社長秘書、海外生活を経て犬のトレーニング事業へ。株式会社犬はともだち・川添社長が、日本で「バークバスターズ」を立ち上げるまで

短大卒業後、会社員として社長秘書を経験し、その後はアメリカへ。帰国後には英会話学校で働き、さらにオーストラリアへ渡った川添千絵社長。

現在手がけているのは、犬と飼い主の関係に向き合うドッグトレーニング事業です。

きっかけになったのは、オーストラリアで暮らしていた頃の自身の体験でした。

当時、飼っていた犬の問題行動に悩み、現地の「バークバスターズ」へ相談。そこで受けたトレーニングによって、それまで困っていた行動に大きな変化が現れたといいます。

その体験から、日本でバークバスターズの事業を始めることを決意。2003年に会社を立ち上げました。

海外で生まれたサービスを日本へ持ち込むところから、現在まで20年以上。

どのようなキャリアを経てこの仕事にたどり着き、犬と飼い主にどのように向き合っているのでしょうか。川添社長のこれまでの歩みと、バークバスターズの仕事について伺いました。

お話を伺った人

株式会社犬はともだち/バークバスターズジャパン

代表取締役 川添 千絵

短大卒業後、会社員として社長秘書などを経験。その後アメリカへ渡り、帰国後は英会話学校に勤務。さらにオーストラリアの大学で国際関係の経済学を学び、卒業後は現地で就職。自身の飼い犬の問題行動をきっかけにバークバスターズと出会い、2003年に日本で事業を開始。現在は犬と飼い主へのトレーニングを行うとともに、全国展開を目指してフランチャイズ事業にも取り組んでいる。

目次

「いろんなことをやってきました」海外生活を経てオーストラリアへ

編集部

まず、川添社長がこれまでどんな仕事をされてきたのか、これまでの歩みから教えていただけますか?

川添社長

いろんなことをやってきましたね。短大を卒業して会社に入り、社長秘書を数年やりまして…。その後はアメリカに1年ほど行って、帰国してからは英会話学校でも働いていました。

編集部

会社員として働いた後に、海外へも行かれたんですね。

川添社長

そうですね。その後はオーストラリアへ行って、大学で国際関係の経済学を学びました。卒業後は現地で結婚して、そのまま仕事もしていました。

編集部

アメリカから、今度はオーストラリアへ。本当にいろんなことをやられてきたんですね…!でもその頃は、まだ犬に関わる仕事をされていたわけではなかったんですよね。

川添社長

そうなんです。現地では、日本の商社で働いていましたね。ただ、その頃に飼っていた犬にいろいろな問題があったんです。

編集部

問題、というと…?

川添社長

呼んでも戻ってこなかったり、インターホンが鳴ると吠えたり、散歩ではリードを引っ張ったりしていて。それで、どうしたらいいんだろうと思っていました。そこで初めて、オーストラリアで犬のトレーニングを行っていたバークバスターズにドッグトレーニングをお願いしたんです。そこで受けたトレーニングが、それまで自分がイメージしていたものとは全然違ったんですよ。

たった1日の体験が、後の仕事につながった

編集部

どんなところが、それまでイメージしていたトレーニングと違ったんですか?

川添社長

犬だけをトレーニングするのではなく、飼い主の方を指導するんです。

編集部

えっ。飼い主を…?

川添社長

そうなんです。犬には犬なりのコミュニケーションの仕方があります。そこで、犬にとって飼い主がきちんとリーダーになるためにはどう接すればいいのかを教えてもらいました。そのトレーニングを受けたことで、それまで困っていた犬の行動が1日で大きく変わったんです。それには本当に驚きました。

編集部

たった1日で…。そこまで変化があったら、かなり印象に残りますね。

川添社長

そうですね。ただ、その時点ですぐに「これを仕事にしよう」と考えていたわけではないんです。というのも、その後、日本へ帰ることを考えるようになりました。娘に日本語や日本の文化に触れてほしいという思いもありましたし、これから日本で何をしようかと考えるようになったもので。

編集部

そこから、帰国後はどんな仕事をしようと考えたんですか? 

川添社長

当時働いていた会社から日本で仕事を続ける話もいただいていたのですが、これから自分が仕事をするなら、これでもう最後。自分自身がやってよかったと思える仕事をしたいと考えました。それで、日本でバークバスターズをやろうと決めたんです。

マニュアルの翻訳から広告まで。日本での立ち上げは一人で始まった

編集部

日本で事業を始める際は、すでに仕組みが整った状態でスタートできたんですか?

川添社長

いえ、全然です(笑)。当時、バークバスターズがオーストラリア国外へ展開するのは、英語圏以外では日本が初めてでした。ですから、日本で始めるための準備を一からやる必要があったんですよ。

編集部

具体的には、どんな準備が必要だったんでしょうか?

川添社長

まず、何百ページもあるマニュアルや契約書、ハンドブックなどを日本語にするところから始まりましたね。

編集部

何百ページですか…。それを一から日本語にするだけでも、かなり大変ですね。 

川添社長

それだけではなくて、仕事に必要なものをそろえたり、ホームページをつくったり、広告を出したり、チラシを配ったり。本当に立ち上げに必要なことを一つずつやっていきましたね。

編集部

トレーナーとしての仕事だけではなく、事業そのものをゼロからつくったという感じですよね…。

川添社長

そうですね。2003年6月に会社を設立しましたが、最初はほとんど一人でやっていました。今のようにWebで何でも簡単にできる時代でもありませんでしたから、Yahoo!に広告を出したり、自分でできることをやりながら少しずつ知ってもらいましたね。

犬だけではなく、飼い主が変わる。3か月かけて関係を整える

編集部

実際にお客様のところでは、どのようなトレーニングをするんですか?

川添社長

基本的には、ご自宅へ伺ってのレクチャーですね。私たちが大切にしているのは、犬だけを変えようとするのではなく、まず飼い主さんに犬との接し方を理解してもらうことです。犬が自分の方が上の立場だと思っていると、吠える、噛む、引っ張るといった行動につながることがあるので、飼い主さんが犬から信頼されるリーダーになるための接し方をお伝えしています。

編集部

実際のレクチャーは、どのくらいの期間をかけて行うんですか? 

川添社長

最初の日に必要なことは一通りお伝えします。でも、それで終わりではありません。実際に生活していくと、「こういう時はどうしたらいいんだろう」ということが出てきますから、その後も3か月ほど経過を見ていきます。訪問は全部で4回ほどで、それ以外にもメールなどでご相談いただきながら、飼い主さんの行動を少しずつ修正していくような流れですね。

編集部

そこまで継続して見ていくんですね。 

川添社長

そうですね。飼い主さんが変わることで犬も変わっていきます。問題行動が落ち着くと、犬自身の表情も穏やかになりますし、飼い主さんの生活も楽になります。そこで「助かりました」と言っていただけることは、この仕事のやりがいですね。

編集部

犬だけを相手にする仕事ではなくて、飼い主さんともたくさんコミュニケーションを取る仕事ですもんね。その中で、難しさを感じるのはどんな時ですか?

川添社長

それこそ、犬よりも飼い主さんに納得していただくことの方が難しい場合がありますね。ほとんどの方は理解してくださいますが、中にはこちらがお伝えしたことになかなか納得されない方もいます。そういう時に、なぜこの接し方が必要なのかをきちんと説明して、ご理解いただくところには難しさがあります。

編集部

そうですよね…。ちなみに、犬種や体の大きさによっても、行動や悩みも千差万別ですよね。私は犬を飼ったことがないのですが、なんとなく大きいワンちゃんのほうが、嚙まれた時に痛そうだなとか、手がつけられないようなイメージがあって。

川添社長

大きい犬だから問題行動が多いというわけではありません。例えば、怖がりな犬だからこそ吠えたり、噛んだりすることもあるんですよ。犬種による傾向もありますが、その犬がどういう状態なのかを見ることが大切ですね。

全国の飼い主へ届けるために、次はトレーナーを増やしていく

編集部

ここまで20年以上事業を続けてこられて、これからさらにやっていきたいことはありますか?

川添社長

今は、全国にバークバスターズを広げていきたいと思っています。困っている飼い主さんは全国にいますから、私一人だけでは対応できません。そこで、フランチャイズという形で、この仕事をする人を増やしていきたいと考えています。

編集部

加盟するには、もともと犬のトレーナーだったり、何か資格を持っていたりする必要はあるんですか?

川添社長

特別な資格や経験は必要ありません。むしろ、余計な先入観がない状態で学んでもらう方がいいと思っています。横浜で1か月ほど研修をして、まずマニュアルを学んでもらい、その上で実際のレッスンを見たり、一緒に現場へ行ったりしながら覚えていただくような感じですね。

編集部

一から教えてもらえるんですね。

川添社長

そうですね。この仕事は犬と飼い主さん、双方がより暮らしやすくなるところまでお手伝いできる仕事です。これからは、そうした仕事をできる人を各地に増やして、全国の困っている飼い主さんの力になっていきたいですね。

編集部

社長秘書や海外生活、英会話学校での勤務など、一見すると現在の仕事とは異なる経験を重ねてきた川添社長。その後、自身の飼い犬をきっかけにバークバスターズと出会い、日本で事業を立ち上げました。日本での展開は、海外の仕組みをそのまま持ってくるだけではなく、膨大な資料の翻訳からホームページ、広告、現場でのトレーニングまで、一つずつ自ら形にしてきたものです。現在は、自身がトレーナーとして犬と飼い主に向き合うだけでなく、同じ仕事を担う人を全国へ増やすことも目指しています。一つの体験との出会いから、20年以上続く仕事をつくり、さらに次の人へ広げていく。川添社長の歩みからは、これまで経験してきた仕事だけにとらわれず、自分が価値を感じたものを新しい仕事にしていくキャリアの形が見えてきました。川添社長、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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