「建築って、1人で完結しないんですよ。」株式会社キャンプサイト・内田代表が考える、建築の仕事をするうえで、知識以上に大切なこと

廃校やリゾートホテルなど、使われなくなった建物をどうすれば、もう一度人が集まる場所にできるのか。

株式会社キャンプサイトでは、設計だけではなく、「その場所で何をするか」という企画から、開発、運営までを手がけています。

代表の内田勝久さんは、大学・大学院で建築を学び、設計事務所、不動産デベロッパーを経て独立。現在は東京・渋谷に事務所を構えながら、仕事のほとんどは地方のホテルやリゾート、キャンプ場だといいます。

「建築って、1人で完結しないんですよ」と話す内田代表。建築の仕事をするうえで知識以上に大切だと考えていることや、使われなくなった場所をもう一度人が訪れる場所に変えていく仕事について伺いました。

お話を伺った人

株式会社キャンプサイト

代表取締役 内田 勝久

大学・大学院で建築を専攻し、卒業後は建築設計事務所に勤務。その後、不動産デベロッパーへ転職し、30代前半で独立。約15年前に株式会社キャンプサイトを設立。幼少期から続けていたボーイスカウトでの自然体験と、不動産開発の経験を生かし、廃校やリゾートホテルなどの再生に取り組む。現在は企画・設計・開発に加え、施設の運営まで手がける。

目次

会社にずっといるという選択肢が、自分の中になかったんです

編集部

内田代表のご経歴についてですが、大学院まで建築を学ばれていたんですよね。

内田代表

大学と大学院で建築を専攻して、卒業後は一般的な建築設計事務所に2年ほど勤めました。ただ、設計事務所にいると、基本的には誰かから依頼を受けて、それを形にする立場になりますよね。自分たちの思いを事業や形にしていくのは、なかなか難しいなと感じていました。

編集部

そこで、設計する側から不動産を開発する側へ移られた、と。

内田代表

そうですね。リクルートコスモスというデベロッパーに転職しました。リクルートって、当時からいわゆるサラリーマン的に働く人が少なくて、自然と独立したり、何かしらの形で自分で次に進んだりする人が多かったんです。

編集部

内田代表ご自身も、いつか独立しようと思っていたんでしょうか?

内田代表

明確に「独立するぞ」と決めていたというより、会社にずっといるという選択肢が、自分の中になかったという感じですね。先輩も同期も、時期が来ると転職したり独立したりしていましたから。それが自然だったんです。それで、30代のかなり早い時期に独立しました。

編集部

いまのキャンプサイトを立ち上げたのは、そのあとなんですね。

内田代表

はい。15年くらい前です。自分が仕事で経験してきた不動産開発と、幼い頃から続けていたボーイスカウト(※)の経験があって、もともと自然のある場所が好きだったんです。その2つを掛け合わせて、自分だからできることをやっていきたいと思ったのが、今の会社の始まりですね。

※ボーイスカウト…野外活動や集団生活を通じて青少年の自立心や協調性、リーダーシップを育む世界的な教育運動

使われていない場所が、どんどん増えているんですよ

編集部

いまは、どんな相談が多いんでしょう?

内田代表

廃校だったり、リゾートホテルだったり、比較的大きな施設ですね。公共施設でも民間施設でも、使われなくなった場所がどんどん増えているんですけど、そういう場所をもう一度活用して、古い資産をきちんと使えるようにする仕事は多いですね。

編集部

設計だけを頼まれるというより、「この場所をどうしたらいいか」から相談されることもあるんですか?

内田代表

あります。「こういう施設にしたい」と目的が決まっている場合もありますけど、持ち主の方自身が、どう活用したらいいかわからないことも多いんです。もともと考えていた使い方とは別に、「こういう方向もあるんじゃないですか」と提案することもあります。

編集部

建物の形を考える前に、そこで何をするかから考えるんですね。

内田代表

そうですね。単一の用途だけで考えていると、なかなか広がらないんです。そこへ来た人がどう過ごすのか、何があればもっと人に知ってもらえるのか、来てもらえるのか。一緒に考えていくと、「こういう施設もあったほうがいいよね」「こういう場所にしたいよね」と、だんだん話が広がっていきます。

編集部

設計事務所でありながら、事業そのものを一緒につくるところまで入る。

内田代表

僕らのように建築をわかっている人間だからこそ、世の中に提案できることもあると思っています。誰かに頼まれたものをつくるだけではなくて、社会の課題に対して、建築を使って自分たちから提案していきたいんです。

移動距離とアイデアの質は、比例すると思っています

編集部

そういうアイデアは、普段どこから得ているんでしょう?

内田代表

とにかく、いろいろな場所へ行くことですね。インターネットやSNSで見える情報って、実際に現地へ行って感じることの1割もないと僕は思っているので。だから、移動することはすごく大事にしています。

編集部

実際に行って、見て。そこで感じるものは違うと。

内田代表

全然違います。移動距離とアイデアの質は、全部比例するなと思っているので。ちなみに事務所は東京の渋谷にあるんですが、いま首都圏の仕事って1つもないんですよ。

編集部

1つもないんですか?

内田代表

ないですね(笑)。全部地方です。ホテル、リゾート、キャンプ場みたいな仕事が多いですね。

編集部

内田代表自身は、この仕事のどこが一番面白いと感じるんでしょう?

内田代表

使われなくなった場所とか、見逃されてしまった場所…。「ここに何をつくったらいいんだろう」「どうすれば、また人が来る場所になるんだろう」と考えるのは、すごく楽しいです。

編集部

価値がない場所ではなくて、価値が見えなくなっている場所の今後を考えるというわけですね。

内田代表

そうですね。これからも、企画から設計、開発、運営まで、そういう場所を一貫して手がけられるチームになっていきたいと思っています。

建築を使う人って、普通の人間じゃないですか

編集部

建築の仕事というと、専門の学校を出ていないと難しいと思っている方も多いと思います。実際のところ、どうなんでしょう?

内田代表

もちろん、建築を専門的に勉強している人のほうが理解は早いと思います。ただ、建築物を使う人って、普通の人間じゃないですか。家に住むのも、ホテルへ泊まりに行くのも、カフェへ行くのも普通の人ですよね。

編集部

使う側の感覚のほうが、近いということですか?

内田代表

そうですね。建築の専門知識だけじゃなくて、「ホテルって、こうだったらいいよね」とか、「カフェなら、こういう場所が面白いよね」とか。日常の中で何かを面白がれる感覚は、すごく大事だと思っています。

編集部

建築そのものより、「その場所をどう使いたいか」を考えられること…。

内田代表

そうですね。だから、「建築をやったことがないから無理だ」と最初から思わなくてもいいんじゃないかなと思います。実際、デザインの世界から建築へ来る人もいますし、建築から別の業界へ行く人もいますから。

編集部

御社にも、建築以外の仕事をしている方はいらっしゃるんですよね。

内田代表

いますね。うちは自分たちで運営している施設もあるので、そこでは建築以外の仕事をしている人もいます。経験がなくても活躍できる方はいると思いますよ。

編集部

建築事務所といっても様々な業務があるんですね。ちなみに、今後は特にどんな人に入社してもらいたいですか?

内田代表

マネジメントができる方もそうですし、プロジェクトを自分で推進できる人を求めています。「この職種を何人採りたい」ときっちり決めているというより、いい方がいれば一緒に仕事をしたい、という感覚です。

建築って、1人で完結しないんですよ

編集部

専門知識とは別に、「これは必要」というスキルはあるんでしょうか?

内田代表

あります。建築が、いわゆるデザインの仕事と大きく違うのは、1人で完結しないということです。だから、コミュニケーション力や、プロジェクトをマネジメントする力はすごく大事ですね。

編集部

実際、どのくらいの人が関わるんでしょう?

内田代表

現場全体まで含めれば、何千人、場合によっては何万人という人が関わります。なので、建築の学校を出たかどうかより、そういう人たちと一緒に仕事を進められるかのほうが大事だと思っています。それと、段取りですね。建築って、1つのことを順番に終わらせていけばいい仕事ではないんです。プレゼンテーションもありますし、設計もある。いろいろな人との調整もある。たくさんのタスクが同時に動いていきます。

編集部

その中で、自分から前へ進められる人が向いているというわけですか?

内田代表

そうですね。デザインだけじゃなくて、タスクを管理したり、プロジェクトを動かしたりできる人は向いていると思います。責任感というより、自分で推進できるかどうかですね。「それは自分の仕事じゃない」と投げた瞬間に、プロジェクトが止まってしまうので。社内には図面を書く人もいれば、デザインをする人もいるので、みんなが同じ役割をする必要はありません。ただ、興味がないことには、なかなか手は動かないと思うんですよ。

編集部

逆に、この仕事がしんどくなりやすいのは、どんな方でしょう?

内田代表

これはネガティブな意味ではないんですけど、制作する仕事って、終わりがないんですよ。デザインもそうですし、音楽もそうだと思います。「ここまでやったから完成です」ときれいに終われるものではなくて、「もっと良くできないか」「このままで本当に伝わるのか」とずっと考える。場合によっては、コンセプトから見直すこともあります。なので、もう少し良くしよう、どうしたらもっと伝わるだろう、と考え続けることが必要です。そこが苦手な方は、別の仕事のあり方を探したほうが合うのかもしれませんね。

編集部

使われなくなった廃校やホテルを、また人が訪れる場所に変えていく。そのために内田代表は地方へ足を運び、そこで何をするかから一緒に考えています。人と話しながら段取りを組み、自分でプロジェクトを前へ進める。その力があれば、いま建築の学校を出ていなくてもチャレンジできる仕事なんですね。内田代表、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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