「世界にたった一つのジグソーパズルを。」株式会社オフィス・タカハシ 高橋社長が、パズルも塗料も海苔も自分たちで研究開発する理由

「みんなと同じことをしていても、自分は埋もれるだけかもしれない…。」そんなふうに感じることは、ないでしょうか?

株式会社オフィス・タカハシの高橋勝則(たかはし かつのり)社長は、長年勤めた教員を辞めた時に「いつかは何かオリジナルのものが作れたらいいな」と考えていたそうです。いま同社は、テレビドラマや映画で使われるジグソーパズルのほとんどを手がけ、特殊な塗料も、佐賀県産の海苔を使った食品も、自分たちで研究してつくっています。

なぜ、そこまでオリジナルにこだわるのか。そして、教員だった高橋社長は、どうやってジグソーパズルの世界にたどり着いたのか。詳しくお話を伺いました。読み終わる頃には、人と同じじゃないことが強みになる、とわかるはずです。

お話を伺った人

株式会社オフィス・タカハシ

代表取締役 高橋 勝則

中学校の技術科の教員を11年務めたのち、1993年にオリジナルジグソーパズルの製造販売を始める。1995年に法人を設立し、のちに株式会社へ。佐賀県吉野ヶ里町を拠点に、屋号「元祖ぱずる屋さん」としてオリジナルジグソーパズルを製造するほか、特殊塗料の販売と、佐賀県産の海苔を使った食品の企画販売も手がける。研究開発にも取り組み、海苔の乳酸発酵液の工業生産化を進めている。

目次

何をしようか、まったく決めていませんでした

編集部

髙橋社長の歩みから伺いたいのですが、11年勤めた学校を辞められて、そこからオリジナルのジグソーパズルの製造販売を始められたと伺いました。学校を辞められた時点から、そのビジネスをやっていこうという構想は練られていたんですか?

高橋社長

辞めたあとに何をしようかは、まったく決めていませんでした。ただ、もし自分が仕事をするなら、いつかは何かオリジナルのものが作れたらいいな、とは漠然と考えてはいました。

編集部

オリジナルのもの、ですか?

高橋社長

当時の話ですが、学校というところはどちらかというと、個性を伸ばしましょうと言うよりも金太郎飴みたいに生徒を育てるのが主だったんです。だからこそ、オリジナルのものがいいなと。

編集部

どうしてそれが、オリジナルのジグソーパズルだったんでしょう?

高橋社長

ジグソーパズルに興味があったというより、僕は元々プラモデルを作ったりするのがすごく好きだったんですよ。だから、繋ぎ合わせて何かを作るものがいいかな、という考えがありましたね。

一応、研究開発型の販売会社なんです

編集部

そうしていまは、具体的にはどんな事業を?ジグソーパズルの製造販売のほかにも、さまざまな事業をされてらっしゃるようですが。

高橋社長

そうですね。大きく分けたら3つです。1つは本業のジグソーパズルの製造販売で、2つ目が特殊な塗料の販売。3つ目が、佐賀県は海苔がたくさん取れるので、それを使った加工品の販売です。

編集部

パズルと塗料と、海苔と。塗料は、どんなものなんでしょう?

高橋社長

光を全く必要としない塗料で、消臭とか、菌を抑える効果があります。実績としては、東京メトロの地下鉄のトイレで使用してもらっていますね。あとは、日本航空の飛行機の全てのトイレにも塗られています。

編集部

地下鉄と、飛行機と。どちらも毎日、大勢が通る場所ですね。

高橋社長

実はその塗料を、弊社のジグソーパズルにも吹きかけているんです。紙から菌が繁殖することもあるので、お客様に少しでもそういうものがないように。

編集部

パズルにも塗る、というのは思いつきませんでした…!では、 海苔のほうは、どんな加工品になるんですか?

高橋社長

1つは、抹茶と海苔を組み合わせたカステラです。あとは晴れの日ご飯といって、白米にポリフィラン(※)というものを混ぜるんですよ。そうすると、お米が冷めても美味しいんです。

※ポリフィラン…水溶性の食物繊維

編集部

パズルからは、なかなか繋がらない広がりです。

高橋社長

一応、研究開発型の販売会社ですので、これらの商品は研究の賜物でもあるんですよ。海苔には乳酸菌がくっついていて、それで発酵させると液ができるんですけど、それが免疫の効果を高めるということは研究でわかっています。もうすぐ特許の審査請求をしますし、工業生産化までは確立できているんですよ。

編集部

乳酸菌というと、ヨーグルトのイメージでした…。海苔にも、ついているんですね。

高橋社長

そうなんですよ。海苔って、外国の方は栄養を全く吸収できないんです。それが、液にすることで吸収できるようになるんです。

テレビドラマや映画で使われるパズルは、ほとんど弊社の商品です

編集部

いまの主軸は、どれになるんでしょう?

高橋社長

数的には、まだパズルですかね。オリジナルのジグソーパズルって、すごく狭い狭い世界なんですよ。自分のところで作れる会社も、そんなにたくさんはないと思います。弊社の自慢は、テレビドラマとか映画で使われるジグソーパズルは、ほとんど弊社が作っているということですね。

編集部

ドラマで見かけるあれが。どうやって、そこまで広がったんですか?

高橋社長

芸能の世界って、横の繋がりがあるんですよね。だから、こちらから営業をかけなくても、法人からの問い合わせは結構いただきます。紹介してくださるんでしょうね。不思議です。本当に。

編集部

営業をかけずに、紹介だけで…! 

高橋社長

いわゆるテレアポは、やらないですね。突然電話をされると、嫌がる方もおられるかなと。オリジナルのジグソーパズルは、お客様からは「すごく親切、丁寧」という評価をいただいてるんですよ。そういった声を大事にしたいという気持ちもあります。

編集部

たしかに、オリジナルのジグソーパズルで思い出を形にしたいというニーズが多いでしょうし、そんなお客様を少しでも不快な気持ちにはさせたくないですよね。でもそれだと、お客様との入り口はどこになるんですか?

高橋社長

個人のお客様も法人も、大体インターネットからですね。自社のサイトでブログをたくさん書いていて、従業員一人ひとりを紹介した記事も、そこに載せています。ありがたいことに、そこからお問い合わせをいただけるんです。
危機的な状況も、だんだん楽しめるようになりました

編集部

紹介と、ブログと。ここまで来られたなかで、大変な時期もあったんでしょうか?

高橋社長

ありましたね。弊社のことを気に入ってくださった業者さんが代理店になってくださって、毎年1.3倍くらい売上が伸びていたんです。それがある日突然、「自分のところで作ります」と言われましてね。人も入れていた時期だったので、その年からもう大変でした。でも、今まで食べさせてもらったので感謝感謝です。

編集部

伸びていた分が、一度に。そこは、どう乗り越えられたんですか?

高橋社長

県などのお助けですね。あとは、金融機関にお願いをしたり。いまもまだ、乗り越えている最中ではありますけどね。でも、色々あって、危機的な状況も、だんだん楽しめるようになってきたんですよ

編集部

逆境を楽しめ、という言葉も聞いたことはありますが…、お強いですね。

高橋社長

いまこそ楽しもう、という気持ちになった時のほうが、いろんなアイデアが出るんですよね。昔はね、誰々さんに勝ちたいとか、どこどこの企業に勝ちたいとか、そんな気持ちがあったと思うんです。それが、最近はないですね。自分を高めて、世のため人のためになったらいいなというのがあります。

編集部

そう思えるようになった、きっかけは何だったんでしょう?

高橋社長

経営の師匠(中村隆俊:経営の神様松下幸之助に公私に亘る妙縁を得られた、元松下電器産業株式会社 人材開発センター 営業研修所所長 現商道塾を開塾)の教えや、最近では、大谷翔平も愛読している中村天風の書物を昔から読んでいたことが役に立ったんでしょうね。同業他社でも一緒にやれるところはないかな、困った時はそこの力を借りないといかんな、という気持ちに変わりました。人間だからぶれますけど、危機的な状況があればあるほど、ぶれちゃいけないと思うんです。

スキルを伸ばす大元になるのは、人間性なんです

編集部

ちなみにいま、従業員の方は何人いらっしゃるんですか?

高橋社長

私を含めて8名です。ほとんどがパズルを作っていて、営業と言われるのは私しかいないんですよ。みなさん長いです。周りに助けられております。

編集部

長く続けてくださっているんですね。ちなみに、採用の際には、求職者のどういった点を見ているんでしょう?

高橋社長

これも経営の師匠に教えてもらったんですけど、人を選ぶ時の軸が2つあるんだそうです。1つはスキルの高さ。もう1つは人間性で、人がいいとか、素直な心があるとか。この2つを足したら最高は10で、ベストは5と5、正方形だと言うんです。面積が1番大きくなるから、と。

編集部

スキルが9なら、人間性は1。足して10ですものね。

高橋社長

そうです。それでもう1つ言われたのが、スキルはある程度のところまで伸びてしまうと、その先はなかなか伸びない。でも、スキルを伸ばす大元になるのは人間性だということなんですね。だから、少々足りなくても、人間性の高い人を選んだほうがいい。即戦力にはならなくても、長い目で見たらそちらのほうがいい、と教えていただきました。

編集部

なるほど。ただ、人間性というのは結構広い言葉に思えます。高橋社長にとっては、人間性とは何になるんでしょう?

高橋社長

僕に言わせると、真と善と美です。真は、嘘をつかない。善は、誰にでも優しいということ。Aさんには親切で、Bさんにはそうじゃない、というのは善じゃない。美は調和で、みんなで手を取ってうまくやっていく。人間性は、多分この3つに収まるんじゃないかと思います。

編集部

真と、善と、美。その3つを持っている方と、事業としてはこれから何を目指していきたいですか?

高橋社長

協力企業と組んで、オリジナルのジグソーパズルの売上が日本一だったことがあるんですが、まずはそこへ、もう一度帰りたいですね。ただ、競争で勝つんじゃなくて、共に創造する共創で、一緒にやれるところは組んで売上を上げたい。海苔の乳酸発酵液も、関わってくださる企業さんがたくさんいるので、ぜひ世の中に広めていきたいです。とくに、アレルギーで苦しんでいる方のためになれたらな、と思っています。

編集部

競争ではなく、共創で。金太郎飴が嫌でオリジナルを追いかけてきた方が、最後に選んだのは、ひとりで勝つ道ではありませんでした。人と同じじゃない=ひとりで戦うことではないんですね。高橋社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。 

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