「みんなが大学に行く必要は、ないんじゃないか。」リソウル株式会社・田中社長が、日本の教育のシステムを変えるために始めた15歳から通える起業の学校 

大学に行っても行かなくても、決まったレールから外れたら後がない。どこかで、そう思ってはいないでしょうか。

もとは銀行に勤めていたリソウル株式会社の田中勇一社長も、決まったレールは1本ではないと言います。「みんなが大学に行く必要はないんじゃないか」。そう考えて、15歳から通える起業のスクールをつくりました。

今回はそんな田中社長に、人材紹介の仕事を25年続けてきた背景や、事業にかける想いについて、じっくりお話を伺いました。読み終わる頃には、決まったレールの外にも道があるのだと、思えてくるはずです。

お話を伺った人

リソウル株式会社

代表取締役 田中 勇一

銀行に勤めたのち、社会人向けの教育会社へ移り、人材紹介事業の立ち上げに関わる。2002年にリソウル株式会社を設立し、経営幹部を中心とした人材紹介を手がける。2010年には社会人向けのビジネススクール「社会起業大学」を開校。現在は15歳からの経営者予備校「学生起業大学」の運営にも力を入れている。人材ビジネスに携わって25年となる。

目次

日本が変わるには、教育かなと思ったんです

編集部

田中社長は、経営幹部の人材紹介と、15歳から通える起業のスクールという、ずいぶん離れて見える2つの事業をされていますよね。

田中社長

そうです、元々は銀行員でした。ただ、途中から興味を持ったのが教育の分野でしてね。日本という国が変わるとしたら、そこかなと思ったんです。

編集部

銀行のお仕事から、教育ですか…!

田中社長

ええ。というのも、大事なのは考える力だと思っていまして。選挙で選ばれる人たちも、ちゃんと考えて選ばれているのかな、というところに問題意識がありました。そこを変えるには、まず一人ひとりが考える力を身につける必要があると思ったんです。

編集部

考える力を身につける場所として、教育を選ばれたと。もともと先生になりたいというお気持ちも、どこかにあったんですか?

田中社長

ありましたね。教職課程を取っていたので、先生になろうと思っていた時期もあります。一方で政治家にも興味があって、そちらを目指したこともありました。そういう過程で、だんだん教育の重要性に気づいていったんだと思います。

編集部

そこから完全に教育事業に舵を切られたのは、何かきっかけが?

田中社長

海外に出たことが大きかったですね。向こうの人たちは、日本とは違ってみんな自分の意見を持って話しているわけですよ。それで、教育のシステムを変えないと、この国は変わらないだろうなという危機感を覚えたんです。

編集部

自分の意見を持って話す。さきほどの考える力が、そのまま出ている姿ですね…!そこから、どう動かれたんですか?

田中社長

まずは社会人向けの教育をやっている会社に転職しました。そうしたら、そこで新しく人材紹介の事業を立ち上げる話がありまして。そこに関わったのが、いまの仕事の始まりです。

案件の数で勝負する会社ではないんです

編集部

教育の場から、人材の仕事へ。そこからは、どのくらい続けていらっしゃるんですか?

田中社長

もう25年ぐらいになります。その過程で自分で起業して失敗したこともありました。あとは新銀行東京とイオン銀行の立ち上げにも、人事の責任者として関わっています。

編集部

銀行を、ゼロから2つ…!?

田中社長

ええ。イオン銀行を支援していたときに、採用代行のような仕事もしていました。そこで、採用代行をしながら人材紹介もするというスタイルで、もう一回、自分で会社を立ち上げてみようと。それで始めたのが、いまのリソウルなんです。

編集部

そのリソウルさんは、経営幹部の紹介が中心なんですよね?

田中社長

ミドルから部長のところが一番多いです。ただ、弊社は小さい会社なので、案件の数で勝負する会社ではないんです。というのも、経営者と直接つながって、その方からオーダーをいただくことを前提にした紹介だからなんです。

編集部

求職者を大勢集めておいて、そこから当てはめていくのとは、逆の順番ですね。

田中社長

そうです、いわゆるヘッドハンティング型と言われるやり方ですね。「こういうポジションで、こういう人はいないか」というオーダーをいただいて、そこから探しに行きます。ちなみに、ビズリーチさんには立ち上げのときからお世話になっていて、もう長いです。

編集部

経営者から直接というのは、少し驚きました。オーダーは、どういった企業から届くんですか?

田中社長

不動産もあればメーカーもありますし、最近はIT企業が増えていますね。あとは、昔わたしが紹介した方が昇格したり、経営者になられたりするケースがあるんです。そうすると今度はその方から、人事部長や経理部長を探してくれ、と声がかかります。

編集部

紹介した方が、いつのまにか依頼する側に回っているというわけですね…!

才能が開花するのは、10代だと思うんですよ

編集部

事業のもう1つの柱が、起業する人を育てる事業ですよね。こちらは、いつ頃から始められたんですか?

田中社長

2010年から10年間、「社会起業大学」というビジネススクールをやっていました。500人ぐらいが卒業して、事業としてはうまくいっていたんです。ただ、いまは事業譲渡をして、別のことをやっています。

編集部

500人…!?せっかくうまくいっていた事業を手放されたのは、どうしてだったんでしょう?別のこと、というと…?

田中社長

社会人にレクチャーする形で、実績も多少は出たんです。ただ、社会を変えるインパクトまでは行かなかったなと思いまして。それなら、社会人ではなくもっと若い方の育成に挑戦しないと駄目だろう、と。

編集部

若い方、というのは?

田中社長

10代ですね。才能が開花するのは、そこだと思うんですよ。実際、スポーツでもアーティストでも、名前が出てくるのって若い方じゃないですか。だったら経営も同じで、10代が本当の勝負なんじゃないかなと。

編集部

たしかに、スポーツや音楽で10代の名前を聞くことは多いですよね。そこに経営を並べる発想は、正直ありませんでした。

田中社長

あとは、先ほどもお伝えしたように、やはり「教育のシステムを変えたい」という気持ちがあります。大学に行くこと自体はもちろん意味があるんですけど、みんなが行く必要はないんじゃないかと。というのも、AIが出てきて、知識を持っていることの価値は下がってきていますよね。それなら学生のうちから、やりたいことにどんどん挑戦して、必要なスキルを磨いていけばいい

編集部

なるほど。それで、教える相手を15歳という年齢まで下げたわけですね。

田中社長

そうです。15歳から経営者の視点を学ぶ場ということで、「学生起業大学」を立ち上げました。オンライン塾の形式で、半年ごとに高校生や大学生に通ってもらっています。ただ、学生さんが相手ですから、そう簡単にビジネスになる領域ではなくて。それでNPO法人にして、時間をかけてやろうと決めました。

学ぶ前に、先にやりなさい

編集部

少し意地悪な質問かもしれないんですが…。起業の話なら、ネット上にいくらでも記事がありますよね。そのなかで、田中社長のところに来ないと得られないものは、どこにあるんでしょう?

田中社長

情報はみんな見ているんですよ。ただ、何から手をつけたらいいかがわからないケースが多くて。手のつけ方も書いてはあるんですけど、なんとなくしっくり来ないんでしょうね。

編集部

読んでも、自分のこととして下りてこない感じでしょうか。

田中社長

そうだと思います。実は、わたし自身も会社を作って、いろいろありましたから。そのうえで大事なことは2つあると思っていて、1つは自分自身を知ることですね。というのも、自分が本当にやりたいことと事業がつながっていないと、途中で折れちゃうので。そこはちゃんと向き合ってもらいます。

編集部

もう1つは、何でしょう?

田中社長

事業プランを、実際にやってみることです。テストマーケティングでもいいので、とにかく動く。つまり、「学ぶ前に、先にやりなさい」という話ですね。動いている中で見つかることのほうが、ずっと多いですから。

編集部

学んでから動くのではなく、動きながら学ぶ。順番が逆で、面白いですね。

田中社長

知識はこちらから渡します。ただ、それを実践で使えるようにするには、自分で動くしかないんです。なので講義よりも対話が中心です。「わたしたちを利用するぐらい図々しくなりなさい」といつも言っています。もちろん、できないところは一緒に見ていきます。

編集部

そこまで伴走してもらえるんですね。実際に会社を始めた学生さんも、いらっしゃるんですか?

田中社長

いますね。たとえば、いま大学1年生の方は、高校生のうちに起業しました。AIを使って次々とものを作って、会社を経営しています。

編集部

大学に入る前に、もう経営者になっている…!

田中社長

ええ。それから、スクール運営だけだと、インパクトを出していくのにどうしても時間がかかるので、「学生起業家コンテスト~いざ鎌倉!」というイベントも仕掛けました。実際、第1回として募集をかけたら、18歳以下と大学生の部門に、全国からそれぞれ30組ほどの応募がありました。

編集部

挑戦している人同士が、その場で出会えるわけですね。

そういう道もあるんだ、と思われるところまで行きたい

編集部

ここまで手をかけていらっしゃるのに、学生さんからいただく費用はかなり抑えていますよね。

田中社長

安いですね。ただ、実績を作らないと、みんな飛び込めないじゃないですか。だからまずは安くして、事例を作る。ちゃんと価値が出てきたら、そのときに値段をつけていくんだろうなと思っています。

編集部

まず動いて、事例を作る。学生さんに伝えていることを、そのままご自身でもやっていらっしゃるんですね。

田中社長

いまは1点突破でいくしかないと思っています。例えば、10代で起業してもいい。既存の教育のレールに乗らなくても、やっていける。そういう例を、どれだけたくさん作れるかです。それができてくれば、わたしたちが後ろについて投資をするなりして、会社もどんどん増えていくと思うんです。

編集部

その先に、見ていらっしゃるのは…?

田中社長

何年かかけて、みんなが「そういう道もあるんだ」と思うところまで行きたいですね。

編集部

道が1本しかないと思っている人ほど、その一言は心強いですね。

田中社長

あとは、リソウルに関わった方が、そのあと日本や世界でどれだけ活躍したか。実は、そこにゴールがあると思っているんです。それこそ世界を変えた100人みたいなものがあったとして、その半分以上が弊社に関わった方だった。そんなことになったら、面白いですよね。

編集部

世界を変えた100人のうち、半分以上がリソウルに関わった方だったら面白い。壮大な話に聞こえますが、田中社長が変えようとしているのは、その手前にある日本の教育のシステムでした。決まったレールの外にも、道はある。そう思えるお話でした。田中社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。 

目次