「最初の一歩のハードルを、できるだけ低くしたかった。」ハングルネット株式会社・佐々木社長が、330円からの韓国語レッスンに込めた思い

入会金や月額料金はなく、必要なときに必要な分だけ受講できる韓国語のオンラインレッスンが、1回25分、330円から。

そんな手頃な価格でサービスを運営しているのが、ハングルネット株式会社です。

代表取締役の佐々木貴子社長は、もともとエンジニアとして働いていました。韓国語との出会いは2005年。友人との韓国旅行をきっかけに韓国文化に興味を持ち、会社員として働きながら韓国語の学習を続け、やがて講師や通訳としても活動するようになったそうです。

その後、コロナ禍で通訳の仕事ができなくなったことをきっかけに、オンライン韓国語教室「ハングルネット」を立ち上げました。

「韓国語を学んでみたい」と思った人が、できるだけ気軽に最初の一歩を踏み出せるように。一方で、価格を下げるだけではなく、講師の資格にもこだわり、「お金を払っていただく以上、ちゃんと上達してほしい」と話します。

そして佐々木社長がその先に見ているのは、語学力の向上だけではありません。言葉を知ることで、その国の人や文化を知る。知らないことから生まれる思い込みを減らし、お互いを理解するきっかけをつくること…。

今回はそんな佐々木社長に、エンジニアから韓国語の世界へ進んだ理由や、ハングルネットを立ち上げた背景、語学を通じて実現したい未来について伺いました。

お話を伺った人

ハングルネット株式会社

代表取締役 佐々木 貴子

会社員としてエンジニアを務める中、2005年の韓国旅行をきっかけに韓国語学習を始める。その後、韓国語講師や通訳としても活動。コロナ禍をきっかけにオンライン韓国語教室「ハングルネット」を立ち上げ、現在は韓国語レッスンを中心に、韓国の文化に触れる機会づくりにも取り組んでいる。

目次

何も知らなかった韓国へ。旅行をきっかけに、韓国語が趣味になった

編集部

佐々木社長は、もともとエンジニアとして働かれていたんですよね。韓国語のお仕事とはかなり違いますけど、最初に韓国へ興味を持ったのは何がきっかけだったんですか?

佐々木社長

最初は、旅行なんですよ。2005年に友達と韓国へ行く機会があって。それまで私は韓国についてほとんど何も知らなかったんですよ。韓国ってどこにあるんだろうとか、首都はソウルなんだとか、そのくらいの感覚でした。でも、実際に行ってみたらすごく気に入ってしまって。ご飯もおいしいし、人も親切だし、日本から近い。「また来よう」と思ったんです。それで、何度も行くなら言葉を話せた方がいいかなと思って、韓国語の勉強を始めました。

編集部

最初は、お仕事にするつもりではなかったんですね。

佐々木社長

はい、全然なかったですね。勉強していたら面白くなってしまって、完全に趣味になったんです。それで、楽しくて続けているうちにどんどん上達して、周りから「教えてほしい」と言われることが増えてきて。それで会社員をしながら、韓国語講師も始めました。その後は通訳の資格も取って、通訳も10年くらい続けていましたね。

編集部

エンジニアを本業にしながら、韓国語の仕事もずっと続けていたんですね。

佐々木社長

そうですね。転機になったのはコロナでした。外国人が日本に来られなくなって、通訳という仕事自体が物理的にできなくなってしまったんです。「じゃあ、他に何ができるんだろう」と考えたときに、ちょうどオンラインサービスが一気に普及し始めていて。「オンラインなら韓国語を教えられるかもしれない」と思って、知り合いの韓国語講師に声をかけて立ち上げたのが、ハングルネットです。

編集部

エンジニアの仕事を一本で続ける選択肢もあったと思うんです。それでも、韓国語の方を本業にしようと思ったのはなぜだったんですか?

佐々木社長

エンジニアの仕事も嫌いではなかったんです。でも、ずっと「これをいつまでやるんだろう」という気持ちが頭の中にあって。一方でハングルネットの方が少しずつ軌道に乗ってきて、韓国語を楽しめる人をもっとたくさん増やしたい、同じ気持ちを分かち合える人を増やしたいという思いが強くなってきたんです。それで、こちらを本業にしようと決めました。

「話せること」が増えるほど、韓国がもっと面白くなった

編集部

韓国自体を好きになるのはわかるんですけど、佐々木社長は韓国語の勉強そのものにも、かなりハマったパターンですよね。一体、韓国語の何がそんなに面白かったんでしょう?

佐々木社長

やっぱり、コミュニケーションができるようになっていくのが楽しかったですね。何度も韓国旅行に行く中で、現地の人と話せる頻度が増えて、会話の深さも少しずつ変わっていく。それがすごく楽しくって。

編集部

旅行中に、現地の方と話す機会ってそんなにあるんですか?

佐々木社長

ありますよ。韓国の方って結構フレンドリーなので、コンビニでも話しかけられたり、普通に道を歩いていて会話が始まったりすることもあります。地方へ行ったときに「この辺でおいしいものって何ですか?」と聞いて、そこから話が広がることもありました。

編集部

おぉ…!そういう経験が増えると、「もっと話せるようになりたい」ってなりそうですね。ちなみに、独学だとやっぱり難しいですかね?私も実は本を買ってちょっと勉強したことがあるんですけど、何というかもう…記号にしか見えなくて(笑)。

佐々木社長

皆さん最初はそうですよ(笑)。私もそうでした。韓国語には覚える順番やポイントがあるので、最初のうちはプロに習うことをおすすめしています。独学でフレーズを一つ覚えても、そのフレーズしか使えないことがありますよね。でも最初に基礎を体系的に学んでおくと、その後は自分で単語や文法を増やして応用できるようになります。

編集部

最初の土台だけでも、ちゃんとプロの方に教わった方がいいんですね。

佐々木社長

そうですね。独学だけでやっていると、「こんなに勉強しているのに、なんでできないんだろう」と悩んで、モチベーションが下がってしまうこともあります。でも、順番を追って学習していけば、ちゃんとできるようになりますよ。習得までの期間は人によって違いますけど、皆さん最初は同じところからスタートしていますから。

1レッスン330円。「ちょっとやってみたい」で始められる場所にしたかった

編集部

ハングルネットについて、一番驚いたのが料金でした。1レッスン330円からですよね。しかも入会金も月額料金もない。なぜここまで安価にしたんですか?

佐々木社長

とにかく、最初の一歩のハードルを低くしたかったんです。普通の語学スクールだと、入学金があったり、毎月まとまった料金が必要だったりしますよね。でも、「ちょっとだけ韓国語をやってみたい」という気持ちで始めてもらいたかったんです。

編集部

本格的に覚悟を決めてから来てください、ではなくて。

佐々木社長

そうです。皆さん忙しい日常の中で、「韓国語をやってみたい」「何か楽しみを増やしたい」と思っている。でも、そこから実際に始めるまでの一歩って意外と難しいと思うんです。私自身も最初は、無料体験だけ受けてみて、それ以降は続けなくてもいいかな…なんて考えていたんですよ。でもその無料体験を受けてみたら、初めて外国の方と話したことがすごく楽しくて、ワクワクしたんです。そういう体験を、できるだけたくさんの人に提供したいと考えたんです。

編集部

ただ、330円って相当安いので、採算が合うのか気になります…。一体、どうやって成り立っているんですか?

佐々木社長

実は、330円のレッスンを担当しているのは私なんです。

編集部

えっ、佐々木社長が自ら…!

佐々木社長

はい。私は役員でもありますし、レッスンごとの人件費がかからないんです。それと、完全オンラインなので教室の家賃などの固定費もありません。講師は現在30名ほどいて、それぞれ料金は違いますけどね。最初は日本人の先生の方が安心できるという方もいらっしゃるので、私はそうした方向けのレッスンを中心に担当していて。ある程度学習が進んで、もっと本格的に学びたいという方がいらしたら、他の先生へバトンタッチするような形ですね。

編集部

なるほど…。そういった工夫でコストが抑えられているんですね。一方で、レッスン料金はリーズナブルでも講師の基準はかなり厳しいと伺いました。

佐々木社長

そこは大事にしています。韓国には、外国人に韓国語を教えるための国家資格があるんですけど、ハングルネットでは基本的にその資格を持っている方を採用しています。韓国人だから、日本語が話せるからというだけではなく、きちんと教えるための知識を持っている先生にお願いしたいんですよ。お金を払っていただく以上は、やっぱり上達していただきたいので。安く始められることと、レッスンの質は別だと思っています。

K-POPでも、旅行でも、留学でも。韓国語を始める理由は何でもいい

編集部

実際にその韓国語レッスンを利用されている方は、どんなきっかけで韓国語を始められるケースが多いんですか?

佐々木社長

30代、40代の方が多くて、K-POPが好きだったり、韓国ドラマが好きだったり、旅行が好きだったりしますね。一方で、留学を目指している方や、試験対策をしている方、将来韓国で働きたい方もいます。そういう方だと、かなり集中的に受講されていますね。

編集部

趣味で始める方から、人生の選択肢として韓国語を学ぶ方までいるんですね。

佐々木社長

そうですね。昔は「韓国そのものが好きだから韓国語を勉強する」という方が多かったと思うんです。でも今は、弊社の傾向としては少し逆になっていて。BTSなどのK-POPを先に好きになって、「この人たち韓国人なんだ」「じゃあ韓国語をやってみようかな」と入ってくる方がすごく増えました。入り口がかなり広くなったと思います。

編集部

推しが何を話しているのか、リアルタイムで理解したいというのも立派な理由ですよね。

佐々木社長

そうなんです。K-POPアイドルの方の配信を見ていて、「今何を話しているんだろう」と思って、直接わかるようになりたいという方は本当に多いですね。

編集部

ハングルネットには、韓国現地でのカフェレッスンもあるんですよね。

佐々木社長

はい。韓国に住んでいる講師も多いので、日程が合えば現地のカフェで対面レッスンを受けることもできます。

編集部

普段オンラインでしか会っていない先生と、実際に会えるということですよね。それは、かなり楽しそうです。

佐々木社長

私自身が昔、「こういうレッスンがあったら受けたかったな」と思っていたので。自分が学習していた頃に欲しかったものを、今の生徒さんには提供したいと思っています。

「まず知ること」が、お互いを理解する最初の一歩になる

編集部

佐々木社長は、エンジニアのお仕事も完全に離れて、今はハングルネット一本になったわけですよね。これから、この事業を通じてどんなことを実現していきたいですか?

佐々木社長

大きく言うと、韓国語を理解することをきっかけに、外国の文化に触れていただきたいです。私自身、先ほどもお話ししたように、昔は隣の国なのに韓国について何も知らなかったんです。日本のことしか知らなくて、韓国や中国に対しても、なんとなく良くないイメージを持っていたところがありました。でも実際に行って、人と話して、文化を知ることで見え方が変わったんですよね。

編集部

言葉を覚えたことで、その国を「外から見る」だけではなくなったんですね。

佐々木社長

そうですね。知らないままだと、どうしても偏見を持ってしまうことがあります。でも「こういう文化もあるんだ」と知ることができれば、少しずつ人同士も近づいていけると思うんですよ。まずは知ることが大事で、そのうえで、どう考えるかは個人の自由です。

編集部

今は、子ども向けのレッスンにも力を入れているそうですね。

佐々木社長

はい。小さい頃から他の国の文化に触れたり、違う国の人とコミュニケーションを取ったりすると、自然と偏見も少なくなっていくと思うんです。それに、外国語がわかれば、将来の選択肢も増えますよね。

編集部

最初は自分自身が韓国旅行をもっと楽しみたくて始めた韓国語が、今では誰かが別の文化を知る入り口になっているんですね。

佐々木社長

そうですね。韓国語を楽しめる人や、外国の文化を知って楽しいと思える人が増えたら、私も嬉しいです。もちろん人のためでもありますけど、みんなが楽しくなることで私も楽しいので、自分のためでもあるんですよ(笑)。

編集部

佐々木社長のお話を聞いて、私も棚の奥に眠っている韓国語の本をもう一度開いてみようと思いました(笑)。2005年、韓国についてほとんど何も知らない状態で訪れた一度の旅行。そこで「もっと話してみたい」と思ったことから始まった韓国語は、講師や通訳の仕事へとつながり、やがてハングルネットという事業になりました。330円から始められるレッスンも、韓国現地で先生と会える仕組みも、その根っこにあるのは、佐々木社長自身が感じてきた「知ること、話せることの楽しさ」です。言葉が一つわかると、見える世界が少し広がる。そして、知らなかった相手を知ることができれば、それまで持っていたイメージも変わるかもしれません。韓国語を教えることを入り口に、人と文化が出会う機会を増やしていく。佐々木社長がハングルネットでつくろうとしているのは、そんな小さなきっかけの積み重ねなのだと感じました。佐々木社長、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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