「どこだったら勝てるのかを考えました。」株式会社DPパートナーズ・彦坂社長が、スポーツからITへ進み、自分のフィールドを見つけるまで

やりたいことがあっても、自分より圧倒的にすごい人を見ると、「自分には無理かもしれない」と思ってしまうことがあります。
株式会社DPパートナーズの彦坂康太郎社長も、学生時代にそんな経験をしました。
幼い頃から野球を続け、大学でも野球部へ。しかし、周囲にはプロを目指せるような選手が何人もいました。その差を目の当たりにした彦坂社長は、スポーツで生きていく道から離れ、ITの世界へ進みます。
その後、新卒で入社したWeb制作会社を1年半で退職して独立。自身がサイト売買で苦労した経験から、Webサイトの移転を専門に扱うサービスを立ち上げました。
「自分が圧倒的な強者ではないなら、どこだったら勝てるのかを考える」
スポーツの世界で身についたその感覚は、事業をつくる時にも生きていたといいます。
今回は彦坂社長に、スポーツからITへ進んだ背景、独立と事業づくり、AI時代の仕事、そしてこれからキャリアをつくる若い方への考えを伺いました。
株式会社DPパートナーズ
代表取締役 彦坂康太郎
学生時代は野球、ソフトボールに取り組みながら、ITについて独学で学ぶ。大学卒業後はWeb制作会社へ入社し、約1年半で独立。自身がWebサイトの売買や移転で苦労した経験をもとに、Webサイトの移転を支援するサービスを立ち上げる。現在はWordPressを中心としたWebサイトの保守・管理を主力事業とし、サイト運営を長期的に支援。
プロを目指した野球からITの世界へ。「自分の夢と現実には、かなり差がありました」
編集部彦坂社長は、学生時代はずっとスポーツに取り組んでいたんですよね。もともとはプロを目指していたんですか?



そうですね。若い頃は将来、野球選手になりたいと思っていて、大学でも最初は野球部に入ったんです。ただ、実際に入ってみると、自分が夢見ていたものと現実には、かなり差があるなと感じました。



それほど周りのレベルが高かったってことですか?



本当にすごい選手がたくさんいましたね。僕はスポーツ推薦ではなく一般で入っていたので、「すごいところに来てしまったな」という感じでした(笑)。そこで野球選手になる夢は諦めて、その後はソフトボール部に入りました。



野球からソフトボールに転向されたんですね。



そうです。ソフトボールは大学4年生まで続けて、最後は全国優勝も経験できました。



全国優勝…!すごい…!



今でも、スポーツ自体が嫌になったわけではないんですよ。遊びではやりますし、体を動かすことも好きです。でも、仕事として結果を求められながら続けていくのは、自分には少し違うかなと思うようになりました。そもそも、スポーツだけで食べていくこと自体がかなり難しいことですし。



そこから、将来の仕事についてはどう考えるようになったんですか?



当時、ITがかなり伸びている分野だったので、興味を持つようになりました。それに、場所に関係なく勉強したり、仕事ができたりするところにも魅力を感じたんです。それから、部活や学校があっても空いた時間に自分で調べたり実際に触ってみたり。独学で勉強を始めて、大学2年生くらいには、将来はITの道に進もうと決めていましたね。
Web制作会社を1年半で退職。「どこなら勝てるのか」を考えて独立へ



勉強の甲斐もあって、大学卒業後はIT系の道でお仕事を始められた感じですか?



はい。Web制作会社に入社しました。もともと将来的には起業したいという気持ちもあったんですけど、最初は最低でも3年くらい会社で経験を積んだ方がいいかなと思っていたんです。…でも、実際には1年半で独立してしまいました(笑)。



えっ、予定していた3年よりずいぶん早いですね。何かきっかけがあったんですか?



そもそも会社員という働き方が、あまり自分に向いていなかったんだと思います。今振り返ると、当時の上司から見ても、たぶん扱いづらい社員だったと思いますね(笑)。それと、Web制作の技術を何年もかけて深めていきたいという気持ちが、そこまで強くなかったんです。



そうだったんですね。Web制作以外で、ほかに興味が向くものがあったんですか?



実は、大学時代からアフィリエイトをやっていたんです。制作会社の仕事って、お客様から依頼を受けてサイトをつくって、納品したらそのサイトはお客様のものになりますよね。また次のサイトをつくって、納品して、という繰り返しです。一方で、自分でメディアを運営すると、つくったものが自分の資産として残って、そこから収益が生まれる可能性があるじゃないですか。僕はそこに大きな違いを感じていたんです。当時はWebサイトのM&Aも少しずつ出てきた時期で、僕自身もアフィリエイトサイトを売ったり買ったりした経験がありました。それをもっと本格的にやってみたいという気持ちもあって。だったら、会社に3年いても1年半でも、そんなに変わらないかなと思って独立したんです。



なるほど。会社に残って経験を積むよりも、自分でやってみたいという気持ちが大きくなったんですね。ちなみに、独立してからはどんな事業を始められたんですか?



Webサイトの移転を専門に扱うサービス『サイト引越し屋さん』を始めました。というのも、自分自身がWebサイトのM&Aをする中で、かなり困った経験があったんです。サイトを売買すると、データや権利を引き継ぐ必要があるんですけど、その時にサーバーを移したり、サイトそのものを引っ越したりする作業が結構大変だったんですよね。でも当時は、それを専門的に解決してくれるサービスがあまりなかったんです。


▶WordPressのサーバー移転&保守管理サービス『サイト引越し屋さん』



ご自身が困った経験から始まったサービスだったんですね。



そうなんです。「こういうサービスを始めました」と周りのアフィリエイターさんに話してみたら、「じゃあ手伝ってほしい」とすぐに何人かから言ってもらえて。そこで「意外と世の中にニーズがあるんじゃないか」と思えたのも大きかったですね。



でも、Webサイトの移転って、かなり専門的な分野ですよね。そこに絞ったのは、何か理由があったんですか?



それは、スポーツをやっていた経験がかなり影響していると思います。大学の野球部に入った時に、周りとの圧倒的な実力差を感じましたし、ソフトボールでも本当にすごい選手がたくさんいました。そんな中で、自分が圧倒的な強者なら別ですけど、僕はそうではなかったので。だったら、どこなら勝てるのか。自分が勝てるフィールドを見つけることが大事だと思うようになったんです。



それが、事業を選ぶ時の考え方にもつながったんですね。



そうですね。友人からは「もっと大きい市場を狙ったらいいじゃん」と言われることもありました。でも、そこで流されるのではなくて、自分が「ここならニーズがあって、勝てる可能性も高い」と思えるところをまず選びました。
サイトを「つくって終わり」ではなく、長く守っていく



そのWebサイトの移転サービスから、現在はどのような事業に広がっているんですか?



今はWordPressを中心に、Webサイトの保守・管理をメインでやっています。もともとはサーバー移転やシステムの乗り換え、ドメインやメールアドレスなど、データや権利を引っ越すところから始まったんですけど、今はサイトを長く維持していく、いわゆる「守り」の部分を任せていただく仕事が中心ですね。



移転だけでなく、その後の管理まで手がけるようになったんですね。そこまで広げられたのには、何かきっかけがあったんですか?



お客様から「その後の管理もやってほしい」という声をたくさんいただいたことが一つです。それと、会社として考えた時に、サイトの引っ越しのような単発の仕事だけだと、どうしても売上の変動が大きくなるんですよね。人を増やして、育てて、会社を大きくしていこうと考えると、そこはリスクが高いなと感じました。それで2022年から、正式に保守業務を始めたんです。



たしかに、安定して売上をつくっていくには、中長期でご依頼いただけるサービスに注力するって大事なことですよね。



はい。売上もですけど、お客様と長く関わっていけることにも魅力を感じますね。制作の場合は、どれだけいいものをつくっても、納品したらお客様のサイトになって終わります。でも保守なら、お客様の資産を守ったり、成長させたりすることで、その後も継続的に関わっていくことができます。お互いに頑張ることで、お互いに長く良い関係をつくれる。その形は、自分がやりたかった仕事に近いなと思っています。
AIに置き換えられても、「責任」は残ると思っています



最近はAIでできることも増えていますが、Web関連のお仕事にも影響は感じていますか?



そうですね。AIに代替される仕事は、これからもっと増えていくと思っています。ただ、仮に作業そのものをAIができるようになっても、最後に残るのは「責任」だと思うんですよね。



責任、ですか。具体的にはどういうことでしょう?



例えば、個人で事業をしていて、全部自分で意思決定して、自分で責任を取れる人なら、「AIに全部やらせて、何かあったら自分で責任を取る」という形もできると思うんです。でも、ある程度の規模の会社になると、一担当者がすべてのリスクを背負って意思決定するのは難しいですよね。そう考えると、AIを活用することは進んでも、責任も含めて外部の会社に任せたいというニーズは残ると思っています。



なるほど。たしかに、作業そのものはAIが代替できても、責任を取るということはできないですよね。ちなみに、彦坂社長ご自身はAIをどんな仕事に活用されているんですか?



例えば、新しい取引先について調べる時ですね。以前は会社名を検索して、「どんな会社なのか」「業界でどういう立ち位置なのか」と15分、20分かけて調べていました。でも今なら、調べたい項目を細かく指示すれば、AIがかなり詳しく、しかも短時間でまとめてくれます。そういう、人の感情が必要なくて、AIの方が速く質の高い結果を出せる仕事には、どんどんAIを使った方がいいと思っています。



では、逆に人が担うべきだと考えているのは、どんな仕事ですか?



お客様と話したり、一緒に考えたりするところは、まだ人がやる意味が大きいと思っています。実際、弊社でも単純な窓口担当を置くというより、知識を持ったディレクターがお客様と直接話して、そのまま案件を進める形を取っているんです。今後も、そういうお客様と接するメンバーは増やしていきたいと考えています。
自分にとって楽しいか、ワクワクするかを大事にしてほしい



最後に、これから自分の進路や仕事を選んでいく若い方へ、彦坂社長の経験から伝えたいことはありますか?



彦坂社長:ありきたりかもしれないですけど、何かを選ぶ時に、「自分にとってどうなのか」で考えた方がいいと思うんです。周りからどう見られるんだろうとか、これを選んだら何か言われるかなとか、気にしてしまうこともあると思うんですけど、それよりも「自分にとって楽しいか」「ワクワクするか」を大事にしてほしいということですね。



周りの評価よりも、自分がどう感じるかが、大事…。



彦坂社長:そうですね。何も大きな選択だけの話ではなくて、例えば今日コーヒーを買うのか、カフェラテを買うのか、みたいな小さなことでもいいんです(笑)。「自分はどちらが好きなのか」を考えて、自分で納得できる選択をする。その積み重ねだと思います。それと、情報がたくさんある時代だからこそ、基本や基礎を大事にした方がいいとも思っています。今はノウハウや成功例をすぐに知れるので、「自分もいきなり結果を出せる」と思ってしまいやすい。でも、つまらないことや地道なことを、どれだけきちんとできるかで、その後の結果は変わると思うんです。



そうした地道な努力が、思っていた結果につながらなかったとしても、意味はあると思われますか?



彦坂社長:僕は、無駄にはならないと思っています。例えば、何かを身につけても、将来AIに代替されるかもしれません。でも、そのスキルだけではなくて、そこまでに経験したことや、考え方、身についた感覚は残るんですよね。僕もスポーツでは、それでお金を稼げたわけではありません。でも、そこで身についた「自分はどこなら勝てるのか」という感覚は、今のビジネスに生きています。だから、無駄になることをあまり恐れずに、自分が興味を持ったことやワクワクすることなら、泥臭くても愚直にやってみる。ある程度やってみてから、また次を考えればいいんじゃないかなと思います。



彦坂社長のお話を伺って印象に残ったのは、スポーツで感じた周囲との実力差が、その後の仕事にもつながっていたことです。野球選手になる夢は叶わなかったものの、そこで身についた「自分が勝てる場所を探す」という考え方が、独立後の事業選びにも生きていました。ITを独学で学んだことも、会社員として働いたことも、アフィリエイトに取り組んだことも、それぞれが今の仕事につながっています。すぐに結果が出なくても、自分が興味を持ったことに取り組んだ経験は、別の場所で生きることがある。「自分にとって楽しいか、ワクワクするか」これから進路や仕事を選ぶ方にとっても、周りと比べるだけではなく、自分が挑戦してみたいと思える場所を探すことが、新しい一歩につながるのかもしれませんね。彦坂社長、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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