「会社にしがみつこうと思わないようにしたんです。」株式会社ロックトゥーン・立山社長が語る、理不尽から自分の身を守る術

おかしいと思うことがあっても、この会社にいる以上は飲み込むしかない。そんなふうに感じることは、ないでしょうか?

株式会社ロックトゥーンの立山聡瑠社長は、会社との向き合い方について「しがみつこうと思わないようにしたんです」と話します。いまは自分の会社で、属人化した業務の標準化・引き継ぎ設計を軸に、事業の立ち上げから運営・収益化までを伴走支援しています。社員の評価は自己申告制で、頑張りは見ずに、1年でいくら利益を生んだかだけを見ているそうです。

しがみつこうと思わない、というのはどういうことなのか。そして、”頑張りを見ない会社”は、どうやってつくられたのか。詳しくお話を伺いました。

お話を伺った人

株式会社ロックトゥーン

代表取締役 立山 聡瑠

就職氷河期の末期に大学を卒業し、新卒で飛び込みの営業を経験。その後マーケティングの分析職に移り、ゲーム会社では営業とマーケティングを統括。次の会社ではゲーム事業の立ち上げと、新規事業開発室長を務める。2021年に株式会社ロックトゥーンを設立し、属人化した業務の標準化・引き継ぎ設計を軸に、事業の立ち上げから運営・収益化までを伴走支援している。

目次

誰も選ばない会社を、あえて選んだ

編集部

立山社長は新卒で、飛び込みの営業から始められたと伺いました。就職先は、どうやって選ばれたんですか?

立山社長

私は就職氷河期の、本当に末期の卒業なんですよ。周りには、200社エントリーを出しても1社も引っかからない人間がいるレベルでした。ただ、私自身は5社ぐらいしかエントリーを出していなくて。それも、誰もエントリーしないような企業だけに絞っていたんです。

編集部

あえて…。

立山社長

なんか、逆に気になったんですよね。業績と評判が釣り合っていない。その理由は何だろう。という興味でした。

編集部

それで、受かった、と。

立山社長

そうなんです。仕事は飛び込みの営業で、扱っていたのは法人向けの商材です。当時は、ブラックという言葉すらありませんでしたけど、実際に入社してみたら、なかなかにしんどい環境ではありました。

編集部

言葉がないと、しんどさを言い表すこともできないですね。

立山社長

厳しい、というレベルの話ではなかったですね。体を壊しかけるところまで追い込まれていました。それでも辞められないので、「大丈夫です、頑張ります」と言い続けていました。

編集部

えっ、その状態で、続けられていたんですか。

立山社長

続けていましたし、営業自体は全国でも上位の成績を出していました。ボロボロでも、数字は出せていたんです。ただ、その頃の私は、何かを自分で考えるということをしたことがなかったんですよ。

編集部

考える余裕がないほど、目の前が詰まっていたんですね。

立山社長

そうですね。自分で考えたら、生きていられないですから。そういう場所でした。

しがみつこうと思わないようにしたんです

編集部

そこから、考え方が変わったんですか?

立山社長

20代で1回潰れているので、私は「なんで会社ごときに潰されなければいけないんだ」という思いが非常に強いんです。それもあって、しがみつこうと思わないようにしたんですね。そこが出発点かもしれません。

編集部

しがみつかない、というのは、辞める前提ということですか?

立山社長

辞めるというよりは、ずっといるつもりはない、クビならクビだ、ぐらいの感覚ですね。しがみつこうと思うと、いろいろな理不尽も受け入れなければいけなくなるんですよ。

編集部

なるほど。抱え込まないために、先に距離を置いておくんですね。

立山社長

そうですね。もちろん、納得がいくかいかないかは別の話です。納得のいかないものを受け入れるのは、組織なら当たり前の部分もありますから。ただ、どうしてもこれは違うでしょう、ということに関しては、言っていこうと。

編集部

その線引きは、どこにあるんですか?

立山社長

自分なりに「筋が通らない」と思うかどうかですね。筋が通らないものをそのまま受けてしまうと、また自分が潰れるだけなので。

編集部

筋が通らないと思ったら、それは違うだろうときちんと言っていく、ということですね。

立山社長

誰だって、潰れたくないじゃないですか。だから、言うことが逆に自分の身を守る術になるんです。

編集部

我慢するほうが危ない、という感覚なんですね…。

立山社長

そうです。ですので、上司だろうが何だろうが噛みつきますし、役員にも意見をぶつける、みたいなこともやっていました。サラリーマンとしては間違っていますよ、結論で言うと。

編集部

ただ、それを気に入る方もいらっしゃったのでは。

立山社長

いらっしゃいましたね。いまでも、その方がいらっしゃる会社さんからお仕事をいただいたりします。間違っていたとは思っていませんし、逆に言えば、そういう生き方しか私には選べませんでした。

一生営業はやりたくない。それで数字を読む側に回りました

編集部

営業では結果を出されていたのに、そこから職種を変えられたんですね。

立山社長

営業には自分なりに手応えがありましたけれども、正直、「一生営業なんかやりたくない」と思ったんですよ。それで、営業以外で食っていける技術がほしいなと。ただ私は文系なので、エンジニアという選択肢はやっぱりありませんでした。

編集部

それで選ばれたのが、何だったんですか?

立山社長

マーケティングです。といっても広告運用のほうではなくて、数字の分析のほうですね。拾っていただいた会社で、師匠のような先輩から、1から数字の見方を教わりました。私のプレイヤーとしての基盤はそこです。

編集部

土台は、営業ではなく分析の側にあるんですね。

立山社長

そうですね。ただ、当時私は分析の担当としてずっと裏側にいたんですが、ずっとクライアントワークだったんですよ。それで例えば、分析結果をふまえて「こういう打ち手がありますよ」という提案を先方にするじゃないですか。それがうまくいったかどうかは、わからないままなんです。なんだか、そこがモヤモヤして。

編集部

たしかに、結果を見届けられないのは、気持ち悪さが残りそうです。

立山社長

気になったんですよね。自分が出した数字や見方が、どうだったんだろうと。それで30歳になる年に、どんな業種でもいいから、自社でサービスをやっている会社に行こうと決めました。そこで縁をいただいたのが、ゲーム会社だったんです。

編集部

ゲーム業界は、なんとなくゲームが大好きな方が集まる場所というイメージがあります。…なじまれたんですか?

立山社長

いや、嫌われましたよ(笑)。ゲームが大好きな人しか来ない業界に、私は数字で見て「ダメじゃん」と言ってしまうので。マネージャーになってからは、「面白さより数字で判断しよう」と平然と言うタイプでしたね。

編集部

個人の好きという感情より、売上や数字が大事だろうと。それは、ぶつかりますね…!

立山社長

ただ、ありがたいことに結果は結構サクッと出てしまったんです。時流に乗ったところもありますけれども、半年でリーダー、1年で課長、1年半で部長になりました。最後は、売上を取りに行くところを全部統括する形でしたね。

いくら提案しても通らないなら、自分でやる

編集部

ゲーム会社のあとは、どういう流れだったんですか?

立山社長

ゲーム業界は、運営する人はたくさんいるんですけれども、ビジネスサイドの人間が実はあまりいないんですよ。私はそこを全部統括していたので、声をかけていただいた形で、次の会社でゲーム事業の立ち上げをやりました。

編集部

立ち上げが終わってからは…?

立山社長

異動になって、今度は物販をやれと言われましたね。リアルな物品なんて売ったことがないですし、倉庫や物流と言われても何も知りません。まあ何とかなるか、と思ってやっていましたね。その後、新規事業開発室という部署が立ち上がって、そこの室長になりました。

編集部

営業、マーケティング、ゲーム業界での統括、事業立ち上げ、物販と…様々なことをやってこられたんですね。そこの部署ではどんなことをされていたんですか?

立山社長

グループで、こういう事業なら儲かるんじゃなかろうか、というものを取締役に提案して、予算を取って立ち上げる部署で。私はもともと「これもこれもやっていいですか」と提案を出すタイプでした。ただ、結局はほとんど通らないんですよ。いくら出しても何もできないので、じゃあもう自分でやる、と。それが会社を立ち上げたきっかけですね。

編集部

通らないから諦める、ではなく、場所のほうを変えられたんですね。

立山社長

立ち上げる時に決めたのは、プロデューサー集団であることと、IT業界のJA、つまり農協のような存在になろう、ということでした。フリーランスの方だと、個人では受けられない仕事がありますよね。それを支えられる器がひとつぐらいあってもいいんじゃないか、と。

編集部

その器として、いまはどんな支援をされているんですか?

立山社長

立山社長:コンサルティングだと、契約の範囲が決まってしまうんですよね。私たちは現場に落ちている課題を拾って、その場で潰していくので、どこに落ちているかわからないんです。だから戦略と現場と組織をまとめて見る形にしました。

頑張りは見ません。1年でいくら利益を生んだかだけを見ます

編集部

ちなみに、立山社長ご自身がかつて苦しんだ経験がある中で、いま一緒に働く方の評価はどうされているんですか?

立山社長

基本的には自己申告制です。個人のKPIは見ていません。そんなものは自分で管理すればいい話なので。私が見ているのは、年間でどれだけ利益を生み出したか、それだけですね。

編集部

見るのは、1年の結果だけ。ドライではありますけど、結果がすべてということなら、その評価が腑に落ちる人も多そうではあります。

立山社長

給与も、自分で交渉しに来いという形です。いくら欲しいのか、と。月にいくら欲しいということは、月にそれ以上売り上げてくれないと困りますよ、という話からスタートします。賞与も1年終わったタイミングで、職種も役職も問わず、全員に交渉の権利があります。

編集部

頑張りは、見ないということですか?

立山社長

頑張りではなく成果で見る、と10年前から言っています。頑張りは時間と比例するものでしたけれども、AIを使えば手は動かしていないわけです。だとすれば、どれだけ工数をかけずに利益を上げたかのほうが、指標として大事なんですよ。

編集部

たしかに、時間をかけたかどうかでは測れなくなっていますね…。

立山社長

その代わり、できていようができていまいが文句は言いませんし、取り上げもしません。できていないなら、あなたがお金を得られないというだけです。結果にコミットできる方と働きたいと考えています。

編集部

万人受けは、狙われていないんですね。

立山社長

それがおもろいじゃん、俺にやらせてみろよ、やるんだったら徹底的にやれ、という人間が、数人から数十人集まってくれればそれでいいんです。

編集部

それがおもろいじゃん、俺にやらせてみろよ。そういう人だけを集めた場所を、ご自身でつくられたんですね。おかしいと思ったことを素直に言えるかどうかは、その会社にしがみつきたいかどうかで変わる。そう思うと、いまいる場所の見え方も少し変わります。立山社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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