「1番最初は、大工さんになりたかったんです。」株式会社関建設・平林さんの、”たとえ作る側になれなくても家に関する仕事を選び続けた”30年

なりたかった職業をあきらめた時点で、その道はもう終わったような気がしてしまう。そんなことは、ないでしょうか?

株式会社関建設の平林美津保さんは、いまの仕事に就いたきっかけを「家が好きだから、不動産屋さんって天職じゃん、と思ったんです」と話します。子供の頃になりたかったのは、実は大工さん。いまは関建設の不動産部におり、職業の名前は変わりましたが、家に関わる仕事からは一度も離れていません。

大工さんをあきらめてから、どうやって家の仕事を続けてきたのか。そして、いまの仕事の何がそんなに面白いのか。詳しくお話を伺いました。

読み終わる頃には、あきらめたのは職業の名前のほうで、好きなものは持ったままでいいのだと、気づきが一つ増えているはずです。

お話を伺った人

株式会社関建設

平林 美津保

子供の頃から家に関わる仕事に憧れ、設計の専門学校へ。20歳で不動産業界に入り、地元の不動産会社で営業を6年務める。結婚を機に一度退職したのち、宅地建物取引士の資格を活かして契約や事務の仕事に就く。現在は株式会社関建設の不動産部で、賃貸や売買の相談に応じている。

目次

1番最初は、本当に大工さんになりたかったんです

編集部

平林さんは、子供の頃から家に関わる仕事をしたいと思われていたそうですね。

平林さん

そうですね。子供の時から家を作りたくて、1番最初は本当に大工さんになりたかったんです。家を建てて、人の手に渡るまでにどういう仕事があるのか、まだわからない時の夢ではあるんですけれども。とにかく、家を作る人になりたかったんですよね。

編集部

家を作る人になりたいと考えたのには、何か、きっかけがあったんですか?

平林さん

家の近所でモデルハウスの現地販売をやっていて、そこによく遊びに行っていたんですよ。買うつもりもないのに、お客様感覚で上がり込んでいました(笑)。いま考えると申し訳ないんですけど、こういう新しいお家を建てたい、とずっと思っていました。

編集部

大工さんというより、家そのものが好きだったんですね。

平林さん

そうなんです。家が好きで、その家を自分の手で作れるのが大工さんだと思っていたので、そこになりたかった、という順番ですね。ただ、私の世代だと、女性でそういう仕事に就く方が全然いなかったんですね。両親からもなかなか反対されますし、当時はそういうものだったんです。それで進学する時に、大工さんではなくて、じゃあ設計の勉強をしようと思って、設計の専門学校に行きました。

編集部

設計なら、家を作る側にいられますもんね。実際に学ばれて、どうでしたか?

平林さん

実際にやってみると、描いたり計算したりが、なかなか苦手だったんですよ。学校には通っていたんですけれども、これを仕事にしていくのは難しいな、と。それで、設計もちょっと私には向いていないんじゃないか、となりました。

編集部

1つ目の道も、2つ目の道も、そこで…。

平林さん

そうなんです。ただ、家が好きだという気持ちは、そのまま残っていました。作る側にはなれませんでしたけれど、家から離れるという発想は、なかったですね。

家が好きだから、不動産屋さんって天職じゃん

編集部

そこから、どうやって不動産の仕事にたどり着かれたんですか?

平林さん

当時、実家を出て家を借りていたので、その時にお世話になった不動産屋さんがいたんです。自分が部屋を借りてみて、ああ、こういう仕事もあるのか、と知りました。

編集部

借りる側から、見つけたんですね…!

平林さん

家に関わる仕事がしたい気持ちはやっぱりあったので、家が好きだから、不動産屋さんってもしかしたら天職じゃん、と思って。結構軽い気持ちで、20歳の時に学校を途中でやめて、不動産の仕事に就きました。

編集部

作る側から、渡す側に移られたわけですね。

平林さん

はい。家を作る側ではなくなりましたけれども、家に関わる仕事がしたいという気持ちはずっとあったので、そこは迷わずに。地元の不動産屋さんで、6年ぐらい働きました。ただ、結婚した時に、当時の営業の仕事はなかなか厳しくて。ブラックもホワイトも、そういう言葉すらない時代でしたから、帰りも遅かったんです。それで一度退職して、専業主婦になりました。

編集部

一度、家庭のほうに軸足を移されたんですね。

平林さん

ただ、ずっと働きっぱなしだったので、家にずっといるのが耐えられなくて。次に、同じ不動産でも営業ではなく、契約や事務の仕事に就きました。宅建は持っていたんです。6回受けたんですけどね

編集部

6回…!それだけ受け続けられたんですね。

平林さん

そうなんです。それで、専業主婦を卒業して働けるようになって、一旦はほっとしたんですけれども。今度は事務の仕事が物足りなくなってしまって。みんな何を生きがいに、これをやっているんだろう、とすごく考えてしまいました。

編集部

営業の時とは、何が違ったんですか?

平林さん

営業をやっていた時は、お客様にありがとうと言っていただけたんですよ。事務だと、誰のために仕事をしているんだろう、と…。それでやりがいを感じられなくて、また営業をやるということで、今の会社に入りました。3社目ですね。

他の会社さんを紹介しますよ、と言うのが嫌だったんです

編集部

営業に戻られる時に、いまの関建設を選ばれたのは、どうしてだったんですか?

平林さん

何かあった時に、お客様に対してじゃあ他のこの会社さんを紹介しますよ、というのがすごく嫌だったんです。自分の大事なお客様を、よそのご担当に渡すのが嫌で。それが、ここを選んだ理由の1つではありました。

編集部

渡さなくていい、というのは?

平林さん

うちの会社は、母体が建築会社なんですね。大正時代に、大工の棟梁のような方が一人で始めた会社で、私は会ったことがないんですけれども。そこから代々、大工さんとして続いてきています。

編集部

もともとは建てる側だったということですね。

平林さん

そうなんです。ただ、今の社長は大工さんというよりは経営のほうで、事業を色々と広げたいという考えがありまして。大工さんって、家を建てるだけじゃなくて直すのもやりますし、地元でやっているので、地元の方から相談をもらうんですね。建築を母体に何か相談された時に、それに答えたいという気持ちで不動産の事業ができたんです。

編集部

いまは、どこまでを自社でされているんですか?

平林さん

建築だと、新築で建てるのもそうですし、リフォームや修繕、公共工事もやっています。不動産のほうは、賃貸物件を貸したり借りたり、新しいお家を買ったり。基本的に、お家周りのことなら何でも相談してください、という会社になっています。

編集部

たしかに、それなら他所にお願いします、と言わずに済みますね…!

一生に一度とおっしゃるんですけど、意外と一度じゃないんです

編集部

いまのお仕事で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?

平林さん

家のことって、買ったら終わりじゃないんですよ。大きな買い物なので、皆さん一生に一度っておっしゃるんですけど、意外と一度じゃないことが多いんです。

編集部

2回目、3回目があるんですか?

平林さん

はい。またお声がけをいただけるのは嬉しいですし、住んでいる中で何か困ったことがあった時に、思い出してもらえるのも嬉しくて。こまめに連絡をいただけると、必要とされているとすごく思えるんですよね。そこがやりがいになっています。

編集部

一度きりの取引で終わらない、ということですね。

平林さん

そうですね。しかも私たちは仕事としてやっていて、契約していただいたら手数料もいただいているのに、そこにさらにプラスアルファで、お世話になりましたとお菓子を持ってきてくださったりもするんですよ。

編集部

お金をいただいた側なのに、お礼が返ってくる…!

平林さん

そうなんです。普段自分が生活する中で、そういう仕事ってなかなかないよなと思って。コンビニやスーパーだと、お会計してお終いじゃないですか。

編集部

たしかに…!

平林さん

正直、そんなに感謝される仕事だとは思っていなかったんです。不動産屋さん、営業というイメージが、あまり良くなかったので。それが実際にやってみてのギャップで、どんどん仕事が楽しくなっていきました

大体の方が、どこかしらのお家に住んでいますから

編集部

いまは、どんな方を募集されているんですか?

平林さん

社員の年齢層が高くなってきていて、技術を受け継いでもらわないと会社として厳しいところがあるんです。年配の者が一人でたくさん教えるのも大変なので、まずは2、3人ぐらい、若い方に入っていただきたいと思っています。

編集部

職種で言うと、どのあたりになりますか?

平林さん

不動産だと営業で、ルームアドバイザーと呼んでいます。建築のほうだとリフォームアドバイザーですね。たとえば「トイレの使い勝手が悪いから直したい」といったお話をいただいて、こういうのはどうですか、とご提案する仕事です。

編集部

なるほど。お客様と直接お話しするポジションなんですね。

平林さん

そうですね。あとは大きい工事になると、営業をしながら現場も見るのは難しいので、現場監督がつきます。職人さんを取りまとめる立場ですね。営業はちょっと自信がない、という方でも、現場からという道はあります。

編集部

ちなみにそれって、未経験からでも、大丈夫でしょうか?

平林さん

大丈夫です。1番はやっぱり、素直な方ですね。未経験だからこそ、素直さだけで来てほしいんです。それに、大体の方がどこかしらのお家に住んでいますし、家を借りたり、引っ越しをしたり、家で何か不具合があったりという経験は、すでにお持ちだと思うんですよ。

編集部

お客様の側の経験は、すでにあるということですね。

平林さん

ですから、お客様がどう考えるのかを想像しやすいんですよ。自分だったらこうしてほしい、と素直に考えられる方であれば、あとは知識を入れていけば、すごく成長できると思います。

編集部

同じ営業でも、車や商品を売る仕事とは違いそうです。具体的にはどんな方だとマッチしそうですか?

平林さん

車屋さんだと、自分のメーカーの車を売らなければいけませんよね。うちの場合は、自分を売り込めれば、AのマンションでもBのマンションでも、気に入っていただければそれでいいんです。稼ぎたいですという方よりは、人のために何かしてあげたい気持ちが強い方が合うと思います。

編集部

自分だったらこうしてほしい、と想像できること。それなら、家に住んだことがある人は、もう入り口を持っていることになりますね。あきらめたのは職業の名前のほうで、好きなものは持ったままでいい。そう思うと、次に選ぶ仕事も探しやすくなります。平林さん、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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