保育園や保育士さんの支援が少しでもできたら。株式会社e-CHANNEL・平手代表が、保育の現場に届けようとしているもの

誰かの役に立つ仕事がしたい。そう思っても、自分に何ができるのかがわからない。そんなふうに感じることは、ないでしょうか。
株式会社e-CHANNELの平手佑季(ひらて ゆうき)社長も「保育園や保育士さんの支援が少しでもできたら」と考え、保育士さん向けのメディアやサービスの運営をしています。印刷会社の営業から始まり、コンサルティング、金融と移ってきて、いまは保育の業界にいます。
なぜ、保育園や保育士さんを支援することが、自分にできることだと思えたのか。そして、そのメディアやサービスはいま何を届けているのか。詳しくお話を伺いました。読み終わる頃には、誰かを支援する仕事は、思っているより近くにあると思えてくるはずです。
株式会社e-CHANNEL
代表取締役社長 平手 佑季
2003年に大手印刷会社へ入社し、営業と経営企画を9年間経験。在職中にMBAを取得し、その後コンサルティング会社へ。金融グループでは、テクノロジーを活用したサービス開発と、金融機関のデジタル化に携わる。社内ベンチャーとしてデジタルマーケティングの会社を立ち上げ、取締役も務める。2025年11月にe-CHANNELの代表に就任。
子どもにとっては、生活の半分以上を過ごす場所ですから
編集部代表に就任されたのは、昨年の11月だと伺いました。それまでは、どんなお仕事をされていたんですか?



社会人になったのが2003年で、大手の印刷会社に入りました。営業をやって、その後は経営企画に移って、9年間ですね。在職中にMBAも取りました。もう少し経営について学びたいというところもあって、コンサルティングの会社で3年半ほど働いて。その次に、銀行に移りましたね。



印刷、コンサルティング、金融と…。金融では、どんなことをされていたんでしょう?



テクノロジーを使ったサービスをつくりたかったんですけど、ちょうど2015年くらいに、フィンテックと呼ばれる分野がすごく盛り上がっていたので、そこでサービス開発をしたり、金融機関自体の業務をデジタル化していくDXを進めたりですね。その事業開発の延長で会社をつくることになって、デジタルマーケティングの会社を社内ベンチャーという形で立ち上げて、何年か経営もしていました。



ご自身の会社を。そこから、どうして保育の業界に移られたんでしょう?



その会社もある程度は軌道に乗って、回り始めていたところだったんです。このまま続けていくか、新しいチャレンジをしていくかで迷っていた時に、知り合いから声をかけていただいて、いまの会社を知りました。当時、自分の子どもが小さくて保育園にお世話になっていたので、保育ってすごく大事な仕事だなと思っていたんですね。見ていてくれるから僕らは仕事に集中できますし、子どもにとっては生活の半分以上を過ごす場所にもなるので。



ご自身が、支えられている側だったと。



そうなんです。子どもの成長にも影響がある仕事だと感じていました。だから、保育の質を上げていくと、日本の子どもたちがもっと幸せになっていくんじゃないか、そこに対して社会貢献ができるかなと思って、チャレンジしようと決めました。
家に持ち帰って仕事をする、という話もよく聞いていました



実際に入社されて、現場にはどんな課題がありましたか?



いまの会社が立ち上がったのが2017年で、サービスが始まったのが19年なんですけど、当時から保育士さんの業務時間がとても長いという課題がありました。終わらなくて家に持ち帰って仕事をする、という話もよく聞いていましたし、業界としてもっと効率的にやらないといけないよね、業務の負担を軽くしないと保育士さんが働いてくれないよね、という声もあって。



持ち帰らないと、終わらない…。壁に飾る製作物や、明日のあそびの準備まで含めると、勤務時間の中には収まらなさそうです。そこに対して、具体的に何をされたんですか?



保育士が子どもと過ごすあそびや製作のアイデアを探す時に、情報を提供しているところがどれだけあるかというと、当時はそんなに多くなかったんですね。じゃあちょっと自分たちで作って、保育士さんが少しでも楽になるようにしよう、と。そこで立ち上げたのが、保育士・幼稚園教諭向けの情報メディアです。



それが「ほいくis」なんですね。毎日、どんな情報が届くんでしょう?



「ほいくis」でお届けしているのは、保育士さんが日々の保育で使える情報です。子どもと遊ぶ時のアイデアや、ダウンロードして使えるコンテンツですね。あとは、受講しないといけない研修もあったりするので、オンラインの研修もお届けしています。「ほいくisお仕事探し」というメディアも立ち上げまして、こちらは保育業界に特化した求人の検索サービスとなっています。







遊びの情報収集と、お仕事探しと。保育士さんは、無料で使えるんですか?



「ほいくis」のほうは基本無料で提供しているので、保育士さんはお金を払わない形です。メディアの広告費や、保育士さん向けに価値のあるサービスをご提供するパートナー企業様からパートナー費用をいただいています。お仕事探しのほうは、求人にご応募いただいた時に、求人掲載している企業様からお金をいただくモデルになっています。
最後は、保育士さん目線で決めています



無料で届ける前提でつくられているんですね。掲載する内容は、どうやって決めているんですか?



まず、どういう記事やコンテンツがサイトでよく見られているかを確認します。これはニーズの裏返しでもあるので。その上で、担当者が集まる編集会議で、アクセスの状況や、法律の改正といった世の中の動きを見ながら、「保育士さんのニーズってどういうものだろうね」と話していきます。最後は保育士さん目線で、いま何を作ると喜ばれるかなというところを、よく話しながら決めている感じですね。



どんな方が、何人くらいでつくられているんでしょう?



「ほいくis」は、エディターと呼ぶ編集者やディレクター合わせて7人程度で運営しています。記事を書く人、動画を作る人、SNS、メールなどのCRM系と、それぞれの領域にプロフェッショナルがいて。スキルのある方々が集まって、話し合いながら作っています。



それぞれの専門家が集まって作られているんですね。記事は、月にどのくらい公開されるんですか?



月によりばらつきはありますが、50本くらいですね。記事だったりコンテンツだったり、いろいろ含めてですけど。



50本。すごい量ですね…!



これだけの量だと、AIを使って作成しているのではないかと思われる方もいるのですが、コンテンツそのものにはAIを使っていません。調査やアイデア出しには使うこともありますが、作るにあたっては、誰が書いたかという情報の信頼性が重要で、保育士さん向けで、その先には子どもがいて、必ず安全な情報じゃないといけない。なので、ちゃんと人間が調べたうえで作り上げ、専門の方の監修を入れるようにもしています。
「ほいくis」は、月に60万人以上に使っていただいています



専門の方の目を通してから届ける…。その「ほいくis」を使ってくださっている方の数は、どのくらいなんですか?



いまは月に60万から70万ユーザー(サイトアクセスUU数)に使っていただいていますね。全国の保育士さんのうち、おそらく2人に1人以上は使っていただけているかなという風に思っています。



0から立ち上げて、そこまで。



「ほいくis」はオンラインでお届けしているので、実は保育士さんと接する機会があまりなかったりします。ただ、保育のイベントが毎年あって、そこで「知ってます」、「使わせていただいてます」というお声を年々多くいただくようにもなっています。



顔の見える場で、使ってくださっているとわかると喜びもひとしおですよね。利用者の方から、要望が寄せられることもあるんですか?



ありますね。ダウンロードコンテンツで、ぬり絵とか、紙で作って遊ぶお人形とか。何歳のこういう子向けに遊ぶものを作れませんか、というご要望をいただいたりします。1つ1つ見ながら、これはみんな喜びそうだねというものは作るようにしています。



声が、そのまま形になっているんですね。



会社自体は25人くらいなので、コンテンツ作りは外部の専門の方に委託しながら作ることもありますね。
導入するだけで、業務の質が上がっていくものを



これから、事業はどう広げていくお考えですか?



「ほいくis」を多くの保育士さんにご利用いただいて、会員にもなっていただいているところが強みだと思っていて。そこを生かして、メディアからまた別のサービスに広げたり、求人検索のほうも機能を増やしたりして、収益の幅を広げていきたいですね。今後2、3年かけて、攻めに行きたいと思っています。



攻めに行きたい、と。そもそも保育の現場って、人は足りているんですかね?



結論、すごく足りていません。保育業界の有効求人倍率は3倍弱で、2.8とか2.9くらいですね。一般的な業界全体だと1.2くらいなので。



3倍弱ですか。それだけ足りないと、いま現場にいる方の負担も重くなりますね…。



保育園の方が主導してITを使いこなしていくのは、なかなか難しいと思うんですね。なので、保育士さんの業務に合わせた形でツールに落とし込んで、導入するだけで業務の質が上がっていく、そういうものをご提供していけたらと思っています。実は10月から、「ほいくis+(プラス)」という新しいサービスを開始する予定です。「ほいくis」のノウハウが凝縮されたAIが、園長や保育士の業務をサポートするものになっています。



それは、すごく画期的ですね…!



そのAIを私たちは、”保育に寄り添うAI” と呼んでいます。独自開発の生成AIで業務時間が圧倒的に短くなることに加え、園長さんや保育士さんが保育の質に向き合う支援をしていくものになっています。



負担が軽くならないと、早く帰れても家で仕事をすることになってしまいますもんね。人を迎える予定も、これから出てきそうですか?



これまでは、足りない時に採用するという形でやってきました。今年はエディター、エンジニアも去年から今年にかけて数名迎えています。ただ、AIによってメディアの価値そのものが大きく変わっている時代なので、サービスの形も変えていかないといけないと思っていて。新しいサービスも投入し、事業が拡大していけば、それに伴い人も増えていくと考えています。



保育園にお世話になった人は多くても、その保育士さんを支援する仕事があるとは知られていない…。自分に何ができるかを探すより、誰を支援したいかから考えるほうが、近道なのかもしれません。平手社長、本日は貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
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