとは、また別の広がりですね。

望月社長

そうですね。子ども、高齢者、福祉などで活用する動きもあります。

編集部

高齢者にとっては、eスポーツは認知症予防などが期待できるのでしょうか。

望月社長

認知機能への良い影響や、人との交流による社会参加の促進などが期待されています。特に、ゲームをきっかけに人が集まり、会話や交流が生まれることには大きな価値があると思っています。ただ、そういう活動はなかなかお金になりません。今は自治体の予算によって、eスポーツを活用した素晴らしい取り組みが数多く生まれています。ただ、その予算が終了すると、活動自体が続けられなくなるケースもあります。大切なのは、最初の支援をきっかけに、地域の中で無理なく継続できる仕組みをつくることだと思っています。

編集部

必要としている人がいても、予算がなくなると続けられない…。

望月社長

そうなんです。だから、もっとお金をかけずにできる形をつくらないといけない。いまは設備や運営にお金をかけすぎている部分もあるので、もっと簡単な方法で、ゲームを使った社会貢献ができる形を業界の中でも考えています。

編集部

その中で、望月社長が大事にしていることはありますか?

望月社長

オンラインで気軽に楽しめることはeスポーツの大きな魅力です。ただ、私はオフラインで人が集まることにも、大きな価値があると思っています。同じ場所で遊び、応援し、会話することで、人と人とのつながりが生まれます。そのような場所を全国に増やしていきたいですね。引きこもりの方や不登校の子が、ゲームをきっかけに人とつながって、そこから外へ出ていくこともある。高齢者もそうですね。いまの65歳以上は、ちょうどファミコンを知っている世代ですから、ゲームへの抵抗もそこまでない。子どもから高齢者まで、一緒に集まれる場所をつくっていきたいですね。

作り上げて、実際に出来上がった時の喜びがあります

編集部

実際に施設づくりをしている社員の方は、どんなところに面白さを感じているんでしょう?

望月社長

ゲームが好きな人は多いですね。ただ、仕事中にゲームばかりやっているわけではないですよ(笑)。一番の面白さは、何かを一からつくる楽しさだと思います。社内みんなで「この技術を入れよう」「こういうデザインにしよう」と話しながら形にしていくので。

編集部

完成したときは、やっぱり嬉しいですか?

望月社長

嬉しいですね。作り上げて、実際に出来上がった時の喜びがあります。他社ではなかなか経験できない仕事だと思います。

編集部

10人ほどの会社だと、部署を越えて関わることも多そうですね。

望月社長

多いですね。結構ゆるいというか、みんな仲はいいと思います。部署を越えて相談しながら、冗談を言いながら、ときには意見をぶつけ合いながらやっています(笑)。

編集部

いま特に採用したいのは、どんな職種でしょう?

望月社長

営業アシスタントですね。うちの仕事って、やる範囲が広いので、見積もりがめちゃくちゃ細かいんですよ。内装、電気工事、設備など、全部積み上げていかないといけない。それを営業1人でやるのは大変なので、支えてくれる人が必要です。

編集部

営業アシスタントといっても、かなり施設づくりに関わっていくんですね。

望月社長

そうですね。ほかにも施工管理や、システムの不具合に対応するサポートの人も必要です。今後はイベントの部門もつくれたら、もっと仕事の幅は広がると思っています。

編集部

まだ会社にない仕事が、これから増えていく可能性もある…!

望月社長

ありますね。僕自身は昭和の人間なので、いまの若い人がどういうことを考えているのかわからない部分もありますけど(笑)。ただ、小さい会社だからこそ、いろいろな仕事を経験できると思います。

編集部

90店舗のインターネットカフェを支えていた会社が、業界から「よくそこまで振り切れたね」と言われるほど、eスポーツへ舵を切りました。携わった施設は、130箇所を超えています。次に何が来るかを考えて、その前に動く。いまは大学や福祉の現場が、その次の場所になっているんですね。eスポーツが使われる場所が広がっていくほど、PCCSさんが関わる場面も、これからさらに増えていきそうです。望月社長、本日は貴重なお話をありがとうございました。 

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