必要なのは、スキルではなくやる気。株式会社WHERE・青木取締役が、13年以上のキャリアをリセットしてIoT事業をつくるまで

長野県で育ち、高専から大学院まで工学分野を学んできた青木貴弘取締役。

卒業後はコンピューター関連の会社へ入り、13年以上にわたってITの世界でキャリアを積んできました。

そんな青木取締役が、初めての転職を決めたのは2016年のこと。

声をかけられたのは、株式会社WHEREで新しいIoT事業を立ち上げる仕事でした。

当時、Bluetoothを活用した事業は未経験。それでも、それまで築いてきたキャリアを一度リセットするような気持ちで、新しい環境へ飛び込みました。

そこから約10年。位置情報をはじめとしたさまざまなデータを取得・活用するIoT事業を育て、現在は取締役 企画統括本部長 兼 IoT事業本部長として、二つの本部を率いています。

「僕は、必要なのはスキルではないと思っていて。やる気が大事だと思うんですよね」

長く勤めた会社を離れ、未経験の事業へ挑戦した青木取締役は、なぜその決断をしたのでしょうか。これまでのキャリアと、WHEREが手がけるIoT事業、そして新しい仕事に挑戦する若い人への考えをじっくり伺いました。

お話を伺った人

株式会社WHERE

取締役 企画統括本部長 兼 IoT事業本部長 青木 貴弘

長野県出身。高専から大学院まで工学分野を学び、卒業後はコンピューター関連企業へ入社。13年以上にわたりIT分野で経験を積んだ後、2016年に株式会社WHEREへ転職。新たなIoT事業の立ち上げに携わり、複数の本部責任者を歴任。2026年7月に取締役へ就任。現在は企画統括本部とIoT事業本部を管掌。

目次

13年以上勤めた会社から、未経験のIoT事業へ。「0からのスタート」だった転職

編集部

青木取締役は、社会人になって最初はどんなお仕事をされていたんですか?

青木取締役

私は長野県出身で、高専では電子情報工学を学んで、その後は大学院まで進みました。ずっとIT系というか、そういった分野ですね。就職もコンピューター関連の会社に入って、13、14年くらい働きました。

編集部

一つの会社でかなり長く経験を積まれていたんですね。転職を考えるようになったきっかけは何だったんでしょう?

青木取締役

ちょうどWHEREがIoT事業を改めてスタートさせるタイミングで、ヘッドハンティングのような形で「新しい事業をつくってみないか」と声をかけていただきました。それで、それまでのキャリアを一旦リセットして、1からというより、0からスタートするような気持ちで2016年に転職しました。転職は、後にも先にもその1回だけですね。

編集部

13年以上積み上げてきたものを離れて「0から始める」と決めた…。なかなか思い切ったご決断だったんですね。一方で、それまでの経験が生かせる感覚もありましたか?

青木取締役

ありましたね。前職ではプロジェクトマネジメントを多く経験していたので、人や仕事を動かしていく部分は得意でした。一方で、Bluetoothを使った事業そのものは未経験です。そこは必要な知識を一つずつ学びながら、事業をつくっていきました。

編集部

これまでの経験を使える部分と、初めて学ぶ部分の両方があったんですね。

青木取締役

そうですね。さらに、WHEREに入って初めて経験したことも多かったです。前職は大きな会社だったので、株主のことだったり、事業のPLやBSだったり、経営に近い部分に触れる機会はあまりありませんでした。WHEREは当時まだ小さな会社でしたから、代表の近くで仕事をしながら、経営についても学ばせてもらいました。そこを一から経験できたのは新しかったですね。

編集部

事業をつくるだけでなく、仕事を見る範囲そのものが広がっていったんですね。

青木取締役

そうですね。入社した時は管理部長という立場でしたが、その後はいろいろな事業や本部の責任者を経験させてもらい、今はIoT事業本部と企画統括本部の二つを見ています。事業を立ち上げていた頃は本当に忙しくて、新しい技術が出てきたらそれを使っていかに早く形にするかという競争でもありました。他社に先に出されれば、シェアを取られてしまいますから…。大変ではありましたけど、自分自身が好きでやっていたところもありましたね。

GPSが届かない場所で、人や物の「位置」をどう捉えるか

編集部

そんな中で、IoTの事業はどんなところから形になっていったんですか?

青木取締役

もともとWHEREでは、GPSを使ってガイドをするような自治体向けのアプリケーションなども手がけていました。ただ、事業として考えると、マネタイズが難しい部分もあったんです。それで、「これからどんな領域をやっていくべきか」と考えた時に注目したのが、GPSが届きにくい屋内でした。

編集部

屋外では当たり前に使えるGPSが、建物の中では同じようには使えなかったんですね。

青木取締役

そうなんです。当時は今ほど技術も進んでいなかったので、高いビルの中では位置が何十メートルもずれたり、地下へ入るとどこにいるのかわからなくなったりしていました。一方で、オフィスには何千人という人がいることもありますよね。そこで、人や物が屋内のどこにあるのかという情報を使えば、いろいろなビジネスができるんじゃないかと考えました。

編集部

そこでBluetoothを使って、人や物の場所を捉える仕組みをつくっていったんですね。

青木取締役

はい。例えば、人が小さなタグを持っていれば、その人がどこにいるのかがわかります。物につければ、その物がどこにあるのかもわかる。さらに、人や物の位置だけではなく、温湿度やCO2、扉が開いているか閉じているかといった情報も集めることができます。

編集部

「位置を調べる」だけではなく、建物の中のさまざまな状態を取れるんですね。

青木取締役

そうですね。例えばトイレの扉にセンサーをつければ、開いているのか、閉まっているのかという情報が取れます。それぞれに別々の仕組みを用意するのではなく、一つのプラットフォームでいろいろな情報を集められるようにしていきたいと考えました。オフィスだけではなく、工場や倉庫、病院など、いろいろな場所で実証もしてきましたね。

編集部

病院だと、位置がわかることで何が変わるんですか?

青木取締役

病院には、1,000万円、2,000万円するような高額な医療機器もあります。でも、それがいつも決まった場所に置いてあるとは限らないんですよね。使いたい時に「どこにあるんだろう」と看護師さんが探すことがあります。そういう機器にタグをつけておけば、どこにあるのか確認できますし、予約して使うような仕組みにもできます。

編集部

なるほど。機器を探すために使っていた時間を減らせれば、その分、看護師さんも患者さんへの対応など、本来の業務に時間を使いやすくなりますね。

青木取締役

そうですね。私たちはハードウェアも自分たちで設計して、ファームウェアやソフトウェアもやっています。メーカーから完成したものを買っているだけだと、「それは仕様なので変えられません」となることがあります。でも、自分たちで設計しているので、必要な情報に合わせて仕様を変えられる。そこは強みだと思っています。

会議室の「予約」と「実際に使われているか」をつなぐ。データで建物そのものを変えていく

編集部

人や物の位置を把握するところから始まって、今はさらに使えるデータの範囲が広がっているんですよね。

青木取締役

はい。今は2030年に向けて、「スマートビルディングインテグレーター」という方向を掲げています。これまで構築してきた、人や物の位置情報などを集める「EXBeacon」というプラットフォームもさらに拡張して、人や物、建物に関わるさまざまな情報を一つにつなげていこうとしているところですね。

編集部

例えば、オフィスの中だとどんな使い方ができるんでしょう?

青木取締役

わかりやすいところだと、会議室がありますね。「会議室がいつも予約でいっぱいで取れない」という会社でも、実際に調べてみると、予約だけされて誰も使っていないことがあります。そこで、人がいない状態が15分続いたら予約を自動でキャンセルするようにすれば、別の人が使えるようになります。

編集部

ありますね。予約だけ残っている空の会議室…。

青木取締役

そうなんですよ。さらに人数までわかれば、「12人用の会議室を1人で使っている」といった課題も見えてきます。そうすると、「大きな会議室を増やすより、1人や2人で使えるブースを増やした方がいいんじゃないですか」という提案もできます。

編集部

データを取って終わりではなく、その結果を見て、オフィスのつくり方まで変えていくわけですね。

青木取締役

そうですね。ほかにも、会議室の予約が入っていたら30分前から空調をつけておくとか、誰もいなければ照明や空調を切るとか。今はエネルギーコストも上がっていますから、そういったところにもデータを使えます。私たちの仕組みを入れておけば、いろいろな情報を組み合わせて使える。そこを目指しています。

編集部

一つの機能だけを提供するというより、建物全体の使い方を考えるところまで広がっているんですね。

青木取締役

はい。以前は「その全部を自分たちでやろう」と考えていた部分もありました。ただ、最近は自分たちだけでできることには限界があると思っていて、グループ会社が持っている予約システムと連携したり、ほかの会社さんと組んだりしながら、プラットフォームを充実させています。こちらだけが得をする関係では続かないので、一緒に取り組む会社さんにもメリットがある形をつくっていくことを大切にしています。

「やってみると、見えてくる世界も変わる」社内で広がるキャリアの選択肢 

編集部

前職とは会社の規模も、事業との距離も大きく変わったと思います。仕事の面白さにも違いがありますか?

青木取締役

変わりましたね。前職では何万人という会社の中の一人だったので、いろいろな商材がありました。今は自社でつくったものを自分たちで売っているので、自分たちの商材を世の中に出していけることは嬉しいですね。それと、新しい機能について提案できる制度があって、自分のアイデアが製品に組み込まれたり、特許になったりすることもあります。そういうものが実際に世の中へ出ていく楽しさはありますね。

編集部

自分のアイデアが製品に反映されて、それが実際に世の中へ出ていく。そういう環境で働く人には、どんなタイプが合いそうですか?

青木取締役

若い方は特に、やる気次第でいろいろな成長ができると感じていて、経験だけが重要ではないと思っています。弊社はソフトウェアもやっていますし、ハードウェアもつくります。サービスやサポートもありますし、営業もあります。だから、一つの仕事をやってみて「自分には少し違うな」と思った時に、転職しなくても同じ会社の中で別の領域へ挑戦できるんです。

編集部

入社する時点で、「自分にはこの仕事しかない」と決め切らなくてもいいんですね。

青木取締役

そうですね。最初はまず、私たちの基本となる技術を学んでもらいます。そこから、お客様と話しながらプロジェクトを進める方が合っているのか、サポート側が合っているのか、営業の方が合っているのか。実際にやってみながら見えてくる部分があります。「営業をやりたい」と入ってきた人が、実際に現場へ行ったら「お客様と話しながら進めるPMの方が面白い」となったこともあります。やってみると、見えてくる世界も変わるんですよね。

「必要なのは、スキルではない」覚悟を持って飛び込めば、育っていける

編集部

青木取締役自身も、13年以上勤めた会社を離れて、経験したことのない事業に飛び込みました。振り返ってみて、あの転職はどうでしたか?

青木取締役

本当に良かったと思っています。前の大きな会社にそのまま残っていたら経験できなかったことを、たくさん経験させてもらいました。1年の3分の1くらい海外へ行かせていただいた時期もありましたし、事業そのものをつくる経験もできました。2026年7月には取締役にもなりました。

編集部

これだけ新しい経験につながった転職ですが、当時は周りから反対されませんでした?

青木取締役

はい。「バカじゃないか」とすごく言われましたね(笑)。前の会社でも評価してもらっていましたし、子どもが生まれて半年くらいの時期でもありましたから。それでも、覚悟を決めて転職しました。

編集部

(笑)。安定していた環境を離れて、自分自身も0から始めた。その経験がある青木取締役から、これから新しい仕事に挑戦する若い方に伝えたいことはありますか?

青木取締役

僕は、スキルではなくやる気が大事だと本当に思うんですよね。僕自身も転職する時には覚悟を決めてきました。それまでやってきたことにこだわりすぎず、「ここでちゃんとやる」という気持ちがあれば、弊社ではOJTもありますし、育っていける仕組みもあります。もちろん、パソコンを触ったことが全くないという状態だと難しい部分はあるかもしれません。でも、最低限のところがあって、本人にやる気があれば成長していけると思っています。

編集部

13年以上勤めた会社を離れ、「0からスタートする」覚悟でWHEREへ転職した青木取締役。未経験だったIoT事業に携わりながら、技術だけでなく経営や事業づくりまで経験し、現在は二つの本部を率いる立場になりました。だからこそ、新しく入る人にも最初から完成されたスキルだけを求めるのではなく、まずは「ここでやる」という気持ちを大切にしています。自分のアイデアを形にしながら、新しい領域にも挑戦できる。青木取締役の歩みからは、経験のない仕事に飛び込むことが、その後のキャリアを広げるきっかけにもなり得ることが伝わってきます。本日は貴重なお話をありがとうございました。

株式会社WHERE_採用情報

目次