自己都合退職手続きチェックリスト|退職前・退職時・退職後の全タスクを時系列で網羅【2026年最新版】

自己都合退職には、退職前に会社内で進める手続きと、退職後に自分で進める公的手続きがあります。退職届の提出から失業給付の受給まで、期限が定められた手続きが10種類以上あり、ひとつでも漏れると保険証が使えない・年金未納になる・給付金が受け取れないといった不利益につながります。

本記事では、自己都合退職の手続きをチェックリスト形式で時系列に解説します。退職前のタイムライン、退職時の必要書類、退職後の公的手続きまで、すべての項目を一括で確認できます。2025年4月の雇用保険法改正で、自己都合退職の給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月へ短縮されました。この最新ルールも反映しています。

この記事は、転職エージェント「ノビルキャリア」を運営する私たちが、退職から転職までを支援してきた経験をもとに執筆しています。

阿部 翔大

僕は普段から退職前後の方の相談に乗っていますが、「何から手をつければいいかわからない」という声を一番多く聞きます。退職は手続きの量が多いだけで、順番通りに進めれば必ず終わります。本記事をブックマークして一緒に進めていきましょう。

この記事の監修者

株式会社MEDISITE キャリアアドバイザー

阿部 翔大

目次

自己都合退職の手続きの全体像【必ず把握しておきたい】

自己都合退職とは、労働者本人の意思で雇用契約を終了することを指します。会社の倒産・解雇といった会社都合退職とは、失業給付の受給条件・給付制限期間・所定給付日数が大きく異なります。

自己都合退職と会社都合退職の違い

両者は失業給付の取り扱いが大きく異なります。自己都合退職は給付制限期間が原則1ヶ月あり、所定給付日数も会社都合より短く設定されています。

転職・結婚・引越し・スキルアップ・キャリアチェンジなど、本人の意思による退職はすべて自己都合退職に分類されます。一方、ハラスメント・賃金未払い・労働条件の著しい変更などが退職理由となる場合は特定理由離職者として、自己都合でも会社都合に近い扱いを受けられるケースがあります。

項目 自己都合退職 会社都合退職
退職理由 本人の意思(転職・結婚・引越し等) 倒産・解雇・退職勧奨
給付制限期間 原則1ヶ月(2025年4月改正) なし(待期7日のみ)
所定給付日数 90〜150日 90〜330日
受給資格 過去2年間で被保険者期間12ヶ月以上 過去1年間で被保険者期間6ヶ月以上

手続きは「会社内」と「公的」の2系統に分かれる

自己都合退職の手続きは、退職前に会社内で進める「会社内手続き」と、退職後に自分で進める「公的手続き」の2系統に大きく分かれます。会社内手続きは退職届の提出・引き継ぎ・備品返却が中心で、公的手続きは健康保険・年金・失業給付・税金が中心となります。

図1:自己都合退職の全体フロー

退職決意
3ヶ月前
上司に相談
1〜2ヶ月前
退職届提出
1ヶ月前
引き継ぎ
2〜4週間前
退職日
最終出社
退職後手続き
14〜20日以内

退職予告期間は法律と就業規則どちらが優先される?

民法627条では、雇用期間の定めのない労働契約について、労働者は退職の申し入れから2週間で退職が成立すると定めています。一方、就業規則で「退職は1ヶ月前までに申し出ること」と定められている会社も多く、どちらが優先されるかが論点になります。

結論としては、法律(民法627条)が就業規則より優先されます。就業規則で退職予告期間が長く設定されていても、2週間前の申し出で退職することは法的に可能です。ただし、円満退職や引き継ぎを考えると、就業規則に沿って1〜2ヶ月前に申し出るのが現実的です。

【参考】e-Gov法令検索|民法(明治29年法律第89号)第627条

就業規則や入社時の誓約書で「退職は半年前に申し出ること」と定められているケースが一定数見られます。こうした規定が法律を上回る場合は、法律が優先されるため、半年前ルールに縛られる必要はありません。

阿部 翔大

僕のところに来られる方でも、「退職は3ヶ月前に伝えないとダメと言われた」「半年前ルールだと聞いた」と不安を抱えてご相談に来る方が多いです。法律上は2週間前で退職できるので、まずは安心してくださいね。引き継ぎとのバランスを取る目安として1〜2ヶ月前を提案することが多いです。

退職前のチェックリスト|3ヶ月前から退職日までの全タスク

退職前のタスクは時系列で進めるのが基本です。3ヶ月前に決意を固める段階から、退職日の最終出社までを5フェーズに分けて解説します。

図2:退職前後の時系列タイムライン

3ヶ月前|決意と準備
  • 退職意思を固める
  • 就業規則で退職予告期間を確認
  • 転職活動を開始する
  • 退職金規程・賞与支給日を確認
2ヶ月前|上司への相談
  • 直属の上司に退職意思を口頭で伝える
  • 退職日の希望を相談する
  • 引き継ぎ計画の概要を準備する
1ヶ月前|退職届・有給消化計画
  • 退職届を提出する
  • 有給休暇の消化計画を立てる
  • 引き継ぎ資料を作成する
  • 取引先への挨拶準備
退職日|最終出社
  • 備品・健康保険証を返却する
  • 退職時の必要書類を受け取る
  • 挨拶を済ませて私物を整理する
退職後|公的手続き
  • 14日以内:国民年金の種別変更
  • 20日以内:健康保険の任意継続申請
  • 離職票が届いたらハローワークで失業給付申請

3ヶ月前|退職決意と就業規則の確認

退職を決意したら、最初に就業規則の退職予告期間を確認します。多くの会社では「1ヶ月前まで」「2ヶ月前まで」と定められており、就業規則は人事部や社内ポータルで確認できます。

同時に、退職金規程賞与の支給日在籍要件も確認します。退職金は勤続年数や退職理由(自己都合・会社都合)で減額されることがあり、支給日に在籍していないと賞与が支給されないケースもあります。

転職活動も並行して開始します。退職してから転職活動を始めると収入空白期間が発生しやすいため、可能な限り在職中に内定を得てから退職するのが理想です。

弊社調べによると、転職相談に来られる方の約7割が20代で、自己都合退職を検討する層は20代後半〜30代前半に集中する傾向があります。若い世代ほど在職中の転職活動と退職タイミングのすり合わせに悩む方が多いです。

2ヶ月前|直属の上司に口頭で意思表示

退職の意思は、まず直属の上司に口頭で伝えるのがマナーです。同僚や他部署の先輩に先に話すと噂が回ってしまい、上司との関係が悪化する原因になります。

伝える際は会議室など落ち着いた場所を選び、繁忙期のピークや上司の機嫌が悪いタイミングは避けます。「退職したい」ではなく「退職を決めた」と決定事項として伝えることで、引き止めの長期化を防げます。

同僚に先に話してしまうと、上司より早く噂が回り、引き止め交渉が始まる前に退職の話が広がってしまいます。直属の上司を最初の相手とするのが、退職交渉を円滑に進める基本姿勢です。

退職の伝え方や時期については以下の記事でも詳しく解説しています。

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1ヶ月前|退職届の提出と有給消化計画

上司に退職意思を口頭で伝えた後、合意が得られたら退職届を書面で提出します。退職届の書き方は後ほど詳しく解説します。

同時に、有給休暇の消化計画も立てます。年次有給休暇は労働者の権利であり、退職前にまとめて消化することが認められています。引き継ぎとの兼ね合いで、退職日前の最後の数週間を有給消化に充てるパターンが一般的です。

有給を使わせてもらえないトラブルが発生した場合の対処は以下の記事で詳しく解説しています。

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退職日|備品返却・書類受領・挨拶

最終出社日には、会社から貸与されたすべての備品を返却します。社員証・健康保険証・名刺・パソコン・携帯電話・制服・書籍・社用車のキーなどが対象です。

同時に、退職時の必要書類を会社から受け取ります。受け取る書類は後述しますが、離職票・源泉徴収票・健康保険資格喪失証明書・年金手帳・退職証明書・雇用保険被保険者証の6点が主要書類です。

退職日に受け取れない書類(離職票・源泉徴収票など、後日郵送される書類)については、郵送先の住所を会社に正確に伝えておきます。退職後に引越しを予定している場合は、新住所と転送届の準備を整えてから退職するのがスムーズです。

挨拶は、お世話になった同僚や他部署の方々へ対面または社内メールで済ませます。SNSでの一斉投稿は社内事情を考えると避けるのが無難です。

退職前のチェックリスト一覧

退職前にやるべきことをまとめると次のようになります。印刷して終わった項目に線を引いていく使い方が便利です。

  • 就業規則の退職予告期間を確認した
  • 退職金規程と賞与支給日の在籍要件を確認した
  • 転職活動を開始した
  • 直属の上司に口頭で退職意思を伝えた
  • 退職日を上司と合意した
  • 退職届を書面で提出した
  • 有給休暇の消化計画を立てた
  • 引き継ぎ資料を作成した
  • 後任者と引き継ぎ内容を確認した
  • 取引先への挨拶を済ませた
  • 備品(社員証・健康保険証・パソコン等)を返却した
  • 退職時の必要書類を会社から受け取った
阿部 翔大

退職前のスケジュールで一番難しいのは、引き継ぎと有給消化のバランスです。僕は求職者の方に「退職日から逆算して有給消化期間を確保し、その前に引き継ぎを完了させる」という順序で計画を立てるようお伝えしています。会社側との合意を早めに取り付けるのがコツです。

退職届・退職願の書き方と提出のポイント

退職届と退職願は混同されがちですが、法的な効力が異なります。書き方・提出タイミング・テンプレートを解説します。

退職届と退職願の違い

項目 退職届 退職願
性質 退職を確定させる通知 退職を願い出る打診
撤回 受理後は原則撤回不可 承認前なら撤回可能
使う場面 退職を確実に進めたい場合 上司との合意を経てから提出する場合

一般的には、口頭で上司に退職意思を伝えて合意を得た後、退職届を提出して退職を確定させる流れが多くなっています。退職願は引き止め交渉の余地を残したい場合に選びます。

退職届のテンプレート

退職届はA4縦書き・手書きが基本ですが、近年は会社所定のフォーマットを使う企業も増えています。記載すべき項目は次の6点です。

  • 表題(「退職届」)
  • 本文冒頭の「私事、」または「私儀、」
  • 退職理由(「一身上の都合により」が一般的)
  • 退職日(年月日を明記)
  • 提出日
  • 所属部署・氏名・押印

宛名は代表取締役社長宛とし、自分の氏名より一段下に記載します。提出は直属の上司を経由するのがマナーで、白い無地の封筒に入れて手渡しが基本です。

退職届の本文は次のような定型文を使います。

退職届

私事、
このたび一身上の都合により、2026年〇月〇日をもって退職いたします。

2026年〇月〇日
〇〇部 〇〇〇〇 印

株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇〇〇 殿

退職届を提出した後にコピーを取っておくと、後日のトラブル防止に役立ちます。原本は会社に提出・コピーは自分で保管するのが推奨される運用です。

退職届を縦書きで書く際は、便箋はB5またはA4の白無地を選びます。罫線入りでも問題ありませんが、ビジネス用の便箋を使うのが望ましい仕上がりです。封筒は便箋サイズに合わせて長形4号(B5用)または長形3号(A4用)を選び、表に「退職届」、裏に所属部署と氏名を記載します。

提出のタイミングと方法

退職届の提出タイミングは、退職日の1ヶ月前が目安です。就業規則で「1ヶ月前まで」と定められている会社が多いため、それに合わせるのが最もトラブルが少ないでしょう。

提出方法は対面手渡しが原則ですが、上司が長期不在の場合は内容証明郵便で送付する方法もあります。内容証明郵便は「いつ・誰に・どんな内容を送ったか」を郵便局が証明する制度で、後日のトラブル防止に有効です。

退職届の受け取りを拒否されたら

会社が退職届の受け取りを拒否することは、法的に認められません。民法627条で退職の自由が保障されており、受理されなくても2週間後に退職は成立します。

受け取りを拒否された場合は、内容証明郵便で再送付する方法が現実解です。これにより「退職届を提出した日付」が客観的に記録されます。

内容証明郵便は郵便局窓口で利用でき、同じ文面を3部用意します。1部は本人控え・1部は郵便局保管・1部は受取人に送付される仕組みです。配達証明をオプションで付けると受取日付の証拠も残せるため、後日の労働紛争に備えたい場合は配達証明付きが推奨されます。

退職理由の伝え方が次のキャリアに影響する

退職届に書く理由は「一身上の都合により」で問題ありませんが、転職活動の面接で語る退職理由は別途準備が必要です。同じ理由を伝え方を変えるだけで、面接官の印象は大きく変わります。

面接でお見送りになる理由のひとつに「他責感」があります。退職理由を「会社のせい」「上司のせい」と表現すると、面接官にも同じ印象を与えてしまうため、不利になりやすいです。前職で得た学びと次の職場で実現したいことを軸に語るのが推奨される伝え方です。

退職理由の言い換え方や面接での伝え方は以下の記事で詳しく解説しています。

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阿部 翔大

面談では、退職理由を一緒に「点と点でつなぐ」作業をすることが多いです。前職での経験と次の職場で実現したいことをストーリーで語れるよう、何度かやりとりしながら整えていきます。一人で考え込まず、相談しながら言語化することをおすすめします。

退職と転職の相談はノビルキャリアへ

退職時に会社から受け取る書類6点

退職時に会社から受け取る書類は、退職後の公的手続きや転職先への提出に必要な書類です。漏れなく受け取り、紛失しないように管理します。

①離職票(雇用保険被保険者離職票)

離職票は失業給付の申請に必要な書類で、ハローワークが発行する正式書類です。会社が退職後10日以内にハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出し、ハローワークが発行した離職票が会社経由で本人に届きます。

退職日から2週間程度で郵送されるのが一般的ですが、3週間経っても届かない場合は会社の担当者に確認します。それでも届かない場合はハローワークに直接相談できます。

②源泉徴収票

源泉徴収票は、その年に支払われた給与と源泉徴収された所得税の金額が記載された書類です。転職先での年末調整または確定申告に必要となるため、必ず受け取ります。

退職後1ヶ月以内に発行されるのが一般的です。年内に転職先が決まっている場合は転職先の年末調整に提出し、年をまたぐ場合は翌年の確定申告で使用します。

【参考】国税庁|タックスアンサー No.2603 給与所得者と還付申告

③健康保険資格喪失証明書

健康保険資格喪失証明書は、国民健康保険への切り替えまたは家族の扶養に入る場合に必要な書類です。退職した会社で加入していた健康保険を脱退したことを証明します。

退職日の翌日から有効になり、市区町村役場での国民健康保険加入手続きや、配偶者の勤務先への扶養申請に使います。

④年金手帳(基礎年金番号通知書)

年金手帳は会社に預けている場合のみ受け取ります。2022年4月以降に成人した方は年金手帳の代わりに「基礎年金番号通知書」が発行されており、基礎年金番号を確認できる書類があれば手帳でなくても問題ありません。

退職後は国民年金第1号被保険者への種別変更に基礎年金番号が必要になるため、紛失していないか確認しておきます。年金手帳は会社が紛失防止のために預かっているケースが多く、退職時に返却を忘れがちな書類のひとつです。

⑤退職証明書

退職証明書は、退職した事実を会社が証明する書類です。離職票が届く前に転職先から提出を求められた場合や、国民健康保険・国民年金の加入手続きで離職票の代わりに使える書類です。

退職証明書は本人の請求があれば会社は発行義務を負います(労働基準法22条)。請求は退職前でも退職後でも可能です。

⑥雇用保険被保険者証

雇用保険被保険者証は、転職先で雇用保険に加入する際に必要な書類です。会社が保管している場合と、入社時に本人に渡されている場合があります。

転職先での雇用保険継続には、被保険者番号が必要となります。紛失している場合はハローワークで再発行できます。

会社から書類が届かない場合は、まず人事担当者に問い合わせます。連絡が取れない・対応してもらえない場合は、ハローワークや年金事務所に直接相談することで、行政側から会社に発行を促してもらえる仕組みがあります。

受け取った書類はクリアファイルでまとめて保管しておくと、後日の公的手続きで探す手間が減ります。離職票・源泉徴収票・健康保険資格喪失証明書は使用頻度が高いため、すぐ取り出せる場所に置いておくのが便利です。

受け取り書類のチェックリスト

書類 受け取り時期 主な用途
離職票 退職後2週間程度 失業給付の申請
源泉徴収票 退職後1ヶ月以内 年末調整・確定申告
健康保険資格喪失証明書 退職日前後 国保切替・扶養加入
年金手帳 会社預けの場合 国民年金種別変更
退職証明書 本人請求で発行 離職票代替・転職先提出
雇用保険被保険者証 退職時または入社時保管 転職先での雇用保険継続

退職後の公的手続き完全リスト

退職後は、会社員時代に会社が代行していた手続きを自分で進める必要があります。健康保険・年金・失業給付・税金の4カテゴリに分かれ、それぞれに期限が定められています。

図3:退職後の必須手続き分類図

退職後の必須手続き
① 健康保険
期限:退職日の翌日から14〜20日以内
  • 国民健康保険に加入
  • 任意継続を申請
  • 家族の扶養に入る
② 年金
期限:退職日の翌日から14日以内
  • 国民年金第1号への種別変更
  • 必要に応じて保険料免除申請
③ 失業給付
期限:離職票到着後すみやかに
  • ハローワークで求職申込
  • 離職票を提出して受給資格決定
  • 待期7日+給付制限1ヶ月(2025年4月〜)
④ 税金
期限:年内再就職なしなら翌年確定申告
  • 住民税の納付方法を確認
  • 年内再就職なしなら確定申告で所得税還付

①健康保険|3つの選択肢から選ぶ

退職翌日から会社の健康保険は失効するため、空白期間なく次の保険に加入する必要があります。選択肢は3つです。

  • 国民健康保険に加入(市区町村役場で手続き・退職翌日から14日以内)
  • 会社の健康保険を任意継続(協会けんぽ等に申請・退職翌日から20日以内)
  • 家族の健康保険の扶養に入る(家族の勤務先で手続き)

任意継続は退職前に2ヶ月以上の被保険者期間が必要で、保険料は退職前の標準報酬月額をもとに計算されます。在職中は会社が半分負担していた保険料を全額自己負担となるため、おおよそ2倍程度の保険料になります。

国民健康保険の保険料は前年所得に応じて決まるため、退職前の収入が高かった方は1年目の保険料が高額になりやすいです。任意継続と国民健康保険の両方の保険料を試算して、安い方を選ぶのが現実的です。

家族の扶養に入れる場合は、保険料の自己負担なしで健康保険に加入できるため、最も負担が軽い選択肢となります。扶養に入る条件は、年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)かつ被保険者の年収の2分の1未満であることです。失業給付の受給期間中は日額3,612円以上の場合、扶養から外れる扱いになるケースが多いため、家族の勤務先の健康保険組合で確認します。

【参考】協会けんぽ|任意継続の加入条件について

【参考】協会けんぽ|任意継続の加入手続きについて

②年金|国民年金第1号への種別変更

退職して厚生年金から外れたら、国民年金第1号被保険者への種別変更を行います。手続きは住所地の市区町村役場の年金窓口で、退職日の翌日から14日以内です。

必要な持ち物は、年金手帳または基礎年金番号通知書・退職日が確認できる書類(離職票・退職証明書等)・本人確認書類です。配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先で「国民年金第3号被保険者該当届」を提出します。

種別変更の手続きを忘れたまま放置すると、未納期間が発生し将来の年金額が減額されます。退職日の翌日から14日以内が法的な期限ですが、過ぎた場合でも遡って手続きできるため、気づいた時点で速やかに市区町村役場へ連絡します。

収入が大幅に下がる場合は国民年金保険料の免除・納付猶予制度を利用できます。前年所得が一定額以下、または失業した場合に申請可能です。

【参考】日本年金機構|ケース1:国民年金に加入または種別変更するとき

【参考】日本年金機構|国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度

③税金|住民税と確定申告

住民税は前年所得に対して翌年6月から課税されるため、退職した年の翌年も住民税の納付義務が残ります。退職時期によって納付方法が変わります。

  • 1月〜5月退職:5月分までを最終給与から一括天引き
  • 6月〜12月退職:退職月分まで天引き、残りは普通徴収(自分で納付)
  • 転職先が決まっている場合:転職先で特別徴収を継続できる

年内に再就職しない場合は、翌年の確定申告で源泉徴収された所得税の還付を受けられる可能性があります。退職時に受け取った源泉徴収票を確定申告に使用します。

年の途中で退職した場合は、年末調整が行われていないため、生命保険料控除・社会保険料控除(国民年金・国民健康保険を含む)・医療費控除などを反映すると数万円〜数十万円の還付を受けられるケースが多いです。確定申告は翌年の2月16日〜3月15日が原則ですが、還付申告は1月から提出可能で5年間有効です。

【参考】国税庁|タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

阿部 翔大

退職後の手続きで、僕がもっとも質問を受けるのは健康保険の任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶかです。前年の所得が高かった方は任意継続、所得が低かった方は国民健康保険、扶養に入れる方は扶養が有利になることが多いです。市区町村役場で国民健康保険料の試算をしてもらい、任意継続の保険料と比較するのが確実です。

失業給付(雇用保険)の受給手続き

失業給付は、退職後の生活と再就職活動を支える制度です。自己都合退職の場合は2025年4月の改正で受給開始までの期間が短縮されました。

受給条件

自己都合退職で失業給付を受け取るには、退職前2年間で雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上必要です。さらに、ハローワークで求職申込みをして、就職する意思と能力があるにもかかわらず就職できない状態であることが条件です。

【参考】ハローワークインターネットサービス|基本手当について

2025年4月の改正で何が変わった?

2025年4月1日以降に離職した方は、給付制限期間が原則1ヶ月に短縮されました。改正前は7日間の待期期間に加えて2ヶ月の給付制限がありましたが、改正後は1ヶ月の給付制限となり、受給開始までの期間が短縮されています。

ただし、5年以内に3回以上自己都合退職した場合は給付制限期間が3ヶ月となるため注意が必要です。短期間で複数回の自己都合退職を繰り返している方は、ハローワークで自身の給付制限期間を確認します。

また、離職日前1年以内または離職後に厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講すると、給付制限が解除されます。リスキリング志向の方は教育訓練の受講を検討することで、待期7日後すぐに基本手当を受給できます。

【参考】厚生労働省|令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます

申請手順

  • 離職票・本人確認書類・マイナンバー確認書類・写真2枚・印鑑・本人名義の通帳を準備
  • 住所地のハローワークで求職申込み
  • 離職票を提出し、受給資格を決定してもらう
  • 雇用保険受給者初回説明会に参加
  • 失業認定日(4週間に1度)にハローワークへ来所
  • 認定日後、約1週間で指定口座に基本手当が振り込まれる

【参考】ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き

受給期間と給付額

所定給付日数は、雇用保険の被保険者期間と年齢によって決まります。自己都合退職の場合は次の通りです。

被保険者期間 所定給付日数
1年以上10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

基本手当の日額は、退職前6ヶ月間の賃金日額をもとに、賃金日額の50〜80%で計算されます。賃金が低い人ほど高い給付率が適用される仕組みです。

たとえば月給25万円・賞与なしの方が自己都合退職した場合、賃金日額は約8,300円・基本手当日額は約5,500円となり、所定給付日数90日で総額約49万5,000円を90日に分割して受給するイメージとなります。実際の金額はハローワークで離職票を提出した際に正式決定します。

受給期間中は求職活動実績の報告が必要で、4週間に1度の認定日にハローワークへ来所して報告します。求人検索・応募・面接・職業相談などが求職活動として認定されます。

受給中に再就職が決まると、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合に再就職手当を受給できます。再就職手当の支給額は「基本手当日額×残日数×60〜70%」で計算され、早期再就職を後押しする仕組みになっています。

【参考】ハローワークインターネットサービス|基本手当の所定給付日数

阿部 翔大

2025年4月の改正で給付制限が1ヶ月に短縮されたことは、自己都合退職を考えている方にとって大きな変化です。受給開始まで約1ヶ月半と見込めるので、退職後の生活設計が立てやすくなりました。離職票が届いたらすぐにハローワークで求職申込みをするのが、給付開始を早めるコツです。

退職と転職活動はセットで考えるべきテーマです。退職タイミングと入社日のすり合わせ方を解説します。

退職前の転職活動と退職後の転職活動

項目 退職前に活動 退職後に活動
経済面 在職中の収入が継続 無収入期間が発生
時間面 面接調整に制約あり 面接日程の自由度が高い
面接評価 在職中で計画性の評価が高い 空白期間の説明が必要
入社日 退職日との調整が必要 即日入社が可能

経済的な安心感を優先するなら退職前の転職活動が推奨されます。在職中に内定を得てから退職届を出す流れが、収入空白期間を作らずに済む方法です。

転職先が決まってから退職する場合の伝え方は以下の記事で詳しく解説しています。

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内定後の入社時期調整のコツ

内定が出た後、転職先には入社可能日を具体的な日付で提示します。「退職日の翌月1日」と伝えるよりも「2026年〇月〇日」と具体的な日付で伝える方が、転職先の入社準備もスムーズに進みます。

退職交渉が長引く可能性がある場合は、余裕をもった入社日を提示します。1ヶ月の余裕があれば引き継ぎ・有給消化・公的手続きの初動まで進められます。

転職先からは「できるだけ早い入社」を希望されることが多いですが、退職交渉が完了していない段階で短すぎる入社日を提示すると、退職前に有給消化ができないまま退職日を迎えるリスクがあります。退職日と入社日の間に1〜2週間のバッファを設けるのが、心身を整えて新しい職場に入るためのコツです。

退職タイミングが内定承諾に影響する

弊社の支援データでは、内定承諾まで進まれた方のおよそ4人に1人が、最終的に辞退や入社時期の見直しに至っています。退職日の確定と入社日のすり合わせができていないと、内定承諾後にも揺れが生じやすくなります。

確実に転職を決めるためには、退職届を出す前に内定を確定させ、退職日と入社日を1ヶ月以内のスパンで設定するのが理想です。

阿部 翔大

転職活動と退職手続きの両立で僕が一番注意してお伝えしているのは、退職届を出すタイミングです。内定が出ていない段階で退職届を出してしまうと、転職活動が長引いた場合に収入空白期間が大きくなるリスクがあります。在職中に転職活動を進めて、内定が出てから退職届を出す順序が安全です。

退職と転職の両立を相談したい方はノビルキャリアへ

自己都合退職でよくある手続きミス・トラブル

自己都合退職では、手続きの順序ミスや書面化を怠ったことによるトラブルが起こりやすいです。よくある失敗パターンを解説します。

退職届を口頭で済ませてトラブルになる

退職意思を口頭でしか伝えていないと、後日「聞いていない」「正式な退職手続きが完了していない」と言われるリスクがあります。必ず退職届を書面で提出し、控えのコピーを保管しておくのがトラブル防止の基本です。

引き継ぎ不足で揉める

引き継ぎ資料の作成を後回しにすると、退職後に元同僚から問い合わせが続いたり、損害賠償を主張されるリスクがあります。退職日の2週間前までに引き継ぎ資料を完成させ、後任者と一緒に内容を確認するのが推奨される進め方です。

引き継ぎ資料には、担当業務の手順・取引先連絡先・進行中案件のステータス・社内システムのID・パスワード(後任者用は新規発行)などを記載します。後任者が一人で業務を進められるレベルまで詳細に書くのが望ましい仕上がりです。

公的手続きの期限超過

退職後の公的手続きには期限があり、超過すると不利益が生じます。代表的な期限と影響は次の通りです。

  • 国民年金種別変更(14日以内):未納期間が将来の年金額に影響
  • 任意継続申請(20日以内):超過すると任意継続不可
  • 国民健康保険加入(14日以内):保険証なし期間に医療費が全額自己負担

会社が退職を認めない・退職届を受け取らない

弊社の支援データでは、「退職を申し出たのに会社が認めてくれない」「退職届を受け取ってくれない」という相談が一定の割合で寄せられます。多くの場合、人手不足や上司の引き止めが背景にあります。

法的には民法627条で退職の自由が保障されているため、会社が拒否しても2週間後に退職は成立します。受け取り拒否の場合は内容証明郵便で退職届を再送付し、退職日を客観的に記録するのが現実解です。

退職拒否トラブルへの対処方法は以下の記事で詳しく解説しています。

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退職時にやってはいけないNG行動の一覧は以下の記事でも詳しく解説しています。

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阿部 翔大

退職トラブルで僕が相談を受けるケースで一番多いのは、「上司に退職を伝えたが受け入れてもらえない」というパターンです。退職は労働者の権利なので、最終的には会社の同意がなくても2週間で成立します。粘り強く交渉するか、内容証明郵便で退職届を送付するか、状況に応じて選択しましょう。

自己都合退職のよくある質問

Q1. 退職届は何日前までに提出すべき?

法律上は2週間前ですが、就業規則で1〜2ヶ月前と定められている会社が多く、退職日の1ヶ月前を目安に提出するのが一般的です。引き継ぎや有給消化の時間を確保するためにも、早めの提出が円満退職につながります。

Q2. 退職届を上司が受け取らない場合は?

内容証明郵便で再送付するのが現実的な対処です。内容証明郵便は郵便局が「いつ・誰に・どんな内容を送ったか」を証明する制度で、退職意思の表明日を客観的に記録できます。送付から2週間後に退職が成立します。

Q3. 自己都合退職で失業給付はもらえる?2025年4月の改正で何が変わった?

自己都合退職でも、退職前2年間で雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あれば失業給付を受け取れます。2025年4月以降に離職した方は、給付制限期間が1ヶ月に短縮され、待期7日と合わせて約1ヶ月半で受給開始となります。教育訓練を受講すると給付制限が解除される制度も新設されました。

Q4. 有給休暇は退職前に消化できる?

年次有給休暇は労働者の権利であり、退職前にまとめて消化できます。会社は時季変更権を行使できますが、退職日以降に変更することはできないため、退職日までに消化することが認められます。引き継ぎとの兼ね合いで、退職日前の最後の数週間を有給消化に充てるのが一般的です。

Q5. 退職後の健康保険は何を選べばいい?

選択肢は国民健康保険・任意継続・家族の扶養の3つです。前年所得が高かった方は任意継続が安く、前年所得が低かった方は国民健康保険が安くなる傾向があります。家族の扶養に入れる方は扶養が最も負担が少ない選択です。市区町村役場で国民健康保険料の試算をしてもらい、任意継続の保険料と比較するのが確実です。

Q6. 住民税の支払いはどうなる?

住民税は前年所得をもとに翌年6月から課税されるため、退職した年の翌年も納付義務が残ります。退職時期によって納付方法が異なり、1月〜5月退職は5月分まで最終給与から一括天引き、6月〜12月退職は退職月分まで天引きで残りは普通徴収(自分で納付)となります。転職先が決まっている場合は、転職先で特別徴収を継続できることもあります。

Q7. 退職時に必要な書類が会社からもらえない場合は?

離職票が届かない場合は、まず会社の人事担当者に確認します。それでも届かない場合はハローワークに直接相談することで、ハローワーク側から会社に発行を促してもらえます。源泉徴収票や退職証明書も同様に、会社に再請求できます。労働基準法22条で、退職証明書は本人の請求があれば会社に発行義務があります。

Q8. 退職後すぐに転職しない場合、確定申告は必要?

年内に再就職しない場合は、翌年に確定申告が必要です。退職時に受け取った源泉徴収票を使って、源泉徴収された所得税の還付を受けられる可能性があります。年の途中で退職した場合、年末調整が行われていないため、所得控除を反映すると税金が戻ってくるケースが多いです。

Q9. 即日退職は可能?

原則として即日退職は法的に認められていませんが、会社の同意があれば即日退職が可能です。また、ハラスメントや健康上の理由で就業継続が困難な場合は、即日退職が認められるケースもあります。即日退職の可否や進め方は以下の記事で詳しく解説しています。

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退職の手続きは項目が多くて圧倒されがちですが、時系列で順番にこなしていけば必ず完了します。本記事のチェックリストを印刷して、終わった項目に線を引いていく方法もおすすめです。不安な点があれば僕たちにお気軽にご相談くださいね。

まとめ|自己都合退職の手続きを漏れなく進めるコツ

自己都合退職の手続きは、退職前のタイムライン退職後の公的手続きに分けて時系列で進めるのが最も確実な方法です。3ヶ月前に退職を決意したら、就業規則の確認・転職活動開始・上司への意思表示・退職届提出・引き継ぎ・有給消化と進めていきます。

退職時には、離職票・源泉徴収票・健康保険資格喪失証明書・年金手帳・退職証明書・雇用保険被保険者証の6点の書類を会社から漏れなく受け取ります。退職後は、健康保険の切り替え(14〜20日以内)・年金の種別変更(14日以内)・失業給付の申請(離職票到着後すみやかに)・税金の納付方法確認の4カテゴリを期限内に進めます。

2025年4月の雇用保険法改正で、自己都合退職の給付制限期間が1ヶ月に短縮されました。退職後の生活設計が立てやすくなったため、転職活動と退職手続きの両立にも余裕が生まれています。

手続きの量に圧倒される方も多いですが、本記事の時系列チェックリスト退職後手続き分類図を見ながら順番に進めていけば、漏れなく完了できる内容です。期限のある手続き(年金14日以内・任意継続20日以内)から優先的に進めるのがコツです。

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