「質感だけは、ネットでは全く伝えられないですからね。」合同会社リボーン・高島代表が、父から受け継いだ革を、いまも手渡しで届ける理由

合同会社リボーン

ネットで見た時はいいなと思ったのに、買うところまでは指が動かない。そんなことは、ないでしょうか。

合同会社リボーンの高島成央代表は、その指が止まる理由を、お客様から教わったそうです。「質感だけは、ネットでは全く伝えられないですからね」。

高島代表が扱っているのは、日本ではあまり知られていない革。父が60年前に始めた仕事を受け継ぎ、いまは東京・蔵前のお店で、製品になる前の革をそのまま吊るしています。

今回は、父から事業を受け継いだところから、その革をいま一人ひとりに渡すまでを、じっくり伺いました。読み終わる頃には、60年かけて集められたものが、どうやって人の手に渡っていくのかが、見えてくるはずです。

お話を伺った人

合同会社リボーン

代表取締役 高島 成央

大学卒業後、20代半ばで父の会社に入り、アメリカ・フロリダのワニ革のなめし工場に携わる。並行して役者としても活動し、2007年に家業へ専念。2016年に合同会社リボーンを設立。台東区蔵前のお店で、東京の職人が手がけるエキゾチックレザーの財布や革小物を扱う。

目次

夏休みに、ワニの革を数えさせられていました

編集部

高島代表は現在、東京・蔵前で、ワニやヘビの革を扱うお店をされていますが、初めてその革をご覧になったのって、いつ頃だったんですか?

高島代表

小学生の頃ですね。父がエキゾチックレザーの輸入卸の会社を立ち上げたのが、いまから60年ほど前で。夏休みになると兄弟3人で車に乗せられて、会社で塩漬けのワニの革の枚数を、ひたすら数えさせられていました(笑)。

編集部

数えさせられた…!夏休みの記憶が、革の匂いなんですね。どのくらいの枚数があったんですか?

高島代表

何千枚とあるので1日では終わらず、3日くらい通った記憶があります。革独特の匂いがして、子どもながらに、なかなかすごい世界だなと思いましたね。

編集部

夏休みの自由研究より、よほど大変そうですね…!そもそもお父様は、どんな革を扱っていらしたんですか?

高島代表

ちょっと変わったものが多いんですよね。当時はインターネットもない時代です。父は世界中を直接渡り歩いて、現地の人と交渉して、日本でまだ知られていない革を輸入して広めていったんですよ。

編集部

足で探して、持ち帰ってこられたと。ネットで探せるいまとは、革との出会いもまるで違いますね。ちなみに先ほど、兄弟3人でと仰いましたが、そんなお父様の背中を見て育って、ご兄弟はそれぞれどんな道に進まれたんですか?

高島代表

姉は、結婚するまで父の会社で働いていましたね。なんで働くことにしたのかと聞いたら、「この仕事で育ててもらったんだから、恩返しのつもりで」と言うんですよ。いいことを言うなと思いましたね。兄は大学を出てすぐ台湾へ行ってしまいましたし、僕はしばらくふらふらしていました(笑)。

芝居と会社、両方やっていいと言われたんです

編集部

しばらくふらふら、というところから。お父様の会社に入られたのは、何がきっかけだったんですか?

高島代表

26歳くらいの時ですかね。父に呼ばれて、「今度アメリカのフロリダでワニ革のなめし工場をやることになったから、会社に入って一緒にやらないか」と言われたんです。「お前の友達も一人入れていいから」と。それで友達に声をかけて、入りました。でも結局、他社との共同出資だったこともあって、その工場はうまくいかずに閉じるんですけどね。

編集部

そうだったんですね…!26歳くらいの若さなら、いくら声がかかったとはいえ、当時ほかにやってみたいことなんかもあったんじゃないですか?

高島代表

そうなんです。若い頃、少し芝居をやりたい気持ちがあったんですよ。それで役者の活動をやろうかなと思っていたら、父が「それと会社を並行してやってもいいから残れ」と言ってくれて。実際、撮影の日は会社を休ませてもらっていましたね。

編集部

お父様が、そこまで言ってくださったんですね。役者のお仕事は、どのくらい続けられたんですか?

高島代表

2007年までです。それで……父が亡くなったのが、その年の9月25日でした。実は9月の上旬から22日か23日ごろまで、僕は明治座の舞台に出させてもらっていて。その日程が全部終わった、数日後だったんですよ。

編集部

もし、たった数日、違っていたら…。

高島代表

舞台の最中だったら、葬儀に参列できなかったかもしれないじゃないですか。だから、父はそれが終わるまで待っていてくれたんだなと思って。それだけ義理を果たしてくれたんだから、芝居のほうはやめて父の会社一本でやろう、そう思ったんです。

編集部

待っていてくれた、と受け取られたんですね。それで、すぐに、代表を継がれたんですか?

高島代表

いえ、しばらくは母が務めていて、私が継いだのは2016年ですね。

ヘビの革って、実は1種類じゃないんです

編集部

お父様が集めてこられた「まだ知られていない革」。いまお店にあるのは、具体的にどういうものなんでしょう?

高島代表

ワニとヘビが中心ですね。ただ、ヘビの革って、実は1種類じゃないんです。普通、ヘビ革というとダイヤモンドパイソンが有名で、だいたいのお店はそれくらいしか扱いません。一方で、弊社にはパイソン以外に、1メートルほどの小さなミズヘビの革や、カロングという川に生息しているヘビ革もあります。カロングは鱗の模様が猫の目みたいで、キャッツアイとも呼ばれるんですよ。

編集部

猫の目が、そのまま名前に…!ほかにも、珍しいものはあるんですか?

高島代表

海にいるヘビの革もあります。鱗の形が六角形で、蜂の巣みたいな模様なんですよ。触っても鱗がめくれず、ツルツルしていて。しかもお店には、製品になる前の丸革のまま吊るしてあるんです。だから来てくださった方が、博物館みたいだと言って喜んでくれるんですよね。

編集部

なるほど、革そのものを見に来る場所でもあるんですね。それを見て、「これで作ってほしい」と言われることもあるんですか?

高島代表

ありますよ。弊社はセミオーダーもフルオーダーもやっているので、この革でこれを、と言われれば対応します。実はこの間も、女性の方から二つ折りの財布を作ってほしいというお話があって。その方は左利きなので、通常は右側にある小銭入れを左側に、と。外側にはパイソンの中でも特殊な仕上げのものを使いました。

編集部

左利きの方に合わせて、左右を入れ替える…。既製品では手に入りませんね。そういうご相談って、どんな方から多いんですか?

高島代表

男女関わらず、だいたい半々ですね。ワニ革はやっぱり高くて、フルオーダーだと何十万円にもなります。ただ弊社には、キャッツアイやカロング、トカゲの革もある。そのあたりはワニよりも手に取りやすいので、幅広い方に来ていただけているのかなと思います。

質感だけは、ネットでは全く伝えられないですからね

編集部

たしかに、手に取って選べるのがお店の良さですね。私も革製品は、必ず触ってから決めます。その製品づくり自体は、いつ頃から始められたんですか?

高島代表

サンプルを作り始めたのが2010年くらいで、それまでは革の販売だけでした。実は父も昔、職人を雇って自社の製品を作ったことがあったらしいんです。ただ、うまくいかずにやめてしまったそうです。

編集部

お父様も、一度は…。それは、意外でした。

高島代表

父がよく言っていたのは、「世の中の動きより半歩先を行くといいんだよね、一歩先に行くと早すぎる」と。いまは革屋さんも、なめし工場まで自社製品をやる時代ですからね。父の製品づくりは、思い返せば一歩早かったのかなという気がします。

編集部

半歩先と、一歩先。その差は大きいんですね。いまの製品は、どなたが作られているんですか?

高島代表

知り合いの職人です。もともと弊社と取引のある革屋さんで働いていた方で、職人さんに弟子入りして覚えて、一人立ちしました。それからの付き合いなので、十数年になりますね。

編集部

十数年、同じ方と…!つくったものは、お店とネットの両方で売られているんですか?

高島代表

そうですね。ただ、そちらではなかなか売れないんですよ。と言いますのも、見に来てくださった方から教えてもらったんです。「ネットで見てはいたけれど、エキゾチックレザーは値段も高めだし、写真だけでポチッと買う気にはなれない」と…。実際に触れば納得して買っていただけるのですが、質感だけは、ネットでは全く伝えられないですからね。

編集部

触ってもらえる場所が要るんですね。お店以外にも、置いてもらうこともあるんでしょうか?

高島代表

セレクトショップ3軒と、上野の路面店に置いてもらっていました。ただ、クロコダイルは有名なので説明がいりませんが、弊社の主力はカロングやトカゲなので、ほとんど知られていない。並べてあるだけでは、説明できる人がいないんです。それで革の写真と説明書きを8枚作って添えましたが、思うような売上にはつながらず、1年でやめました。上野のお店も去年の夏に区切りをつけて、いまは蔵前一本です。

地道に配っていくのが、いまは一番いいのかなと

編集部

「ネットではなかなか…」とは仰いますが、いま高島代表のXは、1万人ほどの方が見てくださっているんですよね。それだけ知られているのは、すごいことだと思います。

高島代表

SNS活動は、意識して頑張りましたよ。それこそ、いいねをされたら倍返しじゃないですけど、毎日いいね返しをして。あとはトレンドにあった言葉を、ハッシュタグに付けてみたり。2〜3年続けて、投稿を見ていただいた総数は100万回を超えました。ただ、認知の拡大にはなっても、そこから売上には一切つながらないんですよね。

編集部

100万回見られても、売上にはつながらない。それは、こたえますね。

高島代表

売上につながらないどころか、そういう投稿をしていると、アンチの方からも少なからずコメントが来るじゃないですか。これだけ時間をかけて割に合うんだろうか…とも考えて、Xそのものを一旦やめました。いい勉強にはなりましたけどね。

編集部

やってみないと、わからないことですね…。それではいまは、御社の事業はどうやって知ってもらっているんですか?

高島代表

セレクトショップに添えていた8種類の革の紹介を、1冊の冊子にしました。写真と名前と説明を載せて、QRコードも付けています。それを、お店に来た方の中でも興味のありそうな方に渡しています。あとは、リボーンウォレットの特許を取るまでの話をnoteに載せました。

Re-Bone/リボーン 公式note

編集部

革の話だけではなく、ご自身の思い出まで。読まれた方から、反応はありましたか?

高島代表

noteを読んでくださった女性の方が、財布を買いに来てくださったんです。お店で話をしていたら、「なんだかもう泣きそうです」と、うるうるされていて。あとは、自分の思い出も蘇ってきました、とメールをくださった方もいます。

編集部

読んで、泣きそうになって、それでもお店まで…!

高島代表

だから、地道に配って少しずつ増やしていくのが、いまは一番いいのかなと。将来的には人を雇えるくらいになればいいなと。足元を見ながら、ゆっくりとやっていきたいですね。

編集部

noteを読んだ方が、財布を買いに来て、お店で泣きそうになる。父が世界中を歩いて集めた革を、いまは高島代表が、蔵前の店で一人ひとりに手渡しています。触ってもらうまで待つのは、遠回りに見えるかもしれません。でも、そこでしか伝わらないものがあるから、この仕事は60年続いているんですね。高島代表、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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