動物園の檻も、公園のベンチも。テック大洋工業株式会社 鳥潟社長が語る、一品物づくりの醍醐味

「未経験からでも、手に職をつけて長く働ける仕事に就きたい」。そんな人に、ぜひ知ってほしい会社があります。
動物園の檻や公園のベンチ、野球場の照明鉄塔。街に残るこうしたものを、設計から現場の据付まで一貫して手がけているのが、テック大洋工業株式会社です。
今回は、自身も未経験で入社し、15年をかけて3代目になった鳥潟佑樹社長に、この仕事ならではの面白さ、未経験からどう成長していけるのか、そしてどんな人が活躍しているのかを伺いました。
読み終わる頃には、「街に残るものをつくる」という働き方の魅力が、きっと見えてくるはずです。
テック大洋工業株式会社
鳥潟 佑樹 代表取締役社長
金属加工の技術を軸に、動物園の檻や公園施設、野球場の照明鉄塔、バス停といったオーダーメイド製品を、設計から製造、現場の据付まで一貫して手がける会社の3代目。祖父が創業し、父が2代目を務めた同社に、未経験で入社。15年にわたり現場で経験を積み、数年前に父から代表を引き継ぐ。
動物園の檻も、公園のベンチも。街に残るものをつくる会社

編集部鳥潟社長、まず御社がどんなものづくりをされているのか、教えていただけますか?



弊社は金属加工を軸にした会社で、工場は静岡と秋田にあります。その技術を使って、たとえば動物園の檻を作ったり、公園のベンチやパーゴラ、野球場の照明鉄塔、街中のバス停なんかも手がけています。



動物園の檻まで!かなり幅広いですね。



そうですね。どれもオーダーメイドで、お客様のご要望に合わせて作ります。お客様が「こんなものを作りたい」と夢を語ってくださったものを、実際の形にしていく。設計から製造して、現場に据え付けるところまで一貫してできるのが、弊社の特徴なんです。



単に部品を量産するのではなく、街に残るものを一からつくる。それは、働く人にとってのやりがいにもつながりそうです。



そこは大きいですね。自分が手がけたものが、街の風景として何十年も残っていくんですよ。たとえば自分が家族を連れて出かけたときに、当時のまま残っていて、ちゃんと役に立っている。



素敵です…!



動物園の檻なら、そこに動物が入って、みんなが見に来ている。ひっそりとですけど、活躍している。それを見ると、「大変だったけど、やってよかったな」と思う社員が多いですね。



自分の仕事が、目に見える形で街に残る。それは、ものづくりならではの醍醐味ですね。
未経験で入社した15年後、3代目を継いだ



街に残るものづくり、というお話がありましたが、鳥潟社長ご自身は、どういう経緯でこの会社を継がれたんですか?



この会社は、私の祖父が創業したんです。父が2代目で、私が3代目になります。私自身は15年ほど前に、未経験で入社しました。



もともと社長になるおつもりで入られたんですか?



中小企業ですから、なかなか後を継ぐ人がいないんですね。オーナーの一家で入っている以上、いずれ引き継ぐことを念頭に置いて、少しずつ準備はしてきました。15年ほど現場で経験を積んで、数年前に父から代表を引き継いだ形です。



実は当メディアでは、お父様の世代から会社を継がれた社長を何人も取材しているんですが、「覚悟はしていても、いざその時が来ると戸惑った」という声を一定数伺うんです。鳥潟社長は、いかがでしたか?



父も年齢を重ねてきて、タイミング的に今なら大丈夫だろう、とお互いに納得して交代しました。ただ、それまでも全体の業務は見ていたんですけど、いざ代表になると、責任の重さが全然違うんですよ。



責任の重さ…。



かかってくるプレッシャーが、まるで違いました。そこは正直、苦しいところでしたね。ようやく最近、慣れてきたところです。



立場が変わって初めて見える景色があるんですね…。継がれてから、「こういう会社にしたい」と力を入れたところも聞いてみたいです。



せっかく自分の代になったので、若い方が入りやすい会社にしたいと思って、いろいろ動いています。ただ、経営方針や「何のために利益を出すのか」という根本の思いは、祖父の代から受け継いできたものに私自身も共感しているので、そこは残しています。そのうえで、より良く変えられるところは変えていく、という感じですね。
決まった正解がないから、面白い





若い方に向けて、この仕事のどんなところが面白いのか、もう少し聞かせてください。



弊社は特注品がメインなので、決まったものを決まった形で作るわけじゃないんです。だから難しいところもあるんですけど、逆に、そこが面白いところでもあるかなと思いますね。



同じものを繰り返し作るのではなく、毎回ゼロから考える。



はい。お客様も、本当にいろんなボールを投げてこられますから。それに一つひとつ対応していく…。ゼロから1をつくって、それが10にも100にもなっていくんです。



なるほど…!



その過程を見られるのは、この仕事ならではだと思いますよ。



正解が決まっていない分、自分で考えて形にする手応えがある。ものづくりに詳しくない人でも、そこには惹かれそうです。
未経験からでも、自分の裁量で動ける



実際に入社された方は、どんなふうに仕事を覚えていくんでしょう?



入られる方は、ほとんどが未経験です。まずは工場で、どんな技術で、どんな人が、どうやってものを作っているのかを見てもらいます。自社で何が作れるのかを知るところからですね。次に、それを現場に据え付ける段階に進みます。物が大きいので、工場で作れるサイズには限界があって、工事現場に運んで組み立てるんですよ。



工場と現場、両方を経験していくんですね。



そうです。工場で作ったものが、現場でどう組み立てられるのかまでわかってくると、次はお客様に提案したり、自分で設計したり、というところに進んでいける。そうやって段階的にスキルアップしていく形ですね。もちろん、一人ひとりの特性や希望を確認しながら、無理のないところで相談して決めています。資格取得のサポートにも力を入れていますし、最近は私自身が社員と一対一で面談する場も設けています。



社長と直接話せる場があるのは、働く側からすると心強いですね。そういう環境で実際に活躍されるのは、どんな方ですか?



ある程度、自分で裁量を持ってやれる方が多いですね。主体的に動いて、自分でやっていきたいという方に向いていると思います。逆に言えば、ものづくりに強い興味がなかったとしても、「自分の意見を出して、自分の裁量でやってみたい」という方なら、きっと合うんじゃないかなと。長く務めていただければ、知識も自然とついてきますから。



ものづくりの経験より、主体性のほうが大事。それは、未経験からの一歩を踏み出したい人にとって、心強い言葉ですね。
新しい事業を、どんどん立ち上げていきたい





最後に、会社としてこれから目指していきたいことを聞かせてください。



動物園の事業は公共の仕事でもあるんですけど、それ一つに頼って動いていくのは、少し危ういんですよね。だから今、新しい技術の開発に力を入れています。



新しい技術の開発…。なんだかわくわくします。



ええ、いくつかアイデアも出てきていて、実際に事業化に向けて動いているものもあります。こうした新しい事業を、どんどん立ち上げていきたいと思っています。



一つの枠に囚われず、新しいものに挑戦していく。そのうえで、乗り越えるべき課題はありますか?



やっぱり、人員が限られている中で、新しいものを生み出さないといけない。何を選んで、何を手放すか。その取捨選択が難しいところですね。だから業務の効率化も進めていて、毎月定期的に会議を開いて、社内で出てきた課題をITでどう解決できるかを話し合っています。歴史のある会社なので、これまで紙でやってきた作業も多いんですけど、そこをどんどん切り替えているところです。



DXやAIの活用も進めていらっしゃるんですね。



ChatGPTのようなものも使いますし、今まで紙で回していた書類を、インターネット上でやり取りするようにしたり。最初は東京都の支援で、専門家の方に毎月ファシリテーションしていただいていたんです。「こうしなさい」と押し付けるのではなくて、社内から「こういう面倒なことがある」と挙げてもらって、その方が「こんなソフトがあるよ」と振ってくれる。それを自分たちで調べてみる。その繰り返しなので、やらされている感じがないんですよ。今はその支援期間も終わって、自社で動いている段階です。



現場の困りごとから、自分たちで工夫していく。その積み重ねが、会社を前に進めているんですね。街に残るものづくりに、ゼロから挑戦してみたい。そんな気持ちを持つ人にとって、テック大洋工業は、きっと大きなやりがいに出会える場所になるはずです。今日は貴重なお話を、ありがとうございました!
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