「ITが主役じゃない、と思っているんですよね。」ネクストリード株式会社・小国代表が、経験ではなく”素直さと好奇心と一生懸命さ”で人を選ぶ理由

「必要なスキル」の欄を見て、そっと閉じる。経験がない、というだけで、そこから先へ進めない…。
ネクストリード株式会社の小国幸司代表は、その「経験のあるなし」では人を選んでいないと言います。「ITの技術がどうこうというよりも、これらが必ず必要だと思っています」。挙げられたのは、素直さと、好奇心と、一生懸命さの3つでした。
小国代表がやっているのは、企業のデジタル化を支援する仕事。プログラマーとして就職し、営業に移り、40代で独立しました。
今回は、なぜその3つを見ているのかと、その考え方の出どころを、じっくり伺いました。読み終わる頃には、経歴の欄ではなく、自分の姿勢のほうを見直したくなっているはずです。
ネクストリード株式会社
代表取締役 小国 幸司
専門学校でプログラミングを学び、プログラマーとしてキャリアを始める。外資系 IT 企業へ転じ技術営業・マーケティングなどに携わった後、日本マイクロソフトに入社し製品マネージャーなどを務める。2016年にネクストリード株式会社を創業。企業のデジタル化を、戦略の策定から実装まで並走型で支援する。ソリューションコンセプト「クラウド秘密基地」を提供。
情報処理技術者が、100万人不足します

編集部小国代表は、いまでこそ企業のデジタル化を支援する会社を経営されていますが、大学は出ていらっしゃらないと伺いました。ITの道に進まれたのは、何がきっかけだったんですか?



私はいま54で、子供の頃はITなんて言葉が当然なくて。ただ、「情報処理技術者が100万人不足します」とメディアに出ていたのを見て、専門学校でプログラミングを勉強したんです。



100万人が不足…!それは、目に留まりますね。



そんなに不足しているなら、「自分も役に立てるかな」という感覚でしたね。あとは、その時ファミコンが流行っていて、プログラムで自由自在に動くゲーム内のキャラクターを見て「プログラムを動かすってすごいな」とも思いました。それで、ITに進んだんです。



そのITの道へ進んでみて、現場はいかがでしたか?



最初は開発を担当して、もうどっぷりプログラムを書いていましたね。当時は3Kとか言われていて、残業も多いし、徹夜も当たり前でした…。



3Kと言われていた頃から。そこから、営業に移られたんですよね。



そうなんです。やっぱり、プログラミングってセンスみたいなものが要るな、と思って。私は巧みに綺麗なプログラムを書けるような理系の感覚をあまり持ち合わせていないと思ったんですよね。学生時代のレベルなら良かったんですが、仕事をするとなると難しいなと。それで、自分が得意な営業寄りにキャリアを転換した感じですね。



センスが要ると気づいて、そこから離れる判断を。



プログラマーって、毎日ちっちゃい画面を見ながらプログラムを書いて、動かして、1人の世界なんですよね。ただ、幸い技術的なことは知っていて、私が説明すると皆さんわかりやすいと言ってくれました。それで、技術を知った上で営業的なことをやっていけばいいかな、と考えて転職しました。そこから営業やマーケティングの経験を積み上げて、40代で独立した形になりますね。
ITが主役じゃない、と思っているんです



40代で独立…!それまでいた会社から出る決断をするうえで、何か決め手があったんですか?



長く経験する中で、お客さんがすごく取り残されているな、という場面を何回も見てきたんですね。そもそもITって、日々の仕事がうまく回るための道具じゃないですか。それなのに、道具のほうが目的になっている。そんな印象がすごくあって、そこを本質論のところでやりたいな、と考えたんです。



道具が、目的になっている。具体的には、どういう場面でしょう?



大きい会社でも、ツールを買ったけど1ヶ月で使わなくなって、また新しいのを買う。使いづらいよねってみんな文句を言いながらやっている。これは本質論と違うな、と思ったんですよ。



買っては、使わなくなって、また買う。それは、もったいないです。



ITって、儲かるんですよね。プログラムなので、ものづくりと違って仕入れもないですし、コピーしてお客さんに売っていける。だからツールを作って売りさばけば儲かっていくんですが、なんだかそこに寄りすぎているなと。



業界の内側から見ていて、そこに違和感があったんですね。



あまり大きな声では言えないんですけど、ITって、いまは主役っぽいけど、実態は主役ではないと思っているんですよね。例えばスマホは、私が20代の頃は夢のような機械でしたけど、いまは高校生だろうと小学生だろうと使える。そうなった以上、ITは特別なものではなくて、他の業界に溶けてなくなるくらいだと思っているんです。



溶けて、なくなる…!



様々な業界で活躍する人たちを支えるものがITであって、ITが主役じゃない。逆に、お客さんに寄り添った形でいろいろやっていけば、本来の意味でのITの力を手にしていただける。そのガイドが僕らならできるかな、と思っていました。
秘密基地に、業務を持ってきてもらう





ITは、支えるもの。その考え方が、いまの事業の組み立てにもつながっているんでしょうか?



そうですね。もともと弊社は、戦略の策定と、DX(※)の開発と、クラウドのセキュリティという3つをやっていたんです。ただ、そう並べてしまうと「戦略やります、開発します、セキュリティです」という3つの話になりますよね。実際のご相談には、そのどれにも入らないものが多いんですよ。
※…デジタルトランスフォーメーション。デジタルの技術で、仕事の進め方そのものを変えること



3つのどれにも入らない相談が、出てくる。



戦略の上でセキュリティをどう捉えればいいのか、人の守り方をどうするのか。そういう部分が、事業の名前では言語化できなかったんです。それで、「秘密基地」という言い方にしました。





秘密基地…!なぜ、その言葉だったんですか?



子供の頃って、仲間がみんなで集まって、裏山で秘密基地を作ったじゃないですか。その中でみんなが得意なものとか好きなものを持ち寄って、楽しかったですよね。だったら、僕らはクラウドやITが得意なので、皆さんには業務を持ってきてもらって、一緒に基地を作りませんか、というコンセプトなんです。



得意なものを、持ち寄る。実際のご支援は、どんな進め方になるんでしょう?



本質を聞いて、お客さんのことをよく知って、急所を見つける。それから計画を立てて、このツールを買いましょうとか、これを開発しましょう、という順番です。ただ、多くの方は「困っている=このツールを買う」というところから入るケースが多いんですよね。本質を聞くと、打つ手が全然変わるんですけど。



たしかに、困りごとから、いきなりツールに行かないということですね。



IT業界って、シンプルに、導入されれば儲かります。でも僕らはどちらかというと定着重視で。業務の中に定着しないと長続きもしないし効果も出てこないと思うんです。僕らがもういなくなっても大丈夫、というくらいお客さんの中にスキルを蓄積していただくのも、大事かなと思っています。
耳の後ろを針で刺せば、倒せる



ただ、そこまで寄り添うとなると、人手がかなり要りそうです。



まず1つ挙げるとすれば、無駄なことをやらない、ということですね。例えば、1回しか開かない資料を作るのに、すごくお金をかけて人を割いたりするんですね。そういういらないものは、うちは基本的には作りません。そうやって慣例的な無駄を削って、ITの技術を使うところだけに絞る。当てる先も急所となると、やることは少なくなってくるんです。



なるほど、当てる先を絞る。



いつもモンスターハンターで例えるんですけど。でっかいモンスターに、みんなで寄ってボコボコ殴りに行って倒す、というパターンがありますよね。これが従来のやり方で、人手が必要で大変なんですよ。だから100人、200人と大きくなっていくんですけど。



人数で、押していく。



僕らはどちらかというと、しばらく目の前のモンスターを観察するんです。そのうえで、耳の後ろを針で刺せば倒せるらしい、というところまで考えて、針を作って刺しに行く。



観察して、急所に、1本…!それは、考える力が相当要りますよね。



正直、難しいです。来た仕事を右から左に移していれば給料をもらえるんだよね、という人ではやれないんですよ。それでいくと、弊社に集まってくる人間は、考える力があって、しかも素直な人たちが結構いるかもしれませんね。



考える力と、素直さ。それでも、毎回ゼロから考えるとなると、追いつかなくなりませんか?



そこは矛盾するかもしれないんですけど、10年やってきて、共通化した課題がたくさんあるんです。そこに対しては、実は既にサービスを作っているんですよ。例えばセキュリティの監視は、従来だと何十人も並べてコールセンターみたいなことをする。でも僕らは自動化して、AIも入れています。総合的に10万人ぐらいを、うちが監視している形ですね。
素直さと、好奇心と、一生懸命さ





10万人…!それだけの数を見るとなると、社内も相当な体制なんでしょうか?



全体で40人近くですね。監視のアナリストチームは半分もいないくらいの規模感です。IT会社って普通は、経験が豊富でスキルがあって、というところを第一に見ますよね。ただ弊社は、未経験者を採用して、社内で育成をしてというところからスタートした感じでした。一時は本当に、極端に言うと未経験者だけしか採らないぐらいの感じで進んでいて。



未経験者だけしか採らない…!それは、なぜだったんでしょう?



未経験でもやる気がある方々は、絶対に成長するので。例えば他の業界で、全然ITじゃないんだけど、やり方がしっかりされている方っているじゃないですか。ああいう方は、もうスポンジのようにITを吸収して、プロフェッショナルになっていくんですよね。



たしかに、他の業界での「やり方」は、そのまま効きそうです。では、経験のある方は、御社には来られないんですか?



もちろん経験者も来ますよ。第二新卒枠で入ってこられたケースも。権利だけ主張するのではなく、義務も果たす。そういう、しっかりされている方に来てもらえればいいな、と考えています。



経験があるかないかで、線を引いてはいない…!では、採用で見ていらっしゃるのは、どんなところですか?



3つあります。目の前の事象に素直に取り組めるか、受け入れられるか。わからないことや新しいことに好奇心を持てるか。あとは、一生懸命にやってみること。ITの技術や年齢がどうこうというよりも、これらが必ず必要だと思っています。



素直さと、好奇心と、一生懸命。どれも、資格や経歴の欄には書けないものですね。



10代の頃って可能性が無限大じゃないですか。でも年とともに、可能性も選択肢も自信もなくなっていく。ただ…、過ごした時間は増えるので、40代50代でも経験のほうは右肩上がりなんです。つまり、40代50代も第2期のポテンシャルだよ、と。それこそ若い頃に、素直に受け入れなよ、好奇心を持とうよ、一生懸命やってみなよ、と言われたじゃないですか。それを今そのままやればいいんですよね。



素直に受け入れる、好奇心を持つ、一生懸命やってみる。20代で言われたことを、50代でもう一度やればいい。 技術が主役じゃないと言い切る方は、人を選ぶときも技術を主役にはしていませんでした。小国代表、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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