「まず出さないと何も始まらない」未経験からメタバースドラマを完成させた、Project Alive主宰・久我レイジさんが語る、挑戦を形にするまで 

メタバースという仮想空間を活用し、ドラマ制作に取り組む久我レイジさん。

映像制作の経験がない状態から創作活動を始め、約3年半をかけて全12話の恋愛ドラマ『クロスロード』を完成させました。

きっかけは、趣味で始めた音声配信。映像の持つ表現力に魅力を感じ、仲間とともに新しい制作方法を模索してきました。

しかし、撮影も編集も手探り。制作中にはさまざまな問題が起こり、完成までの道のりは決して順調ではありませんでした。

それでも久我さんが活動を続けてきたのは、創作そのものが好きだったから。そして、同じ思いを持つ仲間の存在があったからだといいます。

今回は、メタバースドラマの制作方法や作品づくりで直面した苦労、そして未経験から何かに挑戦したい若い世代へのメッセージについて、お話を伺いました。

お話を伺った人

Project Alive

主宰 久我 レイジ

メタバースを活用した映像作品の企画・脚本・演出などを手がけるクリエイター。音声配信をきっかけに創作活動を始め、2022年からメタバースでの映像制作に挑戦。2026年5月には、約3年半をかけて制作した全12話の恋愛ドラマ『クロスロード』を完成させた。現在も新たな作品づくりや情報発信に取り組んでいる。

Project Alive 公式/X/note/YouTube

目次

「面白そうだから、やってみよう」。音声配信から始まった創作活動

編集部

久我さんは現在、メタバースという仮想空間でドラマを制作されているんですよね。もともと映像制作に興味があったのでしょうか?

久我さん

いえ、最初から映像をつくろうと思っていたわけではないんですよ。もともとは音声配信をやっていたんです。コロナ禍で音声配信が広がっていた頃に、stand.fmというアプリを知って。個人でもラジオのような配信ができると聞いて、面白そうだなと思って始めてみたんです。

編集部

そこから映像制作につながっていったんですね。

久我さん

そうですね。その音声配信を3〜4年続けるうちに、少し物足りなさを感じるようになったんです。というのも、音声だけでは伝えられることに限界があるじゃないですか。映像なら、もっといろいろな表現ができるんじゃないかと思って。ただ、本格的な映像作品をつくるとなると、かなりお金がかかりますよね。そんなときに、メタバースが話題になっていたんです。仮想空間なら、そこまで大きな費用をかけずに映像作品をつくれるかもしれない。それで興味を持ちました。

編集部

なるほど。ただ、それまでに映像制作の経験はなかったんですよね?

久我さん

もう、まったくの素人でしたよ(笑)。2022年10月頃に始めたんですけど、当時は同じようなことをしている人がほとんどいなくて。参考にできるものも見つからなかったんです。でも、せっかく面白そうなものを見つけたので、音声配信の頃から一緒に活動していた仲間と、まずは手探りで短い作品をつくってみることにしました。

編集部

初めて制作した作品への反応はいかがでしたか?

久我さん

ご覧いただいた一部の方からは「面白いことをやっている人がいる」と思ってもらえたようで。それなら、きちんとシナリオをつくって作品として残していけば、将来的に興味を持ってくれる人が増えるかもしれない。そう考えて、本格的にドラマ制作を始めたんです。

アバターが演じ、人間が声を吹き込む。メタバースドラマのつくり方

編集部

そもそも、メタバースの中ではどうやってドラマを撮影するのでしょうか?

久我さん

僕たちは「cluster」というメタバースのプラットフォームを使っています。VRゴーグルを装着すると、自分がアバターになって仮想空間の中に入れるんですよ。そのアバターを動かして演技をし、仮想空間にあるカメラ機能で撮影しています。

編集部

ということは、久我さんご自身がアバターを動かして演技されているんですか?

久我さん

そうです。しかも、アバターの演技は8〜9割くらい僕が担当しています。男性だけでなく、女性のキャラクターも演じますよ。

編集部

えっ、女性キャラクターの動きまで久我さんが演じているんですか?

久我さん

そうなんですよ(笑)。ただ、声は別の方にお願いしていますけどね。声を担当する方には台本を渡してセリフを収録してもらい、僕たちはアバターを動かして映像を撮影する。最後に、映像と声を編集で合わせる。このような流れですね。

編集部

メタバースドラマって、そうやってつくられていたんですね…!初めて知る世界です…!

久我さん

カメラの位置や角度も仮想空間の中で変えられるので、普通のドラマのように場面に合わせて撮影するんですよ。複数のキャラクターが登場する場面では、僕の相方にも別のアバターを動かしてもらっています。

編集部

それって、表情なども細かく表現できるのでしょうか?

久我さん

笑ったり怒ったりは一部できますけど、人間のような細かな表情を再現するのは今はまだ難しいですね。だから、微妙な感情を表現したい場面では、少し離れた位置から撮影するなど、カメラの使い方を工夫しています。

編集部

限られた機能の中で、どう見せるかを考えていくんですね。

久我さん

そうですね。僕は自分がやっていることを「アバターアクター」と呼んでいます。

全12話の完成まで約3年半。『クロスロード』で直面した壁

編集部

そうして制作されたのが、恋愛ドラマ『クロスロード』なんですね。どうして恋愛をテーマに選んだのでしょうか?

久我さん

YouTubeなら世界中の人に見てもらえる可能性がありますよね。ただ、文化が違うと伝わりにくいテーマもあると思うんです。それで、国が違っても共感してもらえるものは何だろうと考えたときに、恋愛なら伝わる部分があるんじゃないかと思ったんですよ。

編集部

海外の方にも楽しんでもらえる作品を目指したんですね。ちなみに、ストーリーは最初から最後まで決めていたのでしょうか?

久我さん

いえ、そこも手探りでした(笑)。最初に全話の脚本をつくるのが一般的だと思うんですけど、僕たちは経験がなかったので。1話の台本を書いて、撮影して、編集して。完成したら次の話を書くという進め方だったんです。

編集部

それを12話も続けるとなると、相当な時間がかかりそうですね。

久我さん

結局、約3年半かかりました。1話15分くらいの作品なんですけど、2026年5月にようやく全12話が完成したんです。というのも、制作中はいろいろな問題が起きまして。特に大変だったのが、権利関係ですね。

編集部

権利関係ですか?

久我さん

メタバースだから何でも自由に使えるわけではないんですよ。例えば、衣装や小物の中には商用利用できないものもあります。使えなければ自分たちでつくらないといけませんし、音楽についても作曲者や歌い手さんと契約を結ぶ必要があります。それに、途中で制作に参加できなくなる人もいて。そうしたことが重なって、完成が予定より1年ほど遅れてしまったんです。

編集部

仮想空間ならではの大変さもあるんですね…。それだけ多くの調整が必要となると、制作に関わる方もかなり多かったのでしょうか? 

久我さん

声の演技をしてくれる方やエキストラなどを含めると、60人くらいですね。音声配信を通じて知り合った方の中に、声の演技をしている人もいたので、協力してもらったんです。

編集部

60人…!最初に音声配信でできたつながりが、ドラマ制作でも生きているんですね。

久我さん

そうですね。制作自体は主に僕と相方の二人でやっていますけど、声の演技などは多くの方に支えてもらいました。大変なこともありましたが、何とか完成できてよかったです。

「人間を捨てたくない」。AI時代にメタバースで表現を続ける理由

編集部

最近は生成AIでも映像をつくれるようになりましたよね。久我さんは、こうした技術の進化について、率直にどう感じていますか?

久我さん

AIでつくられた映像作品も見ますけど、人がつくるものとは違う部分があると思うんです。特に、声ですね。AIが話すのと、人が感情を込めて話すのとでは、伝わり方が違うと感じています。

編集部

たしかに、AIがつくった声を聞いて「人間味がないな」と感じたことは私もあります。

久我さん

もちろん、AIの進化はものすごく速いので、新しい技術は取り入れていきたいと思っています。その一方で、人間を捨てるのは嫌だなという気持ちもあるんですよ。だから、次の制作では人が担当する部分を8割くらい、AIを取り入れる部分を2割くらいにしてみようかと考えています。

編集部

なるほど。ではそのうえで、今後はどんな活動に力を入れていきたいと考えていますか?

久我さん

ドラマ制作は引き続きやっていきたいですね。ただ、今は誰でも大量にコンテンツをつくれる時代なので、いい作品をつくっても埋もれてしまうことがあるんですよ。だから、作品だけでなく、どうやって制作しているのかという裏側も発信していきたいんです。人と人が協力して、こんなことをやっているんだという部分にも価値があると思うので。

編集部

作品が完成するまでの過程にも、興味を持ってもらいたいんですね。ちなみに、メタバースという分野そのものの可能性については、どう感じていますか?

久我さん

今はまだ、世間で思われているほど広がっていないと感じています。でも、3Dモデルをつくる技術やVR機器が進化すれば、もっと多くの人が参加するようになるかもしれません。3年後、5年後にどうなるかはわかりませんけど、そのときに今まで積み重ねてきた経験が強みになる可能性はありますよね。それに、声の演技をしたい人や、アバターを動かして演技したい人が活躍できる機会も増やせたらと思っています。まだ仕事として成り立つ機会が多い分野ではないですけど、将来的には新しい仕事につながるかもしれません。

「まず出さないと何も始まらない」。未経験から挑戦する若い世代へ

編集部

久我さんは未経験から映像制作を始めて、約3年半かけてドラマを完成させたわけですけど、クリエイティブなお仕事に興味があってこれから何かをつくってみたいと思っている若い方には、どんなことを伝えたいですか?

久我さん

まずは一歩踏み出してみることですね。僕も経験ゼロから始めて、途中で挫折しかけたこともありました。それでも続けられたのは、創作が楽しかったことと、同じ熱量で取り組んでくれる仲間がいたからだと思います。クリエイティブな活動は孤独になりがちですし、僕も一人だったら途中でやめていたかもしれませんから。

編集部

ただ、頑張って作品をつくっても、なかなか人に見てもらえないこともありますよね。

久我さん

もちろんありますよ。有名人でもない人が作品を出したからといって、最初からたくさんの人に見てもらえるわけではないですから。でも、そこでがっかりしてやめるんじゃなくて、まず出してみることが大事なんです。出さないと何も始まらないですから。

編集部

確かに、作品を公開しなければ、誰かに見つけてもらう機会も生まれませんもんね。

久我さん

そうなんです。作品だけでなく、自分が取り組んでいることや考えていることも、ブログやYouTube、SNSなどで発信していく。そうすれば、どこかで興味を持ってくれる人がいるかもしれないし、仕事につながる可能性もありますよね。実際に僕も、発信を続けてきたことで仕事の話をいただくことがありました。

編集部

一方で、なかなか収入につながらない活動を続けるのは、現実的に難しい部分もあると思います。

久我さん

そうですね。生活のこともあるので、簡単な話ではないです。ただ、今はまだ仕事にならなくても、将来的にその分野が広がる可能性はあると思うんですよ。僕がやっていることも、まだ大きな市場があるわけではありません。それでも、少しずつ自分の方に風が向いてきているんじゃないかなと感じています。だから、今も諦めるつもりはまったくないんです。

編集部

最初は「面白そうだから」と始めた音声配信から、メタバースでのドラマ制作へ。経験もお手本もない中で仲間と試行錯誤を重ね、約3年半かけて一つの作品を完成させた久我さん。「まず出さないと何も始まらない」その言葉には、未経験でもまず挑戦し、自分の作品を誰かに届けてみることの大切さが込められているように感じました。すぐに結果が出なくても、続けてきた経験や出会いが、いつか思いがけない可能性につながるかもしれません。久我さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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